ぜんぶ秦恒平文学の話

能・狂言・古典芸能 2022年

○ お便りありがとうございます。
生活と意見を読ませていただくことができるようになっていましたとは、露知らず、開けても見ない日々でした。ただただ嬉しいです。
私の方も、新しいPCになってから、思うように扱えず、秦様のHPも読めないと、ついついPCから離れがちでした。これから、じっくりと読ませていただきます。
お尋ねくださった謡曲の方は
6日の日曜日に、謡の先生の 、門下生だけの新年会=研鑽会が矢来の能楽堂でありました。
私は「巻絹」のキリを舞いました。謡は練馬のお稽古仲間で「巴」を連吟いたしました。
コロナ禍のなかですが、ある時はリモートでのお稽古だったりしながらも、細心の注意を払いながらも、少しづつではありますが、お稽古を続けています。
おしゃべりをする相手もないまま、いつも心の中ではみち子様(=妻、少女来の親友)相手につぶやいています。ちょうど、若いときに離ればなれになった頃のようです。
夫も毎晩の少々の(本人曰くです)晩酌を欠かさず、食欲旺盛で元気に過ごしています。
みち子様ともにお二人の ご健康を祈っています。   晴

* 快いご勉強の近況が知れた。この人、妻と同級の親友、もうすぐ八十五歳。私の六十余年もの実感で、この人ほど、人生を豊かに満喫し成長された人を識らない。ごくごく普通の高卒生から銀行勤め、結婚し、上京して以降、何が機縁であったか目を見張る自覚的な勉強で、殊に熱心に「謡曲」を習い始めた。
謡曲と一言でいうが、途方もなく深く豊かに遙かな、いわば異世界。
謡曲という独吟・連吟による古文藝の味読が在り、独自の唱歌音曲の世界が在り、独自の歩行と仕舞が在り、装束や能面への親近がある。
どう見てもまるまる無縁と思えた境遇から、まさに一念発起、それも興趣を全身で楽しんで打ち込んで行く勉強ぶりだった、すばらしい一人生と、はために敬服している。地位とも名誉ともすがすがしく無縁に楽しめて、眞実、興味津々なのだ、羨ましいほど。
2022 2/8

* 能管とバイオリンのコラボを愉しく美しく聴いた。中学であった、高校のろか、「笛」が習いたいと父にいうと、「胸が悪ぅなる」と一蹴された。なんとなく納得できて諦めた。能舞台の地謡にもかり出されていた秦の父には、何かしらそう思う知見があったのかも知れないと、今し方、変容をきわめて美しい笛の音色に感嘆もしつつ妻と話し合った。 2022 4/23

* 梅若万三郎いえからは能のおさそい、高麗屋の松本白鸚さんからは十月歌舞喜佐へのおさそいがある。俳優座の岩崎加根子さんからも。感染コロナの方は果然 感染の勢いをこの日々倍々化していて、なんともハヤ。
今日午後には建日子が、車で、参議院選挙の期日前投票所へ運んで上げると。

* ここまで書き置いて、午前九時半。朝食に降りる。
2022 7/8

* 京舞の井上八千代さんから、お便りとお志の酒肴として美味最上のお漬け物を戴いた。八千代さんのお宅は、私の育った秦から、西向きにホンの百二、三十メートル、南流して新橋へそそぐ清い白川を跨いだ新門前通りの西之町にある。八千代さんのお父さんは京観世の家元片山九郎右衛門さん、お兄さんが私には大学専攻の先輩、観世流仕手方の片山慶次郎さん、此の八千代さんの初世井上八千代お祖母さんと、秦の、私の叔母茶の宗陽・花の玉月とは、古門前通り元町に校門を開いた市立有済小学校の、はるか昔の同級生だった。私等はみな、その久しい後輩で同窓。祇園甲部の芸妓舞子は一人のこらず井上流京舞を習って「都踊りはよーいやさあ」と花咲かせてきた。日本の文化はほんしつにおいて「女文化」と謂い切るわたくしもまたその土壌に育ってきた、たぶん、今も。
2022 7/26

* 能面にぜひ観たいものがある。せめて写真が欲しい。国立能楽堂へ行けば或いはと思うが、外出の習慣が枯渇していて、体力にも不安があり躊躇って仕舞う。しかし近いうちにせめてどなたか仕手方の方ににお願いしてでも写真が見たいが。
2022 8/12

* 笛大鼓・小鼓太鼓、鳴物藝の名手、重要無形文化財、藝多大の韻話出て先生にもなった浅草の二世「望月太左衛」さん、ぱちぱちと火花の美しい例年の創り花火(光る音付きカード)も添え、同じく藝大の院も出て博士になった「令和の撫子」鳴物の技も颯爽の娘「安部真結」ちゃんの美しい写真も大きく添えて、例の元気ハツラツ太左衛ブシの女手紙ももちろん、「浅草の色々」を華やかにも清々しい大団扇涼しく、どっさり贈り届けて下さった。むかあし、テレビ番組で「初めてのお使い」を健気に演じてみせたあのちっちゃな「真結」がこんなに美しく立派に育ったかと、よそながら私も嬉しい嬉しい。りっ゜にお母さんの後「継ぐに違いない。
毎年のように永い間浅草の大花火を屋上で見せて貰っていた。ある年は妻も一緒に居間からも見せて貰った。東京で一に懐かしいのは「浅草」と私に強く思わせてくれたのが太佐衛さんだった、その太鼓、大鼓、小鼓、笛の音のみごとに力強いこと、圧倒の美韻としか謂えない。
出逢ったのはほぼ四十年以前の国立劇場でだった。端っこで太鼓をうった小柄な太左衛、二十歳過ぎたかどうか、の「大力量」に素人の私、一瞬で仰天感嘆、その後にすぐ機会に恵まれて、以來最も親しい若々しい敬愛の親友である。
ああ、もう一度浅草へ行きたいが。すきやきも、寿司も、天ぷらも「浅草」だ。泣けそうに懐かしいよ。令和四年日本語版の察し「吉原細見 歴史と文化探究編の」の懐かしさ。この一冊を手にすればあの吉原で何一つ迷わない。懐かしい。国立劇場編の大冊子日本音楽の流れ「打楽器」も多くが細かに目に見えて、実に有難い。

