建日子ら来て 雑煮祝う。
近くの天神社へ初詣に行ったが、延々の参拝客で、脇から境内に入り「遙拝」のみして帰る。妻や建日子らは夕近くにもう一度参拝に行った。わたしは失礼した。
* 賀状たくさん戴く。私からは失礼のみ、恐れ入ります。
* 心身とも不調で食欲無く、酒もあまり呑まず呑めず、機械にむかい仕事するか、横になって校正するか、いつしか睡っていたりした。母子らの話題にも加われなかった。
* 夕食後、建日子をいまや秦家の「当主」と頼んで話しあった、が、「して欲しいことが有れば、そう言ってほしい、言われたことはする」と。
その、「して欲しいことが有れば、そう言ってほしい」が、少なくも、わたしには途方もなく重い。「頼まれたことはする」の前に、まず頼まれねばならぬ事を「箇条書きに書き出してほしい」とは、途方に暮れるほどキリがない。「老いの日々」と「書く」しか手がない。
「親には頼まない」が、「子供には頼りたい」とわたしは「自問自答」に書いている。
あの新門前の、育ての恩有る老親たちに、あれこれ「頼まれた」からわたしは四半世紀かけてその老後を見守った・頑張ったのではない。わたしの方で無い知 恵と時間と労力を掛け、恩義有る父も母も叔母もをようやっと京都から東京へひきとり、妻と二人して三人とも最期を見送った。世話は不充分に過ぎていただろ う、しかし、「頼まれたから」そうしたのではない。「当主である子」の自覚と責任とでそうした。菩提寺とも親密に付き合ったし、墓も新しくした。三人に難 儀が有れば、大変な連載や文債をわんさか抱えていても、吹っ飛ぶように京都へ走った。妻も走ったのだ。妻は難儀な舅の病院付き添いで、心臓をいためもし た。
* このさき、難しい晩年を、日一日、わたしたちは迎えねばならない。長寿は、いつしかに身に帯びた罰のようになってきた。
* 幸い、わたしには最期まで「仕事」というクスリがある。服み忘れまい。
しんしんとさびしきときはなにをおもふ
おもひもえざるいのちなりけり 遠
* ひとり残って、今夜は泊まって行くという建日子と、雄町の純米大吟醸とっておきの「室町櫻」を組み合いながら話した。
こうして穏やかにしんみりと酒酌みながら話し合える機会は、もう残り多くはないだろう。最良の酒になって嬉しかった。
2017 1/1 182
* 起床8:30 血圧<135-60(70)> 血糖値84 体重66.3kg
2017 1/2 182
* 疲れているが、昨日から今日へ小説「清水坂」が前進したのが心強い。
しかし、もう、休みたい。
2016 1/2 182
* 起床9:30 血圧<135-60(70)> 血糖値83 体重65.7kg
* 朝日賞、推した人は通らなかったが、授賞式とパーティへの招待が今年も来た。
杖を突いてよろよろと出向く先でなく、欠席の返事をした。
京都府から、府の今年度の文化功労賞授賞式に既受賞者として参加をと招かれている。二月十日頃だ、京都は極寒に凍えている時季だ。ムリだと、思う。京都へ行けば、四條縄手から松原通りを清水坂へ上って丹念に前後左右を見確かめながら登って行きたい。経書堂の角で、三年坂(産寧坂)を左へおりてみたい。また登って、経書堂を左へ清水寺の舞台下から音羽の瀧へ、そして懐かしい清閑寺まで足を伸ばし、渋谷の坂道を馬町まで降って行きたい。
ああ、そのさきも、行きたいところばかりだ、想うだに息苦しくなってくる。
2017 1/3 182
* はやさんがにちは流れ去ろうとしている。よく仕事し、よく読んでいた。ま、自然とものを口にもしていたが酒はむしろ控えていた。
2017 1/3 182
* 起床9:30 血圧<135-60(70)> 血糖値89 体重65.5kg
2017 1/4 182
* どうも体調宜しくない、この四年半ほど腹痛はなかったのに、なんとなくこの半年ほど腹中部に違和感を覚えているときが、ある。
2017 1/4 182
* 会いたいと言ってきてくれる年賀状が幾つもあり、家へも尋ねたいとの声もある。有り難いが、残年ながらいまわたしに、わたしたちに来客を迎える体力は 無いので、それはご勘弁下さい。余力・余命はあげて仕事のために用いたいのです。家の外で出会うというのも、あまり簡単ではない。体調との相談でいつ、ど こで、何時にという約束が簡単にはできないのです。
せいぜいメールを使って下さい。近況等はこの「私語の刻」で察して下さい。
2017 1/4 182
* 起床8:30 血圧<135-60(70)> 血糖値94 体重65.7kg
* 年賀状を去年よりも多く戴いていることに恐縮している。仕事を介して触れあいが持続しているということか。
新聞を見ても便りにふれても、日々に訃報が逼ってくる。「生まれた」朗報に胸を熱くしつつ、その何倍もの「死なれた」重みに堪えねばならない。訃報や病報に接するつど、わたしたちはより確実に生きててあげたいと思う。「確実に」の三字に踏ん張る気魄をこめていたい。
2017 1/5 182
* ようやっと大づかみ出来たが、仕上げにはもう一手間も二手間も欲しい。確認に必要なものからしてさがさねばならない。もう眼はまったく見えなくて、いま緑内障の目薬をさし、文字が見えてきた。
点眼するとしばらくそのまま瞑目していなくては。そんな時に数をただ数えててもつまらなくて、いつも神武から桓武まで五十代を一気に唱える。百が必要なら 百代後小松天皇まで数える。せいぜい一分から三分までで達するが、ま、その程度にしている。百二十五代の平成の天皇さんまで唱えるとほぼ四分ほどかかる。 神武、桓武、明治、昭和、平成などはいいが、後白河、後醍醐、後小松、後花園、後土御門、後柏原、後桃園などは舌が縺れそうに時間がかかる。
いま、源氏物語「五十四帖」を覚えている。四十八帖ほどは思い出せるが、順でなくてはいけない。順に、桐壺、掃木、空蝉、夕顔、若紫と出てくると、自然物語そのものが甦ってきて、おおいに物語の風情まで思い出せて楽しめる。
よほど「数える」というのが好きで、子供の時にわりあい孤独に遊んでいたと謂うことだろう。そういえば、「畳の目」一つに、じーっと見入ってものを想っていたりしたなあ。
* 雄町の純米大吟醸「白菊」一升瓶をお年玉かのように今日戴いた。
いまは朝日の伊藤壮さんに戴いた「越乃寒梅」を、一升瓶からジカにぐい飲みに戴いている。
50度純熟のウイスキー「富士山麓」も、各種の赤ワインも、ときどきは缶ビールも。
熱量はまあ摂っているわけだが、片端に、飲に偏った食生活ではあります。けど、腸閉塞は叶わないし。ま、ゆっくり、よく噛めばいいのですが。
* テレビに張り付くようにして(でないと、見えないので)「NCIS」を楽しんだ。新シリーズが出来たらしい。短時間のテレビドラマ技術としては最高級にうまい。楽しみ。
* もう機械仕事は、ムリ。階下へ降りる。
2017 1/5 182
* 起床8:30 血圧<135-60(70)> 血糖値80 体重65.4kg
* 選集第二十一巻の本紙全編を入稿した。
* 心身不快。手洗いで便座につくと直ぐ、太息とともに両肘を膝にがっくり頭が下へ落ちる。胃全摘手術を受けて退院した五年前がずうっとそうだった。一年 の抗癌剤を終えてやがてそれが無くなり普通に頭はあげていた。三、四ヶ月前から気が付くと当然のようにがっくり頭を落としている。疲労が心身に溜まってい るらしい、少なくも躯に。しかし気分の不快も濃い暗い霧のように新聞からもテレビからも振り続ける。安倍、トランプ、韓国、ロシア、そしてテロとネット犯 罪。
2017 1/6 182
* 起床9:00 血圧<135-60(70)> 血糖値93 体重66.3kg
* 七草の粥を祝う。どの雑煮よりも、好き。
2017 1/7 182
宮澤賢治・詩 徳力富吉郎・画
高齢者と呼ぶのを七十五歳からと政治は繰り上げて、さて、すこしでも老境がラクになるのですか。
* ご平安を心より祈りますとしか励ましてあげられない。せめて自分たち、心して怪我無く頑張らねば。
* じいっと目をとじていた、睡ってもいた。機械画面で字が読めないのだから、睡っていた方が良いのだ、目ざめると少し視野が回復している。
旧套來、まったくよく励んだ、それだけ眼を使いに使いすぎてきた。いま、すこし仕事の上ではさきが明るくひらけている。新たに創り出すしごとの方へ向 かって行ける。腹具合ね明るくてかるいと本当に助かるのだが。たった、ただいま、気が付くと腹具合に違和が無い。いつもこうありたいが、そうはいかない。 無事に凌いで行きたい。
十時半。今夜はもう機械から離れる。
2017 1/7 182
* 起床8:30 血圧<135-60(70)> 血糖値80 体重67.3kg
2017 1/8 182
* ノーベル賞正餐会に用いられたという日本酒「福壽」で八一の誕生日を迎え、「三千盛」「越乃寒梅」を飲み干して、また「福壽」で元日を祝い、「雄町の櫻室 町」を、また「越乃寒梅」を、そして今は「雄町の白菊」と、いずれも純米大吟醸酒を楽しんでいる。いずれおとらず秘術が尽くされ、じつに美味い。胃袋がな いので腸へ直通の酔いは早くて濃くて深く、いつ知れず寝入ってしまい、目ざめると視野が明るく新たまっている。 2017 1/8 182
* 起床10:30 血圧<135-60(70)> 血糖値81 体重67.4kg
* 寒い。温風が来るはずの左肩から腕へ、太腿へ、寒いと感じている。妙な夢をしきりに見ながらもよく睡れ、寝過ごしたが、まだ睡気がのこっている。手が冷たい。
* 少しく、茫然としている。
2017 1/9 182
* 九時半、まだこの時間でもう眼が見えない。機械からははなれるしか無い。
テレビドラマで、秀作「刑事フォイル」の新シリーズが始まった。大きめのテレビ画面ににじり寄ってみないと登場者の顔がよく見えない。しかし朝めざめて すぐタブロスという緑内障薬を点眼直後の視野の清明でかつ視力十二分の嬉しさは譬えようがない。そして、ア、アアという間に見えはガクンと曇ってしまう。 やれやれ。
2017 1/9 182
* 起床五時半。不快の極みというほどの夢見に、床を出てきた。どうにもならなかった。死のうとしていた。
こんなときは仕事をするしかない。
* 冷ゆる手に頬をはさみて目をとぢて
はるかの闇を翔びゆくわれぞ
2017 1/10 182
* 湯飲み酒がまわってきた。午後は、寝て過ごすか。「清水坂」を夢のように飛翔してまわりたい。
* 左頸筋が、硬まってきた。すこし横になってこよう。
* 三時間ほど寝ていた。夢、見なくてよかった。
2017 1/10 182
* 頸が痛く強張ってきた。それでも、小説は生き物のように柔らかに動いて、やや複雑な十字路へ身をすすめてきた。どっちへどうとりあえず展開するか、また思案のしどころへ来た。むずかしいのだ「清水坂」という世界は。
* 気が付くとシャツの袖をたくし上げている。それでいてかぜ気味にぐずついている。熱があるのか。
源氏物語の「真木柱」は髭黒大将のうろうろが面白い。どうして彼はめざす玉鬘を手に入れてしまったのか、わたしも、妙に「やられた」なという気がしてい る。帝、光源氏、内大臣(玉鬘の父)、兵部卿宮、そして式部卿宮(髭黒正室の父宮、紫上の父宮)らの思惑がからみあい、願わぬ髭黒の妻になってしまった玉 鬘は、帝にも源氏にも螢兵部卿宮にもいまさらに心惹かれて心行かぬ日々を迎える。源氏と帝は実は父子の間柄にあり、内大臣と髭黒大将とは手を組んで行きた い藤原氏である。ここにも、源・藤意趣の競合がみえているのだ。源氏物語は、光源氏と頭中将(内大臣)との久しい親愛と葛藤の歴史を子孫の代まで執拗に 追って行く物語でもある。
* 寒気がしてくしゃみも出る。明後日の初春歌舞伎座に障ってはいけない。
2017 1/10 182
* 起床9:00 血圧<135-60(70)> 血糖値85 体重66.1kg
2017 1/11 182
* 明日は初春の歌舞伎座へ。幸四郎と玉三郎の「井伊大老」は、あの高麗屋八代目が六代目歌右衛門との生涯最後の舞台だった、しんしんと清寂そのものが大舞台に降り積もる井伊最期の妻との別れであった。忘れられない。
何度も、高麗屋の夫人にあの舞台の感動を告げてきた、当代九代目でも観たいと願っていた。玉三郎とは願ってもない顔合わせ、心底楽しみにしている。玉三郎は「傾城」をも踊ってくれる。そして大切りに染五郎、左団次で「松浦の太鼓」が目出度い。
特筆は、亡き所作の名手五世中村富十郎が老いて儲けた一子鷹之資が一人舞台で父七回忌追善の「越後獅子」を踊る。大成して欲しいと気に掛けつづけてきた。頑張れよ。
風邪をこじらせないよう温かにして行きたい。
2017 1/11 182
* 起床9:00 血圧<135-60(70)> 血糖値90 体重66.4kg
2017 1/12 182
* 起床8:00 血圧<135-60(70)> 血糖値83 体重65.6kg
2017 1/13 182
* 起床9:45 血圧<135-60(70)> 血糖値86 体重65.7kg
* おいの身におひ安かれとくだされし
かろき鞄を背負ひて立てり
背負う鞄は戦時の国民学校へ入学の大昔から、ほぼ記憶にない。
これなら、とにかくももう片手が使える。ACE マウリッィオ ゾルタサーリとか書いてあるが何も分からないが、感謝感謝。ただ都内へ出てみるには大層かしらん。先ずは富士山でも見にゆこうか。
☆ せめて片手が空いている方が、いくらか危険回避できますから 使ってみてください。杖、と聞き気になっていましたので。
雪、今夜は積もるでしょう。 尾張の鳶
* 「選集」⑲の本紙のみ責了に。函表紙などは未了。
宅急便へ持ち込むのに、間違えて自転車で坂道を走り降り、郵便局へ。しまったとまた坂道をのぼったのがキツかった。もう電動でないと坂の多い多摩を自転車では走れなくなった。
2017 1/14 182
* 仕事のはかどる一日一日が続いてくれて有り難い。
それにしても、こうもよろけやすいのは何故か。自転車には脚力のほかは運転に何の不安も師匠もないが、杖無しで家の中を上へ下へ上がり降りの間にも、とかく、よろっとする。老いらくのよろめきか、シャレにもならん。
十一時、もう階下へ。沙翁劇「リチャード二世」を読み終えたい。「椿説弓張月」は岩波文庫の組も刷りもお粗末で読みづらい。そして例の馬琴のペダンチッ クが度を過ぎに過ぎると、堪らなく渋滞する。せっかく興趣に富んで面白い話材をなんでこうするかと腹が立つ、が、しこしこと読んでいる。惹かれるに足る何 かがある。
そこへ行くと源氏物語は、おみごと。「梅枝」の巻を愉しんでいる。もうすぐ「藤の裏葉」へ来ると、夕霧・雲居の雁の幼な恋が実を結ぶ。夕霧くんは好き、 薫の父親になる柏木君は好きでない。今度の読みでしかと気づいたが、柏木にむかい語り手達はことあるつどまゆを顰めていたのがよく読み取れた。かわいそう な夭折にも相応の不徳は纏わり付いていたのだ。それとなくしかも確かによく書かれてあって、感嘆する。
2017 1/14 182
* 起床8:30 血圧<135-60(70)> 血糖値74 体重65.7kg
2017 1/15 182
* 湯に入れと言われている。湯につかるとラクになるという以上にたいがい疲れる。長湯して読んだりするからだが、読むのはイヤでない。湯気と温度とに負 けない、負けてもいい本を持ち込む。わたしを読んで下さいと出を待っている本があまりに多すぎる。二階窓際わ靖子ロードの文庫用書架三つに親書も含め何百 冊もあり、もう処分しようと手にとって数十に一冊も捨てられはしない。機会さえうればまた読みたいのだ、歴史も古典も宗教も科学も世界も、事典さえも。処 分なんて! と、ワケ分からず喚きたくなる。高校生の秀才君で、誰でもいい、貰ってくれないかなあ。
2017 1/15 182
* 起床10:15 血圧<135-60(70)> 血糖値78 体重66.0kg
2017 1/16 182
* 夢中で仕事していて、ふと気づくと、見えない目にどうやら日付が替わったそうな。 2017 1/16 182
* 起床9:00 血圧<135-60(70)> 血糖値84 体重66.4kg
2017 1/17 182
* 昨夜も不可思議な夢を見た、が、幸いにも終始黒いマゴが、ときにノコやネコがいっしょに前になり後ろになりついてくれていた。遍歴の先は、妙に巨大で しかもガランと寒い中に異様な人たちが落とし物のようにばらばらにしゃがんだり起きたりしている建物だった。上階も地下もあって、精神病院とも見えず、と きどき顔見知りの男や女もいたが声は掛けなかった。なかには朗々と歌唱う、女優の多岐川ゆみに似た女もいた。猫たちがいっしょで心強くも嬉しくもあった。 危険も異様体験もなかったけれどぐったり疲れる夢だった。八時だ起きなくてはと思いつつもう一時間似た夢の中を歩いていた。
2017 1/17 182
* 起床8:00 血圧<135-60(70)> 血糖値73 体重66.2kg
2017 1/18 182
手の掛かる編輯作業で目疲れ最悪。凸版へ連絡のメールを送って、もう十一時半。視野は見えずにギラギラと眩しい。今日はお終い。
2017 1/18 182
* 起床9:00 血圧<135-60(70)> 血糖値85 体重66.4kg
2017 1/19 182
* 今日は体調すぐれず、ひっきりなしにゲップが出て、からだが重い。便通がない。閉塞はしていないと思うのだが、疲労感にのしかかられている。食欲もな い。相撲の中入りの頃あまりの眠さに寝にゆきぐっすり寝入って白鵬結びの一番ころに目ざめたが、夕食もてんで食べられぬママ重い気分で二階へ来た。十月に 入院したときは、最後には吐いた。今日は吐きたいとは感じていない。
湯は断ってきたが、ゆっくり湯に漬かってやすむのがいいかな。明日は今年初の歯医者を約束している。
2017 /19 182
* 起床9:00 血圧<135-60(70)> 血糖値91 体重65.3kg
* 仕事していても、とろとろと寝入っていたりする。
* 大寒に恥じない寒さの中、歯科へ。どこへも寄らず、帰る。
* 胃袋が無くなってたら、食べ物は「四時間」噛まないと胃のかわりにならないとある外科医が医師仲間の研究会で質問に答えていたと聴かされた。なにをか言わんや。なにもかも汁にして呑まねば。こういうことは、医者は患者には云わない、しかし腸閉塞の起きやすいことは医者はよくよく知っているのだ。消化の悪い物は、堅い固形の物は、食べられない。そしてもうひたすら「噛め」と。噛むために生きているようなものか。
* からだも目も疲れた。今日も、外出の他は仕事をしていた。
トランプの就任演説を聴けるか、どうか。
2017 1/20 182
* 起床9:15 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重65.9kg
2017 1/21 182
* 三十日からの「湖の本133」発送の用意を九割がた終えた。夜前よく寝た。朝のうちの作業でよほど疲れた。もう少しガンバッテ終え得たら終えたいが、 ひどく睡い。休憩かたがた好きなバート・ランカスターとオードリー・ヘプバーンの「許されざる者」をなかばウトウトしながら見終えたが、睡い。
同じ疲労でも、作業のハカより、書いて読んで思案して、仕事の進む方が、あたりまえだ、心ゆく。しかし、出版を含むわたしの仕事には作業に類する雑用はおろそかにならない、どう疲れても。
* ちょっと、やすんでくる。
* 十一時半 もうやすむ。
2017 1/21 182
* 起床11:00 血圧<135-60(70)> 血糖値87 体重66.4kg
* 尿が出て便も出て食えて目が見えて
読み書きできて睡れればよし 疲れたくなし
* およそ 余の実事は「なんじゃい」と吐き捨て、思いは「絵空事の世」にある。 2017 1/22 182
* 選集第十八巻 の送り出し挨拶を印刷している。霧のようにかぶさってくる疲労を勘定に入れ、はやめはやめに用意に掛かって、一週間で済ませていたもの も二週間掛けてゆっくり捗らせるように仕様の向きを変えている。京ことばでいう「気しんど」に落ちこむと余計な不安を抱え込む。
* 「尾張の鳶」さんの送ってくれた背負い鞄に、これまでの大きいショルダーの中味を全部移し、背負ってみた。おう。軽くてラク。背負ったまま倚子に腰掛 けると、とかく前かがみになっていたのが、必然背筋シャンと立って、上体が快適。これなら行住坐臥、仕事しながらも背負って過ごそうと決めた。寒い季節は ことに背中温かで快しと、あらためて感謝。緊急時にもこのまま最低必要な筆記具や薬・目薬など持って飛び出せる。
2017 1/22 182
* 起床8:20 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重66.8kg
2017 1/23 182
* 起床8:45 血圧<135-60(70)> 血糖値89 体重65.9kg
2017 1/24 182
* 起床9:00 血圧<135-60(70)> 血糖値86 体重66.2kg
2017 1/25 182
* 尿が出て便出て食えて目が見えて
読み書きできて睡れればよし 疲れたくなし
この中でいちばん困じているのは「食う」「食える」で、妻に気の毒なほどなにもかも食い気を誘ってくれない。まどもに食事しないので、仕事から休みに階 下へ降りるとラチもない駄菓子を食い強い酒を飲んで、居眠りし、また仕事に二階へ上がる。目は疲れていて、容易にキーが見えない。いちぱんシャンとしてい るのは寝床に脚を入れたまま坐った姿勢で照明あかるく校正したり読書したりの時。機械の反射光が目を疲れさせるのだ。
* 生活のリズムを建て直さないと、鬱陶しさが基調化してくる。黒いマゴが現実生活から退場した。彼ゆえに家は留守に出来ないだから出来ないと思っていた旅を、妻と一緒に考えて好い時機になっているのではないか。戴いた背負い鞄で、二人とも着のみ着のままの短い旅なら出来るのではないのか、京都でなくても。
2017 1/25 182
* 起床9:00 血圧<135-60(70)> 血糖値100 体重66.3kg
* 『ユニオ・ミスティカ 或る寓話』にかかり切っていた、が、終始めがねの視力が機械面に組み合わず、気を殺がれて苦労も疲労もおびただしい。眼を閉じ、闇に埋もれ沈んでいるのが、らく。
機械を離れていい照明で読書している方が、らく。
2017 1/26 182
* 終夜眠れず 起床8:00 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重66.2kg
* 夜前就寝前に珈琲を二杯喫んだ上に。床についてから「藤の裏葉」巻、「ヘンリー四世」、「蘆刈」論、「弓張月」、「小笠原物語」、「和泉式部日記」を二冊 読み、新しい小説の構図を考え考えていてまったく眠れなくなり、眠れずじまいに朝になった。朝一番に「蘆刈」論を読み終えた。
2017 1/27 182
* 眠れていなくて、ひとしお疲労したが、寝込んでもしまわなくていろんな仕事をしては、機械の前で居眠りもしていた。
幸い温かな土曜日だった、どこへも一歩も出なかったけれど。
2017 1/27 182
* 起床8:50 血圧<135-60(70)> 血糖値82 体重66.6kg
* ま、よく寝たと思う。本を閉じ電気を消したのが一時半だったと思う。わけのわからない作家の集いのような夢で不機嫌な井上靖さんを見た。底のあさい早瀬のように流れて行く夢のようであった。
2017 1/28 182
* ハテ、わたしは。情けないが旋頭歌のように繰りかえし謂うなら、
尿が出て便出て食えて目が見えて
読み書きできて睡れればよし 疲れたくなし
根本は「食えて」にある。美味しく、噎せず、詰まらせずに食べたい。見た目の色かたちにも嫌悪感ヵ゛先だってしまい、できれば食べまいとする。しかも、 ラチもなく間食し、繰りかえし呑んで居眠りしている。いわば「食鬱」症か。明後日からの湖の本133発送、二月十五日からの選集18発送を終えた下旬ご ろ、鞄を背負い杖をついて、思い切って短い旅でも出来るといいが
* 湯に漬かって、「春琴抄」論を読み。また古典の物語を読んだ。新しく書いてみたい小説の大きな想を、ほぼ掴み得た気がしている。あることを想ってい た、が、乗れなかった。べつのことを想いついた。これは行けるぞと感じた。たくさんたくさん時間と体力が欲しいが、欲深くなってはいけない。
2017 1/28 182
* 起床9:00 血圧<135-60(70)> 血糖値89 体重65.9kg
2017 1/29 182
* とにかくも眼がよく見えなくて、やり切れない。十時半だが、もう機械からは離れる。
明日朝から、「湖の本133」発送にかかる。
2017 1/29 182
* 起床8:30 血圧<135-60(70)> 血糖値93 体重66.2kg
* 朝九時半、「湖の本133」出来てくる。玄関へ積み重ねてすぐ、発送荷造りにとりかかり、夕飯後なお作業継続。妻、疲労。わたしも、疲労。はやく片づけたい欲求を抑え、ゆっくり休み休みの仕事にしないと共倒れしかねない。
* だが今晩は、機械で目を灼くより、テレビを聞きながら妻は休ませ、わたし一人の発送作業を捗らせよう。
やはり手つだってもらい、かなりのところまで今日の分を取り纏められた。明日明後日と頑張りたい。
2017 1/30 182
* 起床9:30 血圧<135-60(70)> 血糖値84 体重66.2kg
2017 1/31 182
* 作業終了へ、見通し立つ。妻に助けられた。うまくすれば二月十五日からの「選集⑱」送り出しまで、二週間ちかく「書く」仕事に打ち込める。校正ゲラを 抱えて小さな旅が出来るかも。久しく「乗る」ために東京駅へ、行ってない。以前は妻と、ふっと駅頭で思い立ち、仙台へ、水戸へ、足利へ、箱根へ、もっと大 昔には成田、佐原から霞ヶ浦をわたって潮来へまでも一泊又は日帰りの旅をしたものだが。
* 仕事したいが、目が霞んでいて。やれやれ。
2017 1/31 182
* 起床9:30 血圧<135-60(70)> 血糖値89 体重66.0kg
2017 2/1 183
* 起床8:45 血圧<135-60(70)> 血糖値91 体重65.4kg
2017 2/2 183
* 朝から、もう三時近くまで、たぶん百五十枚まででおさまりそうな小説(仕掛かりの長編とは別作
)に取っ掛かっていて、面白くなってきた。いちばん機嫌のいい折りである。しかし何より眼精疲労は甚だしく目薬をつかい、濡れた綿をつかい、眼鏡をうるさいほど取り換えて、とどのつまり機械の前でお手上げになり休息する。
休息にはそのへんの本へ無差別に手を出すのだから、やはり目はつかってしまう。音楽がいちばんいいのだが。
で、さっきから寺に触れ手に取っていたのが、金版捺し表紙の字も絵もくすんだ漢詩集で。なになに、越山芳川伯爵題詩 清国公使胡大臣題詩の志士必誦 袖珍版「宋 謝畳山 輯」の『千家詩選』で、「日本 四宮憲章 訓」とある。秦の祖父旧蔵の遺品だ。
ちなみに奥付をみると明治四十一年十二月二十五日に東京神田の光風楼書房から初版出版、翌年三月十八日には訂正四版が出て、「定価金五拾銭」百五十頁にやや満たない。
こういう本は、表紙をめくってから目次へ辿り着くまでに盛んに偉い人たちの題詩や揮毫や緒言が十人近く居並ぶ。清国との友好だか交流だか親善の高まって いた時期とみえ、日清一如のていを成していて、しかし、ありがたいことに宋の謝畳山輯に背かず精選編輯された詩はすべて漢詩、和製漢詩は含んでいない。 「志士必誦」の志士に拘泥しなくていいようだ。
巻頭に宋の程明堂「春日偶成」と風雅の作である。
雲淡風軽近午天 雲淡ク風軽シ近午ノ天
傍花随柳過前川 花ニ傍ヒ柳ニ過随ヒ前川ヲ過グ
時人不識予心楽 時人ハ識ラズ予ガ心ノ楽シキヲ
將謂倫閑学少年 マサニ謂ハントス 閑をヌスミテ少年ヲマネブト
一読、なかなか、単なる風雅ではない。むしろ「程子オモヘラク」時節時好を楽しみ思っているものを、時人の蒙、知己ならざるを慨嘆するの気味が濃い。「閑学少年」とは、少年の遊蕩に堕していると。「明堂先生」は宋河南の人である。朱子とともに程朱とならび称された。
* よろしき休憩であったけれど、目は休まらなかった。
秦の祖父鶴吉の遺してくれたこうした漢籍の類が、はるかに立派な大冊までいまもたくさん家に在る。とりわけて『韓非子』を読んで、盗用のマキァベリズムを識ってみたいのだが、時間がねえ。
* 乗りかかった舟かのように、根をつめていた。二枚腰に粘ってでも土俵を割らずに仕遂げたい。
* 十二時が目の前に。よく頑張った、よく思案もした。さ、機械からは離れる。 2017 2/2 183
* 起床10:30 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重65.0kg
2017 2/3 183
* 八時に目ざめていながら、もっと寝ていたいと思う内、気が付くと十時半。長閑にありがたいこと、眠れるかぎりはむしろ眠って休みたい。トランプの、安倍の、石原の、豊洲の、振り込め詐欺のとロクなことのない憂き世だ。
さ、今日も昨日についで他界の夢を奇妙に追って行こう。午をとうに過ぎている、気の乗らない「食」事ではあるが、食べないと弱りもしよう。
2017 2/3 183
* 起床9:20 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重65.6kg
2017 2/4 183
* 起床8:45 血圧<135-60(70)> 血糖値81 体重65.4kg
2017 2/5 183
* 十一時半。 今日もかなり頑張ったよ。
* また床の上で何冊も本をひろげる。そして熟睡したい。
2017 2/5 183
* 起床8:45 血圧<135-60(70)> 血糖値81 体重65.4kg
2017 2/6 183
* 九時半。もうムリが利かない。きのう戴いたいい酒の、瓶にもう少し残ったのを湑みに、階下へ降りたようかと誘惑されてもいる。
昨夜も寝床でたくさん本を読み灯を消したのは、二時半だった。目も胸も躯も休ませないとと思う。起きて何かしている時だけが生きている時間ではない。分かっている。やれやれと首も振っている。
みの数日打ちこんでいる小説、よほど奇妙に怖くなってきた。こういうモノは他に書いたことなかったと思う。夢に見そうだ。
2017 2/6 183
* 起床9:00 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重65.3kg
* 風鳴って強く、冷え込む。
2017 2/7 183
* 十時、浴室でしっかり校正し、源氏も和泉式部も為朝も読んできた。
* 京都では巻き寿司と謂った。こっちでは太巻きと謂う。昨日その出前を頼み、今朝にも午にも少しずつ食べた。「和可菜寿司」はよく私のためにと鯛の兜煮 (荒煮)を呉れるのを妻にほぐして貰って酒の肴に。それでいて、浴後の体重は65.1kgと、ひょっとして明日朝は、五年前胃全摘後の最低体重になるかも 知れない。わたしとしては、更にもう少し減らしたいと願っているが。
2017 2/7 183.
