ぜんぶ秦恒平文学の話

スポーツ 2012年

* 昨日は大相撲に行く気であったが。白鵬の日馬富士にあんな負けザマは見たくなかった。
2012 1・20 124

* 千秋楽、横綱白鵬が意地をみせて大関把瑠都の全勝優勝を阻んだ。横綱のためにかろうじて喜んだ。
卓球の福原愛が全日本のシングルで、とうとう初優勝を遂げたのも嬉しかった。気が晴れた。
2012 1ー22 124

* なでしこジャパンの対ブラジル戦、前半一対一まで観て機械の前へきたが、妻のご注進では勝ち味濃厚とか。
2012 4・5 127

* 眼科では、視力と眼圧の検査だけで、今日は視野検査がなく、早めに解放された。築地の鮓店「福音」で佳い肴を切って貰い、酒はおきまりの八海山。鯛、烏賊、初鰹、關鯖などなどが美味く、おしまいに雲丹といくら、そして玉で、限界。酒、少し残した。食べ過ぎてしんどいのは辛い。保谷まで帰らねばならない。新富町の駅構内でパンを買い、幸便の清瀬行ではすこし居眠りもし、保谷でも柑橘類を多めに買ってタクシーで帰宅。
しばらく横になっていた。
留守中に相撲茶屋の竹ちゃんから電話があったと。夜前にメールをもらっていた。

☆ 秦様
お世話になっております。ご連絡が滞っておりまして申し訳ございませんでした。
僕はおかげさまで元気に裁っ着け袴でかけずり回っております。
先生のお身体、奥様のことを思うと、お相撲どころではないのだろうと勝手にお察ししてしまい、ご連絡できずにおりました。
土俵の方はご存知のように横綱が初日につまずいた事もあり、後半にかけて盛り上がりそうな兆しです。座布団も近場所にないくらい舞いそうです。
もしお相撲で少しでも先生のお身体が休まるのであれば、是非お誘いさせていただきたく存じます。
明日、改めてお電話でご連絡させていただければと思います。
江戸前の海苔をご用意してお待ちさせていただければと思いますが、くれぐれもお身体のご負担にならぬよう、ご検討いただければ幸いです。
奥様にもよろしくお伝えしてくださいませ。
国技館よりご回復を祈って  竹蔵

* いい席を見付けて知らせると。
どんな躰の苦痛がくるのか、およそは想像できる。なにしろありとあらゆる副作用が列挙されているのだ。「好きに、し」と京ことばで吐き捨てておいて、楽しめるものなら何でも楽しもうと
2012 5・8 128

* 夏場所は大荒れ気味のようだ、横綱がすでに中日まええに二敗。バルト関も二敗。妙義龍とやらが四大関を倒している。これではだれが賜杯に手を掛けるのか分からない。十七日、つまり十二日めといつもきめた日に、相撲茶屋の竹蔵くん、向正面ながら土俵に近い好席を用意してくれた。その日までの星取はどうなっているのだろう、やはり白鵬を応援したいが。なにしろ大関が六人もいる。
2012 5・13 128

* 薫風の五月。黒いマゴも、心地よげに外に居がち。
夏場所は波瀾万丈のようす。大関から優勝者が出るか。稀勢乃里か。鶴龍か。手指を骨折のまま鶴龍に勝った横綱、このあと連日の大関相手でどんなに奮戦するだろう。明日は、いつものように妻と、桟敷を二人じめで、楽しんでくる。何がなんでも六時には終わっているというのが大相撲のいいところ。この前はいつだったろう、その時は我ながら元気の無さに弱っていた。大声の声援などまるで出来なかった。明日はどうかしらん。クスリが悪く効きませんように。雨降らぬように。
2012 5・16 128

* 一仕事して。腹部の総体がゴワゴワこわばって感じられる。ほかには特別の違和感なし。機械画面へいつも前屈みになっていて、そのため上体をまっすぐ伸ばしにくい。腰の辺でからだが一折れしており宜しくない。
そろそろ、国技館へ出掛ける用意を。