〇 秦先生 ご報告をさせて頂きます。
今年六月、国立劇場主催”打楽器”に出演させて頂きました。偶然ですが、真結も現代邦楽に出演しました。今から40年前、同様の企画があり、一観客としても、一共演者としてもとても感動した公演でした。その公演に時を経て出演でき、うれしかったです。
また今年の一月号として掲載されました「月刊日本橋」の記事をお目通し頂ければ幸いでございます。葭町芸妓のおひろ姐さん藝歴88年の会に関連して取材され本当はおひろ姐さんのページだったのですが、けがをされ、私はピンチヒッターで出ました そしてこの8月号のvoiceに真結が取材されましたので同封致しました。加えて「吉原再見」ですが 2018年に発足した江戸伝統文化推進燈紅塾の活動を続けています中で、地域の小冊子として出来上がりました。
いろいろありますが引き続きファイトで取り組みます。 望月太左衛

* まぎれもない、まさしくファイトの人よ!
2022 8/16

〇 残暑お見舞い申し上げます。
暑い夏に熱い思いが通じたのでしょうか、、、「二世望月太左衛 鼓樂 vol.8」が令和4年度(第77回)文化庁芸術祭参加公演に承認されました!!本日通知がきました。これまで2002年、2010年、2012年と参加し、10年ぶりの参加公演です。これも長きにわたる皆様の応援のおかげでございます。ありがとうございます。とても嬉しいです。ファイトでゆきます!
2022 8/18

* 京舞家元へ呈上の「花」「月」「雪」一字に和歌一首を添えた長尺、小堀遠州系の筆になる三幅對が行き着いた。お舞台の床に掛けて戴けると。安堵した。ついに床の間の無い家に暮らし終えるわが家に死蔵しては、軸たちに気の毒と、気に掛けてきたのだ。たにもまだ軸物や茶道具がかなり有る。建日子にはそれらを見定める趣味も目も無い。それらの処分にもまだまだ頭が痛い。「道具」として生かしてやりたいのだ。

〇 今朝方も、和歌山ではおどろくような雨が降りましたようで、不順なことでございます。
先日は,久方ぶりの東京でのおさらへ会を終えて今日に取りましたら、思いもかけぬ御立派な贈り物 御礼も申さぬまま、山の日をはさんで、上高地へ出向いてしまいました。
まずは、月の季節、三幅並べて、舞台の床へ掛けさせていただこうと思います。心よりの感謝をこめて   井上八千代

* あの丈高い かつ簡明に美しい三幅が一つ床に並ぶまはさぞや閑雅にうつくしいことであろう。よいことをした。仲之町で茶の湯生け花の師匠だった叔母も、あの三幅が西之町の「八千代はん」の宅に婿入りしたと知れば満足してくれるだろう。よいことをした。、
2022 8/22

〇 秦恒平さま
ご無沙汰しております。シアターナインスの今野です。
暮れのお忙しい時期かと思いますが、お変わりございませんでしょうか。
先だって白鸚へ頂戴致しましたお軸を
1月公演の歌舞伎座楽屋に掛けましたので
是非先生にご覧戴きたくお写真を添付致します。
白鸚はしばらく舞台を休演しておりましたが
一昨日の12月公演千穐楽に、口上を無事勤めることができました。
休養も充分に取りましたので、来月は充実の舞台をお目にかけられるかと思います。
寒さ厳しい折から、呉々もお身体をお大切に
どうぞよいおとしをお迎え下さい。
来年はどうか明るい話題が増えることを願いつつ。
2022/12/28
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株式会社シアターナインス 今野博子(いまの)
〒106-0047 東京都港区南麻布 3-3-10
TEL:03-3455-7188 / FAX:03-3455-7145
e-mail: kouraiya@dream.com
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* 私の久しく愛し正月を飾ってきた「吉祥松樹 旭日と双鶴」の長軸が、文化勲章のお祝いにさしあげた松本白鸚丈の新年の楽屋に美しく架けて戴けた、なんと嬉しいお目出度いことか。 感謝 感謝 幾久しくと。
* まさしく歳末のめでたい朗報を戴いた。
さきには、京舞の 井上八千代さんへ、「月 雪 花」字に小堀遠州和歌を副えた三本の長軸を貰って戴き、まさしく場を得て嬉しかった。
今回は高麗屋さんの楽屋の床に美々しく架けて戴いた。嬉しい仕儀に定まって、何より歳末の嘉治と成った。
治まるべきトコロへ物の美しく治まるほど目出度く嬉しいことは無い。感謝。
2022 12/28

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