* 起床8:30 血圧<135-60(70)> 血糖値103 体重65.0kg
2017 2/8 183
* 視野にじんで目の具合ひとしお宜しくなく、七つもあるどの眼鏡も使えず、裸眼でいる。
* なぜかズシーンと沈んだように気も身も重い。組み合っている作が陽気でないからかも。十時半に成らないが、もう寝床へ行って本を読もう。校正をしよ う。トランプもそのワンワンもいやなら、豊洲も築地も石原もドンとやらも堪らない。堪らない。だれかわたしを空飛ぶ絨毯へ攫ってくれないかな。
* 黒いマゴに逢いたい。
2017 2/8 183
* 起床10:15 血圧<135-60(70)> 血糖値85 体重65.2kg
* このごろ老夫婦の楽しみは黒いマゴたちの家から空へのびた隠蓑の茂りへつがいらしい鵯(と想っているのだが)たちや小鳥(目白か)が来ては、書庫前のテラスへ置いた輪切りの蜜柑をさかんに食べてくれるのを窓越しに観ていること。
2017 2/9 183
* 十時半、もう限界。字も、強い照明を当てながらただもう手探りでキイを探している。もうダメ。しかし今日はよく頑張った。諦めずに、粘った。初稿でこ そあれ、初稿からも書き殴りはしない。句読点の位置にも繰りかえし神経をつかい、目で読み、口でも読み、目を閉じてでさえ読む。日記とはちがうが、日記で も深切にと気は遣っている。
* びっしりと水に浸かったほどに疲れた。こんなでは、病院ででもないと、着替えて家の外へなど半歩も出られない。着替えるのがむかしから面倒な人である、わたしは。
疲れました。階下へ行ってや すみます。朝寝も、出来るとき休まるときは、強いて起き急がない。けど、寝る前の読書はムリにも読みたい。読まねば惜しい本があまりに家中に満ちてあるの だ、角川の「新修日本絵巻物全集」の充実した月報32巻を束ねて持ち出した。「日本の中世風景」を四人の研究者が衆議検討している中公新書上下巻にもまた 惹かれて持ち出した。読めるうちだ。読めるうちだ。読めるうちだ。
2017 2/9 183
* 起床8:00 血圧<135-60(70)> 血糖値85 体重65.2kg
* まるで眠れなかった。夜中二度も灯りをつけ、校正し、「為朝」を読んだ。灯を消すと書きかけの小説のことが目の奥で渦巻いた。
* ほとんど眠れぬママ、早めに床を起ち、庭の隠れ蓑へきて餌をつつく鵯たちを見て楽しんだ。ふっくらと大きく頭の白い「ヒーヨ」とほっそり黒くて嘴のな がい「ヒーヨ」が交互に来、一緒に来、ふたりで木の葉にまぎれて小さな頸や翅を動かしている。「命」の美しさ愛おしさを見て楽しんでいる。黒いマゴたちも 楽しんでいるだろう。
2017 2/10 183
* 四時過ぎ、急に、たそがれてきた。山陰など猛烈な寒さと雪らしく、都内でも雪はちらついた。わたしは疲れて、睡い。
2017 2/10 183
* 九時。疲れた。昨夜「小説」に搗き混ぜられあまりに眠れず閉口した。からだはへとへとに懈いが創作欲はダレていない。が、もう休まないと。
* 一日の楽しみは、階下へおりるつど庭の樹へきている鵯や目白を観ていること。鵯の大きいめのは、ふっくらとまるみを帯び、ああ抱いてみたいなあと想わ せてくれる。「命」生き生きとした美しさに鳥たち、溢れている。好物は、目下は蜜柑です。目白も大きな鵯の隙をついて二羽三羽も降りてきて蜜柑をつついて いるもと、大きな鵯が追い立てに来る。鵯、すこしは馴れて来てくれたかなあ。
2017 2/10 183
* 起床8:45 血圧<135-60(70)> 血糖値90 体重66.2kg
2017 2/11 183
* 昨夜はよく眠っていた、ただしずうっと頑固に「一つ」と思える同じような夢ばかり見ていた。夢は疲れる、みな妄想なんだ。
* 重苦しい世界を顔ごと漬けるように覗き続けて京も一日過ぎてゆく。まだ十時だがへとへとに疲れた。少し酒をふくんで、テレビなど見ないで寝床へ行き、 「若菜上」巻、「和泉式部」の歌物語、武士と后妃との近親愛や武士と公卿との同性愛などを臆せず書き込んで行く「石清水物語」や、摩訶不思議に霊魂と人身 とが被さり合うて生きて働く「為朝・白縫王女」の講釈など、それに加え三人の妻という橋を生涯渡っていった「谷崎潤一郎」の物語を照明をあかくして読んで から寝よう。とても軽やかに明るい夢は見られそうにないが。
2017 2/11 183
* 起床10:45 血圧<135-60(70)> 血糖値99 体重66.0kg
2017 2/12 183
* 起床10:45 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重65.6kg
2017 2/13 183
* 暖房していないと冷房しているように冷え込む。元日から玄関に据えていた盛花の大きな壺から花を抜き、沈めてあった山や剣山を取りだそうと手を澄み切った水に沈めて、あまりに痛い冷たさに降参した。噛みつかれたように痛かった。
2017 2/13 183
* あーあ、時間つぶししてしまい、十一時半になってしまった。今日も、猫たちの家の上やそばへへとんできて餌を食べている鵯、目白を何度も何度も見て楽しんでいた。
2017 2/13 183
* 起床8:15 血圧<135-60(70)> 血糖値91 体重66.2kg
* 七時頃起きたらもう晴れた朝空を背景に隠れ蓑へ鵯二羽が来ていた。もう少しと床に戻っていたが、八時過ぎ、猫の声にとび起きた。書庫上の庭へ、かつて見知 らない白に黒少しの太った猫が来ていた。黒いマゴを見送っていらい久しくよその猫の姿も声も、見も聞きもしなかったのに、一両日のうちに二三度気配を感じ ていた。黒いマゴたちとちがい、デブっとしていた。鳥たちの寄るのを意識して姿をみせたらしく、匂いヅケなどしているのかも。
それでも、また鵯も目白もかるがると隠れ蓑や南天の中を行き来して馴染んでいた。せっかくの楽しみ慰め、こと無く在りたい。
2017 2/14 183
* ワインをのむと、とろりんと酔いが早く睡くなる。そんなとき校正ゲラをもって床へ行き、坐ったまま校正し始めるとすぐシャンとする。『昭和初年の谷崎 潤一郎』のおもしろいこと、こけを通読しているとこの時期の「痴人の愛」「蓼喰ふ虫」「乱菊物語」「吉野葛」「盲目物語」「武州公秘話」「蘆刈」「春琴 抄」から「猫と庄造と二人のをんな」のまで全部を同時に読んでいるくらいに面白い。
* しばらく少し気楽にさせて貰えたが、もう明日からはそうは行かぬ。仕事の大波が次々に寄せてくる。むろん搦め手の雑用があるが、雑用こそが促進剤であり意外に大事でぜったいに省けないのだ。
2017 2/14 183
* 妻に、手伝わせることばかりで、なにもしてやれないでいる。いまもまた新しい用事を頼んでいて、しかも明日からは選集の荷造りだ。申し訳ない。人を頼 んでも、その人にどこに坐って手伝って貰うのか、その場所から思案にくれるのでは、ああ。疲れを溜めないように、急がないように、せめて。いそがば、休め ということ。
* 疲れた。十時だが、もう寝室へ降りる。
2017 2/14 183
* 起床8:15 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重66.3kg
* 九時前、『秦 恒平選集 第十八巻 梁塵秘抄 閑吟集』着。送り出し作業に入る。荷をひらき、印を捺し、荷造りになる。本を運ぶ力仕事と、本の点検・捺印はわたしがす る。荷造りの手間は全部妻がしてくれる。かなり難儀な包装と荷造りになる。ま、慌てず急かず、ゆっくりやろうと。
天気良く、日の光は狭庭に溢れている。小鳥たちも来る。
そんな平穏とくらべれば、国会の大臣答弁はウソと誤魔化しに溢れ、咎は内政外交に及んでいる。起業者・経営者らも平然と社員を酷使し利益を溜め込み、テレビでは電波にわく蛆虫がただ大笑いし、ただ手を叩き、空騒ぎの為に空騒ぎしている。
2017 2/15 183
* 起床8:00 血圧<135-60(70)> 血糖値91 体重65.7kg
* 黙々と送り出しの手仕事すすめている、しかし、休み休みに。吹き替えでない映画『指輪物語』の第一部を、耳に聴きときおり繪も観ながらの作業。
つい必要以上の「老人」に自分をきめつけて変な弱気になってはいけない。八十など、三十年前なら六十五歳ほどではかったか。九十の人も過ぎた人も目に見 えて増えている。自分から自分を老いへ追い遣っていては不健康。東京五輪、そして米寿。目指して歩いてそれで「自然」と考えていたい。まだ、したい、して みたい欲がある。
2017 2/16 183
* 「選集⑱」送り出し作業は明日も続く。夫婦して疲弊せぬように、慌てず、ゆっくりと。
2017 2/16 183
* 起床9:15 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重65.1kg
* 「選集⑱」送り出し終えた。花粉が舞うかくしゃみ連発、堪らない。ま、眼へ来るよりはいいが。
2017 2/17 183
* 起床9:30 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重65.5kg
2017 2/18 183
* 汽車・電車で関門トンネルを抜けたことは二度あるが下関で降りた事はない。鞆の津で一泊したことがある、「ミマン」誌だったかの旅で、妻の代わりに朝日子が一緒だった。
このところいわば獣肉にはほとんど気を惹かれない。魚の淡泊な刺身がいいと、夕食に、また鮓を和可菜に頼んだ。あれは胃全摘より以前だったろうが、銀座 裏で「鉢巻おかだ」で鮟鱇鍋のコースを妻と堪能したのを思い出す。生涯で何が美味かったかとなると記憶しきれない中で、あの「鮟鱇なべ」の仕上げの美味 かったことは。京・祇園「かき舟」の「鍋」も忘れられない。歳末になると編集委員との忘年会をどうすると思案するのが編集者の役だった。新宿「田川」で、 小児科の馬場先生らに「河豚」を食べて頂いたが、お相伴の「雑炊」が美味かった。つまりわたしは雑炊が好きだったらしい。あれは満腹するので、いまは危険 で近づけない。腸閉塞がこわいのである。おかげで、いま、あれが食べたいという気が湧かないのは、口惜しいほど。
鮓が、届いたらしい。仕事づけで目がよく見えない。
2017 2/18 183
* 今日も、疲れると縁側に立ち、黒いマゴ立ちに話しかけ、また隠れ蓑やテラスへ降りてくる鵯や目白たちに声を掛けて、「いのち」の輝きと喜びとを感じていた。
2017 2/18 183
* 起床8:20 血圧<135-60(70)> 血糖値81 体重65.9kg
2017 2/19 183
* 昨日今日 モーレツに頑張った。「湖の本134」の編成ができたと思うが、十一時半、へとへとで目見えない。疲れた。昨夜個、四時半まで眠れなかった。四時間ほどしか寝ていなかった。ウーム・頑張れました。
2017 2/19 183
* 起床10:50 血圧<135-60(70)> 血糖値76 体重66.2kg
* あまりに疲れていたので、リーゼを一服し「アントニーとクレオパトラ」を少しだけ読み進んで、そのまま電氣も消さず寝入ったようだ、七時に目ざめ、黒いマゴたちと、もう庭へ来ていた鵯とに声を掛けておいて又寝してしまい、十一時前まで。眼の休息には寝るのがなにより効くので気持ち許している。
2017 2/20 183
* この多忙と疲労と弱い視力とで、ダラシないほど多彩に読書しているとときに呆れてくる人もいるが。
読みはじめた「森銑三著作集」月報の①で、随筆家相磯凌霜氏が「荷風先生と森さん」の題で書かれている中に、森先生が尊敬されていた永井荷風の言葉として、こう挙げておられる。
「相磯君、無駄な本を読まなくては、いけないよ、必要な時だけに読む本は後に何も残らないからね」と。仰天し卒倒してしまうこれぞ金言・至言で、わたし が久しい人生で胸に蓄えていながら卓的に言いきれなかった「実感・核心」そのものであった。これの分かってないような人の仕事は薄くて浅い。荷風はこうも 言ったそうだ、「今の大学の先生なんか、案外無学の人が多い様だね。其処へ比べると、森(銑三)さんの様な人が本当の学者と言ふんだよ」と。森先生は、荷 風の偏奇館時代からしばしば荷風を其の研究の成果で「嬉ばせ」ておられた、とも。
「無駄な本を読まなくては、いけないよ、必要な時だけに読む本は後に何も残らないからね」
いわゆる「研究」と自称しているらしき学者のやたらバラ撒かれてある「試論」の薄さは、荷風の言によって性根の安直と不勉強を衝かれている。なによりもそういうシロモノには即ち「文藝」の魅力・滋味・筆力が欠けている。必要しか必要としない薄味はすぐに乾いて行く。
2017 2/20 183
* 起床8:20 血圧<135-60(70)> 血糖値87 体重65.4kg
* 妻が定期の予約診察に近くの病院へ。留守をしながら、テラスの隠れ蓑へ来ている鵯をずいぶん永い時間見ていた、向きあっていた。静かで和やかで、いい気持 ちだった。数メートルの近距離でわたしのいるのは見えていように翔び去らずに清閑を満喫しているという小鳥の風情に魅されていた。
テレビは、金正男暗殺だの都議会の百条委員会だのトランプのバカ騒ぎだの、ばっかり。せめて独りの時間は静かにと、鵯に話しかけながら倚子に腰掛けていた。日光燦爛、風はやや強く、清らに静かであった。鵯を木の枝にのこしておいて機械へ来た。
2017 2/21 183
* 酔う。そして眠る。目ざめて、機械の中の黒いマゴ最期の日の写真を見て、声なく涙を流し続ける。
2017 2/21 183
* 十一時になった。痛切にいま胸焼けがしている。眠れると好いが。
2017 2/21 183
* 起床8:20 血圧<135-60(70)> 血糖値80 体重66.6kg
2017 2/22 183
* 夜中の痛烈な胸焼けは避けたい。寝る前に水分をしっかり摂り、インシュリンは励行注射し、整腸薬は必ず服し、時に、龍角散でのどを守っておく。
「椿説弓張月」をそろそろ読了する。一度は読んでおきたく、読んで置いてよかったと思う。
沙翁劇「アントニーとクレオパトラ」ももう最期の場面へ間近い。ふしぎと、もののあはれにとらわれる。
これは冒険だし、そもそも角川文庫版の日本語がやや気に入らないのだけれど、またしても『千夜一夜物語」二十数巻を再読しようかなと思いかけている。文 庫本は字が小さくて眼につらいのが難だが。何より良い日本語に出会いたいもの。詩や歌がわんさと出てくるので、興を殺がずうまく訳していて欲しい。角川版 は、しかし、補注が充実していて興趣を加えてくれる利点がある。
ひとつには中東から世界が壊れて行きそうな不幸な現代から、底抜けに気の好い「千夜一夜物語」に気分をなだめられたいのである、が。一年、かかるだろう か、読み終えるのに。
2017 2/22 183
* 起床8:20 血圧<135-60(70)> 血糖値85 体重67.1kg
* 今日は暖かい、が、風は強い。
2017 2/23 183
* 少しの酒に深く酔い、短時間であれ熟睡して眼をやすめている、が、もう眼鏡屋へ、猶予成らない。七、八つのどの眼鏡もみなわたしの眼からは逸れている としか言いようがない。眼鏡を眼から七、八センチも浮かさないとクリヤに見実感いたします。えないとは。眼が悪くなっているのか、眼鏡のセイか。眼科で は、いつも検眼して「視力いいですね」と、それだけ。目薬を三種類沢山処方されるけれど。
2017 2/23 183
* 起床8:20 血圧<135-60(70)> 血糖値76 体重67.2kg
2017 2/24 183
* 久しぶりに、夕刻、歯医者へ。五時過ぎ、江古田の中華家族で、妻は酢豚、わたしは麻婆豆腐。卵スープに杏仁豆腐のさーびす。わたしは、マオタイをダブルで。この店、いまや妻のお気に入り。女将と気が合うらしい。食べ物の店とは親しくなるのが良い。
* 恐らくは二月は今日まで一度も外出しなかったのではないか。一月二十日に歯医者に行っていらい一ヶ月の余もわたしはいわゆる外出しなかったわけで、かつてこんなことは只の一度もなかった。
来週の月曜には久しぶりに聖路加で内分泌科など二科で診察を受ける。
明日で、胃全摘の手術を受けて以来、きっちり満五年となる。引き続いてしっかり生きて行かなくては。
2017 2/24 183
* 起床8:20 血圧<135-60(70)> 血糖値80 体重66.5kg
2017 2/25 183
* 起床8:50 血圧<135-60(70)> 血糖値80 体重65.9kg
2017 2/26 183
* さてあしたは午まえの予約で糖尿と前立腺の両科診察をうけに行く。検査のために遅くも十時半までに生理検査を終えておかねばならず、データを読まれる だけで、診察は両方ともあっけなく終わる、はず。はず、の、通りだといいがママ病院では目算が狂う。校正を沢山もって、背負い鞄で杖を突いて出かける。
2017 2/26 183
* 起床7:00 血圧<135-60(70)> 血糖値95 体重65.8kg
* 検査諸データ、「とてもいいですね、いいです」と、十数年前には、このままだとあと五年ですと脅した先生、太鼓判で、今日で定年退職される。久しいご指導 のお礼に、2006年もののシャンパンを持っていった。地元衣食足りて礼節を知る紹介しましょうかと言われてお断り、引き続いて築地まで通院させて下さい と。新しい先生と、次回予約日はもう少し後日にきまる。「とにもかくにも、歩いて下さい」と猛烈に奨められた。
前立腺の方も、「いいですね」と。そして「少しずつでも歩いて下さい、下半身の筋力が落ちてしまわぬように」と。
午過ぎには病院を出、院外薬局で処方薬などを出して貰って、一時。
「ボン・シャン」のフレンチをと松屋わきまで行きながら、写真の招きにさそわれて「ステーキ昼食」の店に入ってしまった。うす切りステーキはたっぷり出 たけれど、ビールをお伴の味わいは単調で、フレンチへ行くべきだったと痛悔、元気も湧いてこず、銀座一丁目から帰宅。駅にタクシーなく、よろよろに疲れ 切って家まで歩いた。容易に回復せず。
2017 2/27 183
* 起床12:30 血圧<135-60(70)> 血糖値99 体重65.5kg
* 朝八時からふと又寝して昼過ぎになった。奇妙な夢を見ていた。奇妙な夢をみてしまう点は天才ないし癲才なのかも知れない、しかしどうか願い下げにしたいと思う、が、容易に叶わない。
大脇さんに頂いた栗菓子、金田さんの羽二重餅や洋軽菓、藤森さんの選りすぐりのチョコレートなど、みな嬉しく夫婦して戴いた。妻はこのごろでは名酒へも手が、いや口が出る。今朝は各務原の山中さんから、三千盛純米大吟醸の生搾りを戴いた。寿命が延びそう。感謝。
2017 2/28 183
* 強い地震もまた福島沖で。かくて、二月は逃げて行く。「選集第二十巻」の初校を終えた。この巻は、第十三巻と同頁数、最も分厚い一巻になる。まだ再校 が必要。そして「選集第二十一巻」も前巻を引き継いでもう初校が組み上がっていて、手が着いていない上に、「湖の本134」の初校も今日届いている。
三月は、いろいろある。肺炎の予防接種二度目を受けるし、歌舞伎も、楽茶碗展も友枝昭世の能「三輪」にも招かれている。聖路加へも二度通う予定。春陽気で心身盛り上がると好いが、寝入っているのが安楽という昨今、反省も要る。
2017 2/28 183
* 起床10:0 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重65.7kg
2017 3/1 184
* 明日は肺炎予防注射にと予約していたが、夕食後に妻が七度台り軽熱を出したので、要心して、延期すると決めた。わたしもクシャミが多いが花粉かと思われる。
とかくするうち、日付が変わってしまった。休まねば。
2017 3/1 184
* 起床10:0 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重65.7kg
2017 3/2 184
四国の大成繁さんから讃岐うどんをたっぷり送って来て下さった。細い面はつい呑み込んで、腸閉を起こしやすい、讃岐うどんは太くてしこしこと噛めるし、衝いてくる出汁が旨い。感謝申します。
2017 3/2 184
* 十時半、明日の肺炎予防注射は、妻の微熱を考慮して延期したので、家で仕事が出来る。ほんとは外へ出かけて外で校正などすればいいのだ、だが残念ながら保谷の此の近辺に落ち着ける喫茶店もレストランも無い。自転車での遠出は自粛した方が良い。ま、仕方ない。
2017 3/2 184
* 起床7:00 血圧<135-60(70)> 血糖値91 体重65.5kg
2017 3/3 184
* 起床8:30 血圧<135-60(70)> 血糖値91 体重65.6kg
2017 3/4 183
* 明日は日曜。一日ぐらいぼうやりしててもいいだろう、が。鵯が、鳩も、置き餌を食べにテラスへ来てくれるのが嬉しくて。息を凝らして眺めている。ネコもノ コも黒いマゴたちも一緒に観ているだろうと、いつも声を掛けている。文旦やオレンジやフルーツゼリーがあって、ときどき苺まじって果物は有り難い。食べ物 を食べ損ねるとえづいて吐くのが苦しいが、腸を詰めて塞ぐよりは、吐いた方が遙かにマシ。米の飯がたべにくい、口の中でばらけてしまい味わえない。さっき は葛湯と櫻塩煎とを。酒類の飲み物は中毒しないようにだけ気を付けて一日中少しずつ愛飲している。
2017 3/4 184
* 起床8:00 血圧<135-60(70)> 血糖値91 体重65.6kg
2017 3/5 184
* 今日も、とても、ぼうやりどころでなく、たくさん仕事を前へ進めた。眼球が機械で焦げて燻っている。
2017 3/5 184
* 十一時過ぎた。もう機械からは離れよう。
「コリオレイナス」「源氏物語」「石清水物語」「森銑三月報」を読む。校正も少し進める。読みでが、有る。この「で」はどう説明するのか。
2017 3/5 184
* 起床7:00 血圧<135-60(70)> 血糖値91 体重65.6kg
* 二度目の肺炎予防注射を、二人して受けてきた。厚生病院まで杖無し背負い鞄で歩き、帰りも遠回りして歩いた。鞄に慣れたい。
着替えて出かけたので、家へ帰ったいまも、このまままた外出できるのだが。さて行きたいところとて無い。しかし今月は美術展などの招待がいくつも届いている。電車に乗るのを億劫がらねばいいのだが、つい家仕事の進捗を考えてしまう。
2017 3/6 184
* 「記憶の型」には人名型と地名型があり、柳田国男は徹して地名(出身地)型、森銑三は徹して人名型だったそうだ。前者は人の名に、後者は出身地や地名にはテンと関心がないと。
超多忙の医学編集者であったわたしは、先生や看護婦の名前と電話番号と住所・所属先とを、平均してよく覚えていた。といってもセイゼイ、各二百数十人程 度だった。小学校、中学の友達の名も住まいもかなりよく今も記憶していて、名と顔と家のあった辺りとを兼ね合わせ思い出せる。高校生では出身中学はわかっ ていても家の辺りとは思い及ばない。大学になると、大方は、アウト。
「歌物語の歌忘れ」という諺がある。
☆ 中扉写真の選択に四苦八苦、五つの三つ選んでダウンした。あとは明日に、また。もう眼が見えない。
2017 3/6 184
* 起床9:30 血圧<135-60(70)> 血糖値80 体重66.3kg
* 今日は、総じて不調、実効のないかたづけ事に時間と神経を使い疲れてしまっている。こういう日もある。
写真を替えた。写真コレクションの量がこの古機械を圧迫している気がする、時として機械が「描画」を拒んでくる。理由が分かれば対応できるだろうに、いつも「何故」そうなのかが分からない。
ドラクロワのもゴッホのも、珍しい方に属している。写真の借用である。
プチ・ジャンの真作で小品ながら好きな「花」の繪を愛していたが、いまは建日子に遣ってある。
シルクスクリーンの版画ではミロの大作を一点買っておいた。颯爽とした線の廻転で描かれた騎馬の一騎打ち。やはり版画だが、銀座の画廊で、ビュフェの 「薔薇」が買ってある。ピカソのごく小品の佳いのも。しかしこのピカソは精巧な印刷かも知れなくてやはり建日子にやってある。
建日子はわたしから骨董の類もよろこんで仕事場へ持って帰るが、よく旅しているのに、自身の好みで手に入れたと観せてくれたその種のモノは一点もない。趣味がよほどちがう。
2017 3/7 184
* 病気以来わたしの両手指は痺れて無感覚に近く干上がっているので、ほとんど手紙もハガキも書けなくなっていて、つい、この「私語の刻」の私語で何方にもお返事した「つもり」にさせて頂いている。いくらかは妻にお礼などを頼んでいる。
2017 3/7 184
* 起床8:10 血圧<135-60(70)> 血糖値82 体重66.4kg
2017 3/8 184
* 起床8:10 血圧<135-60(70)> 血糖値94 体重66.7kg
2017 3/9 184
* よほど好天下外出してみたかったが、芯の疲れで結局出渋った。
2017 3/9 184
* さ、もう目が見えない。機械から離れる。機械の画面や文字が堪らなく眼に堪えるが、機械からは解放はされない。
2017 3/9 184
* 起床9:15 血圧<135-60(70)> 血糖値76 体重66.8kg
2017 3/10 184
* 今日は市の保谷庁舎まで税の申告に。手続きは何十年来みな妻がしてくれていて、わたしは散歩についていったまで。申告といっても、かつかつ数万円しか 収入はない。湖の本は慢性的に出血しているのだし、新規の原稿依頼は受けないのだから。それでも申告はしないといけないのである。
* 家から市庁舎まで歩き、市庁舎から保谷駅近くの「唐津うどん店」まで歩き、唐津の地酒「太閤」一合で饂飩をすすった。また家まで歩いた。腰が痛かったが、手術以降、今日がいちばん長く歩いたのではないかしらん。
2017 3/10 184
* 起床9:15 血圧<135-60(70)> 血糖値91 体重66.5kg
* 四人の誰か知り合いを四人の旧知の医師を紹介していたが、その四人のドクターから次々に電話が来て、懐かしく久闊を叙している夢を見た。なんらの事実もないただの夢だが、ヤにリアルであった。最近に類似の実例があったか。まったく無い。
これなど尋常に類したもので、奇妙奇天烈な夢を毎晩のように見る、さもなければ夢の中で仕事をしている。
とにかく、夢は大嫌い。やたら「夢」を美化したり目標視したりの言動を見聞きすると顔をしかめてしまう。生きていると思っていること自体が夢で、この夢から覚めたとき、決定的に変わらずに変わる。正覚がある、と、古人の願にちかくわたしも願っている。「夢」は好かない。
* 昏睡というにちかく睡くなる。全身が違和の渦を巻いてくる。寝入るか、仕事に耽るか、どっちかでしか身が保たない。いまは、今も書き進んでいる小説の 推敲に心身を預けている。散髪したいのに、そのために着替えるのが面倒で躯も気持ちも動かない。とても健康とは言えなく情けない。
2017 3/11 184
* 両脚に「み」が入っていて重い。痛いとまではないが、昨日の徒歩行が響いている。妻はどうもなく、わたしだけ脚へきているとは、わたしが衰弱している のに違いない。目から腹から脚も弱っているほけだ、筋力は比較的短時日の動き手回復できるとも聞いている、たしかにこの頃乗り慣れていた同じ自転車がひど く重い。へこたれずに自転車走を日課にした方がいいが、転倒という怪我は歩行で転ぶよりキツい。やれやれ。
2017 3/11 184
* 起床8:45 血圧<135-60(70)> 血糖値77 体重67.2kg
* いちばんに散髪。
* 櫻の芽すこし寒げにふくらんで
空をみている僕もみている 湖
2017 3/12 184
* 起床7:50 血圧<135-60(70)> 血糖値79 体重66.4kg
2017 3/13 184
* 起床7:50 血圧<135-60(70)> 血糖値88 体重66.6kg
2017 3/14 184
* 起床10:30 血圧<135-60(70)> 血糖値89 体重66.3kg
2017 3/15 184
* 来週からは聖路加、能、歯医者、聖路加と相次いで二十九日にはからは第十九巻送り出しになる。その用意は大方出来ているが、数人、宛名住所を手書きしなければならない。四月一日の午後には香川靖嗣の能「隅田川」に招かれている。送り作業は少々残るかな。青陽の春四月後半には湖の本134巻が出来るだろう、五月下旬には選集第二十巻が出来るだろう。
* 疲れは果てなく濃いが、気持ちは沈滞していない。ただ、安倍政権と稲田はじめ不出来大臣や森友学園籠池氏や四国の加計、大学疑惑や、金正男暗殺や、トラ ンプをはじめ応酬の極度の右傾傾向など不快な世界は醜悪に粘った吐物のような話題を浴びせかけてくる。ひれらを、精一杯、楽の茶碗や、歌舞伎や、古典や、 沙翁劇や、自身の創作の仕事で澄ませようと懸命なのだ。体調はわるくて当たり前の気分に落ちこんでいる。どうにか、ならんものかと歎かれる。これはこの、 いわゆる「終活」なのか。
2017 3/15 184
* 起床8:20 血圧<135-60(70)> 血糖値87 体重66.0kg
2017 3/16 184
* 起床10:20 血圧<135-60(70)> 血糖値95 体重65.9kg
2017 3/17 184
* 起床8:00 血圧<135-60(70)> 血糖値92 体重66.3kg
* 若い、恐らくは研修医を三人前にならべ、ベテラン医師が、難しい診断を要している患者を紹介しつつ「診断」を若い医師達に迫るテレビ屈指の好番組、機会あれば覗き込むほどに首を伸ばして観ている。今朝は、腰痛老女がついにはパーキンソン病と診断された症例を食い入るようにみせて貰った。身に沁み身につまされた。
2017 3/18 184
* 起床8:10 血圧<135-60(70)> 血糖値93 体重66.9kg
2017 3/19 184
* 起床8:20 血圧<135-60(70)> 血糖値82 体重66.6kg
2017 3/20 184
* 明日は眼科の検査。背負い鞄で行く。雨とか。
2017 3/20 184
* 起床7:00 血圧<135-60(70)> 血糖値85 体重66.3kg
* 雨の中、十分もバスを待って、やれ来たと、停車したバスに乗ろうとしたら、ドアもあけずにわたしを置き去りに走り去った。呆れた。ま、余裕をみて早め に出かけてきたので、腐るまいと、背負い鞄に傘をさした恰好で駅まで二十分を歩いた。「歩け」「歩け」という教唆であろうと黙々と歩いた。幸い電車の便好 く、谷崎論攷を読み進めながら新富町まで一気に。
検眼には何の問題もなく、十一時には病院を出た。更科蕎麦で酒一合の昼食、ためらいなくまた保谷へ帰った。地元病院へ定期診察の妻と、すんなり交替。テ レビも観ずに、卓に突っ伏して寝入っていた。寐ていた時間を惜しむまいと思っている。気力体力そして意欲のためにも寐たいときは寐ればいいと。
2017 3/21 184
* 起床8:00 血圧<135-60(70)> 血糖値86 体重67.1kg
2017 3/22 184
* 夕方から千駄ヶ谷まで出かける前に疲れてはいけない。三時前だが、もう仕事は休んで、気も晴れ晴れと出向きたい。謡本「三輪」に目を通して行くか。
2017 3/22 184
* 起床9:20 血圧<158-79(66)> 血糖値95 体重66.5kg
2017 3/23 184
* 疲れ切っている。
* 枕草子で、気分を持ち直した。源氏物語「若菜下」巻は女三宮と柏木の取り返しのつかぬ悲劇が始まっている。「石清水物語」の木幡の姫と伊予守との悲劇ももう取り返しがつかない。ひとり「一代男」の世之介は少年の身でとほうもない好色道を闊歩して行く。
古典は、美しい。とかく渇きがちな現代の老人を深く静かに慰めてくれる。
2017 3/23 184
* 起床8:20 血圧<158-79(66)> 血糖値95 体重67.0kg
2017 3/24 184
* 今夕は歯医者へ行かねばならぬ。
* 天気晴朗、風はつよい。
2017 3/24 184
* 歯医者、治療の後、若い女先生と歌舞伎座「助六」などで話がはずんだ。
帰路、久しぶりに新江古田の「リオン」へ寄った。五時半開店の十五分前に入れてもらい、待ちながら、わたしは長谷川泉さん司会の谷崎鼎談を読み、妻は織田一磨論を読んでいた。