* 有楽町線を飯田橋で乗り換えると、保谷駅から両国駅へかなり短時間で行けると今頃気づいた。これまでは池袋と秋葉原とで二度乗り換えていた。向正面桟敷の前四列目、真中央を竹蔵くん用意してくれていた。幕下の取組が六七番残っている正二時に桟敷に入った。例のようにいろいろ相撲茶屋から食べ物など届いたがわたしはつとめて食を節してむしろ空腹で居るようにした。一箱のサンドイッチで妻と一本のビールを分けたが、それすら余分の気がした。
十両で、キリギリスのように細い人気の外人関取がいる。チェコ・プラハから来ている隆の山。彼の、東京力士常幸龍に対する熱戦、熱戦また熱闘の勝ち相撲が、それは面白かった。熱が入った。
幕内東方の土俵入りで、わたしのまっすぐ目の前に、初日横綱を負かした安美錦が立ったので、何となく目をみて手を振りたくなった。その安美錦、取り直しの二番相撲にめげずに二番とも豊響に勝ったのがえらかった。うまいものだ。
優勝か優勝かと評判の大関三場所め稀勢の里を、みごとに負かした栃煌山の相撲も、威勢よく上手だった。大関はあまりに紅潮して立ち合い前から負けそうだよとわたしに予言させた。優勝への前線は混沌の戦況で、三敗の栃煌山も二敗先頭をゆく稀勢の里を追って可能性がある。
大関同士、勝つよとこれも予言した琴欧州が、うまい相撲で把瑠都を土俵外へ運んだ。
なんといっても横綱白鵬が大関琴奨菊を破った相撲の、美しく強く颯爽として強かったこと。今場所終始わたしは妻より静かに土俵を観ていたのだが、此の横綱勝ち相撲のカッコよさに、思わず「ハクホーウ」と館内へ勝鬨をあげてしまった。
はね出しのあと、まだ国技館の外は明るく、そこで、むかしの小錦関と出逢った。
どこへも寄らず機嫌良く帰ってきた。
2012 5・17 128

* それにしても大相撲で我慢ならないのは「四股名」の野放図にきたない感じなこと。名乗りであるから悪くは言いたくないのだが。相撲協会、野放しに過ぎないか。外人力士のことは言うまい。
日本人大関の琴奨菊がわからない。関脇豪栄道も落ち着かない。小結豊真将(ほうましょう)にも顔をしかめる。若荒雄(わかこうゆう)、旭日松(あさひしょう)、徳真鵬、常幸龍、徳勝龍等々。
豊ノ島、安美錦、隠岐の海、松鳳山、千代の國、土佐豊、武州山、大岩戸、鳰の湖、誉富士、北播磨などが、いい。
懐かしい佳い名は、やはり双葉山、羽黒山、安藝の海、名寄岩、千代の山、玉の海、柏戸、千代の富士、北の湖、三重の海、霧島、武蔵丸、琴錦、小錦などか。
2012 5・17 128

* 二十一日朝七時三十一分からの東京・金環食の人気が高い。妻は黒いメガネを用意して待機している。とくべつ神秘とも思わないので、大騒ぎして胸を高鳴らすことはない。それよりも、太陽自体に起きているらしい異変が何を地球にもたらすか、案じられる。日本の政治はもっともっと案じられる。

* それはされ。今日、横綱は最高優勝への先頭をゆく大関を文字通り圧倒した。負けた稀勢の里が明日明後日にもう一敗でもし、横綱が二日とも勝てば、逆転を賭けた決定戦も夢ではない。但しである、もう大関以上との対戦のない現在三敗の四枚目栃煌山、同じく三敗の七枚目旭天鵬が勝ち進めば、二人の決定戦でどちらかが最高優勝する。今日立派な八百勝を達成した老練の旭天鵬に地力のもたらすいいご褒美が出るのもすばらしいことだが。金環食とちがい、これは鋭意努力の奇跡であり、天文学的とはいえ要するに数学的に必然の歴史的偶然とはひと味異なった期待である。
ま、どっちも楽しみたい。
2012 5・18 128

* 朝青龍には馴染まなかったが、モンゴル出のベテラン、旭天鵬と時天空には親しんできた。その旭天鵬が今場所は八百勝に届いてもう貴乃花を追い越した。昨日は、大関琴欧州を上手投げに裏返し、優勝戦線にみごと勝ち残ったとき、何が起きるか分からないとワクワクした。残年ながら昨日のうちに白鵬大逆転の望みこそ絶えたけれど、千秋楽に三敗同士の大関稀勢の里、栃煌山、旭天鵬の相撲次第では巴の優勝決定戦もありえたのだ。
そして、今日になって。驚いたことに栃煌山と組まれていた大関琴欧州が「休場」だという、栃関は「不戦勝」だという。それはないだろう、人の助けを借りてでも大関は土俵まで来て、相手のためにも土俵に上がってやるべきだろうと、誰もかも情けながり憤慨し、栃煌山のためにも気の毒がった。成り行きでもし旭関も大関も負けたりしたら、相撲をとらないで栃関最高優勝がきまってしまう、それは無いよと唸るしかなかった。
勝てないかもしれないと想った豪栄道に、しかし、まず旭天鵬は接戦して勝ったのだ。そして大関は同じ大関把瑠都に負けてしまったのだ。たいへん!! 平幕二人での優勝決定戦という珍しい記録が一つ生まれてしまった。
ああ、夢にも想わなかった現役最年長の旭天鵬が、さして危なげもなく巧者の栃煌山に、勝ったあ!!優勝した。総立ち。泣いた泣いた泣いた勝ち力士も。満員御礼の国技館も。妻もわたしも。いつまでも拍手を惜しまなかった。
伝えるところバレードには、横綱白鵬が旗手として同乗すると申し出たと。すばらしい。
2012 5・20 128

* 日曜の夕食後は「平清盛」を観て「トンイ」を観て「イ・サン」を観ている。あとの二つは朝鮮の宮廷劇だが、宮殿や庭園や家屋や室礼や衣冠や王宮内の制度などに興味を惹かれている。
今晩は間に、オマーンとのサッカーがあったが、三対零までみれば興は尽きた。日本の選手たち、うまくなったものだ。
2012 6・3 129

* サッカーのオーストラリア戦、アゥエーでの引き分けは良しとするも、最後の本田のフリーキックを時間切れで流されたのは残念だった。
2012 6・12 129

* 朝一番に、山形の「あらき蕎麦」芦野さんより、例年のご厚意、みごとに美しい美味しい桜桃をたくさん贈って戴いた。一年のうち、いろんな頂戴ものの有る中で、此の桜桃忌の朝の「桜桃」は、心嬉しい第一等の名菓。ありがとう存じます。
2012 6・19 129

* ボクシングの井岡、八重樫、組織を異にした二人の世界チャンピオンの頂上対決は凄いほどの企画だが、観たいものでない。三ラウンドほど観ていたが、映画「スターリングラード」を苦い感慨とともに見終えた。
ザイツェフ狙撃手を愛してドイツの情報を探りとっていたロシア少年サーシャが、廃墟の空にたかだかとドイツに、エド・ハリス演ずる狙撃の名手に吊されている場面は堪らない。天才的なロシア狙撃兵ザイツェフ、ジュード・ローの演じた狙撃も見応えがあるが、レイチェルワイズの演じたターニャとの、恋という以上に戦場での性行為のみごとなほどの美しさ、真実さにもつよい感銘を受けた。そして二人の、戦後の再会にも。
で、ボクシング試合の結果も知らないが、知らなくてもいい。
2012 6・20 129

* テレビでは折りからオリンピックだったが、「金メダル確実」の「金メダルしか頭にない」のと聞かされ続けると、挙げてメダルの奴隷のように思われ、選手達が哀れだった。柔道の福見選手などわたしは試合まえから可哀想でならなかったが、銅メダルにも届かなかった。届かせなかったのは、マスコミや多血質の応援者の過剰な間違った応援にあった。百平泳ぎの北島も然り。
勝つの負けるのに拘泥しすぎて負けてしまう。そこへ行くと、一度一度を懸命にれいせいに闘っていたアーチェリー三人で勝ち取った銅メダル、女子重量挙げの三宅選手の銀メダルは光っていた。積み上げた努力が光ったのであり、勝とう勝とうでは躓いてしまう。 わたしは、ぎすぎすしたメダル・オリンピックより何層倍も、吾々の此の世からはしっかり離れた精緻な巧緻な文藝として輝ききった世界的なファンタジーや寓話の方が面白いと、夢中になれた。
2012 7・30 130