ワインをたっぷり、旨い海老の前菜、パン、白い泡を高く立てた熱いエンドウ豆のスーブ、豚のヒレ肉、苺のアイスクリーム、珈琲。満腹。
この店では、簡略にしても前後二時間ちかくはかけての食事になる。この店では、自然といつも夫婦数十年、いやもっと長い歳月の思い出にいろんな花が咲く。人に死なれた話題が増えてきて寂しい。
江古田駅前で、妻は黒いマゴたちのためにチューリップの鉢を買った。電車にも座れて、保谷駅からはタクシーで帰宅。
* テレビも鬱陶しく、すこし部屋は冷えていたが暖房もせず「枕草子」を読み進んでいた。枕草子は本来、清少納言単独の著作などではなく、定子皇后のサロ ンを構成していた才長けた女房達が、后の宮のいわば主宰のもと、各種の話題に花を咲かせたのを書記役の清少納言が簡潔にとりまとめつつ、ごく自然に彼女の 類想、感想、回想ないし創作に近い話題にまで筆をのばしていったもの、というのが私の根底の理解なのである。その理解に沿って読んでいると、いましも、そ のそこに女たちの声・言葉が花咲くように交錯している息づかいまでが感じ取れる。じつに雅やかに面白く、しかも「女じゃなあ」と笑えてしまうほど露骨な本 音も平気で飛び出してくる。こういう面白さは源氏物語ほどであっても、物語からはナマには聞こえてこない。枕草子のきわだった効果である。
ここ数日来、快い薬効のように楽しんでいる。が、冷えてきたので、機械の前を退散する。
2017 3/24 184
* 起床9:20 血圧141-68(56) 血糖値84 体重66.7kg
* 終日「枕草子」に向きあっていた。こまかな作業で、目もからだも疲れた。
* 縁側からもキッチンからも見える隠れ蓑に、一日中二羽の鵯が食べに来る、鳩も来る。鳩が来ると鵯は尾羽をこまかに打って警告ないし威嚇、また は警戒し ている。黒いマゴたちの家の間近へ生きの命の取りが遊びに来てくれるのを妻とこころから喜んでいる。せまいながらテラスにも木立にも書庫のエプロンや屋上 にも「命」が耀き「命」洗われるのは、ほんとうに嬉しい限り。
2017 3/25 184
* 起床9:20 血圧175-89(59) 血糖値87 体重67.2kg
2017 3/26 184
* 明日はまた十二時の予約で聖路加・感染症内科へ行く。その一時間前には検査を受けておかねばいけない。待ち時間に校正が出来る。
2017 3/26 184
* 起床7:30 血圧154-70(56) 血糖値85 体重66.4kg
* 夜来の雨、おさまり気味に、テラスへ鳩二羽がきており、隠蓑の枝に鵯が羽を打っている。
* 十時前後には聖路加病院へ向かう。
* 一時には、なにごとも無く、検査結果すべて良好ということで病院を出、処方薬を受け取り、銀座の三笠会館、中華料理「秦准春」で季節のコースを久しぶ りの紹興酒で。まずまずのメニュ、少し酔ったかと危ぶみながら丸ノ内線、西武線、タクシーで一路帰宅、持ち出していた校正もきれいに仕上げていた。
2017 3/27 184
* 眼も疲れ、少し気も沈んできたので、半ば瞑目して音楽を聴いていた。仕舞いの方では、岸洋子の「希望」 芹洋子の「四季の歌」 倍賞千恵子の「母さんの歌」 ペギー葉山の「学生時代」などを聴きながら、随所で目に涙をためていた。
2017 3/27 184
*十一時半。もう階下へ降りる。
2017 3/27 184
* 起床8:40 血圧154-77(65) 血糖値91 体重66.4kg
2017 3/28 184
* もう、休むしかなくなった、疲れた。
テレビも、臭い話ばかり、結局読書へ溶け込む、か、半時間ほど、ピアノ 聴こうかな。
* 明日は朝から、選集第十九巻を送り出す。
2017 3/28 184
* 起床8:20 血圧153-73(63) 血糖値99 体重66.6kg
2017 3/29 184
* さ、もう機械は休もう、十一時だ。
2017 3/29 184
* 起床8:40 血圧167-85(68) 血糖値91 体重67.3kg
* 血圧の測定器を替えて、すこし血圧が高めに出る。
2017 3/30 184
* 概ね、送り出しの作業は終えた。腰痛く、疲れた。どうも食が進まない。
2017 3/30 184
* 起床9:15 血圧154-67(70) 血糖値86 体重66.9kg
* 天気よろしくないが、肩の荷は、ひとまず下ろしてある。仕事へ一途に立ち向かえる。
2017 3/31 184
* まだ九時なのに、つぶれそうに疲れている。明日のある身、休息しよう。
2017 3/31 184
* 起床8:15 血圧136-63(58) 血糖値92 体重66.2kg
* 夜中、窓のすぐ下から黒いマゴの呼んでいる一と声を聴いた。ネコもノコも、マゴも、いっときも身内を離れない。人間が、とかくするとうそくさい現世を体現してしまう、己れも含めて。そういう鬱をまぢかにいて慰められている。弱いものだ、わたしも。
* 我が家の、縁側と書庫とのあいだのテラスは、文字どおりに猫の額ほどしかない。選集のどれかに家族で撮った写真を入れた。この文字どおりの狭庭で、朝 日子がまだ家にいた頃から大違いに変わったたった一つは、わたしの背丈をすこし超えたほどの隠蓑の木が、いまや書庫上の庭を超え家の屋根を超えて高々と青 空を望んでいること。その根方に、ネコもノコもマゴも、仲よく永久の憩いにある。ちかごろはそんな三人の住まいを賑わわせて鵯や鳩や目白が妻のおく餌に 寄ってくる。朝日子に見せてやりたい。
* 目黒へ。喜多の能楽堂へ。手術以来、出向いたことが無かった。遠足に出る子供のような気分です。開演前に馬場あき子さんが話すらしい。なんだか、照れくさい気がするが。
2017 4/1 185
* 起床9:15 血圧172-92(58) 血糖値89 体重66.2kg
2017 4/2 185
* すこし眼をやすめたいと、まだ六時だが、もう、どうにもならない。
* 「ユニオ・ミスティカ」の仕上げへ一歩一歩にじり寄っている。
* 晩は、階下で「選集第二一巻の初校戻しのための大きな整頓にかかっていた。
十一時過ぎた。熟睡したい。昨夜は夜中に目が覚めてしまった。
2017 4/2 185
* 起床9:30 血圧172-92(58) 血糖値89 体重66.0kg
2017 4/3 185
* 悪政が、信仰し平和で安穏な市民生活がさまざまに脅かされてくるにつれ、ますます老いて行くわれわれの家庭生活にも「不安の陰気」が這い寄ってくる。 上野千鶴子が示唆し続ける「おひとりさま」時代が、かならずどちらかに近づいてくる。願わくは妻に長生きしてもらいたい、妻はまだしも息子「ら」に「頼れ る」と期待を寄せているらしいが、わたしの場合はその期待は無理とみてほぼ今から断念している。なんとか「おひとりさま」生活をわたし自身で設計するしか ないと思っているが、設計できるアテはほとんど無い。
願わくは老夫婦二人して怪我無くすこしでも長生きし、せめて力あわせて「選集」だけは完結させ、そのさきは、順当にわたしが先にこの世に「さよなら」を告げたい。
明後日には、妻も傘寿の傘をぬぎ八十一歳になる、わたしは同じその日に術後五年経過の最終検査と診察をうけに聖路加へでかける。
心配は無いか。無いと言い切れる保証の無いのが再発であり、術後もうらやましいほど元気だと見ていた人も何人も亡くなっていった。幸い、わたしは腫瘍内 科の検査だけでなく、感染症内科でも内分泌科の検査でも、この五年、いつも良い結果を出していたけれど、疲労きいつもずっしり重く、なにより「食」が、う まく通らずに細く細くと気を遣い続けてきた。
尿が出て便出て食へて目が見えて
読み書きできて睡れればよし 疲れたくなし
何が起こるかはたぶん医師にも判らないのである。米壽とまで願えれば仕事はできるが、それは妻に譲って、わたしはせめてもう五年…でいい、せめて怪我なくひとにメイワクかけないで余命残年を全うしたい。ネコたちの仲よく寝ているこの家で命終えたい。
2017 4/3 185
* 十時。階下にもしごとは幾つも待っている。もう機械は閉めよう。
* ポカンと遊びに出られるとなどと想うが、根からわたし遊びは苦手らしい。
* 瀬戸内海の海運にかかわる本があると、報せてもらった。詠めるなら読みたい。
さ、今日の機械仕事は終わり。
2017 4/3 185
* 起床8:00 血圧163-82(61) 血糖値90 体重66.7kg
2017 4/4 185
* 明日は胃全摘から「五年」経過の検査と診察。同じ明日には妻が八十一歳に追いついてくる。
なにとなく「五年生存」とやらを目標に、励みに過ごしてきたが、通過となるとかえって拍子抜けというか、目標が失せる心地で頼りない。オタオタと気迷い無く、毎日を昨日(きのう)の明日(あした)平常心で努め続けようと決めている。
2017 4/4 185
* 起床6:00 血圧166-88(53) 血糖値94 体重66.4kg
* 胸焼けがして目覚が早かった。時折、胸がやける。就寝前に青汁を多めに呑んだが、青汁で胸が灼けるかなあ。昨日は酒は一滴も呑んでいない。食も極く少なかった。
* 妻八十一の誕生日。オンコロジイ・腫瘍内科五年の診察に同行、そのあと妻の両親らの墓参は、例年のならい。京都の秦の墓所へはもう六年余も参れていな い。お寺への挨拶やつき合い、墓の面倒見は建日子に委任してあるが、ちゃんと顔つなぎも掃苔もして呉れているのだろうか。
* お墓で思い出した、谷崎潤一郎と芥川龍之介の墓がおなじ東京のお寺に在る、が、一度もまいっていない。いちど地理をしらべて行ってみたい。
2017 4/5 185
* 七時過ぎた、妻の誕生日を赤飯で祝おう。そして病院へ出かける。
2017 4/5 185
* 聖路加病院の腫瘍内科、午前十一時前に検査は済ませたが、診察は午後二時になり、よく辛抱して待った。待ち時間を使った校正の仕事は、バカに捗った。
幸い、何の異常もない「五年」経過を確認してもらえた。次は、半年後に診てもらう。
2017 4/5 185
* 起床9:15 血圧149-78(56) 血糖値79 体重66.4kg
2017 4/6 185
* 昼以来、建日子の源氏物語に親和的に近寄れる参考書をと書庫へも入っていた。晩になってから、ともあれ「枕 草子」入稿の用意をし終えて、さて今一度と、この部屋の書架の高い所にえるセットものから、学研版円地文子訳「源氏物語」、あれなら頭も多く懇切な初心者 向け編輯が行き届いているからと、狭い足場へ登って、無理な姿勢で大きな本を一番上の棚から一冊抜き取って、降りながら後ろ向きに転倒、わたしの背中で、 湖の本全巻その他山積みの棚へもたれ込み、棚が転倒全壊し本が身動きならず散乱した。この修復模様替えは、なにしろ狭い狭い部屋だけにどうして好いかと途 方に暮れている。散乱した本だけはやっと積み上げてみたが、襖へ突っ込んだ柱ともなっていた整理棚は、もう使えないほど傷んでしまった。
わたし自身は狭い壺のようなところへ背と尻から落ちて動けなかったが、なんとか起つだけは立った。背中にも腰にも、微かながら痛みが残っているので今夜 には痛みが表へデイ来るかも知れない、が、ま、骨折はしていないと思う。これが崩れ倒れたらタイヘンだなと日頃思っていた所へ転げザマ体当たりして押し倒 したことになる。
なんとか、整備し直さないと、歩くに歩けない。やれやれ。建日子は本など受け取りに来ると言ってたらしいので、少し力仕事を手伝って貰いたい。二階なので、運び下ろすにも運び上げるにも、労力が要る。やれやれ。大怪我にならなかったのがまだしも幸いであった。やれやれ。
* 懸命に、壊れた整理棚と同じのを隣棟からガンバッテこっちへは運び入れ、妻に手伝ってもらって、ほとほ苦労しながら辛うじて階段を二階へ、積み本で狭 まっている廊下を奥のわたしの機械部屋へかつがつ運び入れて壊れた棚と、狭い畾地でやっと入れ替え、上棚を渡して、それからは独りで頽れ落ちた大量の本を とにかくも棚に載せた。本の置き棚は二段になっていて、しみじみ湖の本本だけでも百数十册は重い。ま、仕方がない、明日に延ばしていては仕事が停滞する し、建日子が来れるのは実はいつのことやら判らぬとあっては、「おひとりさま」労作には慣れるしかない。最低限度、未整頓に積まれたままながら散乱したも のがとまれ片づいて、よかった。
* しかし、臍の左下部に指で触れても判る鶏卵大かるい痛みの膨らみを触知している。
もう十二時。酒を少し含んでおいて寝よう。
こういうことが、これからはともすれば起きて対処しなければならない。大怪我をしては一巻の終わりになる。やれやれ。
2017 4/6 185
* 起床10:00 血圧136-69(64) 血糖値79 体重66.2kg
* 臍左下腹に柔らかい鶏卵大の膨らみが触知できるが、ふれても痛みというほどの痛みはなけれ、違和感とともに、ぷっくりと柔らかい。今世紀に入ってこのかたインシュリンを日に三度ずつは注射し続けてきた位置ではある。
やはり全身を捻るように仰向きに狭い壺なりの畾地へ落ちこんで暫くは身動き取れなかったのだから、躯のあちこちを軽微とはいえ痛みが噛んでいるのは仕方 がない。頸、肩。脇腹、左側に違和感が残っている。ま、この程度で今ぶん済んでいて幸いだった棚と大量の本とは一斉に背後を向こう向き襖へ倒れ込んでいて 助かったのである。頭の上へ殺到されていたら、大怪我で済んだかどうか。
2017 4/7 185
* 起床8:00 血圧122-79(56) 血糖値87 体重66.3kg
* 胴体のあちこちに軽微な痛みを感じはするが、生理的な範囲内と想われる。だり下腹部に触れる柔らかに丸い感触は一昨日の怪我で起きたモノではなく(もっと も微かな痛みは転倒時から感じているのだが、)数ヶ月前から何故ここはこうボッチャリ膨れているのかと、しかし気にしなかった。十数年も朝昼晩にインシュ リンを注射している箇所だからと、要するに放置してきた。
2017 4/8 185
* 十時過ぎ、目が、夕方からもうタメで、機械仕事、ほとんど手探りでしていた。電灯が暗くては見えず、明るいと眩しくて見えない。もう、やめて、階下へ。 それでも、源氏物語り柏木の末期を読み終えて、世界は寂しみを増してきた。石清水物語も大きく変転。一代男は放埒な好色を堪能しながら成人して行く。何が 難儀といって西鶴を初めとする近世日本語ほどムズカシイのは無い。
2017 4/8 185
* 起床8:20 血圧148-63(65) 血糖値88 体重66.7kg
2017 4/9 185
* ハネ出されて築地の路上へ出ると建日子が待っていた。即、銀座のまた三笠会館へ向かい、イタリアンの階にあがった。出逢いの目的は「源氏物語」本文を 手早くかつ判りよく読み取れる参考書を七、八册手渡してやること、そして先日妻の誕生日に南国酒家で中華料理をご馳走してくれたお返しもしたのである。
妻も建日子もイタリアンのコースを美味いと喜んでくれたが、わたしはパスタの皿も肉の皿もうまく口にあってくれず、お添えモノの初めの軽い二皿と、デ ザートにエスプレッソを賞味した、いやいや妻と私はキールロワイヤルを楽しみ、建日子は葡萄のジュースをお代わりしていた。
銀座で別れてきた。いい日曜だった。ああいう芝居を観てくると、朝日子もいたらいいのにとも思ったが。
2017 4/9 185
* 朝のうちにも名古屋の画廊主、大脇八壽子さんから名古屋市でしか手に入らないらしいいろんな味わいの味噌をたっぷり頂戴した。酒の肴にもなりそう。佳 い手紙も添っていた。むかし村上華岳の観音像を手に入れたので観て下さいと誘われて、京都へ所用の途中下車してみせてもらってきた。以来、三十年にもなろ う、大脇さんも古稀ではないか。どんなに若かった人も確実に年を取るのだなあと天を仰ぐ、自分は棚に上げて。バカみたい。今日も銀座からの帰り、地下鉄へ おりる階段であわや転げ落ちかけて危うく前の建日子に掴んでもらえて助かった。それでいて少年のような気でいるのだ。バカみたい。
2017 4/9 185
* 起床8:20 血圧136-59(58) 血糖値89 体重65.9kg
2017 4/10 185
* 昨夜、『石清水物語』をまことに興深くおもしろく読み終えた。この一巻の中世物語の背景へひろがっている「実」話世界はまた確実にわたしの仕掛けの小 説世界へ繋がってきて呉れるかもと、希望ももてた。なかなかの、心にくい情緒と姿勢とで組み興された物語で、ただのツクリ話でない堅い手応えがある。出会 えてよかった。このような平安擬古の物語に「武士」が主役で登場するとは、その武士に実の源氏武士の影が見えているとは。 おもしろいし、少なくも当分は 座右から手放せない。
* 今一つ、多年の念願を心新たにまた呼び起こせた、仕様によってはこれまた花やいでしかも重たげな恐怖へも繋がって行く小説世界への意欲を、鬱蒼とした中世の風景から昨夜の或る読書で甦らせることが出来た。欲しいのは、時間、時間、時間。時間と健康。 2017 4/10 185
* 起床9:20 血圧147-71(59) 血糖値82 体重66.8kg
* 寒いほど、夜来本降りの雨やまず、やや小降
2017 4/11 185
* 腸閉現象にこの二三日困惑している。便意が動かない。困る。まだ、さして苦痛はないのだけれど。十時半、休みたい。昨夜は、リーゼを一錠服したかも知れない、朝まで寝覚めなかった。それは、ラクであったが。
2017 4/11 185
* 起床9:20 血圧152-77(52) 血糖値91 体重66.9kg
* 快晴。気持ちいい。
血の臭いのしている世界情勢など、耳にしたくない。
青葉の青、ちりしきる雪柳の白に心洗われる。
とても、あれにもこれにもとは心を分割できない。読み・書き・出版に思いをあつめながら、政道世道の非理はゆるすまいと願う。
* と、思っていたら、雨にもなった。
今日は終日も「選集」の第二十二巻の編成に取り組んでいて、大方、終えた。おかげで、目、ぼろぼろ。
2017 4/12 185
* 起床9:20 血圧154-79(56) 血糖値89 体重67.3kg
* 快晴。気持ちいい。鵯も来訪。
2017 4/13 185
* 明日は歌舞伎座の昼を観る。染五郎の伊勢音頭・貢、幸四郎の熊谷陣屋を楽しむ。他に、仁左衛門も。今夜ははやめに休んでおく。
2017 4/13 185
* 起床7:00 血圧142-74(56) 血糖値84 体重67.0kg
* 快晴。気持ちいい。鵯も来訪。
* この春は花見らしきをして来れなかった。今日、歌舞伎のはねたあと、日も長くなっていることだし、木挽町からどこかへ足を伸ばしてみたい気分も、湖の本発送前に疲れを溜めたくはないけれど。芝居を楽しんでこよう。
2017 4/14 185
* 高麗屋夫人、若夫人ともロビーでしばし歓談、いつものように中央二列の角席を貰えていて、目薬はさしさし、しみじみと舞台を楽しませてもらい、感謝。
2017 4/14 185
* 凸版へ「第十九巻」の支払いを済ませてから、ぼんやりと地下鉄で上野へ行き、不忍池の春の風情や上野の街をそぞろ歩いて、馴染みの「天庄」でしっかり 二人で天麩羅を。わたしはビール一本。鴎外「雁」の道を通って東大まで歩いていったが、両脚に強烈な攣縮痛が起き、辛うじてタクシーを拾い池袋西武まで 帰って、座れる西武線で帰ってきた。歩いていて、猛烈な痙攣にほとほと困じたのは三度目かな。この調子では、なかなか歩きに出られないが、歩かないといけ ないのかも知れない。歩かないから脚が弱っているのだろう。これでは、うかと一人旅が出来ない。
2017 4/14 185
* 起床8:15 血圧162-80(52) 血糖値95 体重66.7kg
2017 4/15 185
* 両脚に微弱ながら攣縮の気配が常住している。太腿の半ばから膝下、足首へまで、冷やあっと水が掛かったように冷えている。脚に堅い筋棒(干した棒鱈のよう)が剥き出して、柔らかな肉が無くなっているかと感じる。
2017 4/15 185
* 起床10:15 血圧141-72(70) 血糖値82 体重66.7kg
2017 4/16 185
* 起床8:50 血圧131-61(60) 血糖値88 体重66.9kg
2017 4/17 185
* 起床8:50 血圧142-71(70) 血糖値90 体重66.0kg
2017 4/18 185
* こんな、自分に問う歌で「亂聲(らんじゃう)」を終えていた。
余念なく眠つてをればよいものを
なぜ起きてくる 死にたくないのか
疲労が滲んでいるが、まだ、目は覚まさねば。
2017 4/18 185
* 起床8:00 血圧150-75(55) 血糖値93 体重65.9kg
2017 4/19 185
* 起床8:30 血圧165-72(63) 血糖値90 体重65.8kg
2017 4/20 185
* 起床8:10 血圧132-66(54) 血糖値88 体重65.6kg
* 梅原猛さん 自筆の選集受領挨拶があった。清水六兵衛さん、下鴨へ転居、工場は従前と通知があった。先代九兵衛さんがしきりと懐かしい。
京都美術文化賞の選者を二十数年も続け合った仲間も、清水さん、石本正さん、三浦景生さんらみな亡く、わたしをここへ誘い込んで下さった橋田二朗先生も。
梅原猛さんとわたしとが生き残っていて、わたしは選者を退いている。第二回に推して受賞してもらった楽吉左衛門氏が、いま、わたしのあとへ選者で入ってくれている。
この五月下旬には今年の授賞式が予定されていて、わたしも顔を出したいが、さあ、この体調では、むずかしいだろうな。
* 両脚とも、水に漬けたようにサアッと冷えている。靴下を穿かないでいる足さきが痛いほど。
2017 4/21 185
* 夕方、一月ぶりに歯医者へ、二人で。帰りに、江古田の「中華家族」で、わたしはマオタイを。帰りの電車混んでいて、立って帰った。疲れた。一週間後に は「湖の本134」が出来てくる。数量が多いだけ、この発送はひときわ二人とも疲れる。ゆっくり、急がずに送り出すしかない。
* あれをしよう、これをしようとしても、目も疲れ、集中力を欠き、残念だが機械から離れてできる仕事(たくさん有る)をしようと。いちばん気を惹かれる のは、やはり「読む」こと。「中世」研究書が面白く読める。なにかしら力も得られる。いま欠いている小説への刺戟もある。
源氏物語は「夕霧」の巻を読み終えたら、「御法」「幻」はとばして、いっそ「竹河」へ飛んでおいて、宇治十帖へ進みたい。島津さんの「放談」も読みた い。島津さんは源氏物語専門の学者ではないが、数十年の読みの特異さに自負もおありであった。わたしは、源氏物語というと亡くなった今井源衛さんにいろい ろ教わった。島津さんも今井さんと親しかったと聞いていたが、今度の本をまさしく置き土産に亡くなった。所沢か保谷かでいちどは私と話したかったと言われ ていた、と
2017 4/21 185
* 起床8:00 血圧121-60(59) 血糖値90 体重65.9kg
2017 4/22 185
* 起床8:15 血圧150-70(59) 血糖値88 体重66.6kg
2017 4/23 185
* もう機械へ向かい続ける視力が散ってしまっている。
* だれか、妻以外の人と言葉を交わしただろうかと、歯医者のお嬢と口をきいて、帰りに時計の電池を眼鏡屋で替えてもらって、思い出せるかぎり、ずーっ と、それだけ。電話は嫌いで掛けることも、掛かってくることもない。掛かってきても妻に任せてめったに受話器をもたない。人間を半分がた廃業しているみた いだが読書はその分をよほとしっかり補ってくれる。例のわたしの「部屋」へは、このところ夕霧だの世之介だのおっそろしい一休骸骨などが呼べば襖の向こう から顔を出してくれる。骸骨さんは凄いよ。
2017 4/23 185
* 起床9:10 血圧166-76(62) 血糖値84 体重66.3kg
* 「タカをくくる」のは容易いが、歯止めのない甘えになるとき、笑うに笑えないハメに陥る。
2017 4/24 185
* 起床9:15 血圧139-62(64) 血糖値91 体重67.1kg
* 医学書院に就職し編集者になってこのかた、切腹もの、最大の失敗を犯した。
「選集⑳」の{責了紙}となるべく丹念に、熱心に再校をつづけてきた数百頁分を、なんと明日の故紙回収紙として妻の方へ渡していた。我が家では信じがたいほど回収してほしい故紙が山のように出る。妻は今回もそれらを大量に積み重ね、すでに幾つも幾つもの荷にしていた。
荷のすべてをまた解きほどいて、かろうじて、いま、故紙の山から「捨ててはならない、進行中の再校ゲラ」をほぼ一巻分救出した、それ自体もはや奇跡のよ うだが、そもそもそんな事態へ大事な大事な校正ゲラを混ぜて出したというのが、此のわたしの際立った「衰え・不注意・失錯」であった。真実胸を撫で下ろし ながら、かつ愕然と落ちこんでいる。ああ潮時がきたのかと、かの桂文楽引退の一瞬を痛いほど思い出している。文楽は、高座で、一瞬「絶句」した。そのまま 高座で深く深く頭をさげ、そして名人文楽は「引退」したのだった。
2017 4/25 185
* 突如のきつい胸苦しさに脈も微弱に呻いたまま気が遠くなりそうになったのを、妻が所持のニトロを口に含み、辛うじてもとに復した。激しく動いたワケで はない。さきの校正ゲラをあわや故紙回収へという大失錯に驚倒したも事実だが、飲みと食いとのバランスが宜しくないという自覚もある。ま、階段をよろよろ と上がって機械の前に腰かけ、仕掛けの小説に向きあうと、もうそんなことも忘れて打ちこんでいた、が、疲労はやはり濃い。眼も霞んでしまっている。床に就 いてからの読書が昔と変わらず二時近くに及んでいるこのところも、健康にはコクなのかも。まるで誰かとカケッコを競っているみたい。知らず知らず歯を噛み しめて仕事していて、歯も歯茎も痛い。
* ゆっくり湯につかって、いつも三十頁ほど校正する。電車に乗るか、湯に漬かるか。病院外来の待ち時間か。校正の能率はこの辺で挙げている。もうすぐ「選集第二十巻」を責了紙に仕上げられるだろう。「湖の本134」発送までの二日間をうまく生かしたい。、
* 風があちこちで物音を立てている。十時前だが、機械はもうとめよう。今宮の楓をまた観てから。
2017 4/25 185
* 起床8:15 血圧134-63(62) 血糖値85 体重66.3kg
2017 4/26 185
☆ お見舞い
みづうみ、お元気ですか。
* 突如のきつい胸苦しさに脈も微弱に呻いたまま気が遠くなりそうになったのを、妻が所持のニトロを口に含み、辛うじてもとに復した。
と ありましたので、昨夜からとても心配しています。奥様がいらっしゃらなかったらどうなりましたでしょう。ニトロカプセルを首にかけている方も見かけます が、そのようなご用意もあるいは必要かもしれません。でも何よりそのようにならないのが一番です。どうか早めにご受診くださいますように。そして食生活に もお気をつけてください。(セシウム蓄積されませんよう)
みづうみがお元気で、存分にお仕事をお進めになれますようにと毎日お祈りしています。 みづうみのご体調のお見舞いをしながらこのようなことお訊ねするのは大変申しわけないのですが、一つお許しください。
みづうみは以前湖の本で出版された年譜の続きを作成なさっていらっしゃるでしょうか。
「湖の本134 亂聲(らんじやう)」発送作業はくれぐれもご無理なさらないでください。お大切にお大事にお過ごしください。
春 春昼や魔法のきかぬ魔法瓶 安住敦
* あの胸の痛さにはビックリした。千枚に及ぶほどの再校ゲラを、こともあろうに「故紙回収」の方へわたし自身で廻していた(回収は今日であった)その大失錯に自、身老耄を案じて衝くように胸を痛めたのだろう。妻にも心配かけました。
わたしの機械仕事の部屋は二階にあり、手洗いは二階にもあるが、少しの息抜きも兼ね洗面所に近い階下へ降りることが多い。自然朝から夜まで昇降を繰り返 しているのだが、正直な物で、午前中はすたすた上り下りしていても、昼下がりからは疲れてよたよたしてしまえ。ゆっくりになる。そのうちかすかに胸が重く 感じられたりする。ひういう自分と気ながに付き合ってゆくのが老の坂というもの。気を付けて暮らしています、つもり。
2017 4/26 185
* 起床8:45 血圧141-67(58) 血糖値96 体重66.3kg
* 「選集⑳」全紙責了で送った。「選集二十一巻」はこれから再校にかかる。「選集二十二巻」もやがて校正が出てくるだろう。「選集二十三巻」の入稿用意も進んでいる。
「湖の本135小説・ 黒谷 女坂 女の噂(一)」の初校が今朝届いた。「湖の本136 現代語訳・枕草子選抄」の初校は一足先に届いていた。
信じがたいほどの作業量。加えて、創作が、一列、二列、三列と歩を揃えている。資本は健康なからだしか無い。
2017 4/27 185
* 夕飯の前後からガクリと疲れる。
* 明治学院大につづいて立教大学でも「秦 恒平選集」を全巻受け入れてくれると。明日からの湖の本発送に次いで、第1-18巻の荷造りを。ほかにもまた増えてくるだろう、大学文学部、大学図書館、國府県都市図書館、研究施設へ入れている。
荷造りはみな妻がしてくれている。重い手仕事で、疲れるだろう。運ぶという力仕事はわたしが引き受けているが。
2017 4/27 185
* 起床7:00 血圧135-65(63) 血糖値90 体重66.2kg
2017 4/28 185
* 夜九時、一日の作業を切り上げてきた。疲れた。クロネコのケース一つに、荷造りした本が60册入る、のを幾つも幾つも幾つも持ち上げて、朝から晩まで、キッチンから玄関へ運びつづける。
発送の合間に中休みに二階で創作の手入れもし、昨日届いた「湖の本135」の初校も昨晩以来もう三分の二進めた。残る三分の一も今夜のうちに読み終え、それなりに納得したい。
発送の作業は明日も終日。なんとか明後日には終えたい。
そのあとは暫く、第四週まで、予定的にはらくになる。四週には病院・医院通いが固まっている。そしてそのあとはまた、何かと仕事が固まって追いかけてくる。「湖の本」創刊三十一年の桜桃忌前後には、さらにまた新しい小説を一作、また一作と心がけている。
2017 4/28 185
* 起床8:30 血圧145-68(62) 血糖値90 体重66.3kg
* 発送二日目、ぐったり疲れているのが、作業の能率や力仕事でわかる。階段がすこしシンドい。
2017 4/29 185
* 口もきけないほど疲れた。頑張れば今晩に終わるだろうかと願った作業、明日に延ばした。
* クロネコやまとの事情で、「湖の本」もついに終えねばならなくなりそう。一つには、値上げ。もう一つには、荷にシールを貼る作業を我が家で引き受け手欲しいと。今の作業量でも身いっぱいなのに手作業が増えるのは躯がつらい。
どこかでは終止符やむをえないと覚悟してきたが、大きな心残りにはなる。思案のしどころで、疲れが重い。
* 十一時半 やっぱり、がんばった。明日、昼前には発送作業を終えられる。仕事に打ち込める。大きな連休らしい。旅の出来る人も多かろう。羨ましくもあるが、このままも、いい。書庫に買っておいていつか読もうととって置いた『説経』の本を急に読みたくなってきた。
新聞やも雑誌の類はもう字が見えない、うす色のコピーや会報のたぐいまったく見えない。字の大きな本は本体も大きくて重たいのが難だが。わたしの選集、重いかなあ。
あ、日付がやがて変わる。寝床でもう少し校正してから本を何冊か読むのが、このごろの常。灯を消すのは二時。朝は、気儘に。
2017 4/29 185
* 起床9:50 血圧138-66(61) 血糖値86 体重65.9kg
* 作業ほぼ満了。二時半。
* 爪は割れて何にもひっかかり、すこし打ち当たると骨は赤く腫れる。掌は干からびて指先へ血も感覚も行きつかない。目は見えない、新聞も雑誌も、色薄い コピーブリントも、みな、読めない。鉢巻きのように拡大鏡をアタマに巻いても目がまいそうで、読みにくい。悪戦苦闘こそ生きている証のようで、わらってし まう。ま、それでも生きているにはちがいない。
2017 4/30 185
* 起床8:00 血圧165-77(60) 血糖値86 体重66.8kg
20175/1 186
* 日付が変わったが、幸い、数日はラク日がつづく。天気がよければ、ふらふら出歩けると佳いのだが。
2017 5/1 186
* 起床9:00 血圧142-71(54) 血糖値77 体重66.2kg
2017 5/2 186
* 今日、ひとつ、心を決めた。