* 夜十時半過ぎて、目黒から保谷まで建日子、自転車で退院を喜びに来てくれた。三人で、福原愛の卓球戦を観ていたが、分がわるく、惨敗のおそれも目前に見えていたが、なんと最終セットで逆転勝ちした。すばらしかった。闘い抜く愛ちゃんの顔の美しかったこと。メダルの何のと言う段階でなく、こうして自己の力と集中とを傾注して一つ勝ち上がった、そこにすばらしい花があり、感動が胸の奥で熱く燃えた。しみじみとして「いいものを観た」と建日子は言い残し、深夜にまた目黒へ帰っていった。
こういう勝負にこそ眞の感動がある。なにものでもない、ただ徹底して立ち向かう姿。ほんとうに「いいものを観せてもらった」。 2012 7・30 130

* 引退すら噂されていた水泳の寺川綾の銅メダル。美しくはなやいで喜びを語るのが、お見事であった。また日本勢で初の金メダルまで勝ちぬいた、名も評判も知らなかった女性選手のワイルドとも見えて力強い表情も美しかった。「メダルや賞状には執着がない。勝とうとだけ思って努力してきた」と。虚勢を身に纏わされ続けた選手は、本当に気の毒にも思うし、むりな意識が邪魔をした頓挫があった。惜しいことだ。
2012 7・31 130

* 世界の四位に勝ち昇った卓球女子の石川佳純選手がすばらしかった。
這い上がるように渾身の努力で辿り着いた「銅メダル」各選手をたたえたい。ほんもののドラマがそこに在る。
2012 8・2 131

* 五輪日本のメダル獲得が銅メダルにかなり集中しているのが、多くの快い感動ドラマに直結する。それを喜ぶ。悔し涙も晴れやかな笑顔も変わりない、彼らはまぎれもなく立派に「生きて」いる。 2012 8・3 131

* 五輪の健闘の数々に感動している。男女サッカーの健闘。見事だった。アーチェリイ男女も、女子卓球の健闘も、水泳の男女メドレーのメダルも。バドミントン女子の無欲の銀も。「絶対金」神話を喧伝されていた選手から先に潰れていったのが象徴的だった。日本の柔道惨敗にそれが見えていた。オリンピックに魔物が棲むのだろうか。違うと思う。神話に乗せられたかぶる人の心を魔物が冒してしまうのだ。
2012 8・5 131

* 女子のクレー決勝の精技にもほとほと感心した。人間技か。
それ以上に、女子バドミントン藤・垣ペアの決勝戦のすばらしい激闘。笑顔で無欲の銀メダル。「良かったよ」と称えたい。
2012 8・5 131

* 昨夜観たフェンシングの試合で、劣勢を残り時間実に二秒か一秒で挽回し、チームを勝ちへすすめたわが同窓の太田選手の真摯な粘りを、心から称えるい。結果、団体で、画期的な銀メダル獲得へ繋がった。こういうメダルの価値は豊かに深い。
2012 8・6 131

* なでしこジャパンの対仏蘭西快勝、米国との決勝進出に感嘆。レスリング男子グレコローマンの爽やかな銅メダルにも、男子フェンシング突進の銀メダルにも、室伏選手のハンマー投げ、無念無想のみごとな投擲と銅メダルにも、称賛の思い隠せない。
2012 8・7 131

* 女子レスリングに二人の金メダリストが立派であった。伊調選手は日本初の五輪三連覇という偉業。日本女子、強し。サッカーのワールドカップを制した「なでしこジャパン」の波及効果とも言えない、実力の発揮で、女子は輝いた。走りの福島選手にも快走を期待していたが。リレーで頑張って見せて。
2012 8・9 131

* 午後二時になるが、夜前の女子サッカーや吉田選手の女子レスリング、ボルト選手の200決勝など、結果を知らない。

* 昨日の晩、建日子が来て、「指輪物語」映画三部作の第一部三時間を見せてくれた。どうかなと危ぶんだが、三部ともアカデミー賞の作品賞を取っていると聞き驚いた。あれだけの優れた超大作のファンタジーが映画化出来るのだろうか。その危惧はたちまちに一掃され、感嘆しながら見せてもらった。
大自然も、脅威の自然も、ホビット、エルフ、ドワーフ、人間、魔法つかい、亡霊や怪獣などの描き分けも、大危機や異様世界なども原作の味わいを相当リアルに再現し得ていて信頼できた。
映画の後、女子レスリングなど観て建日子は都心へ車で戻っていった。たぶん今日はわたしのために何だか新しいパソコンを選んで注文していてくれると。

* なでしこジャパン、銀メダル、アメリカに熱戦猛追わずかに及ばず、2対1は堂々の上出来、ほめそやしたい。今回もアメリカに勝てるとは思いにくいほど、アメリカはリベンジに燃えている感じだった。惜敗であり完敗でなかった。なでしこに魅了された。
レスリング女子の吉田選手悠々の優勝五輪三連覇は信頼していた。たいした選手だ。

* それはそれ、柔道の谷亮子参議院議員が、五輪に「わたしが出ていたら」と言ったとか。それは心ない言葉だとイヤになる。敗退した福見選手が気の毒。
2012 8・10 131

* 日本の男子サッカー三位決定戦は腑甲斐ない完敗で、なでしこジャパンの決勝惜敗とくらべても、とても善戦と褒める気がしない。男子ボクシング、レスリング、女子バレーなど、力の限りを振り絞っていた。ただ勝ち負けのゲーム・試合ではない。
2012 8・11 131

* ボクシングが東京五輪以来のそれも重量級で金メダルは、立派。
2012 8・12 131

* 五輪有終の美をボクシング村田と、男子レスリングのもう一人とが金メダルで締めくくってくれた。女子の近代五種というなじみのない試合もおもしろく観た。ロンドン五輪も、終幕。
思いの外に楽しんだし励まされた。幸運と不運とを問わず、選手諸君に感謝。
2012 8・13 131

☆ 東京新聞 今朝の筆洗
本当に強い選手とは、勝利を目指しながら、それ以上のものを求める人たちなのだろう。ロンドン五輪の勝者たちは、メダルに負けぬ輝きを持つ言葉を残した▼「正直言うと、体操をやめるまで、自分の満足する演技はできないと思う」と大会前に話していたのは、内村航平選手、男子個人総合で優勝してのひと言に、すごみを感じた。「一番いい色のメダルを取った今も満足した感じはない。結果ではなく表現したい理想の体操がある」▼ボクシング男子ミドル級の村田諒太選手は、かつての不良少年。金メダルを勝ち取って、高校時代の亡き恩師への思いを口にした。「先生と同じように五輪選手を育てることが、金メダルより世界チャンピオンよりも価値がある」▼男子20キロ競歩に出た中米グアテマラのバロンド選手は、五輪前にテレビを両親に贈った。一家にとって初のテレビ。その画面の中で躍動して二位。長い内戦の傷に苦しむ母国に、史上初のメダルをもたらした▼「メダルを見て子どもたちが銃やナイフを置き、トレーニングシューズを履いてくれたらいい。そうなれば僕は世界一幸せな人間だ」。四年後のリオデジャネイロ五輪が、貧困に苦しむ子どもたちの目標になれば、と思う▼五輪発祥の地・古代ギリシャの歴史家の言葉を、彼らに贈りたい。<勝利は美しい。が、勝利を活かすことはもっと美しい>

* 妻に頼みスキャンし校正して送ってもらった。
ほかにも数々の選手達ののこした五輪の言葉があった。聴いて嬉しく、何度も泣かされた。胸の内を洗ってもらった。数重ねて接したオリンピックでこういう体験はなかった。今回の大病後、涙腺がゆるんでいるか。ま、もともと、光源氏の系統、泣くことを憚らない。
2012 8・14 131