* なにか心身に不調和があるのだろう、疲れようが異様に感じられる。生活が棒のように、太く一貫はしているが、単調。仕事は順に従い違和も不満もない が、さまざまな読書のほか現実には楽しいことが何にも無い。どこへも出掛けない、妻の他は誰とも話さない。近くに喫茶店も無い。自転車は危なくなった。近 隣に散歩に出たいところも無い。独り、西武線で秩父へまでもまた乗って行くか。だが窓外にとくべつ気を惹く風景もないし。
いっそ横浜中華街まで、行って、また、帰ってくるか、電車乗り換え無しに行けるのだった。そうそう問題の豊洲へも一本で行けるのだった。単調に高い建物ばっかりだが。
むかしは、博物館への行きか帰りに、鶯谷駅まえ公望莊の蕎麦で、よく酒を飲んだ。いま独り外で心ゆくまで酒を呑んでしまうと、帰りが危ない。それに蕎麦や饂飩は好きだけれどつい呑み込みがちで、胃袋のない身には腸閉塞が怖い。
しっかり目を閉じ、したたかにいろいろさまざまな妄想に耽っているのが有即斎に向いてて無難かなあ。
いやいや、真剣に小説の方へ身を向け心を励まします。祈る人になって。上の墨描画、すばらしい。
* 十時だが、もう、休みたい。
2017 5/2 186
* 起床9:00 血圧151-70(58) 血糖値85 体重66.6kg
2017 5/3 186
* 十一時。仕事場を階下に替えて、書くから読む仕事へ。
* 鵯が、虫食い季節に入ってこっちへ姿を見せない代わりに、せっせと雉鳩のつがいが来て、米や飯をまいてやると余念なくそれは綺麗に食べ尽くして行く。 火に三度三食はして行くから妙に嬉しい。神経質な鵯たちと違い鳩はわたしたちを怖がらず、あしもとへまでも近寄る。「いのち」が生き生きと間近で動き働き しているのを見る嬉しさ、励まされる。まったくウソクサク無いのも嬉しい。
2017 5/3 186
* 起床8:50 血圧136-64(60) 血糖値102 体重65.4kg
2017 5/4 186
* 『清水坂(仮題)』は楽しめる、作者自身には。長々しい作にしないで、語り味を楽しんでいる。慌てまい。
今一つ「信じられない話だが」これまた後白河院絡みの蜘蛛の巣のような現代の物語が書き始めてある。成ればいいが。今いまの思いつきでなく、落想はやき り四半世紀も遡れるが、これも願わくは取材確認の旅へ出たくなる。ああ、その気になれば、ほかにも抱きしめている怖いモノ語りが在るよなあ。唐突だが必要 条件はしっかり栄養を食することだが、色や形や匂い、それに堅さだけで食い気が失せてしまうのではハナシにならない。佳い焼酎に蜂蜜を少量まぜながら、 750mlを二日半で飲み干した。谷崎先生は焼酎三分の一ほど酒をまぜ砂糖を加味して氷で呑むと暑気払いにいいなどと人に手紙を書かれていたが。
食の細ってしまう原因はやはり胃袋の失せたこと、腸がいきなり食道へ繋がれているので、胃で溜めて消化することが出来ず、細い麺類や茸類や堅めのものは常住腸閉塞の危険をともなうので、怖くてついつい美味しい上等食でも咀嚼しにくくてはつい敬遠する。
新茶を戴く季節になった。お茶は嬉しい。和三盆のような口当たりの優しい甘味も好き。酒も甘味も好きなので助かっている。
2017 5/4 186
* 起床9:00 血圧163-94(58) 血糖値86 体重65.4kg
2017 5/5 186
* 眩しかったり暗かったり 読みにくい機会の字を懸命に読んでいると知らず知らず歯を噛みしめていて痛んでくる。歴史物の原稿を正確に復元しようとすると、無数のフリ仮名に脚を取られ続ける。参る。じんじん痛みが強まる。たまりかねてバファリンの厄介になる。
* うふッ と、ちいさくのけぞりそうに知人男性の髯づらに出会うことがある。
なんで髯などと思う。許せる一つの理由はひげ剃りの面倒…いやいや蓄えた髭のままもよほど手が掛かるだろうに。
わたしは髯を蓄える気は全然無いが、不精なために出掛けない限りまことに見苦しい無精髭の無精髪である。それでよくよくでないと出掛ける間にならない。 イカンなあと、今日、久しぶりに髯をあたった。髪も梳いてみた。やはり邪魔くさいのである。ま、明日あたり天気次第で谷崎・芥川両家の墓のあるというお寺 を訪ねようか、いやいや見当もつかず探し回るなんて、無理。
* 今日も午後三時もまわると、潰れそうに疲れが重い荷のようにのしかかった。そんなときは、ただただ仕事をしてしまう。仕事中はすこし疲れを脇に置いて おける、が、やめるとズッシーンと来る。ダル重いどころでない。酒も焼酎も切れたので国産のワインを抜く。酔いのまわりのはやいこと、少し居眠りしてまた 二階へ仕事しにあがる。階段を踏む脚が重たい。
* 夕過ぎて「斬九郎」という渡辺。若原といういいコンビに北大路欣也が加わったドラマをしばし楽しんだ。小林綾子も出ていた。時代ものでは、マシな方である。
* 十時半。もう休もう。
2017 5/5 186
* 起床8:20 血圧140-65(61) 血糖値98 体重65.7kg
2017 5/6 186
* ジンジンと歯が疼く。髯も当たったことだし今日はすこしでも出ようかなと想いはしたが、結局近所の市場で焼酎とコーラだけを買ってきた。視野が常にうるうるしているので、自転車、らくらく走れはするが気を付けないといけない。
なんとかモノを捨てよう棄てようと試みるのだが、満杯のダンボール函の二函から嵩にしてものの十糎足らずしか棄てられないとは、唸ってしまう、
2017 5/6 186
* 起床8:45 血圧106-57(59) 血糖値87 体重〇〇8kg
2017 5/7 186
* 目疲れをおして読み書き絶やさないので、肩こり頸こりがし歯が痛むのだろう。大連休も今日で終わるとか、心静かにますます仕事へ立ち向かいたい。
2017 5/7 186
* ポストへ用を頼まれ、ふつうの自転車で坂道はと、久しぶりに電動車を使った。坂登りもらくで、すこし人や車のすくなめな近在を十 数分走ってきたが、電動車のハンドル幅の狭さが危なっかしく気疲れした。帰ると、頸まわりが凝り歯痛も兆し、疲労困憊して潰れるように三、四時間も寝た。
醒めて食卓で冷えたコーラを口にしたら跳び上がりそうに歯茎が痛んだ、温めた湯や茶やみそ汁で持ち直した。食欲無く、葛湯をつくってもらって、此処へ持ち込んだ。折角「かね正」のお茶漬け鰻へも手が出なかった。
2017 5/7 186
* 疲れ果てた。下へおりて、機械の字でない字の本を読んで寝よう。ついにわたしの連休も終わる。この二三日一の楽しみの読書は、昔に井口哲郎さんに戴い ていた、石川近代文学館編の大きな『近代戯曲集』巻頭の鏡花作「天守物語」。せりふや場面の端々隅々まで何度もの観劇、ことに玉三郎演出の舞台を楽しみ尽 くしてきたので、活字から舞台が立ち上がるように甦るのだ、それが途方もなく面白く、いまでは鏡花の代表作は戯曲の「天守物語」し「海神別荘」と極めが着 いてしまっている。小説をあげろと言われても突出して一つ二つがでてこない、ま、学研版のために私の選んだ『高野聖』『歌行燈』に、現代語訳もした『龍潭 譚』か。
わたしにはことに「天守物語」「海神別荘」は魂の故郷のように懐かしいのである、怖いクセして。わたしの初期作の多くがその同じ懐かしさをひしと抱いている。
2017 5/7 186
* 起床8:45 血圧106-57(59) 血糖値87 体重65.8kg
2017 5/8 186
* ものの十数分も近所を自転車でゆっくり走っていただけで両頸の横が詰まるように痛み、こわくなって立ち戻った。横になって、枕草子を読んで、やすんだ。
体調の調わぬことに気が陰る。
2017 5/8 186
* にわかに暑くなってきた。例年、梅雨期の寒暖に妻もわたしもヘコむのである。
2017 5/8 186
* 起床7:45 血圧155-71(58) 血糖値87 体重66.5kg
2017 5/9 186
* 起床8:30 血圧142-67(53) 血糖値97 体重66.3kg
* 「この廣い野原に咲く花を ひとつのこらずあなたにあげる」と芹洋子の明るい歌声で、明け方よく睡れなかった。好んで聴く歌ではあるが、ひとつのこらず何でも呉れるなど聞くと、尻込みしてしまう。
2017 5/10 186
* 晩の食後 おもわず、夢をみていた。珍しく佳い夢であったのにもう消え失せて行く。
2017 5/10 186
* 眼が乾ききっている。十時、機械からは失敬するしかあるまい。「機械」画面の照りはよほど眼を灼く。階下で、また外出時の戸外で裸眼で校正している時は、よほど読めるのに。しかし機械は機械でないとできぬ仕事があるしなあ。
* 昨日今日と意図して酒類を絶っていた。明日もう一日試みてみる。すこしの(とわたしは思っているが)酒で酔いが早く深く永くまわる気配、それをきちっと意識し承知しながら飲むのを喜びたい。よろけて怪我をしたくない。
二日飲まなくても、それが三日でも、それで体調が揺れるということはこれまでも無かった、中毒症状は全然無い。が、飲めば少量で深めに酔うとだけは心得ていたい。概して低めの血圧だったのを
不用意に高くはしたくない。
* 青い花の名、聞いたが忘れてしまった。いま、隠れ蓑の落ち葉が目立つ。入れ替わるのだろう。黒いマゴの寝ているうえの南天も新しい葉が豊かに増して瑞 々しい。「マゴ」と呼びかけている。一日中、縁に立てば「ネコ、ノコ、マーゴ」と呼びかけてはひとしきり声に出して話している。めざましく大きくなった隠 れ蓑も南天も、愛したネコたちの命のように眺めている。
2017 5/10 186
* 起床5:30 血圧142-71(52) 血糖値89 体重65.8kg
* 五時半に目がさめてしまった。ためらわず、床を抜け出てきた。
* 朝一番にみる、色美しい浄瑠璃寺、そして小紫、大紫の花、花。目も、思いも、洗われる。
* 毎朝、毎日、毎晩、八十一どころか少年のままの幼い、だが生き生きとした気分で気儘に過ごしているのが、ときに恥ずかしいが、ときにとても嬉しい。枯淡とか仙境など所詮縁のないものだと明きらめている。
あらけない世の行く果てに身をちぢめ
嘆いてゐても詮無いぞ 起てよ 遠
* 西日をさけてこの機械部屋の西の窓はいつも雨戸がかけてある。しぜん戸袋は空いていて、そこへ何かしら鳥が巣をつくったらしい、ことこと、ことッとかそけく音がする。観たい、が、そっとしておこうと思う。
2017 5/11 186
* 来週水曜、その次週の月・火曜、暫くぶりに聖路加へ通う。金曜には歯医者へ。そういう予定もかしこく念頭におきながら六月を丁寧に待ちたい、選集を追 いかけて「湖の本135 黒谷・女坂」も送り出さねばならないだろう、十九日 桜桃忌が過ぎたあたりに発送したい、が。桜桃忌には、歌舞伎座が予約してあ る。
* そういえばこの日曜から五月夏場所か。わたしたちは、白鵬の横綱相撲を、期待。
* 三日間、酒類を口にしなかった、アルコール中毒の心配はしていなかった、ただ、酔いの深さ早さで体調を損じていないか、しろうと考えで試みたかった。 そういう不安は無いとわかった。少なくも今は全然酔っていない、量を過ごしての深酔いは避けよう。一升瓶を四五日見当でカラにしていたが、ま、五六日がい いかな。外出先では、ことに独りのときは、正一合で止めておこう、なんて、出来るかな。
2017 5/11 186
* 起床9:00 血圧120-62(59) 血糖値98 体重65.3kg
2017 5/12 186
* 午、四日ぶりに少し日本酒を二勺足らず飲んだ。ぐっすり、寝入った。
2017 5/12 186
* 起床9:00 血圧113-54(61) 血糖値101 体重65.7kg
* 朝寝の夢はヒドイものだった。天井の高い広大な駅待合の隅っこのベンチに独り腰かけていたが、そこへ、老若そろって賑やかな一家か親族かがおおかた女 で六七人も来て、肘があたるほどに一緒くたになった。わたしにまで旧知かのようにみな愛想が良くて辟易した。脈絡もなくわたしはそんな廣いような窮屈なよ うな場所で、独りで校正などする一方、何かしら荷になった出版物の幾山もをどこかへ送り出す作業の監督役もしていて、部下も何人もうろうろしていて、昔勤 めていた頃の課員らだった。
夢を追うのはあまりにややこしい、この先の悲劇ににたテンヤワンヤはもう書ききれなくて、だただ不愉快に迷惑な感覚だけが残るのが悪夢というものだ。やれやれ。
2017 5/13 186
* 十時半。もう機械の字が見えません。
2017 5/13 186
* 起床7:30 血圧155-77(54) 血糖値90 体重65.6kg
2017 5/14 186
* 妻の体調、終日よろしからず、仕事をしていても気になる。診察を受けようと奨めるがイヤがって寝込んでいる。
健康の思わしくない読者・知人のみ多くて、一つにはこの寒暖のブレのきつい日々の天候も禍するのだろう、妻は例年この梅雨入りの時季に弱る。
わたしはひたすら目を酷使気味に働かせ、黙々、仕事を続けている。この夏を、どうかして無難に乗り越えて行きたい。
2017 5/14 186
* もう、機械目が限界。階下で裸眼で校正、そして読んで、眠る。
2017 5/14 186
* 起床8:00 血圧133-63(57) 血糖値91 体重64.8kg
* 昨夜 妻は九度近くまで発熱していた、ロキソニン一錠を服させ氷で冷やし発汗もさせて、今朝は解熱していたが、休ませている。わたしは二時過 ぎまで看ていたが、今朝の目ざめでは、妻もすこし快くなっていたので安堵した。老人だけの、親身な家族の居ない核家族の心細さに、今後はますます対面する だろう、一つ一つ力も思いもあわせて、凌いでゆくしかない。
* あの手術以来、今朝、はじめて体重が64キロ台へ落ちた。手術前86.6キロ、手術後66.6キロほどであった。2キロほどさらに落としたわけで、血 糖値は安定する。高校から結婚のころまでほぼ60キロ程度で、自覚的には削った鉛筆のようだった。ま、63キロ前後で落ち着きたいのだが。
2017 5/15 186
* 高い熱こそおさまっているようだが、五体の不快感で妻は今日も終日床にいる。明日は地元病院で予約の診察日、二十分ほど歩いて行かねばならぬ、わたし も付き添って行こうと思う。なにしろ真夏日ほどの暑さと、昨日の、今日でも、いっそ寒いと言ってしまう気温の乱高下で、例年妻はこの季節に凹むのだが、わ たしも凹む。立ちどまったら崩れるかも知れず、ただただ仕事を、読み書き出版に勤しむことで精神を強く保っている。夕刻過ぎて急ぎの要念校分を自転車でポ ストへ入れてきた。六時半でまだ外はほの明るかった。
2017 5/15 186
* へんに寒い日で、わたしもしきりにくしゃみする。下半身が寒い。この辺で、と云っても十一時過ぎたこと、階下へ降りて蒲団へ脚だけつっこんで本を読も う。かつてのひところに帰って、枕元に大小の本がる十册余も積まれてある。ゲラもある。妻の容子も看ながら睡くなるまで読みたいだけ読む。機械の画面字は 見にくい限りだが、裸眼での本はむしろ慣れてくると読める。
わたしもからだのアチコチが硬く、いささかボーとしている。
2017 5/15 186
* 起床8:50 血圧137-70(55) 血糖値83 体重63.9kg
2017 5/16 186
* 午後は、妻の病院へともあれついて行く、少なくも送って行くと決めている。
* 妻、胆嚢炎で消化器外科へ緊急入院、点滴を受けている。
いつもの循環器系の検査と診察だけなら上首尾であったが、わたしは執拗に尿検査も受けさせていた、その方の結果から、即座にCT、心電図、血液検査等の追加が必要になり、黄疸も出ていて、とても放置できないと即刻入院が決まった。
今日が定日の循環器検査であって、懇意の主治医は担当からはみ出て胆嚢損傷を発見してくれた。尿の所見で歴然であったらしい、付き添って行っててまだしも幸運だった。不用意に明日明後日まだも放置していれば、危なかったと。
病院へは、私の脚で十五分、自転車なら五分で行ける。それが、ひとつの安心。いま、聖路加までの連日の見舞い通院は負担がひどくなる。こういう時は来る とお互いに感じていたが、妻が先に躓いた。ガンバッテ、切り抜けて行きたい。
* わたしはこの三日、ほとんど食事が出来ていない。戴いてある開新堂のクッキーとか、蕎麦を70グラムほど茹でて呑み込んでいる。麺はひとつまちがうと腸に詰まるので慌てないようにしないと。
* 病院から帰って、以上の日誌で九時になった。セイムスて日本酒を買ってきたのを少し飲んで寝よう。
明日の聖路加通院は、延ばして貰うしかない。
2017 5/16 186
* 起床7:00 血圧137-61(64) 血糖値88 体重64.7kg
* 検査の追加が伝えられたと、九時、妻から電話。黄疸が強まっているようで。
* 聖路加の今日の診察、延期にすったもんだ、診察は一月以上も向こうになり、処方箋だけもらいに行かねばならない。
* 出版のほう、万事停頓する。 仕事の進行を人為的に遅らせる算段、必要。今日にも、選集発送のケース届くのも待たねば。生協の配達もある。
* 思いの外にことは進行しているが、慌ててはならない。なにしろ八十一の老老ぐらし、ほかに頼れる手はないと、かねて分明。出来ることを出来る限り、わたしが努めること。
* 届くべき必要な物が、容易に届かないのをガマンして、家で待っている。
仕事のやりくり段取りなど、目を行き届かせ、落ちの無いように確認のメモを。
家事とわたしの食事などにはなかなか手が届かないが、生協からの食品等は、冷蔵庫のいろんな棚が満杯なほど収納したが、なにがわたしに使えるか、どう使うかは手探りしかない。
☆ 落ち着いて
なにがいちばん大切かを考えて、あわてず、無理をせず、ご自分の耐力を過信せず、とにかく、何かを口にして。
おふたりで一セットということを忘れずに。 豊中市 安川美沙 妻の学友
* この助言に尽きると思う。感謝。 お見舞い ありがとう存じます。
* 今日家で待ち受けの用、十一時半済ませた。昼食 なにか思案して、病院へ行く。
* 四時まで点滴のベッドサイトドでたっぷり校正していた。徹底した絶食。発熱がひかず、赤い顔をしている。会話はできる。明日MRI検査をするという。 頑張って持ち堪えて欲しい、その為にも点滴が効果をあげてほしい。家事その他の頼まれ仕事がいっぱいあるのを一時わたしが帰宅してこなしては、また必要な 物を持参する。個室であり、その点、気分は助かっている。
わたしも食べねばと思うが今朝の生協配達で冷蔵庫は溢れるほどになった。豆腐を食べて欲しいというが、豆腐一丁がガンとして見つからない。
* 六時にもう一度見舞うが、雨か。自転車だと七八分と掛からないのが助かる。
* 大勢さんにご心配を掛けている。恐れ入ります。
* 自転車前輪のパンクに困ったが、そのまま六時に病院に入り、七時過ぎにはお帰りをの放送で仕方なく帰ってきた。冷蔵庫の底から豆腐一丁をみつけだし、なんとも致し方なく、削り鰹をみつけてぶっかけ醤油味で半丁喰い、半丁残った。腹が冷えそう。
* 妻の容態は停頓というところか、顔は熱で赤く、黄疸のことは判らないが肌に痒みを感じている。医師の検査方針が徹底せず、明日といっていた検査が明後日に延期。
とにかく治療効果をあげてほしい。胆石が問題らしい。MRI検査が奏功してほしい。いまのところただただ点滴を続けている。病気が複合化して行かないよ う適切な手を打って欲しい。心細く気弱になってはいけない。やや長期戦も余儀ないかも、それだけにわたしが潰れたり怪我したりしては堪らない。疲労は蓄積 されてきている。
人を雇えと奨められる。雇うとどうなるのか、楽になるのか気苦労が増えるのか。判らない。仕事の進行は意図して抑制するしかないが、仕事離れしてしまえばわたし自身が潰れかねない。
* ともあれ、しかし、病室で存外に校正の仕事を進めてきた。今夜は早く床についてからだを休めよう。
* 聖路加の診察がたてこんでいて、日延べなどを頼むのが大層なことで。いま、目と前立腺とのドクターへ手紙を書いた。受付での変更はたいへんに厄介なのである。
2017 5/17 186
* 起床7:00 血圧137-68(80) 血糖値91 体重65.0kg
* リーゼを服して一時半に寝た。明け方、かなり汗をかいていたので起きて直ぐ着替えた。
黒いマゴやネコノコに「カーサンを護っておくれ」と声を掛け、鳩に米をまいてやった。
祈っている。心強くありたい。
* 小さなパンケーキ一枚温めてシロップを掛けて朝食。三枚用意したが一枚で満腹した。有元さんに戴いた美味しい葡萄一房を少しずつ味わう。妻とも食べたいともう一房を楽しみに待つ。
* 聖路加の眼科、前立腺科へ速達で事情を伝え診察日の延期を願う。電話ではえんえんとかかってラチがあかないのに昨日も懲りたのだ。
* 自転車の前輪パンクか、確認しないと。自転車は必須の用品、これだとカラダの負担無しに病院へ見舞える。
2017 5/18 186
* 自転車はパンクしていた。自転車屋があいてなかったので向かいの懇意な散髪店に頼んで預け、家まで歩いて戻った。暑くて暑くてふうふう。ふらふら。すぐ電動自転車を引っ張り出して病院へ。持ち運びのものもいろいろ有り。
* 赤く熱気に照っていた妻の顔が白くなっていた。相変わらず尿は黒ずんでいるらしいが、他は痛みも熱気もなく、すこしく普通の顔つきになっていた。室温が高く、わたしは着たものを脱ぎたいほど。この病院ではお高い個室なので、その点はやや気楽。
折り返して、電動自転車で自転車屋に戻ってパンク自転車の直っているのを確認、チューブ替え含めて三千円なり。いったん電動で家に帰って、また歩いて自転車屋まで行き、乗って病院へ向かうつもり。
* 読者の胡子文子さんから涼菓をいただく。いまは何もかもわたしの為に助かる。感謝。妻は当分完全に絶食と点滴。新検査は、明日とか。
* お見舞いのメール頂いているが、そのままで失礼している。 さ、また病室へ向かい、夕方まで話し相手をしながら、枕草子や「女の噂(一)」の校正などしてくる。校正仕事は停滞がない。
読書は、源氏物語が中継ぎ三帖のあたまの「匂宮」に入り、ほかに討論『中世の風景』また「絵巻」月報三、一遍聖繪につづいて、平治物語繪詞。沙翁劇は悲 劇中の悲劇の名作「リア王」 そして中世の『いはでしのぶ」 を読み進んで気持ちの平穏がえられるまで。そしてリーゼ一錠で昨夜は寝入った。
* 正午へ三十分前。左頸からうしろ肩へやや硬くなってきている。危険信号、ムリはきかない。
朝、吉備の人お心入れのピオーネが素晴らしく美味く、五顆嘆賞。もう一度戴いてから出掛けよう。
* 自転車屋への日盛りの徒歩がきつかった。ふうふう。自転車が直って空気もシッカリ入っていて実に助かった。
* 妻の様子やや尋常にかえれつつあるかと愁眉をくつろげた。明日検査の行方が平穏であってほしいと祈る思いでいる。テラスのネコたちにも「カーサンを 護ってくれよ」と再々こえをかけ頼んでいる。庭や二階で花への水やりもした。ごもくをどう棄てるのかも知らない。大きな冷蔵庫のドアが締まらないほど満杯 なのら何を食って佳いのかもわからない。食べよたべよと病室で尻をたたかれいろいろ聞いたけれど食欲湧かず、てぢかな甘酒を溶き、苺をあらって四つ食べた だけ。これはブルーチーズかな、大きいなと思った四つのひとつを囓ったが正体不明の別ものだった。食い物を探すだけで腹具合が変になってきた。
真綿で包まれたように疲労が被さってくる。ま、手当たり次第に食えそうな物を食っておく。
2017 5/18 186
* 重苦しい疲労の底で、湖の本のために小説「黒谷」また「女坂」に次いで小説ではない「女の噂(一)」の校正が楽しいし、枕草子の読みも楽しい。助かる。
* 五時になる、もう一度冷蔵庫を物色してから、また病院へ走る。建日子が見舞いにくるかも知れないとも。昨夜は白い豆腐一丁だけの晩飯だった。なんともつれなかった。
* 六時に病室へ。校正の仕事持参の分を終える。妻の様子はややに改善しているのかも。点滴の効果か、明日はMRI検査。無事を願う。わたしの校正してい る間、妻はうとうとしていたりテレビ見ていたり。個室なので気兼ねはなく、しかしわたしがいるので安心感もあろう、とくべつしゃべりあってもいない。
七時過ぎて建日子が見舞いに来た。見舞いは七時までです追い立てを食った。わたし独りさきに自転車で帰り、追っかけて建日子も帰ってきた。ふたりで珍し く酒を飲んだ。建日子は有元さんのピオーネに驚喜のていであった。九時半まで、父子で歓談、母親の居ない場で二人和やかに酒を酌み交わしての歓談は稀有の 体験、とても喜ばしかった。
* 明日のどうか平穏を願って、まだ十時だが、もう機械仕事はやすもうと思う。
2017 5/18 186
* 起床7:00 血圧137-71(55) 血糖値91 体重64.7kg
* 寝汗をかいていた。適切な食事が選び出せず、台所道具なども昔とちがい成功なのだろうが使いこなせなくて、缶詰も開けられない。ごみの始末も、分別の原則 が掴めていず、ビニールの明き袋も見つけられないが、どうも無いと不便らしい。トースターやチンの類も適正時間がわからず、結局手当たり次第に口にし易い 物でお茶をにごしている。
* 鳩のために米をまいてやった。花にも水をやった。
* 病室にいても校正しながらとろんとするときがある。暑い。検査午後。そして夕方から食事が出て、土日を隔てて月火水と三種類の検査をして、様子を見て 退院か。さらにまた日程を調整して胆嚢摘出の手術になるかと。全身症状は改善の方向にあるが、直ぐには帰してくれそうにない。
* 午に帰って食事、これが参る。冷凍されている何かしらを解凍してどうとかと。やってみると、油濃くて肉は硬くて、およそ苦手な雑なもの、処分。ヤクル トを飲み、蜜柑の缶詰をあけ、とろろ芋の冷凍をもどし、卵を割り込んで味だしかけて、喰う。食後に美味いピオーネを数粒食べてからまた病院へ。近くて助か る。
2017 5/19 186
* MRI検査てせ胆石はみな十二指腸へ降りていて、ケッコウでしたと。夕食が出た。
それでもなお、土日をそのまま入院して過ごし月火水の三日、内視鏡や胆嚢造影など三種の検査をつづけると。その結果胆嚢摘出の手術をいつするか決めましょうと。わたしの腸閉入院よりも永い。ま、温和な推移を願うのみ。
* 近くはあり日に三回も病院と家を往復している。しんしんとも疲労して、今日は午も夕も冷凍食の扱いを失敗して二度とも棄てた。とろろ芋に卵をかけて食 い、あとは菓子と酒。食品の調理説明の字がちいさく読めなくて、二度とも失敗した。色目悪く、見るからしつこそうな雑な煮物は辟易してしまう。ま、すこし ずつ上手になるか。
2017 5/19 186
* 起床7:10 血圧107-50(71) 血糖値90 体重65.6kg
2017 5/20 186
* 花に水もやった。書庫上の細い庭を埋めるように紫蘭が満開。そして隠れ蓑、新陳代謝の落ち葉また落ち葉、いっそ華やか。
九時には病院へ。
* 昼前に帰り、一時に行き、三時半に帰ってきた。
2017 5/20 186
* さて、トリの唐揚げひとつ温めて。ヤサイジュースとヤクルトを飲んで。また病室へ。別に何も話すのではないが、わたしが部屋にいて校正などしている間、妻は本を読んだり寝入ってたりテレビを観てたりしている。わたしがそばにいて、安心していてくれればそれでいい。
明日も何も無しの休息入院。月曜にまず内視鏡検査から再開。
* 家に帰れば二階で、入稿原稿づくりと、創作。階下では校正往来のようのほか、昨夜は大きな郵便発送用に百枚も「住所印」「書籍小包印」「謹呈印」を捺した。
* 尾張の鳶さんにらった「背負い鞄」がとっても役だってくれている。背負って自転車に乗ると両腕を安心してハンドルに任せられる。自転車走り、軽快です。感謝。
* その自転車の鍵が利かなくなって弱っている、やはり院の自転車置き場でそのまま置くという勇気はなく、また何か対策しなければならぬ。とにかく「食 事」などというまともなことはまるで出来ず、口にも通らない。あり合わせの菓子と果物と飲み物とを強引に口へ運んで済ませている。
* 妻は食事が出始めたが点滴はまだ続けている。今日明日はただもう個室で休息ということ。全身状態は、ま、改善ないし回復しつつあるらしく。それだけでも、喜ばしい。
* 目が開けてにれないほど睡いが、そうは甘えている気にならない。昨日届いた「選集二十二巻」の初校もはじめている。「選集二十一巻」は責了にして送り 返したく、「湖の本136」巻の初校も終えておきたい。腰を据えて真作の長編を少なくも手放して可な所までは持っていっておきたい。
* 下でも二階でも花に水やりを励行している。テラスへ米を撒いておいてやると、確実に鳩(だろう)が来て食べて行っている。きれいに無くなっているがこのところ姿を見ない。
* ボワーンとアタマが曇っている。校正していても、漢字の間違いには気がつくが、ただしい漢字がときに書けなくなっているのに驚く。ま、そんなものか。
きょうはもう二階仕事をうちあげて、階下でハンコ捺しだの、責了紙仕立てだのを。
テレビもろくすっぽ観ていない。
今日も三度病室へ行って仕事していた、が、病室の暑いこと。室内熱中症も大いに警戒しなくては。
2017 5/20 186
* 起床7:00 血圧134-63(71) 血糖値95 体重65.9kg
2017 5/21 186
* 七時に起きた。やはり疲れがからだより、顔の辺に感じ取れる。ボーっとしている。
* 九時半、気力うすれ、ト゜ロンと疲れに五体支配されている感じの日盛りの下を病院へ走った。冷たい水を二本買ってやり、有元さんの美味しかったピオーネの最後の五、六粒も容器に入れてきた。ヤクルトや朝刊やアエラなども。
正古誠子の歌集が気に入ったらしい。昨日は能村登四郎の句集を持て行った。全身状態はかなり改善の方向で、食餌も快適に受け入れている様子。
* 病室暑く、冷房しても妻には冷えわたしには効かず、ぐったりと疲れが増してきたので、十一時前にいったん家へ帰ってきた。昼食を摂らねば。この疲労に 負けてボケては困る。両肩にかるい凝りの現れるのは頸に響いてくると宜しくないので、しばらく休憩、できればカラダを横にしてやりたい、が。
2017 5/21 186
* いま、二階で、原稿を読み、物干しの花に水やりをした。庭やテラスの花にも水をやった。
いちばん困っているのは、ごみ出しの幾分類もあってややこしいこと。ヘキエキ。
* こんどは階下へ降りる。昼食は、冷凍の鰻を解凍した。袋ごと熱湯へと聞いて、たしかに袋に入って田ので熱湯へ入れたがどうもヘンだ、よくみると大きい 袋の中に袋入りの鰻が三袋入っていた。外袋から出して、さらに熱した。ま、なんとかかんとか、テレと山椒とで二袋喰った。パイナップルの缶詰を開けた。缶 切りを見つけるのに苦労した。なるほど「学習」いや「自習」である。
* 日盛りのなか、三時前に病室へ、そして妻とときおり詞をかわしかわし、わたしは「わが十二世紀の百年」を思いながら仕事をつづけた。五時前からは、テレビの大相撲を「聴いて」いた。横綱三人が勝ち名乗りを聴いた。
2017 5/21 186
* 起床7:00 血圧124-61(62) 血糖値95 体重66.0kg
* 今日、妻は内視鏡検査を受ける。無事を心より願う。朝食を済ませたわたしは、八時半、病院へ向かう。
* 九時半内視鏡検査、十時に病室へ戻る。黄疸を興したに値する病変らシキハ十二指腸ヘンに見つかったというが。本人は、予期した以上に平然と病室へ帰っ てきて、点滴。十一時十五分ころから水分摂取、昼食も、従来循環器内科の投薬も再開されたのを確認していったん帰宅。あたまの焦げるほどの熱暑だった。
神経質にイヤがっていた内視鏡検査も温和に終え得て良かった。
2017 5/22 186
* 医師の説明を聴いたが全面的には理解できなかったが、大過はなかったものと受け取った。明日そして明後日もうひとつずつ検査して退院し、その後のことは主治医の指導に待つと。ともあれ一安心した。
* 家事的には無能な亭主と嗤われている、だろう、が、学習すればなんとか妻も助けてやれるだろう。編集者として雑用のかたまりのような仕事を 独特の工 夫と手練とで人もおどろく能率で年々歳々実績を挙げていった。あの頃の若さも理解力もうせているだろうが、頭が働いていれば自然と覚えるが、今は、ムリ だ。ひとつには辛抱が足りない。三分火に掛ける三分が辛抱しきれない。
* 見かねて、小松の井口哲郎先生、「今朝新聞に、同封のチラシが入っていました。私にできることがないかと思っていた矢先でしたので、秦さん宛てに注文 しておきました。 自分で試さないで、広告だけ観てお送りするのは軽率だったかも知れません」と、お手紙を頂戴した。① 飲むだけで「玄米」と「大豆」の スゴい栄養 ②米ぬか使用だから少量でも栄養たっぷり ③砂糖不使用でやさしい美味しさ と、チラシにある。「とにかく今は、お二人のおからだのことを心 配しています。」と。
御心配かけて恐れ入ります。深く深く御礼申しあげます。
* なんとまあギラギラと暑いこと。それでも自転車で五分のところに妻はいる、幸いの個室へ見舞ってやれば、その場で妻は寝ていてもテレビ観ていても、わたしはひとりで仕事は出来る。仕事が出来るのなら、ただそばにいてやれるだけはいてやりたい、それだけのこと。
2017 5/22 186
* 十時半。もう機械では目が利かない。階下へ降りる。テラスに黒いマゴやネコとノコとが仲良くいてくれるので心やすまる。
2017 5/22 186
* 起床7:30 血圧136-68(71) 血糖値96 体重65.9kg
2017 5/23 186
* 超音波試験は終えた。
二時間ほど病室にいて、家に戻って、明日朝に回収される、重い重い大きな「故紙」の山を六つ七つも紐で束ねて、朝一番に外へ出せるよう、用意した。出版に関わる故紙と雑誌宣伝物の類がベラボーに我が家は多い。束ねるだけで汗ダク。
戸外へ出すときは必ず手伝っていたが、束ねるだけでも大変な力仕事になる。妻に、ゴクローサンと言い言い束ねたり運んだり、「故紙」の「腰」痛いのに堪えた。
猛烈暑いが、日盛りの草花に水をやって、一休みしてから、また病院へ。
* 明日は、どうか無事に退院したいものだ。
退院は、嬉しいものだ。この数年に、わたしは、自分のを五回、妻のも五、六回、体験している。
* 三時前から六時前まで病室で校正、妻は、つかれたであろう、寝入っていた。大相撲を見終えずに帰路につき、途中一度、危うく転倒しかけて持ち堪えた。自転 車の前輪が道路の何か高い隔てに乗り上げたのだ、夕暮れてもいたし、わたしの目も鳥目のように見えなかった。まずまず無事に帰宅。疲れた。ちっちゃな冷凍 のパンケーキ二枚を温め、シロップでそそくさと喰って夕食。あとは鮭のほぐしで、酒。
* 無事に明日の晩は妻をいえに迎え入れたい。その先はその先、いまは考えない。熱暑と日照り、疲労の極へ来ているが、からだの疲労は何とでも乗り越えられる。精神を疲労困憊させてはいけない。いま、七時十分。からだを休める。
2017 5/23 186
* 起床7:00 血圧129-55(63) 血糖値97 体重66.0kg
* 九時半、寝過ぎた、故紙を出さねばと跳び起きたら五時半だった。小さな枕時計の針もまともに見えなくなった。
故紙 無事に大量に外の我が家の塀際へ出した。何年もそこへご近所からも出てくる。重い紙の大荷物運び出しを、近くで済ませられるのは助かる。
* 台所の流し場もほぼ、綺麗に、とはゆかぬが片づけた。
建日子が生まれる前の妻が絶対安静を言い渡されていた間も、むろん勤めには出ていたが、五時には社を飛び出し、池袋で食べ物を仕入れ、帰ってなんとか食 事を作って朝日子と食べていた。顔が揃い言葉がかわせる、それだけで安心であった。年の瀬へ迫っていたので、なんとか正月やすみを無事にすごし、医師達が 病院に揃っているときに出産させたかった。神、仏に願った。建日子誕生は一月八日の晩であった。
のぼるのかくだるのかわれらの老の坂
ドンマイ(do not mind)花も嵐もある道
と、去年の桜桃忌にうたった。その桜桃忌がまた近い。胸はって相次いで 第20 21巻 自信の「選集」が送り出せるだろう。「湖の本」新作の中編小説「黒谷」「女坂」二作、もう責了にできるのだが、発送さきの数多い作業に は、なにか工夫をしないと妻をつかれさせてはならないし、しばらく待機のままで。
* 生協やヤクルト配達分も受け取った。十時半。
妻は、午後に胆管造影して、わたしも一緒に説明受けて、退院という予定。入院して九日め。思いの外に長かったとも、まあまあ良かったとも。油断はしていない。
* 四時半、無事、見舞いの建日子もともに、妻退院、帰宅。ほっとした。
これからもこういうことは繰り返さねばなるまい。より慎重に暮らさねば。結局何であったか、うまが、胆石が胆管にでなく腸へ落ちてくれたということか。
二十数回も日照りの下を自転車で毎日見舞った。病院の近かったことに感謝する。聖路加へまで毎日通うのはとてもムリだったろう。個室だったのも幸いし、仕事はできた。
家事の大変を九日間、つくづく体験した。
2017 5/24 186
* 起床8:30 血圧123-65(63) 血糖値102 体重66.2kg
* 家に二人で、たった二人だが二人でいる有り難さをつくづく思う。
2017 5/25 186
* しんから疲れていると感じるが、仕事は先へ先へ追って行かねばと心に決めている。立ち止まったら倒れてしまう。歯も、がくがく。九時前だが、機械からは離れる。今日。久間十義さんにもらった本を読みながら寝よう。
* 大紫の写真があまり色美しいので替えかねている。今日手洗いに、久しぶりに妻の置いた、十薬の翠の葉と白い小花とがとても美しく、歓声をあげた。
2017 5/25 186
* 起床7:30 血圧133-69(63) 血糖値95 体重65.9kg
2017 5/26 186
* 安倍・菅 枢軸の悪辣な恫喝支配姿勢に、慄然。官僚という官僚、与党代議士という与党代議士に、平然として「恥知らず」が横行瀰漫し、良き人間性の喪 失者として黒を白と言いくるめ続けている醜い極みの現状に、絶望する。もう永くは生きておれないことに有り難さをさえ覚える。
* 選集第二十三巻 入稿した。のこる十巻で思いを尽くすのはなかなか難しく、何を断念して剰すかを慎重に考えねばならない。優にあと二年半で予定へ到達 するだろう、願わくはその余は「湖の本」が生かせればいいのだが、これは作品や資金以上に、わたしたちの体力が働いてくれるか、妻は休ませて、わたし一人 の力で「発送」できるかどうかだ。作品の編輯や校正はわたしには何でもない。体力は発送にだけかかる。急げば疲労に負ける。従来五日かかったのなら、二週 間かければよい、少しずつ送ればいい。老齢読者のご健勝をと何より願う。赤字はもう余儀ないと諦めている。
* それにしてもよく働いているなあと、我ながら、思う。ひと様には呆れられているが、わたくしには、励み楽しみなのである。
* 躑躅の時季は過ぎたが、あんまり うちの大紫が色美しく、それに浄瑠璃寺も。
五月も過ぎて行くが花の写真の交替が惜しまれてしまう。
2017 5/26 186
* 起床7:30 血圧141-68(58) 血糖値94 体重66.3kg
* 障子そと、雨戸の戸袋でさかんにチチチチチと椋鳥の雛たちだろうか鳴ききるのが可愛い。障子や硝子戸をあければ怖がるだろうと、見たいけれどそのままにしている。
テラスに白米をまいておく、と、いつ来て食べて行くのか、きれいに無くなっている。またまいておく、と、またいつか無くなっている。鳩だろうが、ここ暫く姿を見たことがない。けれど撒き米はかならずきれいに食べてある。嬉しくなる。
2017 5/27 186
* この機械部屋の灯りが暗いと感じていたので、最新の照明具に取り換えて貰った。暗いのは、つらい。キイが見えないのではヘキエキする。ほっとしている。
2017 5/27 186
* 起床8:15 血圧168-88(80) 血糖値97 体重65.9kg
* チチチ、チチチィとさかんに椋鳥の雛たち、まぢかな窓そとの戸袋で声たてている。巣立ち、近いのか。
テラスの撒き米に鳩いち羽の来ているのを二度見た。わたしがすぐ近くにいても平気で食べ続け、水盤の水のんでゆったり翔び立って行く。二羽で来ていたのになあ。
* 地震か。
2017 5/28 186
* 機械が眩しくて目が明いてられない。機械の発する光質の害であるのかたんに眼精疲労か、分からない、テレビとは違うという実感はあり、やすむしか無い。
2017 5/28 186
* 起床8:45 血圧126-57(69) 血糖値97 体重66.1kg
2017 5/29 186
* ま、なかなか想うままにはこの世のこと、成らないなあと思う。不思議なことかどうだか、こんなときこのところ無条件に手を出して頁を繰っているのはわたし自身の三册の歌集。なんとなくなんとなく自身の気持ちを納得したいと思うのか。
みなづきといひし水菓子なつかしく隠れ蓑うつ雨のおと聴く
と、五年前、二月十五日に胃全摘のうえに胆嚢も摘除したあの歳の、六月(みなづき)に歌っている。それ以前にもう一度入院し、七月にはまた目の手術で三度目の入院もした。
眼を病んで手術(オペ)受けて暑い日退院(かへり)来ぬ
あるがままあるがまま仕事に向かふ
子供の頃、お菓子「みなづき」の当たるのは、嬉しかったなあ。
* 印刷所とのやりとりを重ねるうち、「無事に届いた」と。ああーあ、よかったよかった。
* maokatn に戴いた「瑞鷹」の盃を美味く傾けて、寝よう。
2017 5/29 186
* 起床9:45 血圧131-68(72) 血糖値103 体重66.1kg
* 昨夜はこころもち早めに床に就き、討論『中世の風景』下巻、中世物語『いはでしのぶ』 『源氏物語』「竹河」巻、 沙翁悲劇『リア王』 バグワン『老子 道』 西鶴『一代男』 を少しずつ読み、夜中手洗いに立った後ねむれず、また同じだけ読んで、寝入った。七時に目がさめ「もうすこし」と又寝して寝坊し た。しかし寝ればカラダも眼も休まる。ただし夢は見る。明け方の夢では、例によって独りでたわいなく議論していた、自問自答。
生きるには「食べねば」と。食べてどうなる、「生きられる」と。何しに生きる。さかんに答えていたが忘れている。安眠、熟睡の出来ないヤツである。
* もう六月になるのか。一日、久しぶりに、しかし必要もあって休んでしまっていた聖路加へ、と思っている。明日は妻の退院後の初診察。
* これで、なんとはなく ホワンとして過ごしているのかも。頸のうしろ両付け根に凝りの痛みがある。睡くなれば寝入ってしまうようにカラダを仕向けている。
2017 5/30 186
* 起床8:15 血圧135-62(72) 血糖値100 体重66.3kg
2017 5/31 186
* 疲れれば横になり、すぐには寝入れないので本を読む。この午後は、中公新書『法華経』後半の、近世近代の日蓮の影響を熱中して興味深く読んだ。中世の 法華(商人)と念仏(農民)との激烈な一揆の戦闘から法華の敗退と、近世に入ってのはげしい「不受不施」の抵抗とキリシタン弾圧にいささかも劣らぬ法華弾 圧の歴史も胸を打って強烈だったが、明治以降の近代日蓮思想の「国家観」をめぐる展開を、北一耀や井上日召らの思想言動を介して、大筋を読みおおせ、興奮 すら覚えた。大方はかつても読んで知っていたことながら、こういう時勢になると、いろんな物思いを強いられるのだ。戦後の創価学会にまでは筆の及んでいな い本なので、そこか残念。公明党は何を考えているのだろうとこのごろ訝しくて成らないだけに。
* そして、ほんの少し、寝入っていた。
* 選集⑳の送り出し用意、なんとか、出来たものと納得する。
* あすは、朝の早めに出掛けて、十一時までに聖路加へ。処方箋だけ出してもらって。さ、街をうろつく元気があるかな。「ボン・シャン」で昼食してから、 どこか涼しい映画館で、半分居眠りしながら、というのもいいかも。しかし浅草の「米久」で極上のすきやきにも惹かれるが、築地からは真っ直ぐには行けない し。
* 五月尽 六月を奇麗な風の吹くことよ 子規 と、いきたいもの。
2017 5/31 186
* 起床7:00 血圧144-77(70) 血糖値94 体重65.6kg
* 前立腺のための処方と次回診察日を決めて貰い、重ねて眼科でも診察日を決めて貰った。幸いにスムーズに決まった。処方薬を院外薬局でうけとり、三笠会 館「榛名」のフレンチをと立ち寄ったが開店に二十分まえだったので、銀座裏をあるいて、何十年も昔を思い出させる懐かしい名前の「煉瓦屋」を見つけた。
冷製のコンソメ、仔牛のビフカツ、オールド・パーを生のままのダブルで頼み、あとで、コーヒーも。持って出ていた『趣向と自然』の校正もたくさん読めた。
病院への往きも、食後の帰りも地下鉄はラクに座れて、ものも読めた。雨の心配もあり、もう疲れていたのでどこへ寄る気もなく一途に帰宅、ただし保谷から タクシーに乗らず、ゆるゆるゆると杖つき背負い鞄で歩いて帰った。むかし家から保谷駅まで普通に歩いて千百歩ほどだったが、今は、千六、七百歩は歩かねば ならないようだ。ま、ドゆっくりでも歩いた方がいいかと。
2017 6/1 187
* ひどく疲れている。こんなことではいけない。明日、もういちど西武線に乗ってみるほどの気になれるといいが。
テレビもつまらなく。円本で里見弴のばかばかしく長い長い二千枚もの「多情仏心」読み直そうか。ちょっとシャクだが、これが読ませてしまうのだ不思議に、引き込むのだ。それにしても円本、三段組みの二千枚は目にきびしい。ぐっすり寝たい。
2017 6/1 187
* 起床7:45 血圧138-71(66) 血糖値98 体重65.9kg
* 朝一番に鳩がつがいで撒き米を食べに来ていた。このところいちも片羽だったので、ホッとした。この窓ベの戸袋にもう永く巣くっている椋鳥の親子の鳴き声も 絶えない。窓あけて覗き観たいが驚かせたくはなく、そっとしたまま親子らの囀る声だけを楽しんでいる。
* 昨日の外食は腹にもたれたか、終日重苦しくて弱った。よほど食が細くなっていて。痩せたと妻は嘆く。自身では体重などもっと落としていいと思っている けれど、街を歩いていてガラスにうつった恰好をみるとまったくの病者としかみえないなんとも衰えて覇気のない顔・かたちなのに我ながら呆れる。これでは電 車ですすんで座席を譲られるのは、よほどひ弱く見えるからだと、残念ながら納得できてなさけない。
ひとつには、なにより目つきがよわよわしい、クリアにものが見えていないので。
2017 6/2 187
* 起床7:45 血圧151-72(66) 血糖値89 体重65.9kg
2017 6/3 187
* 起床6:45 血圧136-72(55) 血糖値79 体重65.5kg
* 氷枕をつくり、水分を摂らせ、温かにして。
妻は幸い、今朝、解熱。ほっと一息ついた。様子を見てみる。昨日今日、冷え込む。今朝など脛を出していると寒いほど。
とにかくも梅雨入りのころは決まったように妻に故障がおきやすい。ま、なんとかこの程度で乗り切って行きたい。このまえの黄疸発症時は肌や尿にいろんな変化が起きていたが、昨日来の発熱にそれらは帯同して来なかった。ま、注意深く様子を見たい。
2017 6/4 187
* 起床9:00 血圧142-76(61) 血糖値86 体重66.1kg
* 戸袋の椋鳥たち、巣立っていったらしい。
鳩は、つがいで、テラスから廊下へもあがってきて撒いた米をじつに紀要にこつこつ食べて行く。生き物の生き生きとしたのを眺めるのは楽しいという以上に嬉しい
2017 6/5 187
* 根気の要る仕事を、コツコツ続けている。
2017 6/5 187
☆ シンガポールより
静かな安らかな一日でしょうか。迪子様の安寧を願います。
実は先月からわたしはシンガポールに来て、孫守りの日々です。育児は楽しい面と、自分の思う通りいくはずない面が綯い交ぜになって、葛藤しています。
こちらは一年中暑いですが特に暑い時期なので、保育園の送り迎えの道、歩いて十分が大変!
孫のシングリッシュ、中国語が面白いです。相手によって使い分けしています。
今月半ばには日本に帰ります。
お仕事が進捗するように、同時にお身体大切に、大切に。 尾張の鳶
* 元気を過信するのがこわい。いつも用心が肝心。
2017 6/5 187
* 九時半に近い。やはり眼疲れは蔽いがたく、機械からはもう離れる。
2017 6/5 187
* 起床8:00 血圧139-60(61) 血糖値87 体重66.4kg
2017 6/6 187
* 起床7:50 血圧155-74(66) 血糖値96 体重66.1kg
* 九時過ぎ、無事「秦 恒平選集」第二十巻が納品成った。在来一の大冊、すこし上気して書斎書架と玄関とにならべた。
これから、ゆっくり手間暇かけて送り出す。研究筋へ多めに振り分けたい。
* 明日には追いかけるように「選集第二十三巻」の零校が届くという。明日、わたしは延期して貰った聖路加の眼科を受診に往く。
2017 6/7 187
* 今日はわたしの受け持ち仕事をした。明日の聖路加へ留守中に妻には少しずつの荷造りを頼んで行く。すこしも急がずムリはしない。
* 選集二十二巻の校正もずんずん進んでいる。疲れれば横になり、『多情仏心』へ惹き込まれたり、「絵巻」月報を面白く読んだり。酒もワインも。しかし晩の九時以降は飲まないと決めている。
明日もはやく起きて出掛ける。
2017 6/7 187
* 起床7:00 血圧141-69(65) 血糖値91 体重66.1kg
* 眼科の診療、ドクターによれば上乗の視力で、左眼の白内障気味も手術に及ばないと。どこのむ患者のはなしかとあっけにとられ、訴える気にもならない。もの みなが濡れた水の中のようににじんでいて、クリアな把握はまったく出来ない。また四ヶ月先の検査と診察。緑内障一日一回の点眼薬タブロスが十五個処方され ただけ。わかりません、わたしには。
* 十二時過ぎには処方薬も手に入れたので、松屋の方へまっすぐ歩いて、かつて時間的に一度も入れなかった割烹「左京ひがしやま」という地下の店に降りて みた。京都の匂いがしたので。メニュの佳いのに「松緑」とあったので「音羽屋で頼むよ」と注文したのは通じなかった。酒は京都の「香田」これがすばらしく 美味かった、あぶないかなと思いつつ二度頼んだ。酒にはしごく合う料理が小味に幾品もでて腹張らずけっこうだった。板さんとのハナシもしっくりし、この近 年例のない嵌りようで酒がうまかったた。
どこへ寄る気もなく、銀座一丁目から折良く保谷行き地下鉄でまっすぐ帰ってきた。日なかで車はあるまいと思っていたのも待っていて、らくに帰れた。
2017 6/8 187
* またあすの仕事が有る。
十時、機械を離れる。
桜桃忌まで、出掛けて行く用事は、歯科だけ。時々は歩きに出なくては。
2017 6/8 187
* 起床7:45 血圧156-74(69) 血糖値90 体重66.4kg
2017 6/9 187
天井のライトを最新鋭のに取り換えたので、手元のくらさという負担は無くなっている。疲れも違っている。
2017 6/9 187
* 起床8:00 血圧136-63(61) 血糖値94 体重66.3kg
2017 6/10 187
* 「選集第二十巻」の送り出し終える。電子化データも送られてきた。ほおッと、一と息。
あと、十三巻。つまりは、もう三年か。健康に気を付けて、気を付けてと思う。
2017 6/10 187
* 起床6:45 血圧141-66(61) 血糖値100 体重66.1kg
2017 6/11 187
* 起床6:45 血圧141-66(61) 血糖値100 体重66.1kg
2017 6/12 187
* 身も病み、人も病み、世も病んでいる。淋しいことだ。もう機械からは離れる。 2017 6/12 187
* 起床9:00 血圧129-65(53) 血糖値92 体重66.5kg
2017 6/13 187
* 起床9:30 血圧139-67(55) 血糖値99 体重66.0kg
* 散髪、二十歳ほど若返ったぞ。
2017 6/14 187
* 起床9:30 血圧132-71(57) 血糖値100 体重66.5kg
2017 6/15 187
* 起床7:00 血圧155-68(58) 血糖値97 体重65.8kg
* 十一時に床について次々に本を読みはじめ、気づいたら三時。手洗いに立ち、寝入ったはずがふとまた気づいて四時。また本を読み「枕草子」の校正もして、六 時に灯を消したが七時に目ざめた。そのまま起きて、ひとり、美味い昆布や田麩で残っていた半勺ほどのしたみ酒を干した。体重は覿面に減り、血圧は高かっ た。血糖値はほどよく。
2017 6/16 187
* 夕方、暫くぶりの歯医者へ通う。妻が、脂っけの食事を禁じられているので、帰路のフレンチも中華料理も難しい。和食の店を見つけないと。
* やはり「リオン」でフレンチとチリのワイン。しっかり美味しかった。馴染みの店で店からも親切にメニュを按配してくれるし、心底ゆっくり寛いで食べら れ話せて、言うことなし。脂っ気は控えねばならない妻にも相応の料理が出て満足していた。前菜からコーヒー・デザートまで、満足し満腹した。
幸い雨にも降られず、帰りの電車では二人とも席を譲られて、さして疲れずに帰宅。 2017 6/16 187
* 今夜は熟睡したい。
2017 6/16 187
* 起床7:00 血圧128-61(53) 血糖値93 体重66.4kg
* 八時間は寝られた。まだ少し睡かったが起きた。
* 朝食時にクスリのように小量くちにしたワインのせいか、潰れるように睡く、機械の前で居眠りし、堪えられず床について昼の一時過ぎるまで寝入った。睡くて寝入る、のも、また良からん。
2017 6/17 187
* 起床6:00 血圧135-69(573) 血糖値105 体重65.8kg
2017 6/18 187
* 寝床の上で朝の一時間を「橋姫」「放談」そして、バグワンの「老子」を読んで満たされていた。七時にひとり床を起ち、体重、血圧、血糖値を計り、イン シュリンを四単位注射してから、ごくごく簡素で少量の朝食を摂った。TBS日曜きまりのわりとまともな、それだけに型にもはまってすこし物足りなさもいつ も残る関口宏司会の番組を前半だけ観て聴いていた。発言の顔ぶれには何の不満もなく、賢い発言にもみな同感してはいるが、お顔ぶれが割り当てを順に穏やか に「話して下さる」感じ、激しく打ってくる訴え求めてくる訴求力に弱い。
ただこの番組、締めくくりに、昨今のジャーナリストのなかで最も信頼に足るすぐれたコメンテーターがいて、番組の全容をきりっとし纏めてくれる。この彼 への信頼でわたしたちはこの番組と日曜の朝ごとに向きあってきた。TBS夜のニュース23をこの人と膳場貴子アナとが担当していたときは短時間ながら気魄 の批評が電波を戦がせていた。あしき政治的介入で潰されたらしく、代わった連中にはジャーナリスチックな根性が弱くて甚だもの足りない。口先での言葉だけ の批評ではダメ。気概と気魄とが感じられる発言でなければ。
2017 6/18 187
* 起床7:00 血圧144-65(59) 血糖値103 体重66.7kg
* 体調、かならずしも良くない。全体表に軽微とはいえ違和感がある。血圧が高め、血糖値もいつも正常値であるが漸次高めに推移している。食生活 を、量・質ともわれから抑圧している気味あり、食べるより食べない方へおさまりをつけがちで、しかもすこしずつ雑多な間食、そして酒類。
2017 6/19 187
* 起床8:00 血圧132-66(60) 血糖値100 体重66.5kg
* ホッコリしている。桜桃をつまみながら八海山を味わい、酔って居眠りし、目ざめて仕事をし、時を費やしまた同じくり返し。この部屋、冷房しはじめた。
2017 6/20
* 起床7:30 血圧126-62(55) 血糖値92 体重66.8kg
2017 6/21 187
* 雨はげしく「湖の本136」の要再校原稿を宅急便に託せなかった。明日は晴れるらしい。気分を換えに、渋谷松濤で昔わたしの課に配属されていた橋本成 敏君の陶芸個展をのぞいてみようか。五島美術館にも誘われていて、興味深い展観なのだが、大学の頃はとにかく、かなり遠い。移動線の長い外出はいまは苦 手。近間で、気分よく校正など出来るといいのだが。
2017 6/21 187
* 起床7:00 血圧147-70(58) 血糖値97 体重67.3kg
2017 6/22 187
* 起床8:30 血圧147-69(62) 血糖値90 体重67.6kg
2017 6/23 187
* 起床7:00 血圧155-76(58) 血糖値91 体重67.3kg
2017 6/24 187
* 起床8:00 血圧133-62(85) 血糖値94 体重67.3kg
2017 6/25 187
* 明日は降ろうと照ろうと聖路加病院に参る。鞄を背負い杖をついて。さて、何時には解放されるか、それ次第で、すこしは心楽しむ時間をもちたいが、疲れてしまえば話にならない。水曜日にもまた同じく出掛けねばならない。
2017 6/25 187
* 起床6:50 血圧128-61(58) 血糖値97 体重67.3kg
* 機嫌良く気分良く病院へそして街歩きができますように、雨降りは受け入れますから。
* 十一時には検査を終え、診察室に呼ばれたのが一時四十分。おかげで持参の校正はたっぷり出来た。しょせん二時にいったん閉まる店での昼食は無理と、薬 局で処方薬受け取り終え、日比谷線で銀座へ出、そこでアアっと気付いた。今日は月曜。出光美術館の「等伯と水墨画の風」展は観られない。
シャアない…。
結局行きつけ三笠会館、今日は最上階「大和」で鉄板焼黒毛和牛と貝柱、魚を二種。さ、そんなに食べられるか知らん。ワインは遠慮し「豊醇」とやら生ビールにした。独りの専用テーブルなのを幸い、食い気よりも校正の続きを読みつづけ、望外のハカが行った。
三笠会館を常用するのは、和仏伊中華焼き肉と階が揃っている上に、昼間の閉店時間が無いから。時間外れにいつでも入れる店で、頼りにし易いから。フレンチの「榛名」が一等よく、中華の「秦淮春」は美味い紹興酒を出してくれる。
焼き肉はかなり腹が張った、が、校正しながら、食べきった。美味くてたっぷりのコーヒーをお代わりまでした。そして帰り際、失敬して、だいたい食べた程度を出してきた。
諦めきれず出光美術館まで歩いたが、やはり閉まっていた。
帝劇モールの鰻「きく川」をちょと覗き、なじみの店長と立ち話だけして、そのまま有楽町線で小竹向原乗り換え、西武線の快速でいっそひばりヶ丘まで乗り越し、各駅で一駅の保谷へ戻った。
車中で、少しく。
投げ出して少女の脚は盛んなり白くて太くて老いの目を奪ふ
やかましく静かなふたりの少女ゐて喧しい方の美貌が眩しい
帰ったら茶を点てたいと、保谷駅売店で、いささかお粗末ながら「京」をちらつかせた和菓子を四色買った。
目の前で一台タクシーが行ってしまったし、さすが肉の勢いか元気なので、徒歩で、明いていれば酒だけを少しと寿司店「和可菜」の様子を見にいった。「三 週間の入院」という留守番電話がとても気がかりで案じていた、退院してればいいがと確かめたかったのだ。残念だが、三週間を一日過ぎていたが店は「断り」 の張り紙のまま閉まっていた。胸が痛んだ。
しかたなく、大きな背負い鞄を背負い、手の指に菓子包みをぶらさげ家までしこしこ歩いた。いつになく今日はヘバってしまわず、しっかり歩いた。さすが、黒毛和牛。
2017 6/26 187
* 起床5:00 血圧138-66(58) 血糖値95 体重66.7kg
* 早起きして、発送作業を八分がた進めた。
2017 6/27 187
* 「やまと櫻」を飲み干してしまった。
2017 6/27 187
* 十一時。明日はまた聖路加行き。糖尿の方、十数年御世話になっていた先生が定年退職されて初めての代わりの先生、初対面。
2017 6/27 187
* 起床7:10 血圧145-73(70) 血糖値95 体重66.6kg
* 起きてすぐ、故紙回収に妻の荷作りしたのを、雨中、指定の場所へ運ぶ。荷数にして十数、二十個ちかく、しかも一つ一つが猛烈重い。なにしろ選 集の予備校正刷りや責了完了紙や、また家中のあちこちから処分ときめた大量の「紙」のものなど、さらに書籍雑誌新聞等々を、一つ一つ束ねて大きな重い荷に してある。雨でなければ我が家の塀外が集積場所になっているが雨降りにはお隣りの車庫へはこぶことに決められてある。今朝は息をつめ腕力を振り絞って一つ 一つお隣へ運んだ。腰の痛みに、途中急いで買い置きの痛み止めを服用。
今は、薬が効いたか、痛み無し。
* さて、雨午前中と。二時十五分予約の内分泌外来へは、一時間前には生理検査を受けておかねば成らず、遅くも十時ころには出掛ける。もう九時近い。
平安な一日でありたい、街歩きもしてこれるだろうか。
* 出がけに難儀な労作の必要が置き、また力仕事し、痛み止め服し、小雨の中を病院へ出掛けた。十二時には生理検査だけ済ませ、予約時間まで銀座へ出て食 事としてこようとアテにしていたのだが、結局外来で校正をはじめ、人も少なかったためか、一時半には呼び込まれて無事に診察を受けてきた。新しいドクター だったが、几帳面にキチンとした若い人で、安心できた。
腫瘍内科をちょっと覗いてから外の薬局で処方薬を買い取り、車で有楽町駅へ、そして出光美術館まであるいた。「雪舟・等伯、水墨画の流れ」展はまことに けっこうであったが、照明を抑えたほの暗い会場での水墨画はわたしの視力では鑑賞がならず、第一番、玉澗の破墨山水のみごとさだけで満足し、ざあっと会場 を歩んだだけで終えた。とても墨の濃淡の美しさすら見得ないのだった。
その脚で帝劇モールへ降り、一昨日食べられなかった「きく川」で鰻を食べてきた。酒は菊正の正一合を二本目も頼んだが、なんと半分呑み余してきた。呑むのは呑めるが帰路にこたえてはイヤだと自制した。酒を飲み余してきたのはひさしい酒飲み人生で、初めて。
ひところより、あれほど一に好きだった天麩羅へ気が行かず、鰻もイマイチの感じ。一昨日の鉄板焼き黒毛和牛もむしろ貝柱や魚の方が口に合っていた。ほんとうは、今日は、せんだって満足した「左京ひがしやま」で焼いた鱧や「おとし」を注文したかったのだが。結局きまたまた京風味の和食へ落ち着くのかな。妻も、黄疸以降、脂けを禁じられている。脂けが欲しければ先に胆嚢を切れと云われている。
* 幸い西武線へ直通の地下鉄I乗れたので、校正しながら保谷まで帰った。酒が過剰に利いていたのだろう、手指が自儘に動きにくいほど拗くれるように攣っていた。無視して仕事をつづけた。
駅でタクシーが待っていてくれ、助かった。
* これで七夕に湖の本135納品まで、出掛けねばならぬ用事はない。だから好きに出掛けても、発送用意にさして影響しない。おっとり過ごしたい。
* とても疲れている、一昨日とちがって。故紙出しが重かったか。
2017 6/28 187
* 起床8:30 血圧127-71(59) 血糖値91 体重66.5kg
2017 6/29 187
* 何や彼やいろんなことをして一日を過ごした。
* 明日、六月が逝く。ああ早や。
2017 6/29 187
* 起床7:30 血圧137-64(61) 血糖値94 体重67.0kg
* 夜前寝入りばなの1:15、全身を疾風が真っ白い無数の筋のように流れつづけ、低血糖症状と悟ってかろうじて起き、キッチンで計ると新記録の最低血糖 値「 41」。この前入院中の深夜に44を体験したときと同じで、より強度に速度感ある症状であった。白砂糖をスプンで三度四度たっぷりそそぎ入れ、リンゴ ジュース をのみ、清酒もすこし含み、菓子も口にして十五分、ドンと値い上がったかと計ったが、なお60ではまだまだけっこうな低血糖値のまま。その後も小一時間起 きたま ま糖分をとりつづけ、2:20には311にハネ上がっていたので、床についた。4:10に起きてもう一度はかると93、これは、ま、低めだが立派に 正常値範囲なので、安心して朝寝し直した。
7:30に起き、つねのように計測、血糖値は94と安定していた。夜中にいろいろ食べたので、体重が増えてしまい、苦笑い。
それにしても真っ白い風速に包まれ疾走する低血糖感覚は凄かった。
2017 6/30 187
* 鞄を背負い、傘さし杖ついてアテドもない雨中の街歩き、踏み出せないなあ。
2017 6/30 187
☆ 六月尽
昨日のHPでは低血糖の症状について書かれてあり、驚きました。これまでも何回かそのことに触れていますが、数値の意味する緊迫感が伝わってきました。くれぐれも大事に大事になさって下さい。
明日から早や七月、今年の半分も過ぎ去ったと驚き、さて暑い日々が思いやられます。
何ヶ月か続いて浄瑠璃寺の絵、そして七月の祇園祭の写真二葉、鴉にとっての京都を思わずにはいられません。おそらく半ばは「空想の京都行き」として書か れているコースなど、そのいずれも読むとお気持ちは十二分に察せられます。ただし体調を考慮すれば日帰りは本当に大変で無理があります。勿論一日タクシー を頼んで、
せめて一泊されてゆったりと京都の時間を楽しまれません!!