* 今日の五輪メダリストたちの銀座パレードに、歓迎の五十万人がひしめいたのには驚かされた。ま、朗報の一つである、わたし自身はパレードなど好きではないが。あの熱戦の一齣一齣を思い出すと、やはり素直に拍手を送る。
2012 8・20 131

* 倒れてきては物騒千万だが寝床に接するほど近くに、全部で五十ほども抽斗のある棹棚が四列並んでいて、どの抽斗も何がなにやら満杯で、早く整理してくれと呼んでいる。体を起こして気まぐれに抽斗を引いてみると記憶に遠く漏れていた妙なものが出てきて、それなりにおやおやと面白い。今朝はこんなのを見つけた。前句付けの雑俳。なんとなくヒマをみて試みたか、前世紀末らしい。

(オット ドッコイ オット ドッコイ)
野茂ヤハライチローもゐるぞ世紀末

(それは危ない それは危ない)
スクイズをしたが二度までファウルなり

(やめて下され やめて下され)
帰り度い部下をネチネチ誘ふヤツ

(言ってやりたい 言ってやりたい)
いぢめてる児がしらじらといい子ぶる

ほんの息抜きのらくがきだったろう。それでも戸棚に投げ込まれていた。新世紀になって十二年。敬愛していた野茂投手も柔道の田村亮子も現役を退いて久しいが、イチロー君はヤンキース・ベンチの「いじめ」にも似た打順や起用にめげたふうもなく、健闘している。来シーズンはもっとまともに起用してくれるチームへ移籍して欲しいぐらい。
こんなのは前狗付けを適当に作り立てておいて、気ままに付け句を添えるといい、自然と出来てくる。

(なんぢゃこれ なんぢゃこれ)
嘘に嘘 積んで儲けの原発屋

メモ書き最後の「いい子ぶる」一句は、永遠相かも知れぬ。古川柳にこんなのがある。辛辣にやや過ぎているか。

美しひ顔より(   ) が見事也 古川柳

虫食いの漢字一字、入れてみて下さい。
2012 9・9 132

* イラクとのサッカー戦、一対零でリードして前半を終えたところまで観た。前半の前半は押され通しだったが、幸いに一点とれて意気を盛り返していた。しかしイラクは強い。後半、すきを衝かれれば危ない。
2012 9・11 132

* 水泳の二百平泳ぎに、北島の日本記録もロンドン五輪での世界記録をも抜く大記録を、日本の高校生が打ち樹てたのには感嘆した。
2012 9・17 132

* すこし優勝に間の開いた横綱白鵬に賜杯を持たせたい、が、先場所、ことに今場所の大関日馬富士は体躯も豊かに、じつに充実している。横綱は明日の結びと決定戦の二番勝たねば、日馬富士に全勝優勝と横綱昇進を進呈することになるのだ。
しかし日馬富士も今場所の相撲通りなら横綱になって立派な土俵を勤めるだろう。彼は大関昇進した初の場所で負け越しそうな散々ぶりでガッカリさせた前歴がある。あれを覚えているなら、自重もし決意も新たに強い横綱になれると思う。久しい一人横綱の白鵬は、まさしく日の下開山の名横綱として働いてくれた。さらにさらに強くなれる力士の鑑である。
2012 9・22 132

* やはり日馬富士の勢いはほんものだった。横綱との千秋楽結びの一番では、5.5:4.5で日馬富士決死の勇に分があると予想していた。まさにその通りの熱戦を日馬富士は全勝優勝した。これは彼を褒美すべきである。
2012 9・23 132

* 夕食後、寒くて床に就いた。電気炬燵を使っていてなお、うす寒さに目覚めて、十時。日本シリーズでは日ハムが初めて勝った。
やはり機械が眩い。幸いに涙目はやや軽減しているのかも。よく洗いよく点眼している。明後日、また、三度目の眼鏡処方箋のための眼科検眼がある。
三度目の退院からも、八月11回、九月十一回、十月十回、わたしは聖路加への通院、地元眼科、江古田の歯科へ、そして観劇の楽しみなどでも都心等へ「外出」してきた、よろよろの片目。杖つきで。そうするしかない、そうもしたい、のだから苦情は言えない。つらければ つらいと言って立ち向かうだけ。
2012 10・30 133

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