良い季節を選んで、体調も整えて、どうぞ現実の時間となさってください。
梅雨前線の微妙な動きをテレビの画面で確認しながら、さて今日はあまり雨も降らないだろうと・・一日一日が過ぎています。
先週は一週間のうち三日も展覧会場に詰めていたので疲れました。何と言うことなく疲れました。
世の中のさまざまなこと不愉快なこと、哀しいことに心痛みます。
本格的な暑さを迎える前に旅に出たかったのですが。
庭のプラムが沢山実をつけて、わたしたちも鳥たちも、おそらく食べきれないでしょう。
この春に京都を歩いた時、哲学の道の疎水縁から若王子の方に足を向け、坂道を下って
学生時代最も過酷な日々を過ごした時期を想いました。真昼の不思議な静けさでした。一種の「隔世」の感・・50年という歳月は確かに「隔世」かもしれな い・・様々な変化、江戸や明治は遠くなっているのですね。鴉にとっても楽しい話題であろうはずなく・・ただただ幾らかを読み取って下さい。
去年行ったスペインの小さな町の廃屋の絵は10号ほどの小さなものですが仕上げました。そしてHP六月冒頭の写真にあるガクアジサイ、それも空色から群 青色に変わっていくアジサイの絵を、いま、描いている途中なのですよ。家の東北側のアジサイと梔子が見頃なのです。椿も何種類も増やしてしまいまし た・・。が、花の絵はわたしに限って言えば、どうしても単なるキレイに終わってしまいそうで、どちらかと言えば敬遠しそうになります。風景になりますが テーマを絞って何枚か連作したいと思っています。外国のもの、そして京都や奈良のもの・・。
とりとめなく書きましたが、わたしの日々がいくらか散漫になっている反映でしょう。気持ち引き締めて七月を迎えます。
マードレデウス、バッハ、モーツアルト、ドビュッシー、そして現代の幾人かの曲、を楽しんでいます。バイオリンやギターの音に引きずられそうになります。
どうぞどうぞお元気でいてください。 尾張の鳶
* しっとり癒される、便り、感謝。
関西の、京の、空気。飾らない行文の自然さが中味の濃いリアルな映像を喚び起こしてくれる。
それにしても此の、尾張住まいの鳶の、いつも自在に翔んでいることは。羨ましい。低血糖の危ないショックで、真っ白にシュウシュウ鳴った奇妙な筒の中を吹き飛ばされているのでは、お話しにもならない。
2017 6/30 187
* 起床7:45 血圧144-72(55) 血糖値105 体重66.5kg
2017 7/1 188
* 五百頁の選集が二十巻に成っている。
井口哲郎さんに書いて戴いた背文字が、自慢です。
もう、十三巻。
三年かかる、かな。健康を保ってしっかり仕遂げたい。
2017 7/1 188
* 上にあげた歌の中に西行のが混じっていて、ある人
遙かなる岩のはざまにひとりゐて
人目思はでもの思はぱや
の末語が「半濁点」ですと教えてくれた。むろん「ばや」でなくては。いまわたしの一番の難点は視力の極の不安定で、濁点か半濁点か、よく間違えて打っている。訂正のご親切忝ない。が、ふと高望みもしてしまった、「ひとかふた」と問いかけては。
西行のひとりといへる心あれど
われはふたりと懐(おも)ふかなしさ
といった別世界も成り立つだろう、小説『四度の瀧』でそのような万葉古歌を作中に用いたのを思い出す。清少納言ほどセンスと勘のいい才女なら、(時代は逆 行するが)行成であれ斉信であれの問いかけには、単に、「ばや」 とだけ応えただろう。清少納言贔屓で紫式部嫌いだった劇作家田中澄江さんは、少納言は、 きっと、目ぢからの聡く慧い魅力の美女であったろうと云われていた。さもなくて行成や斉信らほど智・情をかねた「みやび雄」らのああ惚れ込むわけがない と。
2017 7/1 188
* 「ある寓話」に取り組んでいた。芯から疲れた。
2017 7/1 188
* 起床7:45 血圧140-61(63) 血糖値99 体重67.2kg
* 昨日、胃全摘退院後、五年半ぶりにインスタントの塩ラーメンを食べてみた。五年半前、それまでと同様にツルツルと呑むように食べて、わたし自身は強度の脱 水と独り合点していたが事実はまんまと腸閉塞に陥っていて、一も二もなく緊急二度目の入院になってしまった。今年にも二度目の腸閉塞で入院(都合四度 目)、迂闊なことにそのとき初めて、「胃全摘すれば腸閉塞しやすい」という医療側の「常識」にわたし自身も膚接したのだった。
で、好きな麺類には用心しながらも、蕎麦そして讃岐うどん様の太めの饂飩などから少量ずつ慎重に咀嚼しつつ食べて行き、ときに稲庭饂飩や素麺すらこわご わ食べてきた。ラーメンだけは敬遠し続けてきたのを、昨日解禁してみた。臆病なほどかみ砕いて喉をとおした。懐かしい味わいであった。
しかし、腸閉塞はイヤ。食道から直通の小・大腸全通まで、一週間は、点滴だけの入院生活を強いられる。大戦時欠食児童体験の貧しい余波でとかく早食いしてきたに違いない半世紀の余の下手な食体験も響いてくる。用心、用心。
* さ。都議選の投票に。建日子は忙しくて投票に帰って来れないと。事前投票の便宜をでも、心して利用して貰いたかった。
選挙という制度をわたしの前でせせら笑って否認した国際政治学者を見知っているが、より良い何がありうるかは口を噤んで云わなかった。
女防衛大臣の恥もなく自覚もない違憲違法の「選挙応援演説」と発言撤回・謝罪ぶりのあまり空疎な「ノン・テリジェンス」に恐れ入った。学問も政治も「人間」離れが甚だしい。
* 投票所への熱暑の往復、腰痛もきてきつかった。
2017 7/2 188
* 起床7:15 血圧159-75(55) 血糖値101 体重67.8kg
* 計測値、あまり宜しくない。
2017 7/3 188
* 暑い一日だった。疲れて機械の前でよ く居眠りした。
2017 7/3 188
* 起床9:00 血圧135-64(60) 血糖値98 体重67.2kg
2017 7/4 188
* 起床7:00 血圧135-64(60) 血糖値98 体重68.0kg
* 老いの自覚では、わたしの場合、脚力の衰え、手先の痺れ、視力の喪失、記憶力の低下、食欲の減退が挙げられる。もう一ついえば、いい意味でも、宜しくない のかも知れないが「無雑作に」慣れるないし流れること。こまごまと執着せずに「やっちゃって」いる例が増え、広い意味で行儀がわるくなっている。つまり 「構わなく」なっている、衣食住や物言いに。よろしくもないが、よくない一辺倒とも思っていない。しぜん「文学・文藝」にもそれはよかれあしかれ表れてい るだろう、往時『少年』の短歌と近年・昨今の『光塵』『亂聲』の述懐をみくらべても歴然としていて、それが衰えの表れとばかりは云えない。
この七日に出来てくる「湖の本135」の小説二作「黒谷」「女坂」も無雑作なほど短い時間で或る意味書き流している。若い日々の入念に入念を積んだ創作とはあっさり書き置いている。
この二作をいっそ気軽に合間に書いて、現にうんうん云いながら書き継ぎ書き直し続けている長編にしても、姿勢も方法も念の入れ所もやはり若い日々のもの とはちがう。違って当然と思いながら根気よくやっている。この根気よく気を入れてまだ書けていること、を、生き延びている老いぢからと思っている。
いい感じに無雑作な作も創り続けたい。
2017 7/5 188
* 「湖の本135」発送が明後日までに迫った。根気のいる力仕事が暫く続く。終えれば、次は「選集第二一巻」が月末に出来てくる。誰へ送るか、この思案もなかなか難しい。
今朝にも「湖の本136」の再校出と連絡を受けている。「選集第二二巻」の再校ゲラはもう届いていて、今は精出して「選集二三巻」の初校をしている最中。つまりはこのところわたしの方が印刷所の攻勢に圧倒的に押され気味ということ。暑い夏を克服して行かねば。
* 三時、もう眼がまともに見えない。視野は滲んで乱れて霞んでいる。すこし休む。 2017 7/5 188
* 起床7:00 血圧146-70(59) 血糖値94 体重68.0kg
2017 7/6 188
* 起床7:30 血圧137-70(58) 血糖値103 体重67.4kg
* 順調に「湖の本135 黒谷・女坂他」 送り出し、始めている。暑い。
2017 7/7 188
* よく頑張った。明日いっぱいやり抜けば、先が見えてくる。疲れた。今晩は、もう休む。
2017 7/7 188
* 起床9:00 血圧139-62(62) 血糖値105 体重66.8kg
* 昨日、朝 晩 夜に注射すべきインスリンを朝の一度しか打っていなかった。幸い今朝の血糖値、こころもち高めとはいえ優に正常値内にある。カラダとチカラとを働かせての終日だった、体重もすこし落とせた。血糖値のためにも体重は65 66キロ内低めに維持したいが、体力増強のためにはどうなのか。
2017 7/8 188
* 暑さに参る。仕事にミスも出ているかと案じられる。気分を遊ばせてやらないと、千切れる。
* よほど疲れた。
* かなり以前から右手の指が五本ビンとまっすぐ延ばせない。握りもならない。ことに中指は骨が途中でナマって曲げても伸ばしてもペキッと音がしそうに痛む。
昨日今日たてつづけに湖の本を封筒に入れ封をする手作業の途中から掌ぜんたいが攣縮し拗くれてくるのに参った。激痛ではないが、掌も指も攣れて捩れてくるのは気味が悪い。左手はさほどの不便はなく、やはり右手の使い過ぎなのだろう。
* そんなでありながら、頭の中では仕たいしごと、仕掛けたいしごと、もう半ば思いついて呼ばれている新しいしごとが、渦まくようにわたしをかき混ぜてくる。調べたり、したい仕事のためにこのところは読書していない、面白そうに感じたさまざまに実に浮気に手を出している、もっとも通俗な読み物はむろん、あのり小説を読もうとしていない。古典か専門書か図録などを脈絡なく拾い読んでいる。そんな中から刺戟が来る。オとかオオっとか立ち止まって同じ箇所を何度も読んだりして興がっていると「書けよ」「書けるんじゃないか」と内心に促される。これって、かなり落ち着かないことでもある。
* なによりも濫読していて、突き刺されるように関心を持たされてしまうことが、たとえ断片でも、しょっちゅう胸の中へ跳び込んできて、それは痛み、ま、快い痛みに類する。興味をすぐ覚えてしまうのだ。わるいことではないが、必ずしもいいこととは言いにくい。
2017 7/8 188
* 明日もまた送り出す作業。明日中には終えたいなと願うが。
疲れて、目が霞んで、書いている字がしかと見えない。やすみます。からだを横にして裸眼で、たまった校正をすこしずつでも終えて行かねば。
2017 7/8 188
* 起床8:20 血圧141-69(62) 血糖値92 体重66.8kg
* 二時半 「湖の本135 黒谷・女坂」全部発送 了。
2017 7/9 188
* よほど疲れたか、大荒れの相撲初日を横綱白鵬がスパッと引き締めて終えたあと寝てしまい、一度目ざめながらまた寝入ってしまい十時半。まだ、眠気というより疲れを感じていて、このまま、もう寝入りたい。
2017 7/9 188
* 起床8:15 血圧130-73(67) 血糖値97 体重66.5kg
* 郵便局送りも終えた。自転車で運んでゆく頭が熱射に焦げそうだった。往きの下り坂はラクだが、帰りはウンウン。ちょっとやそっと、この夏は出歩けない、出るなら雨の日か。
白楽天に詩がある。
人々避暑走如狂 人々暑を避け走りて狂するが如し
獨有禅師不出房 独り禅師の房を出でざるあり
可是禅房無熱到 禅房に熱の到ること無かるべけんや
但能心静即身涼 ただ能く心静かなれば即ち身も涼し
参りました。
2017 7/10 188
* 発送を終えたので恒例の「和可菜」の寿司をとることにしたが、妻は「脂ッ気」を禁じられて、好きなトロの類が食べられないのは可哀想。わたしは一頃よりも刺身の味が分かりにくくなっているが、美味い太巻きが好き。
なにしろ食べ損じると腸閉塞が襲ってくる。なにより怖いのがツイ呑み込んでしまいがちな麺類。太い讃岐うどんなどは咀嚼しやすいが、大好きだった素麺などはアブナい。胃袋という中継の咀嚼きのうが無いのだから、何を食べるにも細い腸との相談になる。胆嚢も無くなっているので、中トロも大トロもいくらも雲丹も食べられる。
2017 7/10 188
* 起床8:20 血圧141-72(60) 血糖値96 体重67.5kg
2017 7/11 188
* 起床7:00 血圧152-74(61) 血糖値86 体重67.5kg
2017 7/12 188
* 起床8:30 血圧149-71(64) 血糖値94 体重67.0kg
2017 7/13 188
* 夕刻、自転車を郵便局へ走らせたが、ま、日ざしの熱かったこと。いっそ爽快に感じた方がいいぞと思い思い、最短距離を行ってまた帰ってきた。
2017 7/13 188
* 起床8:45 血圧138-68(60) 血糖値104 体重66.7kg
*気ぜわしいなりに、月末への用意はほぼ出来た。ほぼ十日の気分余裕を得たので、落ち着きたい。今日は久しぶりに江古田の歯医者へ。脂っ気の摂れない妻と出来る食事店はほぼ和食に限られてきたが、江古田駅近くにはいい蕎麦屋もふくめ二軒は知っている。仲良しになっている「中華家族」へは行けなくなった。
2017 7/14 188
* 歯医者の帰り、江古田和食の店「笑雲」でわたしは蟹を割ってもらい、妻は、鮎の塩焼や生海老や鰹の刺身や茄子のしぎ焼きなどをせっせと食べていた。
階下の馴染みのバーでわたしはウオツカを二杯も妻はいい赤ワインで、顔なじみの相客と愉しくいろいろ話し込んできた。ほどよく、店を出てすんなり帰宅。留守に、金沢の金田小夜子さんの宅急便が来ていたと。
2017 7/14 188
* 起床6:25 血圧137-73(58) 血糖値89 体重66.7kg
* 寝ぎわのコーヒーも効いたろうが、断片ながらさまざまに想うこと多さに睡れず、校正や読書後起床までの五時間弱の間に二時間以上目ざめて、また本を読んでいた。
戴いた本に相違ないが著者に覚えが無い、しかしその『伊勢』一冊、優れて面白く、深く頷かせる評伝で、この人として女として魅力に富んだ歌人の生きかた、生きた時代の人渦を、手に取るように物語ってくれている。研究者・学者と自称する人たちも、シチむずかしい論文のほかにも、こういう味わい深く適確な表現力で「歴史の人」を生き生きと甦らせてほしいもの。
昨日も読んでいた「絵巻」月報の何巻目かの冒頭、井上靖を聞き手に専門家の田中一松さんが、「石橋を叩きながら石橋をも渡れないようなていたらくなんですよ、学者たちは」し笑ってかるく自嘲されていたが、「学者」というモノの窮屈に片端なありよう、たしかにお気の毒とも思う、が、文学研究者の場合、培い蓄えた学殖を「文藝としても活かす才能」をせめて求めては、われわれ読書子は贅沢すぎるのだろうか。
歴史上の人と限らない、近代の文学者にも、汗牛充棟のせこせこした試論だの序論だのの研究論文ばっかりでなく、上の『伊勢』に類する「文藝の味わいもある親切かつ深切な」一冊一冊をせめて第一級の文豪や詩歌人のため書き置いてもらえぬものか。文学の読者がますます激減して行くなかで、虫眼鏡とピンセットで読まねばならない「読者離れ」のした論文の山が、ほんとうに生きた学問を形成しているのだろうか、と、あやぶむ。
こんなこと言うと、ますます嫌われるのだが。
2017 7/15 188
* 昨夜はほとんど睡れていなかった。今日は終日、気怠いままだった。それでも書架の整理などすこし進展。
十時過ぎだが、機械から離れて、安眠の算段をしよう。
2017 7/15 188
* 起床8:25 血圧148-74(64) 血糖値107 体重66.6kg
* ちいさなカステラ一枚だけ、ちいさな人参ジュースと野菜ジュースとをミックスしての朝食後、左頸の根が固まり、酔ったようによろよろ、ぼうッとしてきた。よろよろ。ぼおッは胃全摘後五年半の常習できていて残念ながら驚けないが、けさのは急で、ひどい感じ。食後の血糖値は順当に上がっていたので低血糖ではない。低血糖時の症状ともちがうので、念のため血圧を測るとなんと高い方で「86」という低さに仰天した。このところむしろ血圧が高めと用心していたのに、かつてない低血圧、これでフラフラよろよろは当然。降圧剤はもっているが昇圧の手当はしたことがない。ともあれ水分を十分補給しただけで、ぶっつぶれるように床に就いた。
夢は見ていたが、午後二時過ぎまでよく寝入ったと思う。血圧は辛うじて129へ戻っていた。最近こそともかく、以前は日常低めの血圧だった。フラフラ、よろよろの原因は低すぎるないし低めに過ぎた血圧ゆえと思い当たる。ま、何故そうかにもやや思い当たるところは、ある。
目を酷使し寝は足りず運動の超不足という日常が宜しくないのだ。やれやれ。
* 昨日戴いた金沢からの珍味のうち、烏賊の巻き寿司を賢明にこりこり噛んで美味しく食した。酒にも絶好、なるほど「鮓」だと、嬉しかった。
* 電話をくれていた古門前の大益からの「帝国ホテル」スープ 缶の詰め合わせ到来。感謝。
2017 7/16 188
* 九時少しまえ。家では九時以後は呑まないと決め、ほぼ守っている。ちょっと降りてこよう。
2017 7/16 188
* 起床8:30 血圧134-67(65) 血糖値109 体重66.7kg
* 夜中、突如、いがらく喉を灼いて激越・不快に咳き上げ、とび起きた。うがいしても水を呑んでも容易に静まらず、咳きつづけた。幸い血色は混じらなかったが。
2017 7/17 188 祇園会 鉾巡幸
* 午過ぎて、牛になるなあと思いつつ横になって、校正もほどほど、「絵巻」月報で「繪因果経」について教わりながら寝入ったらしく、あ、もう朝だカーサンは起きているなとやっと身を起こして、観音像にも位牌にも例の「おはようございます、おはようございます」の二度礼を送り、テラスのネコ、ノコ、マゴたちへも、ウワッ暑いねえ、おはよう、良いお天気だね、今日もサンニン仲よく元気に元気に遊びなさい、トーサンもカーサンも家にいるよと決まりの声をかけてからキッチンへ。え、朝からテレビは相撲の話題かいとまだ気がつかなかったが、時計をみたら四時半。ウヘッと絶句。暑い朝でなく蒸し暑い夕方前だった。
ま、いい、眼はやすまったものとリクツを言うて妻に笑われてきた。寝て起きてまだ生きていたんだなと思う。
2017 7/17 188
* 起床8:00 血圧127-60(53) 血糖値108 体重67.3kg
* 頭の中 交通整理して 思案の程を区分けし整頓し連絡を付け合わないと、狂いそう。
* 午前、午後に潰れるように寝入った。激しかったという雨や雷も知らなかった。奇妙な夢ばかり見ていたようだが覚えていない。
夕刻、思い切って入浴、「絵巻」月報や『伊勢』や宇治十帖の「椎本」八の宮薨去までを、それぞれに面白くもしみじみとも楽しみ読んだ。
二十頁に足りないほどの「絵巻」月報には七八人の筆者や対談者が持てる本領をエッセンスのように書いたり話したりしているので、本の何冊もを読み楽しんだような嬉しい重みがある。、
『伊勢』は著者の和歌や状況の「読み」の適切さが随所に光って、時平と伊勢の、また平中と伊勢の関わりなど尽きぬ興趣を簡潔に書き留めてあり、読み物としても評論としても出色。
そして宇治八宮の最期をかたって源氏物語の筆はまことしめやかに美しい。物語のまなかへ引き込まれて行く。
2017 7/18 188
* 起床8:00 血圧127-60(53) 血糖値108 体重67.3kg
* 狭いながらも書庫前のテラスは左右に鉢植えが溢れ。まんなかに、うまくすればデッキチェアの置けるほどな畾地がある、そこへこのところずうっと米を撒いてきた、鳩の訪れを歓迎して。初めの頃よく二羽で来ていたが、いつか一羽になり、それも丸っこい鳩胸の一羽からやや細めの一羽に交替してきたが、いずれも撒いた米をひとつぶのこさず綺麗に食べて行く。嬉しくてまた撒いておくといつのまにか綺麗に一粒ものこっていない、が、なかなか鳩の姿に出会えない。朝もほの白むころには来て食べていって居るらしい。
命の生き生きとした行為が、眼に見えても見えていなくても励みになる。喜んでいる。鳩に呉れてやる米なら、もっとほかに…という声もあろうけれど、それには黙ってちいさく頭を下げておく。
* なにかというと、ふと横になっている。寝入ってしまう。寝て起きると視野がクリアで生き返ったよう。
2017 7/19 188
* お酒を切らしたのを機に、美味い日本茶を愛飲している。佳いお茶をたくさん戴いていて、最良の味わいを有り難く贅沢に楽しめる。
2017 7/19 188
* 催しがなくても便座で両肘を両膝に置きふかぶかと頭を垂れている。今はさほどでないが、抗癌剤の一年は、ひたすらこの姿勢で苦痛を堪えに堪えていた。いまもその名残り、しんどいとそういう姿勢に就いている。ときにはそのまま寝入って辛さを遁れたこともあった。いまも時折寝入ってしまう。寝入れる幸を想う。
ことし一月末にも、
余念なく眠つてをればよいものを
なぜ起きてくる 死にたくないのか
と独りごちた歌を『亂聲』に入れていた。胸の内で末句を「死ぬのがこわいか」と自問もしていただろう。
2017 7/19 188
* 起床8:15 血圧151-75(58) 血糖値94 体重66.5kg
* 夜前、床に就いてからものを「読み」に読んで、おまけに夜中に、録画してあった「NCIS」を一時間観て、さらに横になってから『絵巻』月報や中世王朝物語全集の『いはでしのぶ』の超入り組んだ関係系図を検討したり、京都市内地図に見入ったりして、四時頃、リーゼの助けを借りて寝入った。寝過ぎたかと思ったが八時過ぎに目ざめた。
国内外をとわずいま現代小説にまったく手が出ない。宇治十帖のみごとな文体にふれたり、和歌や秀句を読んだり、絵巻の世界や史実の闇をまさぐったりしていると、とてもかったるい現世ものへ気が向かない。あきらかにわたしが異常なのであろうが、しようがない。宇治十帖「椎本」巻では八宮が薨じ、のこされた二人の姫に薫や匂がからみついてくる。もののあはれしみじみと行文の確かさ美しさ、これはもう現代では稀有というより絶望的に出会えまい。
文学という藝術は溌剌とした生きの命である文体と表現の個性で自立する。独自の文体を持てなくては作家などと謂えない。いま世間にばらまかれている、私の所へも送られてくる安い同人誌の作のほぼ全部は、ただの自伝風か回顧録ふうに止まっていて、文体なく表現なく雑な「説明」に終始している。情けない。
歌わない音楽、独特な息づかいが刻む「間」の流れの飛沫くほどの確かさ美しさ、ちからづよさ。
むかし、亡くなった杉森久英さん巌谷大四さんと銀座を歩いていたとき、ある中年過ぎた作家志望の女性が熱心にあとを追ってきて、しきりに杉森さんからの助言を求め続けていた。しまいに、何が一番大事でしょうと訊ね、するとそれまで黙って応えなかった杉森さんは一言、「文体」とだけ言われてそれだけだった。
そのあと、わたしは巌谷さん杉森さんに「はちまき岡田」でご馳走になった。わたしは店が自慢の美味しい料理以上に、作家でもあったし名編集者でもあった杉森久英さんの、端的に「文体」といわれた一語を公案のように胸にとりこんだ。一緒に中国へ旅した巌谷さんも名編集者だった。後に、亡くなる日まで丁寧にお付き合い下さった、大久保房男さんも、いまもことあるつど励まされている新潮社の坂本忠雄さん、講談社の徳島高義さん、天野敬子さん、文春の寺田英視さんらもみな勝れた名編集者だった。もっともっと早くには、太宰賞に満票で選んで下さった選者先生もとびぬれた名編集者でもあられた。おそらく、どのお一人も違うことなく「文学は」とお尋ねすれば「文体」と言われたに相違ない。
2017 7/20 188
* 「選集」第二十一巻送り出し、最後の用意、宛名貼り込みを半ば終えた。早め早めの用意が仕事の正確と気持ちの余裕を呉れる。
十時過ぎ。夜前は三時間と眠っていない。床について本を読み出すと際限なく眼を覚ましている。リーゼの応援を頼むとするか。しかしもう少し機械仕事もしたい。機械で「書く」仕事、機械を「軽く」する仕事。なにしろ厖大なデータの量を機械は抱えすぎている。その整頓と軽量化で古物になっている機械の負担を軽くしてやりたい。
2017 7/20 188
* 起床8:00 血圧130-71(65) 血糖値100 体重66.2kg
2017 7/21 188
* 選集第二十巻分の支払いを、炎天下妻と出て銀行で済ませてきた。ちいさな数字が読めないし、払い込みの機械操作もわたしはできないので、いつも妻に頼んでいる。
あまりの暑さにどこへ足を伸ばすことも寄り道もせず、タクシーで帰宅。横になって校正していたがすぐ寝入ってしまい三時間ちかく。サッパリした。
2017 7/21 188
* のうのうと脚をのばして湯に漬かりたい。温泉が好きなのにめったに縁がない。四度の瀧ちかくのあれは豊年満作とかいった宿の湯が最後とすると、もう随分昔。大きな檜の浴槽に満々と張った湯へ相客なしに漬かった快適・快感、忘れがたい。心臓の弱い妻は温泉に浸かるのが、苦手。
熱海まで独りで出かけ、温泉になど何処ででも漬かれるだろうと思っていたのに、いたるところで予約がないとことわられアタマにきて、駅前の魚屋の食堂で大きな伊勢海老をはじめいろんな刺身をたらふく食べただけで帰ってきたのも思い出す。美味かった。あれはいつ頃のことだったか。
建日子のなんとかいう信州の別荘へ連れられたとき、夜遅くに近くの温泉へ自動車で運ばれたが温泉の印象、何ものこっていない。
銭湯へ入ったなど、東京へ出て来て新宿河田町のみすず莊の新婚時代に近所の湯へ通って以来、一度も体験していない。そもそも保谷でも銭湯を見た覚えがない。
2017 7/21 188
* 若尾文子らの初めて見る、変わった、しかし面白い映画をみながら、月末刊の発送用意を終えた。大きな画面のテレビに張り付くぐらいに近寄らないと役者達の顔が見えにくいとは、情けない。
まだ十時前だが、もう機械からは離れるしかない。
* と言いながら、信じられない話を一つまた二つと手探りしていた。面白い仕事になると、つい時間を忘れている。
「夏バテに気を付けて、元気にお過ごしください」と何方からも言われている。わたしも似たことを言うているのだろう。わたしの場合、一日一日がいわゆる「終活」と思っているので、かなり気ぜわしい。それをうまく和らげて日々を生きて行かねばエンジンが灼けてしまう。幸い「騒壇余人」に徹していて、余分な雑音は希にしか聞こえてこないのが、安楽、有り難い。
2017 7/21 188
* 起床8:00 血圧128-60(61) 血糖値97 体重66.3kg
* 材料過多でアタマが音たてて呻いている。寝てしまえ寝てしまえと心臓がわたしを揺する。
* 京都の「まるごとイラスト・マップに見入り、詳細な地名辞典をさぐり続けている。イラストマップは遠い記憶を印象濃く甦らせてくれる。ただ、字の小ささに目をこらすのが辛い。
* 整頓もならず手当たり次第に(仕事上の)モノを投げ込んである14段整理棚がこの部屋だけで三つ、階下にも三つ、整理すれば必ず効果が現れると判っていても手が出せない。手を出すには棚の中身をみな吐きだした上で分類整理してまた棚へ戻さねばならないが、ぶちまけられる場所が無い。棚の他にもダンボール詰めの資料も押し入れに幾つもある。それぞれに面白い資料のはずだが、もう活かす余命は望めないのだから棄ててしまえばいいようで、しかしいちいち眺めるだけでも面白い楽しいという未練で、放ってある。
* いま、大学ノートで九册もの、「創作ノート」が見つかった。創作を進めて行く上でのとめどもない自問自答や構想や思いつきが、書き込んである。いろんな小説がそこから鍛えられ出来上がっていった。
そして今また、機械書きでなく、このノートの残る余白を利して、新たな着想にかかわる手書き「ノート」を書き始めようとしている。活気でアタマが灼けそう。加えて、必然、カラダは運動不足。
* 小さな字の重い本で地誌を読みつづけるうちに寝入っていた。寝るのは、わるくない。目が回復する。よくもない。時間が足りなくなる。
2017 7/22 188
* 起床8:00 血圧115-58(59) 血糖値95 体重66.4kg
* 血圧低くてか、視野も曇ってか、歩行はなはだ頼りなく、家の内で下と上との上がり降りにも途中当惑する。
今日もまた、いつでもからだを横にできる場所に居坐って、せめて、溜まった校正を片づけて行く。現代語「枕草子」撰抄、また大冊の、「いま、中世を再び」。
少なくも「湖の本」は、十月から送料「従来の倍額」に値上げと業者に言い渡されており、さしあたって九月前半に『枕草子』だけは発送したい。以後のことは以後に考える。
2017 7/23 188
* 明け方まで、中学時代の恩師、懐かしい懐かしい西池季昭担任の先生の夢を見続けていた。学校をあげての大がかりな同窓会がどこか遠い観光地で開かれていて、西池先生、シックな正装で参加して下さっていた、昔のままの元気なお若さで、そういえばわたしたちもセイゼイ社会人一年生ほどの若僧だったが、こまかしい夢の記憶はなく、ひたすら先生を懐かしく取り囲んでいた。そして会も果て、先生をどこか遠くへお見送りすべく、大きな駅まで誰であったか男子生徒と二人で町を歩いていった。
西池先生はもうとうの昔に亡くなられ、わたしは東京からかけつけ、告別式で弔辞を読んだ。先生は京の菅大臣神社の神主さんのまま、祇園石段下わたしたちの弥栄中学で数学の先生をされていた。懐かしいいい先生方にたくさん恵まれ、事実上の新制第一期生だったわたしたちは、一年生から、自主性と、進取の気象、そして社会性を植え付けてもらった。
いまも、あの当時の先生、お二人、お若かった佐々木葉子先生、万年元雄先生とお付き合いがある。
夢の西池先生、懐かしかった。列車に乗ってどこへ帰って行かれたのだろう。
* すうーっとまた夢へ引かれて行きそうに瞼が重い、朝のまだ十時半なのに。
四條の橋から鴨川越しに、遠く遠く曇った大空と北山のかげが目に見える。
2017 7/23 188
* 宇治十帖はひとしお練達の叙事と展開でまさしく懐かしいが、しかも終始うす曇って晴れやぐことがない。物語を牽引する薫と、ヒロインの一人浮舟との、たゆたい揺らいで心定まらない性格が影響している。
この二人、わたしは好きでない。好きになれない。姉の宇治大君を哀しみ死なせ、妹中君を心浅くライバル匂宮に押しつけておいて悔い続ける薫の、煮えきらなさ。実父藤原氏柏木の自制心に欠けた愚かしさをモロに受け継いでいる。生母女三宮の不注意な粗忽さにも似通っている。
聡い光源氏の顔を思わず歪ませたほど愚かしくも露わな柏木の恋文の書きザマ、それを秘め隠しも得せず夫光源氏に見られてしまう心幼い女三宮の足りなさ。いまいまの表現で謂えば、ネット社会での醜聞「炎上」にちかい失態だった。
先生が女学生とのみそかごとをネットで「炎上」暴露されてクビになるハナシが、ときどき新聞にも報じられるが、昔の学校とはちがい、今今の生徒たち、尊敬できない先生をネットで火祭りにするぐらい、オモシロヅクでやってしまう。報じられる先生方の不祥事は、たいていそんなふうに世間へバレているらしい。
もっと大人の世の中でも、なんとかいう名の有る細君がなんとかいう名の有る亭主をネット社会で罵倒し尽くす「炎上」沙汰が醜聞となり、これまたよほどヒマなテレビ局がバカバカシク電波を浪費して火の手を煽り続けている。大人とは思われぬ愚挙の共演。お粗末の極み。
ラ・ロシュフコーの曰く「思慮に欠けた弱さは悪徳にも増して美徳に相反する。」
2017 7/23 188
* 起床8:30 血圧124-58(68) 血糖値99 体重66.5kg
2017 7/24 188
* 起床7:00 血圧127-65(60) 血糖値109 体重65.5kg
* 昨日夕食前の機械仕事中、急に喉もとへこみあげてくる胸焼け感に悩んだ。数日前には夜中爆発ぎみに喉もとのいがらい咳き込みで跳び起きた。食は少なめに過ぎるほどで、日本酒は数日口にしていない。缶ビールも一缶が呑めずに妻に手伝って貰っているほどで、体重は昨日より今朝は一キロ落ちている。胃袋は無く、胃酸は出ていないと想うのにこの胸焼けは(いつもではないが)とても不快。
* おそくまで京都の地誌・地図や、新旧の源氏物語本や、閨秀「伊勢」のことや、「絵巻」月報や、枕草子や、竹取物語などを読み耽り、そして「信じられない話」が寝た夢の中で錯綜し、七時にはムリに起きてしまった。観音様と、秦の親たちの位牌へ「おはようございます」と二回ずつ敬礼、テラスのネコ・ノコ、黒いマゴたちにも、今日も元気に楽しく仲よく「三人で」遊べよ、「トーさんもカーさんも家にいるよ」と声を掛けておいて、たいてい一羽で、ときに二羽でやってくる鳩のための白米をテラスの真ん中に撒いておく。
さてハダカの体重を計り血糖値と血圧も測ってノートし、食前のインシュリンをきまった単位注射し、病院処方の薬四種のほか、何となく習慣的なサプリ七、八種を、食後のため決めた小皿にちゃんと用意しておく。
これらが毎朝のきまりごと。
そして朝食前か食後かに二階の機械を明けに来る。これに、イヤほど時間が掛かる。
真ん前、目の上の書架は大きな字や大冊の全集類でいっぱい。その他いたるところに使い駆け読みかけの本や資料が雑然、建日子が欲しいとねだっている佳い革のソフアも、坐るどころかモノが幾重にも乗っかったまま。倚子の背側、張り付くように間近な机上には、二段に工夫した仮の板棚に、上は湖の本創作、下はエッセイがみな揃っていて、いつでも自分の仕事を読み返したり調べたり出来る。まだ本になれない待機中の原稿類も大きな紙袋五つ六つに入って到るところで場を塞いでいる。
機械は三台、しかし新しい方の二台を此のわたしは能う使えなくてムダに棚さらしになっている。日々の愛機は、はるか昔からの古物でゆーっくりしか働かない、もうこれは危機的状況というしかないが、根が機械音痴にちかいわたし、最新機へ新たに挑む能は無い。
* 竹取物語をつつみこんだ広大な世界を、さまざまに学び直していた。たくさん目を使った。妻が地元病院の予約診察を受けに出ている間につよい雨と雷が通り過ぎた。その間もやすまず仕事していた、睡りもしないで。
* 九時になる。疲れて、ピアノや歌を聴いている。久しぶり倍賞千恵子の「かあさんのうた」に涙をこぼした。岸洋子の「希望」にも胸打たれて聴いた。いまは芹洋子が、「夏を愛する人は心つよきひと、浪をくだく大地のようなぼくの父親」と歌っている。やがて、ペギー葉山の、蔦のからまるチャペルの見える「学生時代」が聞こえてくる。あの学生時代を今こんなに懐かしむとは思わなかった。五十嵐喜芳の「オーソレミオ」にスカッとする。
これから暫くは、好きなマドレデウス「ムーヴメント」に聴き惚れて、落ち着く。落ち着いてまた仕事と願ったが、目はもう使えない。
2017 7/25 188
* 起床7:30 血圧136-70(62) 血糖値97 体重66.3kg
* 故紙回収の朝仕事。睡くて、重くて、腰痛む。で、村田海石書の真行草「三軆千字文」の和綴じ本「天」の一冊に見入って、目とからだとを休める。
いつどこで手に入れた冊子か覚えなく、やはり秦の祖父の遺産かも知れない、つづく「地」「人」の二冊もあったろうが、やはりわたしが古書肆の店先から端本のまま拾ってきたのかも。
天地玄黄 宇宙洪荒 とはじまる千字を真行草の三軆で書いたと表紙裏にあり、しかし第一頁冒頭には「三體千字文」と表題されている。「身」扁と「骨」扁がある。この二字、よく戸惑う。
それにしても書かれた真行草三体の字の美しさ静かさに、文字どおり敬服する。裏表紙の内側に、ハテ本文と同筆なのか本の持ち主の感想なのか、みごとな筆で「天與正義 神感至誠」と二行に、謹直に書いてある。心地良い。たまたま開いた「性静情逸 心動神疲 守眞志満 逐物意移 堅持雅操」せの三体字の美しさに深い息を吐く。そして嬉しくなる。
* ここ二週間ほど日本酒を口にしなかった。しばらくぶりに飲み、こころよく酔ってぐっすり寝入った。目が覚めても睡かった。
鏡を見ると髯が真っ白。髭を生やしている男達は、要するに髭剃りがめんどうなのだと思われる。面倒ではあるが髭を蓄えたくなどない。ひげは「蓄える」と謂う。いやな物言いだ。とはいえ家に籠もっている内は生えたのびたとも意識もせず、要するに剃るのが邪魔くさいだけ。気がついて鏡で見ると、仰天するほどのびている。とても剃りにくい。
* 祇園会の後祭りも過ぎてしまった。
2017 7/26 188
* 起床7:30 血圧142-64(56) 血糖値106 体重66.2kg
2017 7/27 188
* 起床7:00 血圧143-79(56) 血糖値101 体重66.3kg
* ごく僅かな朝食のあと、ガマン成らず睡く、潰れたように二時間ほど寝ていた。それでも夢は見る。それも突然に父方とおぼしいしかも若々しい何人かが、この我が家の居間の窓まで連れて来て「恒平ちゃん」と呼んだ。窓を開けると、若々しい元気な女性の一人が、(いちばん年若かった叔母かと想われたが、)窓の内へ手を伸ばし、笑い声とともに洋酒とも中国酒ともみえる瓶を一つ手渡してくれ、そして、水が流れ去るようにみな消え去っていった。「だるま」と呼び慣れているウイスキーの瓶に重さも似ていた。わたし自身もせいぜい二十代の若さで、まぢかに妻もいっしょだった。身を揉むように目ざめた。十時半。
玄関へ荷が届いた。
「湖の本」創刊の一の恩人である元朝日新聞社の伊藤壮さんの頂戴もので、大好きな、素晴らしい山梨の桃、 たくさん。やや柔らいでから、よっく冷やして食するようにと。嬉しい。
* とにかく食が薄い。食べたいよりも食べたくないという細い食生活では、夏のうちに弱ってしまうと思いつつも。よく冷えた桃や蜜柑や桜桃などが、美味い。幸いにわたしは甘味も酒も好きな昔から二刀流で、熱量はそれで摂っているが、それでは栄養失調になると自覚もしている。妻が脂肪を厳禁されているので、わたしも倣いぎみにしている。昔は好物の一位だった天麩羅が病後いっこう美味しくなくなり、ガッカリ。肉類も焼魚もつい敬遠してしまう。煮た魚は子供の頃から苦手だった。野菜も大の苦手で、胡瓜もみやキャベツばかり好んだ。今は、冷えた野菜ジュースを好み、薬だと思って青汁はせいぜい飲んでいる。
食生活を大いに沈滞させている元兇は、抗癌剤でボロボロになってしまった「歯」であろう、噛む力が萎え、すこし硬いものも容易に食せない。好きだった貝類が、牡蛎のほかほとんど噛めず、肉類もしかり。じつは漬け物、葉ものも意外に硬く、咀嚼しきれない。
一等いけないのは、食べると腹が張る、というより兆してくる腸閉感。閉塞しては激しい苦痛になるが、食べた物が食道や腸で停滞すると不快感はしつこい。緩下剤などいろいろに対処してし腸閉はいずれ排ガスや排便で脱するにしても、食欲は投げ出したくなる。「食べたい」「美味い」という最大の欲求や喜びを投げ出したくなる。
* こういう体調に低迷していても、幸いわたしは頑張って生きていられる。
やす香が可哀想でならなかった。海老蔵夫人も可哀想でならなかった。心から惜しんで見送った人、何人もいた。癌もこわいが抗癌剤もこわい。しかし、わたしはガンとして抗癌剤を受け入れて耐え抜いた。それでよかったのだと、今も、思っている。
いま、心を励ましてくれる「仕事」とそれを続けて行きたい「気力」等をもてているのを、幸せに思う。
なによりは病気しないで済むことだ。
2017 7/28 188
* 起床8:30 血圧127-73(66) 血糖値103 体重65.4kg
2017 7/29 188
* 起床9:30 血圧114-57(64) 血糖値103 体重66.3kg
2017 7/30 188
* 起床6:30 血圧124-63(51) 血糖値93 体重66.6kg
2017 7/31 188
* 戸外の暑さ、ホンの数分の自転車の往き帰りだけで、焦げてしまいそう。
* 送り作業に終始。明日には送り終えたい。十時。今夜はもう休む。
2017 7/31 188
* 起床7:15 血圧128-65(56) 血糖値97 体重66.6kg
2017 8/1 189
* ゆっくりゆっくり、送り作業すすめ、今しがた、五時前に終えた。
* ゆっくり湯に漬かって本を読んだ。映画を見た。
2017 8/1 189
* 起床7:30 血圧131-62(54) 血糖値94 体重65.9kg
* 明け方に二度、やや強めの地震、つづく。二度目、そのまま起床。
2017 8/2 189
* かんたんな昼食時に、生協からとどいた「純米」四号瓶の少し口を開けただけで、潰れるように二時間の余も寝ていた。
2017 8/2 189
* 起床7:30 血圧141-67(51) 血糖値92 体重66.6kg
2017 8/3 189
* それにしても視力の衰え、ソラおそろしくなっている。小さい字、インクの淡い字は、裸眼を押しつけるようにしても見えにくい。棟方志功のようになって きた。なんとしても此の眼に適した眼鏡をつくりに行かねば。青山一丁目まで行かねばならない、日照りの夏が身にこたえる。
2017 8/3 189
* 起床8:00 血圧134-69(59) 血糖値102 体重66.4kg
2017 8/4 189
* 起床8:30 血圧154-72(64) 血糖値99 体重65.9kg
* ウーン、暑い。
2017 8/5 189
* 起床5:15 血圧146-67(58) 血糖値101 体重66.0kg
* 明けの五時過ぎ、妻が目を覚ましてしまったらしいので、わたしも起きてしまった。テレビで、ちょうどロンドン世界陸上100メートル決勝がは じまるところだった、結果は常勝を誇ってきたジャマイカのボルトが、今回限りの引退を表明していたボルトが三位で終え、十二年ぶりに三十過ぎているアメリ カのガトリンが勝った。
それでいいのだと思った、ボルトは不世出の名選手だったが懸命に最後のレースを終えて悪びれなかった。ガトリンはよくやった。これでいいと思った。ガトリンとは想えてななかったが、ボルトの金はおそらく無いと予想していた。これでいいのだ、歴史はそういうふうに動く。
2017 8/6 189
* ひとしお眼にきつくて難儀を極めた一仕事を、やっと終えた。一時間で読めてしまう大昔の座談会録を全面新たに書き写したが、極く薄の細字を読みとるのに、四日間、しんから草臥れた。しかし、相次いで「湖の本137」佳い一巻に纏まりそうだ。
2017 8/6 189
* 泉鏡花を論じた仕事をかなりの量、読み返していた。
* もう機会の字がむらむらに入り乱れて来始めた。もえ、やめ。
2017 8/6 189
* 起床7:30 血圧158-85(63) 血糖値100 体重66.6kg
2017 8/7 189
* 郵便物など持って自転車で走ったが、背中の焦げる熱さだった。ちょっと出歩く気になれない。
* 冷房はしているが、変に腹部不穏。
2017 8/7 189
* 起床6:40 血圧135-70(59) 血糖値104 体重66.8kg
2017 8/8 189
* 何度も寝入った。目はやすまる。
夢に黒いマゴが出てくれて、わたしと妻とのあいだで、ごろんと寛いでいた。感動したが夢だった。
* 二時間も湯に漬かったまま、たくさん読みたくさん校正した。「絵巻」を勉強し、源氏ものがたり「総角」の巻で大君に同情しつつ中君に心惹かれていた。
* もう十二時ちかい。よく眠りたい。
2017 8.8 189
* 起床8:40 血圧136-75(59) 血糖値91 体重65.7kg
2017 8/9 189
* 外へ出られないほど、暑い日。
それでも庭へ鳩たちは来ている。米を撒いてないと、小屋根や書庫正面のエブロンで黙って待っている。わたしたちが嬉しいように、ネコもノコも黒いマゴも賑やかでさぞ嬉しいだろう。ときどき雀も、蜂も蝶も来ている。
五時半、もう目は霞んでいる。目もと、目じり、上下の瞼にジャリジャリと音もしそうに目やにがたまる。きつく拭って取り去るとウソほど視野が明るくな る。しかし、長持ちはしてくれない。目もと、両眼の少し外側を暫く刺戟してやると、やはりごく短時間だが明るくなる。一日中そんなこともしている。この暑 さでは青山一丁目の眼鏡屋までとても出向けない。
* 九時半。階下仕事に切り換える、辛うじて眼が保つあいだ。
2017 8/9 189
* 起床7:40 血圧134-75(65) 血糖値99 体重65.9kg
2017 8/10 189
* 近いところにある時計の針が見えない。やがて十一時か。
三日はかかるかと思った難儀に細かい仕事をほぼ今日のうちに仕遂げた。明日には通過して次へ進める。
2017 8/10 189
* 起床7:50 血圧127-70(67) 血糖値99 体重66.0kg
2017 8/11 189
* 起床9:50 血圧120-66(61) 血糖値90 体重66.3kg
2017 8/12 189
* 昨日から今日へ 思い寄らず寝坊もし、かなりボケている。堪えてコツコツ仕事していても、眠気が襲ってくる。いま自分がどっちを向いているのか分からなくなる。
2017 8/12 189
* 「湖の本137」に次いで、「選集」二十四巻の編成に掛かっている。二十三巻の初校がもうすぐ済み、二十二巻責了への読みにも集中しなくては。そのうちに「湖の本136」が出来てくるので、もう発送の用に掛かっている。
* 吉備の有元さんへ、ゆっくりメールを書いた。
* もう階下へ。機械の字が滲んで見えなくなってきた。
2017 8/12 189
* 起床9:50 血圧120-61(58) 血糖値88 体重66.6kg
2017 8/13 189
☆ 今朝の山陽新聞に
谷崎潤一郎が津山へ疎開した際の備忘録が発見されたとありました。宕々庵での日々が、お世話した得能家側から新たに明らかにされたようです。
選集第20巻、三篇の作品論は記憶も鮮やかでしたので、今回は「神と玩具との間」にはっと思わせられるところが多く、面白く再読しました。
丁未子夫人(「丁未末子」となっていた箇所がありました。あと、「根律(津)家」、「佐簾(藤)」「佐蔭(藤)」、「祭(察)しがつく」、「傍点秦」と しながら傍点の抜けなども。一段と眼を悪くなさっているかと心配です)は、戦後に川端康成の「女であること」のモデルともされた人ですが、「若妻との新婚 生活に「満足」が表明される(あの谷崎の)『語る書(佐藤春夫に与へて過去半生を語る書)』は、実は日々にその「満足」が「失望」や「落胆」へと内から掘 り崩されて行く自覚あってはじめて表現の動機をえていたことを、我々は正確に読み取らねばならない」、佐藤夫妻を過去完了に押しやる余勢で現夫人との結婚 生活をすら「過去」視しはじめているのが『語る書』―それとは裏腹に、「谷崎にとって「幼少時代」と「青春」は「過去」でなく内なる現実現在」に他なら ず、「表立たない幾度もの暗い淵に臨んだに違いなくとも」、「妻」の内なる「女」が理想の「母」へと通い合うものゆえに「妻」松子を他の「女」に見換えて しまうことはなかった、とはなんと鋭い理解であり、厳しい真実であったかと思います。
また、「恋文は谷崎文学に於ける「松子」効果を後々にまで確認する作者発行の「保証書」としても書かれていたのだ」との言葉に深く頷かされながら、メールの時代へと変わった今、どのような趣向を凝らした「恋文」や創作が可能かと考えてもいます。
自生の鷺草も見頃と聞いて、今朝は吉備路を散策してきました。
誰もいない湿地は、トンボが飛び、純白な花が秘めやかに咲いて、柔らかい秋の風でした。
長いと思っていたこちらでの休みも、あと4、5日。選集21巻は、戻りましてからの楽しみにします。お元気で。 深澤晴美
* いつも案じている昔風に謂う「誤植」に恐縮し困惑する。こういう間違いが出ると分かっていて直し洩らしまた見落としている。校正を重ねればいいと分 かっていても、内心に「早く」と願う思いに引きづられ恥ずかしいことである。たしかに眼は、如何ともしがたく弱っている。上田秋成の晩年が思いやられる。
* このところ、浴槽はわたしの校正と読書室になっている。永いときは二時間ちかく読んでいる。ハカが行く。眼を洗い洗い読めるので機械仕事よりラクなのである。機械の前では「仕事」をしなくてはならない。
2017 8/13 189
* 起床8:00 血圧139-56(56) 血糖値100 体重65.7kg
2017 8/14 189
* 起床3:30 血圧150-76(55) 血糖値100 体重66.9kg
* 手洗いに立ったまま、キッチンに置いた仕事が気になりそのまま朝八時過ぎまで校正ゲラに手を入れ続けていた。十一時過ぎまで寝た。
食事してまた仕事を続けた。テレビの天皇さん皇后さんと一緒に戦没者慰霊に黙祷。
午後二時過ぎ、やっと機械の前へきた。
火曜日は土日をはさんで郵便物の極少ない日で。郵便物もメールも少ないと文字どおり居籠もり感覚になる。それが自然なのか不自然なのか、ま、思案のほかでよい。
2017 8/15 189
* 次なる「湖の本136」発送の用意を余程進めた。「選集」第二十四巻の入稿用意もずんずん進んでいる。
* 十一時過ぎた。今夜は眠らないと。
2017 8/15 189
* 起床8:15 血圧150-76(55) 血糖値100 体重66.9kg
2017 8/16 189
* 起床7:45 血圧150-72(52) 血糖値103 体重67.1kg
2017 8/17 189
* ウエーッ、暑い。
* 今日はひときわ視力の衰えがきつく、昼間、あかるい電灯の真下でキイの字がとても見にくかった。疲れたが、しいて仕事をつづけた。夕方、三十分ばかり横になって「源氏」「絵巻」そして「海部直」の系図をしらべているうち眠気にまけて一時間あまり寝た。
「湖の本」136発送の挨拶や謹呈挨拶を全部印刷し終え、封筒へのはんこ捺しも全部し終えた。
2017 8/17 189
* 霞み目を励ましながら今日も十一時過ぎた。階下で小憩、そして就寝前に、今夜は源氏物語のあと、「しまなみ海道」の島々の地誌を調べる。最後に「出エヂプト記」を。再読ではあるのだが、これが、まこと途方もなく面白い。
2017 8/18 189
* 起床7:30 血圧147-78(49) 血糖値88 体重67.1kg
2017 8/19 189
* 猛烈な雷雨に一時間余も見舞われた。怖くはなく、二階の窓から顔を出して雨をみていたが、雨が激しく垂直に降るので、ちいさな軒にまもられ、濡れもし なかった。涼しかった。しかし、あんなのがものの半日も降り続いたら恐ろしい。外出しなくてよかった。久しぶりに電動自転車に乗ろうかなどと思っていた。
* 仕事捗っている。胸が落ちるほど疲れているが。九時半。もう一時間ほど、やるか。
2017 8/19 189
* 起床7:30 血圧147-69(55) 血糖値93 体重67.0kg
2017 8/20 189
* 起床8:10 血圧144-64(64) 血糖値93 体重66.3kg
2017 8/21 189
* 起床7:30 血圧139-68(55) 血糖値99 体重66.2kg
2017 8/22 189
* 九時を回ったのでもう今晩は呑めない。そう決めている。
2017 8/22 189
* 起床8:30 血圧121-62(68) 血糖値99 体重66.4kg
2017 8/23 189
* 生協から長野産「神渡(みわたり)」という美味い生搾り純米酒の小瓶が届いたので、得たりかしこしと、神戸の岡田昌也さんに戴いた特製の「粒雲丹」を、チッ、チッと箸の先でつつきながら、瓶に半分ほど機嫌良く堪能した。雲丹も酒も、とびきり美味い。
秦の父、育ての父は、梅干しが代の苦手はともあれ、酒は匂いでもいけなかった。ようあれで若いとき御茶屋の台所で皿ねぶりなど出来たもんだと思うが、わ たしは中学生のおり秦の叔母につれられ琵琶湖畔唐崎での「園遊会」へ連れて行かれたとき、「お酒」の美味いのを覚えた。会社勤めをやめて出るまで酒の飲め る機は無かった、が、やめたあとは出版社・編集者の接待でまことによく飲んでまわった。秦さんはいくら飲ませても酔ってくれなくて困るとボヤかれたりし た。たいがいお相手してくれる方が先にノビていた。
最近は、量を厳格に抑え、日に二合以上は、夜の九時以降も、控えている。しかし二合の酒などすぐ失せる。「こなから(一生の四分の一、二合半)」と行き たいが、ま、四合瓶なら二日もたせるとこころがけている。セチがらい酒になったと嘆かわしいが、過ぎると、血圧が急降下か急上昇かして危ない。
2017 8/23 189
* 起床9:30 血圧123-55(60) 血糖値94 体重66.0kg
2017 8/24 189
* 清酒「神渡」で、戴いた「粒雲丹」をあれあれという間に賞味し終えた、酒肴の妙、感謝感謝。
2017 8/24 189
* 今朝、朝寝坊し、午後にも二時間ちかく寝ていた。宇治十帖「総角」の巻を読みなずんでいた、どうも薫中納言の大君への、また中君への仕向けが愉快でな い。そして匂宮に妹中君をやすやす盗ませておいて自分はしつこく姉大君にまつわりつきながら受け入れられない。わたしの薫嫌いはこの辺で一つ極まってい る。不快なまま寝入ったらしい。
* さていま奇異の体験をしている。眼鏡を現在八つ使い分けているが、そのうち機械用と呼んでいるのの上から外出時などに使ってきた遠用の眼鏡をなにげなく かぶせてつけて、これが離れたところを、近来体験したことのない程クリアに見せてくれる。ま、一ッ時のことですぐ霞んでくるのだが、水中から出て視野がク リアという喜びを久しぶりにしばし味わえた。要するに全部の眼鏡が合ってないということだ。青山の保谷眼鏡、遠いのである。戸外は燃えるように暑いのであ る。
2017 8/24 189
* 起床7:45 血圧127-70(59) 血糖値93 体重66.2kg
2017 8/25 189
* 今朝は、食後二階へ上がろうとして、堪らず心身重苦しくそのまま寝室にからだ横たえて、『絵巻』月報の十九を、これはもう目から鱗の何枚も落っことしたほど面白く二、三大先達が蘊蓄を煮つめて語った短文を食い入るように耽読した。ただの単語的な知識ではない、大きな時代を深く読み取って興味津々の吐露に出会えたのである。ありがたく、すぐにも役だってもらえそう。
2017 8/25 189
* 暑い盛りに二人で出て、銀行から「凸版印刷」と染五郎の「そめいろ」とへ支払いを済ませた。その足で歯医者へ。幸い降られずに済んだ。帰り久しぶり「中華家族」へ寄り、脂けの生けない妻は冷やし中華と小さな生ビール、わたしは酢豚とマオタイをダブルで二杯。帰りに花を買い、ゆっくり帰宅。頸に、氷水で冷やした粋な頸巻きを巻いて行ったのが、効いた。
* これで、次の外出は、三十一日真昼間に聖路加病院へ。ふーッと溜息。涼しーいところ、無いものか。
2017 8/25 189
* 起床8:30 血圧124-59(58) 血糖値96 体重66.3kg
2017 8/26 189
* 起床9:50 血圧128-60(61) 血糖値104 体重65.7kg
2017 8/27 189
* 起床9:50 血圧113-61(56) 血糖値94 体重65.8kg
2017 8/28 189
* 駅前通の文具店まで必要な買い物に自転車で走る途中、頸筋のうしろに締めてくる圧感があり、用を済ましてそそくさと帰ってきたが、血圧が下がっていた。
家につくと隣へ黒っぽい毛並みの猫が来ていて一瞬マゴを想って胸を鳴らしたが。ちがった。
* テラスへは、鳩がつがいで来ていた。
* 午前中から、けだるい睡魔に忍び寄られて、正午まで二時間近く、昼過ぎもキッチンに腰かけたまましつこく寝入っていた。そのあと、文具屋へ走った。冷房しているのだが、それでも家の中でかるい熱中症気味であったのかも。疲労がキツい。
尿が出て便出て喰へて目が見えて読み書きできて睡れればよし 疲れたくなし
* 昨日柳君が来てくれて、何のお構いもサービスも出来なかったので、もう帰りがけ、わたしは彼を二階の機械部屋・書斎へ連れて行った。電器屋は二三度入ったことがあるが、めったに人は入れていない。ま、あまりな部屋の混雑ぶりをみてもらって何のサービスにも当たらないが、これを契機にすこしでも片づけたいと思っていた。
で、午後おそめに、小説の仕事をそこそこ捗らせたあと、それだけは気に入りの佳いソファ、建日子が欲しがっているソファをもう十年来満杯のダンボールたちが占拠しているのをなんとか排除しようと懸命に無い知恵を絞り、ま、ソファの上だけが本来の顔を見せてくれた。黒いマゴがその上ですてきに似合った敷物をひろげて躯を柔らかに沈めたのが涙が出そうに最高だった。そのまま機械に入っている歌を聴いた。小鳩くるみの「埴生の宿」、そしてペギー葉山の「大学時代」など。望郷の思いのなによりも迫ってくる歌を目をつむって聴いた。
もとの木阿弥にまたならないように、ソファ、だいじにしてやりたい。疲れたらソファに沈んで憩いたい。
* わたしは、いまも心幼い少年のようだ。恥じても始まらないが。
* 湯槽のなかで、中世を考え、ロシュフコーとしばし対話し、鳥辺野と化野の地誌をしらべていた。
2017 8/28 189
* 起床8:30 血圧116-59(57) 血糖値102 体重65.7kg
2017 8/29 189
* からだが溶けているような疲労を覚えている。なにかがわたしを暗い穴へ引っ張っていそうなきがする。朱明の炎夏は過酷だ。白蔵の新秋をつい心弱く待ってしまう。冷房はきいてきたのに、今日の仕事へなかなか踏みこめず、呆ッと、重い目をつむっている。
* 横になればからだは休まる、休まれば寝入るよりはと横になったままでも中世論の「校正」に励んだ。三十頁ちかく読んだところで、校正ゲラは置いて、『出エジプト記』、イスラエルの民に対するヤハウェの、誡めというよりも厳しい細かい「制戒」のいろいろをトバさず読んでいった。ちらちらと、「アラー」にささげているらしき現代イスラムの人らの神へ絶対の帰伏も想いやっていた。
それから「絵巻」月報で、「天子列影繪」の意義を五来博士に聴いた。とっても興味津々の的確な指摘や言及があったと思う。おなじことは、浄土系教派に置ける「名字繪」にも謂えると聞いて、大きく頷けた。日に日にいろんな面白いこと、大事なことを「絵巻」月報に教わり続けている、もはやわたしの場合何に役立つというのではないのに、知る、また識ることの強い刺戟には「生かされる」感謝をもつ。
『法華経』という新書本を開いたところに「空・無相・無為」こそが仏教へ入る「三門」とあった。無限定、無形象、無作為か。知恩院の大きな「三門」を振り仰いで飽きずにあのまえを自転車で往復していた少年の昔を想った。とてもとても、三門のあしもとへも寄れていない爺ぃであるわいとかなり情けないけれども。
源氏物語は、一方ではまだ「総角」を読み煩い、もう一方では「夕顔」を懐かしいほどにしみじみと読んでいる。
この「夕顔」の墓というのを、民家が、自宅の庭にひさしく祀り続けているのを、見せて貰いに行ったことがある。しかし、「夕顔」の墓から遠くは離れず、やはり源氏物語の一女人である「朝顔」の墓というのをやはり民家が自宅の庭に祀っているとは知らなかった。ただし、この方は、実は平宗盛の侍女「朝顔」の墓かとものの本にあって、これが面白いことになる。
2017 8/29 189
* 十一時過ぎた。もう、機械は離れる。瞼が重く塞いでくる。
明後日で八月が逝く。十一時前には聖路加へ行かねばならない、熱暑にすこし遠慮を願いたいが。「湖の本136」発送までになお八日間の余裕がある。九月には、歌舞伎座へ。月末近く、歯医者も、幸四郎の「アマデウス」も、聖路加の診察もあって「選集二十二巻」の送り出しが迫ってくる。九月はがいして気忙しくなる。いまのうち寛いでいたいが、疲れ切っていては仕方がない。
2017 8/29 189
* 起床7:30 血圧124-54(52) 血糖値90 体重66.1kg
2017 8/30 189
* 起床7:15 血圧114-55(56) 血糖値94 体重66.2kg
2017 8/31 189
* 小雨の中、聖路加で診察を受けてきた。きまりの処方薬をもらい、また三ヶ月後を予約。
* 薬局で処方薬を受け取ったあと疲労感がつよかったので、築地で簡易な喫茶店で強いコーヒー
を飲んだ。不思議とコーヒーはわずかでも活力を呉れる。「NCIS」のボスも天才検査官のアビーもしょっちゅう強そうな大量そうなコーヒー・カップを手放さない。
昼食は、食べ物よりも美味いワインをのみ、あとエスプレッソをお代わりした。往きも帰りも車内で校正。これが、なんとも懐かしい、連載していたのは三十七、八歳頃のエッセイだった。
想い出すとクスッと来るが、医学書院勤務の頃の私家版の小説を読んで声援して下さった医学教授や病院長先生らは、異口同音、「八十の人が書いたような文章だね」と。
作家になり、小説の他にすぐさまエッセイも次々連載した、「花と風」「手さぐり日本」「女文化の終焉」「趣向と自然」など、みな四十前の仕事で、やはり「八十の人が書いたような文章」だった。いやもっと踏み込んで然様であったろう、よかれあしかれ同時期・同時代の作家・批評家に類をみなかった。世は、まだまだ身辺雑記・私小説ふうの時代だった。つまり、はなから、わたしは「騒壇餘人」へはみ出ていた。評価してくださる、作家・批評家と限らない各界大先達の諸先生がつぎつぎ亡くなってゆかれ、わたしは「湖の本」という赤坂・千早城に躊躇いなく立て籠もった。それも決して孤立無援ではなかったから、三十余年なお継続して、第百三十七巻の初校が今日家に届いている。ま、程なく湊川で討死にするだろうが、誰への忠義立てか。当然、「文学」にである。わたしは生涯バカ正直な「文学少年」で終わるだろう。
2017 8/31 189
* 起床6:40 血圧147-67(57) 血糖値91 体重66.2kg
2017 9/1 190
* 「ユニオ。ミスティカ ある寓話」 三分の一ほどを第一部として「湖の本」版にするかを考慮している。今日も、作を堅めの仕事に励んだ。
* まだ九時半だが、もう「機械目」は使用不能。階下で、裸眼の校正と、読書と。そして寝る。寝られるときに寝る。
2017 9/1 190
* 起床9:15 血圧125-73(65) 血糖値82 体重66.2kg
2017 9/2 189
* 九月二日にして寒いとさえ感じるとは、お天気の動揺、ただならない。
2017 9/2 190
* 起床9:50 血圧123-66(68) 血糖値90 体重66.0kg
2017 9/3 190
* 起床7:00 血圧131-62(54) 血糖値93 体重66.1kg
2017 9/4 190
* 橋本孝さんに戴いた、巣のままの蜂蜜、美味い。金田小夜子さんに戴いた、見事な大粒の葡萄「ルビー・ロマン」も最高だった。元気になりたい。
2017 9/4 190
* 起床8:00 血圧129-68(58) 血糖値90 体重65.7kg
2017 9/5 190
* 今日はたくさん、読んだ。「十六世紀の美術 趣向と自然」を、そして泉鏡花の小説「龍潭譚」を、そして源氏物語の「若紫」を、また「総角」を、そして「出エジプト記」を、さらに、後白河院肝いりの 「年中行事絵巻」についていろいろ教わった。小説も書き進めた。テレビで「鑑定団」と「NCIS」も観た。
十一時半。またあすのために、休む。
2017 9/5 190
* 起床10:20 血圧120-60(58) 血糖値88 体重65.8kg
2017 9/6 190
* 起床7:30 血圧120-58(65) 血糖値83 体重65.4kg
2017 9/7 190
* 疲れては、崩れるように横になり、すると、校正しはじめることが出来、今日もたくさん読めた。
2017 9/7 190
* ともすると、グタッと疲れて潰れかける。横になり寝入って回復するとまた仕事をしている。仕事の間は疲れを覚えないのに、休憩に入るとドドッと疲労感 に陥る。困る。やすめという信号だと思って休むようにしているが、有り難いのか困るのか、からだを横にしてやると臥たままでの校正がハカが行く。いいとき は一気に五十頁も読める。やはり疲れてそのまま寝入ってしまう。ま、一時間か半ていど。
2017 9/7 190
* 起床7:30 血圧136-67(59) 血糖値101 体重66.0kg
2017 9/8 190
* 明日・明後日の発送という肉体労働に備えて、今晩はすこしのんびり、戴いた美味い酒で寛ごう。九時以降は飲まないと決めて守っている。九時になった ら、また機械が抱え込んでいる「小説」の前へ戻ってくる。七時半がまわった。妻は毎日の日課で七時から一時間隣室でピアノを「鳴らし」ている。ご近さんに 叱られない限りは、良いことだと思ってい「音」を聴いている。
2017 9/8 190
* 起床6:30 血圧130-68(52) 血糖値87 体重66.2kg
2017 9/9 190
* 九時前から懸命に力仕事を続け、いま、夕食前にと機械を見に来た。
作業前に、毎朝のように20錠ちかい薬をのむとき、強いアリナミンをいつもの倍量の2錠、痛み止めを1錠、予防的にのんでおいた。どっちもみこどに効い てくれ、石ほど重い本の包みを、一気に50册ずつ10数回も持ち上げてはキッチンから玄関へ運んで、潰れていない。痛みもない。
今晩も、十時までは、まだ頑張る。
腕力、まだシッカリある。こんな仕事はだらだらやってては疲れる。妻もよく手伝ってくれて、その間にもいろんな対話ができる。思い出話も子供達の話も「三人!」のネコたちの話も。
四時前から、録画してある松坂恵子の「蒲田行進曲」を半ばまで感じ入りながら耳で、ときどき目で楽しんでいた。よく出来た傑作映画というに憚らない。後半は夕食後に、また。松坂恵子、大好き。
若尾文子、岩下志麻、松坂恵子。はるかな初対面から何十年、わたしを裏切らなかった。
* 九時。今日の作業を終えた。疲れた。ねむくなった。
宇治十帖のながい「総角」巻を読み終えよう。姉の大君は薫を拒み抜いたまま火の消えるように亡くなった。妹中君は匂宮と情を交わしたが、都と宇治とに隔てられ宮の夜がれが続いている。
もう一冊の岩波文庫「源氏物語」では光源氏が藤壺の姪、まだいわけない少女の若紫をら情の自邸にひきとりたいと願っているが、まだまだ機は熟していない。
『出エジプト記』は読み終えた。
ああ、疲れた。仰向きにからだを、腰をのばしてきたい。
2017 9/9 190
* 起床8:30 血圧154-81(63) 血糖値94 体重65.6kg
2017 9/10 190
* ゆっくり、湯につかりいろいろ読みたい。
明日は、歌舞伎座。楽しんでくる。久しぶりクラブへも寄れるか。
* さすがにまる二日、石ほど重い荷物本五十ないし五十五も入れたケースを何十度ももちあげて運んだ痛みが腰、脚へ出て、湯につかっているうちにも両膝下 から指先まで無気味に攣縮の痛みで参った。熱い湯をかけつづけて辛うじて戻したがうしろ腰の鈍い痛みは暫くはとれまい。ま、回復すると体験的に楽観はして いるが。
2017 9/10 190
* 起床8:00 血圧126-65(64) 血糖値95 体重65.4kg
2017 9/11 190
* 湖の本136 発送を、まず、終えた。
かなり暑いが、寛いだ気分で歌舞伎座へ出掛けたい。
* 千葉さんがやっていた茜屋珈琲店の無いのがとても情けなく寂しい。
* 歌舞伎は九時すぎにはね、急いで日比谷のクラブへかけつけ、妻はなだ万の弁当を、わたしはウイスキー、ブランデーをストレートで、そしてクラブならではのアイスクリームを。ほぼ時間いっぱい寛いで、保谷駅へついたら雨。タクシーを待って零時に帰宅。
* 芝居のことなどは、みな、明日にする。ゆっくり休む。
2017 9/11 190
* 起床9:00 血圧133-69(68) 血糖値94 体重65.8kg
2017 9/12 190
* いよいよこの機械も変調を露呈し始めたか。どうも、うまくない。気温が日々に下がり行くに連れ起動にも時間が掛かる。冬至、わた しの誕生日頃には少なくも三十分ほど機械を温めないと起動しないかも。それまでにクラッシュしてしまうかも。アタマ働かず、神頼みで、手を束ねている。
* 凸版印刷からの疑問点問い合わせに、逐一答え終わった。フウーっ。昔の少年も老耄に日々近づいていて、恥じ入ることしばしば。過剰に気に掛けないことにしているが。
今朝、妙によろよろしている。血圧は、ま、尋常。血糖値は正常。体重も、維持したいと思っている65キロ台を維持している。問題は、食後二十錠近い服薬の相互作用の中に「よろよろ」を惹起の剤質が加わっているだろうかと。
2017 9/12 190
* クラブでは、久々にウイスキー、ブランデーをそのまま堪能してきた。脂味を禁じられている妻のなだ万から、頗る美味い牛肉だけを巻き上げたのが酒ともあいケッコウであった。
電車ではみな、席も譲られて、らくに往復、車中の校正もハカが行ったのは有り難かった。保谷駅でつよい雨になり、タクシーに七八人並んで待ったのもわりと早くに来てくれた。家では、ネコやノコや黒いマゴたちが賢く留守番してくれていた。
疲れもあり、リーゼを服して床に就いた。
2017 9/12 190
* 起床9:30 血圧129-60(64) 血糖値92 体重66.2kg
2017 9/13 190
* はやばや「湖の本137 泉鏡花」一巻の再校が出そろってきた。選集二十三の再校ゲラ、選集二十四の初校ゲラがもう届いていて、湖の本も。息を呑むほ どの仕事量の上に、選集・湖の本ともに新しい次々の巻の編輯と入稿も必要になってくる。そして小説も要注意の微妙な仕上げにまさに今取り組んでいる。
病気も怪我も、とても、していられない。幸いどの仕事にもわたしは興がって打ち込める。残念だが京都へ帰っては行けそうにない。あれが食べたい食べたい などと云う欲もない。酒量だけが、気を付けないと日に二合がこなからの二合半に上がりかけていて、べつにワインと缶ビールに手を出していることもある。熱 量は摂れるが、蛋白質がつい不足しがち。
2017 9/13 190
* 起床8:00 血圧160-74(58) 血糖値93 体重66.0kg
2017 9/14 190
* 食事すると ウソのようにガクッと草臥れる。行儀悪いが身を横たえたくなり、そのまま校正ゲラを少しでも読む。読み書き机というものが家の中で持てな い。機械に向かう以外は、キッチンの食卓しか場所がない。自然校正は寝床か、電車の中でする。たまに外出すると校正がはかどるという按配。
* 十時半。芯から草臥れている。機械から離れる。
2017 9/14 190
* 起床9:00 血圧140-73(71) 血糖値98 体重65.9kg
2017 9/15 190
* 起床8:00 血圧163-73(59) 血糖値101 体重65.7kg
2017 9/16 190
* 今日は食事のつど、あと、疲労というよりも腹部不穏になやみ、そのつど横になり、横になると幾種もの「校正」がはかどり、また読書もできる。宇治十帖 は「早蕨」を、岩波文庫本では「末摘花」を読み進んでいる。「絵巻」月報は残り少なくなり、いまは「華厳絵巻」などの巻に触れたいろんな知見や感想に教え られている。
実は、和綴じ木版本の「参考源平盛衰記」まで三十五六巻以降を枕元へ持ち出し、調べ始めていて、すこぶるというかムチャクチャに面白い。
今一冊、はじめて知った女性筆者の「京都魔界案内」のような文庫本を参看している。太秦にうまれ秦氏にすこぶる関心も知見ももった人のようで、すなおに愛読している。 2017 9/15 190
* 十時半になった。眼がうるうるして視野が滲むので、機械から退散する。今日も沢山仕事した。西の棟では、堆積した古資料からたくさん放棄処分として分別した。まだまだ、まだまだ。棄てるに惜しいモノの多さに胸痛むが仕方ない。
浴室でも、校正と読書と。宇治中君が京の匂宮二条院へ引き取られた。大君に死なれた薫中納言が寂しそう。
善哉童子の旅を追うてみたい、書庫に大部の「華厳経」が揃っている、その最後のほうを持ち出して来たい。ついでに岡見正雄先生の「室町ごころ」も。中世の「説経」も折角揃えてある、読みたい。読みたい読みたいに尻を打たれているが。ま、できることから。
さ、階下へ。寝床の上でもう一仕事も読書もするつもり。
2017 9/16 190
* 起床8:00 血圧140-79(57) 血糖値85 体重65.8kg
2017 9/17 190
* 乱取りよろしくたくさんな仕事を手当たり次第に前進させている。仕事では疲れない、食べると疲れる。食べないわけには行かない。
出かけて、人と話してくることが「必要」な気がする、完全に欠けているのが、いま、それだと思う。
もともとわたしはよその家へ出向いて話し込んでくるマネができなかったし、ただ話すのなら妻とで充分足りている、が、それは社交でない、夫婦生活だ。
理事会や委員会のあった昔には人との会話にコト欠かなかったし、帰りには好きに馴染んだ店へよって人と話せた、が、いまは完全に払底している。
といって、せっかく会っても煮えない「文学」のはなしなど、必要もなく、退屈し、ウンザリしてしまう。面白い雑談がいい、気を兼ねた高尚そうなおハナシ 合いでは退屈で疲れてしまう。いちばん困るのは「退屈」だ。人と退屈に過ごすぐらいなら独りで環状線にのり校正している方が充実する。
あの「茜屋珈琲店」の店主となら、歌舞伎や役者らの話題や噂ばなしがいろいろ聴けて、妻もわたしも大いにトクをして、楽しかった。しかも目を瞠るすばら しい珈琲カップでうまい珈琲が出たし、手洗いは清潔に綺麗だったし。珈琲でもジュースでもケーキでも何もかも千円札一枚で五円(御縁)のおつりが出た。八 月の歌舞伎座も九月の歌舞伎座も、茜屋がなくて、何割も寂しかった。
2017 9/17 190
* 起床8:00 血圧149-66(55) 血糖値92 体重66.2kg
2017 9/18 190
* むかしから九月彼岸の前後ころに「夏バテ」すると決まっていた。大学受験の前もそれで崩れ、結局受験ということ全くなしに推薦入学を受けて終えた。
今日も、朝八時起きのあとも、ぐったり疲労して寝入ってしまう。この数日に比べ無茶に暑いのも響いているか。
2017 9/18 190
* 夕方五時前、建日子が帰ってきて、一緒に食事した。いろいろ話して、六時半には次の仕事へ出向いていった。いろんな思いがあるが、お互いに美味く話せないじれったさもある。
二階へ来て、また一時間ほど機械の前で居眠りした。今日はどうかしている。思い切ってもう休んでしまおう。
2017 9/18 190
* 起床10:00 血圧150-72(50) 血糖値89 体重65.6kg
2017 9/19 190
* ぶり返した暑さもあり、睡眠不足もあり、昼間も何度か潰れていた。左脚太腿のなかほどの奥に一点針で刺されたような痛みが来る。横になり掌でおさえているうち緩解するが、左後頭部に偏頭痛も来る。食欲も湧かない。
* 横になれ、いま三種類ある「初校」や「再校」を進めている間は気が乗っている、が、疲れてくると寝入るら任せている。
2017 9/19 190
* 起床8:00 血圧152-74(59) 血糖値88 体重65.8kg
2017 9/20 190
* 横になって休息かたがた手当たり次第に書架の本や雑誌に手を出し、読み耽る。小林秀雄、中村光夫、福田恆存という懐かしい限りの大先達の鼎談も。山本 健吉さんというこれまた懐かしい人のエッセイも。小林先生から中村先生へ、太宰賞へ推薦の道が付いていた。福田先生は今なお奥さんを通して変わりなく「湖 の本」を応援していて下さる。山本先生とは一緒に講演に出かけたり、歌手の淡谷のり子と鼎談して美空ひばり嫌いな淡谷さんを困らせたり、懐かしい思い出が いっぱい。
「新潮」の、もう大昔の特別記念号を枕べに持ってきてあり、近代百年の記念作がずらずら並んでいたりする。手を出すと、やめられない。
こんな気分で書庫へ踏み込もうなら一日中嵌り込んで出てこれない。読みたくて堪らない本がまだ無数に有るなど、ナニという幸せなことか。
建日子など、ものは「手持ちの機械」で読むという。だからわたしの蔵書は要らないと。機械読みで満足などという、その真似はわたしには出来ない。やはり 頁をめくりめくり読みたい。書庫の蔵書たち、わたしの死後にはどんなに情けないめに遭うのだろう。歴史と古典と美術の専門書、いい図書館で引き受けてくれ ますように。雑誌は処分するしかない。
所詮日本に心豊かに平和な未来はのぞめまい、命あるうちに可能な限り読書を楽しみにしたい。そのためには、視力です。
2017 9/20 190
* 起床8:00 血圧141-70(57) 血糖値86 体重65.6kg
2017 9/21 190
* 愕然とするが今日、故大岡信の「うたげと孤心」が岩波文庫になったのを「謹呈著者」として戴いたが、活字というか印字のうすさ、淡さと八ポかと想われ る字の小ささとで(とてもらくには)読めないと知れ、参った。湖の本本へも眼が見えなくなったので購読休止をという声が少しずつ出始めている。いまは10 ポイント字を使っているのだが、視力によっては朝読めても晩は読めないということも体験として有りうる。
2017 9/21 190
* とにかくも疲れる。ぐたっと来る。横になると寝入る。寝入ってはおれないのだ。生き生きした何かへの興味や好奇心をかきたてて生き続けねばならない。煩悩の技ではない、命をムダにしたくない。授かった命への恩を敬虔なまで返さねばいけない。
2017 9/21 190
* 創作も含め校正の仕事や発送、送り出しなどの予定も輻輳してくるので、ともするとフアンに浮き足立ちかねない。おちついて、病気に落ちこまないよう気配りもして努めないと。
明日は歯医者へ行く。月末には幸四郎劇の「アマデウス」サリエリを見に行って、すぐさま{選集第二十二巻}の送り出しを終えねばならず、待ったなしで次 十月半ば過ぎの「湖の本137」発送の用意をせねばならぬ。十一月下旬か師走初めには「選集第二十三巻」が出来てきて、それが今年内出版の最後になろう。 余すは、もう十巻。さ、二年で出来るか三年目にかかるか。編成に苦心を要するだろう、所詮は何かが残ってしまうだろうが、慌てまい。 願わくは新しい小説の巻を三巻ほども入れられるといいが。
2017 9/21 190
* 起床7:30 血圧132-63(65) 血糖値96 体重65.6kg
2017 9/22 190
* 歯医者に行って、帰り、江古田の「中華家族」でマオタイをダブル二杯のみ、保谷駅へ戻って、ひどく降られた。寒くはなかったが、傘さしてタクシーを待っている間もよほど雨に吹かれた。
2017 9/22 190
* 今日の歯医者についで、明けて月曜も水曜も聖路加へ通い、金曜には「アマデウス」を楽しみ、土曜にはもう「選集22」送りが始まる。送りまでに一週間 fあると思っていたが、ほとんど余裕が無いとは。送り終えれば即座に次の「湖の本」発送(十六日予定)用意に掛からないと、息を喘ぎそうになる。ま、これ だから健康も保てて行けるのかと思うことにしている。しかし本は、重い。このところの発送作業で左肩をかなり痛めているのが寝起きのつど分かる。老いの腕 力を過信していると危ない。
2017 9/22 190
* 起床7:00 血圧141-77(57) 血糖値88 体重65.7kg
2017 9/23 190
* 散髪屋満員。このぶんでは来週の聖路加二科も「アマデウス」観劇も、白髪ぼうぼうの頭で失礼申すことになりそう。本を無事送り出してからの散髪、か。ま。いいでしょう。
2017 9/23 190
* 西(イリ)の棟で、すこしでも場所を広げたいと苦戦、腰骨が折れそうに痛い。やすむとおさまってくれるのがセメテもの救い。コレれはこうして、ソレは そうして、アレはああしてと思いいたりはするのだが、こうも、そうも、ああも、みな身の痛む重い力仕事になり、結局、ドウにもならない。
2017 9/23 190
* 起床8:00 血圧148-69(65) 血糖値99 体重66.2kg
2017 9/24 190
* 夕食途中から「からえづき」して苦しくなり、床へのがれ、しかし、読みにくい木版本の「参考源平盛衰記」巻四十から巻四十三を懸命に読み進んで、興を 覚えること、多々。この「参考」版六十巻ほどは幕末に編まれ、平家物語の異本・異文を極力とり集めていて、アタマはこんぐらがるが、それだけにとんでもな く面白くもあり、ついつい読み耽ってしまう。読んでいるうちに体調も戻った。
* 幸いにというのもおかしいが、明日の聖路加通院が担当医のご都合で、一と月近く延期の連絡が入った。なんとなく堪らなく明日が億劫であったのでじつに 気が晴れた。ま、水曜にはぜひ別の科へ通うのだが、ま、三日に二度もの通院は正直気がシンドかった。いま、ほっとしている。仕事や作業も捗らせられる。
2017 9/24 190
* 十時過ぎた。「湖の本137」発送の一と段階挨拶文の印刷を終えた。あとは封筒へのハンコ捺しがシンドイが、「選集二十二巻」を送り出してからでも間に合う。用意の作業は、早め早めに余裕を持ってしておく。疲れと怪我とがないように。
もう目が見えない、ほとんど。
2017 9/24 190
* 起床8:30 血圧135-78(62) 血糖値100 体重65.9kg
2017 9/25 190
* 今日出かけなくて済んだのは、ほっこりと有り難い。なにとなく、いま、わたしはなかぞらに浮游の気味で頼りない。
しかし『参考源平盛衰記』第四十ないし四十六巻から多くの欲しかった知見が得られた。昔の袖珍版和綴じ和紙本はなんと軽くて柔らかいか、老人が寝ころがって読み進むのにほんとうに助かった。
『音頭口説集成』は大判で堅牢な製本で重い。しかしなかを読むのは至極く面白い。松園さんに「少女深雪」と題したそれは美しい繪があり、「朝顔日記」ヒ ロインとは知っていたけれどそんな芝居もしらねばそんな本も読んだことがなかったのに、「口説き」にはちゃんと載っていて、ゆっと話の筋が読み取れたのも 有り難かった。なにしろ七七七五調で口説いて行くからどう長かろうとどんどん読まされる。大冊の二册、みな読んでしまいそうだ。参勤交代の道中で三人は斬 り捨て御免を公儀にねだって聴許されていたと謂う「明石の殿さん」というのはひどいヤツであった、あちこちで怨嗟の音頭口説きにされている。
十巻選集版の泉鏡花本は四六版情勢ながら軽く造られていて、いまは『高野聖』を楽しんでいる。深い山道をゆく聖のしもとをしきりに蛇が出て悩ますのが叶わないが。やがては山蛭が雪のように笠へ降り次ぐであろう。
宇治十帖はやがて浮舟登場の「東屋」巻へ到着する。新岩波文庫版の第二巻到来が待ち遠しい。
* 校正も含め、こういうアタマの交通整理をしながら、何かしら凝集してゆく創作世界をと企劃も詩期待もしている。もう無駄足をしている余力がない。だか らこそ仕事以外にはひたすら楽しいことが有って欲しいのだ。楽しいなかに食事という養分が外れてしまい大いに寂しいが、喰うと心・身が疲れてしまう。機械 で遊ぶ気になどなれない。せめて空いた電車でのんびり遠回りしてきたいと思うが、億劫の虫がすぐ鳴き出す。バカみたい。明後日の糖尿診察日、淺井忠展など どうか。しばらく前になるが出光美術館のいい展示なのに、会場のくらさ、弱い視力で水墨画たちがよく見えなくてガッカリした。
久しぶりに東博の本館、東洋感じゆるゆる回るなども。しかし、あの馴染み深い鶯谷駅前の蕎麦「公望莊」がこの前取り壊していた。あの店では何十年、よく酒を飲んだがなあ。
2017 9/25 190
* 十一時半。あす、もう一日ゆっくり出来る。明後日は聖路加。
2017 9/25 190
* 起床9:00 血圧146-72(69) 血糖値102 体重65.6kg
2017 9/26 190
* 妻の定期の診察、幸いに大過なく帰ってきた。
わたしは、二階へ上がるにも階下へ降りてきても、つい寝室にねころんでしまい次々に裸眼で本を読み、疲れるとうたた寝に落ちる。
明日は朝が早いなと思いながら、病院のあと、薬局のあと、サテどうしたいどこへ行きたいという夢が見えない。散髪してきた心地よさはあるが、金曜には 「アマデウス」を観て、土曜には「選集」(中世美術論)が出来てくる。送りの力仕事に三日がほどかけ、すぐまた「湖の本」(泉鏡花論)の出来を月半ば過ぎ に待ち待ち、発送用意。
たぶん、十一月中にも「選集」をもう一冊(中世論)送り、それで今年は締めくくる。
* 「NCIS」を楽しんだ。 今夜はもう寝る。
2017 9/26 190
* 起床7:00 血圧153-83(65) 血糖値97 体重65.5kg
2017 9/27 190
* 内分泌・代謝(糖尿)の診察、検査の諸データ良好と。慢性的な微症状を、愁訴はしないで帰ってきた。
九時前のバスに乗って病院まで、診察を終えて薬局で処方薬を受け取るまで、タクシーで松屋脇まで行き、京風の和食の店へ入りかけてやめるまで、全身に力無くてひ弱い心地だったので、思い切って濃厚なご馳走にしようとフレンチの「ボン・シャン」へまた入った。
南米からの赤ワインが素晴らしかった、たっぷり杯を重ねた。妻の要心につきあいつねは脂けは食べないが、独りなので、前菜に濃厚なフォアグラの料理をえ らび、美味しく堪能した。脂のすくない最良のステーキをと註文して、しっかり食べた。デザートも、いつもの好きな濃い珈琲(名前がどうしても出てこない、 四音ち思うが。こういうこと、近来稀ならず、仕方ないと諦めている。)もすてきにうまかった。満腹した。ワインの教会の会長さんである喜壽まえの店主が終 始話し相手をしてくれる。
* もう何処へ動く気もなく、源氏物語論の校正をしながらまっすぐ帰ってきた。銀座一丁目から地下鉄で一本という脚の便は、わたしに都内での道草をゆるさない。
2017 9/27 190
* 起床8:50 血圧147-68(71) 血糖値101 体重65.2kg
2017 9/28 190
* どこか、綿のように疲れている。心因によるのか。気候か。利き腕で頸の後ろを掴むと電氣が走るように痛む。
☆ 舊房 白楽天
壁を遶(めぐ)る秋聲 蟲絲を絡(まと)ふ
簷(えん)に入る新影 月眉を低(た)る
牀帷半ば故(ふ)りて 簾旌(=簾)は斷え
仍(なほ)是れ初寒 夜ならんと欲する時
* ま、こんなふうに暮らしている。
* むかし朝日の伊藤壮さん、名酒「越乃寒梅」二升下さる。ありがたく、感激。妻に食べ物で苦労ばかりかけているが、酒類はことに身に沁みて入る。量も過 ぎないよう、夜も九時以降は呑まないでいるが、昔より少量でも酔いがはやく深いかも。おかげでからだに熱量、美味しく入っている。
2017 9/28 190
* 起床7:15 血圧147-68(71) 血糖値101 体重65.2kg
* 妙な夢ばかりみていた、もう思い出せないけれど。なにかしら「数え」るようにものを覚えている。むかし、そんな掌説を書いたことがあるなあ。
2017 9/29 190
* 明朝は、九時から選集第二十二巻を送り出しの作業に入る。重い本の荷造りになる、疲労を重ねないよう要心して取り組む。夜前は二時半まで、選集の初校 分、再校分の校正に続いて、宇治の「宿木」巻、「音頭口説」の何編も、「絵巻」華厳篇の月報、鏡花「註文帳」、さらに「京の魔界」もを読み耽って、七時過 ぎには起きていた。京は昼寝もなく、池袋の雑踏を五千歩以上も歩いてきている、睡眠がすこし足りていないので早く寝る。
2017 9/29 190
* 起床7:15 血圧140-74(61) 血糖値90 体重66.0kg
2017 9/30 190
* 原善君がメールを呉れて、添付した論文を読んでくれと。読もうとしたら二段竪組みの雑誌頁がめんが竪のまま。半分盲いほど視力の弱いわたしにはとてもこんな小さな字を機械では読めない。
2017 9/30 190
* 起床8:00 血圧144-70(65) 血糖値99 体重66.3kg
2017 10/1 191
* 起床9:15 血圧146-73(61) 血糖値92 体重66.2kg
2017 10/2 191
* 起床9:15 血圧143-75(63) 血糖値95 体重66.1kg
2017 10/3 191
* 八時前だが、湯につかって、グタっと疲れている。火野正平の自転車での「とうちゃこ」番組はわれわれのいたく愛してやまぬ写真であるが、今晩の、あいちけんであるのか「月」という山間村落の「月」という名の見るからに懐かしい廃校へ連れて行かれた。泪が出た。
京都市東山区のわたしの有済小学校も弥栄中学校も「廃校」になりもう存在しないのである。たんに少子化だけの結果であろうか。学び育った学校が廃校で無く成るというのは、本当は想像以上に根の深い痛手なのだと政治・行政は実感し得ているのだろうか。
2017 10/3 191
* 起床9:15 血圧141-76(57) 血糖値93 体重66.5kg
2017 10/4 191
* なんだか、躯の芯からふらっふらっしている。熟睡したい。
2017 10/4 191
* 起床9:15 血圧154-75(57) 血糖値93 体重66.4kg
2017 10/5 191
* 起床8:15 血圧141-73(50) 血糖値97 体重66.3kg
2017 10/6 191
* 四国・今治市の木村年孝さん、ここ数年心がけ書き継いできた小説へ応援の地誌資料をたくさん送ってきて下さった。有難う存じます。行きたい、が、とても行けそうにない、どうしようと思い歎きつつ辛うじて近縁のテレビ番組などで辛うじて想像していたが。
読まねばならない。いまわたしは「読む」という好意に生活の大半を捧げているが、じつのところ視力はサンザンで小さな活字は見えない、読めない、インクが薄くても読めない。ひどいときは、源に今もそうなんだが、いろんな眼鏡を「三つ」も重ねている。
それでも読まねばならない、読みたい意欲はむしろ旺盛で、だから家中の到るところに積み重ねた本の幾分かでも処分したくても出来ない。手に取ると、あ、 も一度読んでからなどと思ってしまう。読書に趣味のない息子にでも命じて、おれの留守に一斉に始末しといてくれとでも頼まねばならない。
本の誘惑というのは、きつい。目下は徳に関心も用もない本なのに、手にとり題を見てしまうと、あ、これはまた読みたいと思ってしまう。まだしも「お寶」というに値する書画骨董茶道具を人様に差し上げてしまう方がし易い。ほんを貰って喜んでくれる人はあまりに少ない。
* 愚痴っているより、送って戴いたのを今晩は読もう。幸い妻にも手伝って貰い、「湖の本137」発送の用意はもう七、八割がたできている。『ユニオ・ミスティカ』最期の仕上げも近づいている、手を掛ければ際限ないけれど。
* ナニの勢いでだか、美術の世界にひたひた浸りながら機械に向かいづめの一晩であった、十一時、もえ目玉が灼けている。
2017 10/6 191
* 起床9:15 血圧151-73(63) 血糖値89 体重66.7kg
* 簡易なてくび血圧計に替えてから朝の血圧が無茶に高い。ずうっと120前後できていたし、病院で計ってもそうなのに、朝起きて手首ではかるとひどいときは170もある。機械のせいか実勢なのかわたしには判断がつかない、機械を交換すべきか。
2017 10/7 191
* 起床9:15 血圧167-91(51) 血糖値90 体重66.9kg
* 血圧が無茶に高い。おかしい。
2017 10/8 191
* いま、電灯を「白い色」から「暖かい色」に替えてみた。部屋の空気が淡い橙色になり、機械画面もぎらぎら目に刺さるようではなくなった。こり部屋も寝 室もおなじ照明に替えて「白い色」だとすこぶる明るいのだが目にきつい。これを消して従前の電気スタンドにすると読書しやすく、読み進むに連れて視力と明 るさとが調和し、時間が経ってもずんずん読めると気付いていた。
光線の種類で眼への刺戟や負担が増すのである、らしい。
光刺戟ではラクになったが、キーボードが暗くなった。手探りで敲いている。
2017 10/8 191
* 三連休と。暦の上で増えている休日とは無縁に暮らしている。勤めている人からは年中休みとみえるだろうし、しかしわたしは休みなしにかけ続けている、いささかあさましくも思われてしまうが。
2017 10/8 191
* 三船敏郎の内蔵助、菊五郎になる前の先代尾上菊之助と佐久間良子で内匠頭夫妻、先代市川中車の吉良上野での連続「大忠臣蔵」を、気楽に、かつ共感しつ つも録画してみている。ねっちりもっちり造り立ててある。ほかに「NCIS」も贔屓にして楽しんでいる。テレビを「聴いている」時はその時なりの「仕事」 も同時にやっている。
この分では、容易に外出などヒマがとれないが、何としても青山の「保谷眼鏡」まで眼鏡つくりに行かなくては。いくつ、いくら作ってもすぐ適わなくなるのでは叶わないが。
2017 10/8 191
* 起床9:30 血圧167-91(51) 血糖値90 体重67.0kg
2017 10/9 191
* 起床8:30 血圧90-44(81)(昼食時) 血糖値103 体重66.3kg
2017 10/10 191
* 起床8:30 血圧122-71(106) 血糖値94 体重66.3kg
2017 10/11 191
* 湖の本137 十八日納品と決した。発送中途に聖路加の診察日が入る。週明けて、月曜・火曜も通院。十一月へかけ、気ぜわしくなるが。ま、落ち着いて、やる。
2017 10/11 191
* 今日もたくさん仕事した。機械の照明に工夫もした。いま部屋は暖色照明をさらに暗くし、手元のキイボードを明るく照らしていて、ウソのように仕事しやすい。いつまで続くか、だが。
2017 10/11 191
* 起床9:15 血圧154-76(57) 血糖値97 体重66.8kg
2017 10/12 191
* 起床8:00 血圧136-75(58) 血糖値85 体重66.2kg
2017 10/13 191
* 寒暖差がひびくのか、ひどく疲れる。潰れるように寝入って目ざめてもどんよりと疲労感がまといつく。有り難いのは、寝入って目ざめたときの視野の生き生きとクリアに明るいこと。
2017 10/13 191
* かなり大きめのテレビ画面を用意し、わたしは真正面2メートル弱の席にいながら、登場人物の顔が見えにくくなっていて、ぜひ観たい番組になるとテレビ の間近へ席をつくって大画面に顔をくっつけている。それほどにわたしの視力は変調のまま疲労しきっている。しかも面倒がって眼鏡直しにも行かないで居る。 よほど家にいるのが好きらしい。
* 「湖の本138」編輯に夜分集中していた。十一時を回った。もう一息、いや二た息かな。
いったい、あと、どれほど「湖の本」は出来るのか。市販本になった創作やエッセイはさすがに大方収録されたが、雑誌や新聞等に初出のまま待機の原稿がま だまだ在り、書き続けている創作や予定しているものを加えれば、先行きは計り知れない、何より健康でいなければならない。
2017 10/13 191
* 起床9:00 血圧135-74(61) 血糖値98 体重66.2kg
2017 10/14 191
* 十一時をまわった、いつのまにか。おそらく「今日のうち」に建日子が帰ってきて、今夜は泊まって行くと。カーサンははりきって、モノ、モノでひっくりかえった狭い茶の間をなんとか片づけてきれいな蒲団を、もう、敷いてやってある。黒いマゴもいるといいのに。
* もう目がつぶれそう、キイの字が見えない。
2017 10/14 191
* 起床10:00 血圧135-74(61) 血糖値99 体重65.9kg
2017 10/15 191
* 膚寒くなってきた。ますます外出しない勝ちになりそうで、いけない。但し火曜には歯医者、金曜正午の腫瘍内科検査を挟んで水曜日からは「湖の本 137」の発送、来週月曜正午前にも感染症内科診察、お医者と伴走している気味であるが、木曜日には、久々に文春の寺田英視さんと会食予定。妻も一緒。こ の前は、もう久しいが建日子も一緒だった。
* いろんな仕事を前へ進め得た。疲れたが、肩の荷は少し軽くなった。
2017 10/15 191
* 起床9:30 血圧133-69(66) 血糖値88 体重65.8kg
2017 10/16 191
* 起床9:15 血圧131-69(667 血糖値93 体重66.3kg
2017 10/16 191
* 起床8:15 血圧134-67(80) 血糖値94 体重66.6kg
2017 10/18 191
* 今日一日、妻もよく手伝ってくれて、精いっぱい、作業できた。明日、もう一日。十一時。もう床に就く。
腹がぐるぐる鳴っている。右脚、膝より20糎ほど上の内側に、一点、細い灼け火箸で刺される痛みがちょいちょいと起きる。こういう痛みは初体験ではないが。肉の奥の方で小さく神経が響くように鋭く痛む。
2017 10/18 191
* 起床8:15 血圧134-67(80) 血糖値94 体重66.6kg
2017 10/19 191
* 終日頑張って、目的を終えた。疲れたが、ほっともしている。明日は聖路加の腫瘍内科で検査を受ける。気が動いたら、街を歩きたいが。
2017 10/19 191
*今夜は入浴し、三船敏郎の「大忠臣蔵」と米倉涼子の「ドクターX」を楽しんだ。もう他のことは措いて、躰を横にしたい。
* そうそうこの最近にわたしは滅多になくテレビで「ナイスデイ」という脚踏み機械を衝動買いした。すこしでも脚力をと思ったので。一度に百度ほど両脚で踏む。かなり重いが踏む分に百度は負担にならない。
2017 10/19 191
* 起床7:00 血圧146-69(62) 血糖値86 体重66.6kg
2017 10/20 191
* 聖路加病院へ。
* 十時半には血液検査を終えていたが、診察は午後二時前まで待たされた。検査結果や診察上状態は文句もなく上乗で不安無しと。それはけっこうであった が。たいして用もない安定剤のために薬局でまち、空腹の充たしようを思案しつつぶらぶらと銀座まで歩いて思案付かず有楽町でも思案付かず、有楽町線で池袋 下車、西武の京都名店展へ上がったが雑踏に辟易、結局八階の伊勢長で鰻にした。
*家へ帰ってみると、妻は救急車で地元病院へ緊急入院していた。胆石の痛みに耐えかねてお向かいを煩わせて救急車を呼んで貰ったと。
石がうまく降りてくれるといいが。
携帯電話をわたしが持ってないのが、こういう際の障りになる。幸い、いまは痛みは落ち着いて(資料で抑えているのだろうが、)いて病室への電話は繋がっ た。建日子には連絡したようだが、まだ病院へは来れていないと。こういうときに、気働きのきくお嫁さんが居てくれたらとしみじみ思うが。
* ま、様子をみつつ、気強く乗り切っていかねばならない。あいにく、あすから週明けへの天気が大荒れだという、月曜の診察も日が一週間延びた。終日大あ れの颱風と予告されている。雨降って地固まって欲しいもの。「湖の本」発送が終わっていて良かったが、発送作業が妻に障ったのかと思うと胸が冷える。
* 永田さんから、シーバス・リーガルとオールド・パーをボトルひとつずつ頂戴していた。久しぶりの洋酒で嬉しい。おそれいります。
* 建日子が病院の帰りに寄ってくれたので、独りも淋しく、一緒に映画「濹東綺譚」を観た。いま、帰っていった。
妻とも電話で明日の打ち合わせなど。
胆石はわたしも持っていて痛かった。この先、どうするのか、医師とも話しあわねばならないが。明日から強い雨、強い颱風と予告されている。月曜の診察も一週間延びた。 2017 10/20 191
* 起床8:00 血圧146-69(62) 血糖値86 体重65.9kg
2017 10/21 191
* 雨の中十時に自転車で病院へモノを運び、三時まで病室にいて、校正など。
いったん帰宅、機械の前で寒いのに寝入っていた、寒くて目がさめた。
* 四国の大成繁さん、冷凍された蕎麦を下さった。有り難く。しばらく私の主食になる。
* いま郵便が届いたらしい。目を通し、もう一度病院へ走る。暗い道を自転車で。要心に用心して。
* 八度近い熱をもち、身動きの自在がなく、よく寝ている。七時の面会時間切れの頃、やや顔色が平生に戻っていた。どんな検査と対応とがなされるか、いず れにしても月曜以後になる。わたしも、草臥れないよう、むしろ仕事モードで意識的に生活時間を設計していたい。樂此不疲、今こそ大事と。妻の明日の投票は 無理になった。わたしは投票する、当然のこと。
2017 10/21 191
* そういう年齢へ追いい込まれてきたのか。
もっとも秦の母は、生来病弱だったのに九十六歳まで生き、夫よりも小姑よりもしっかり長命だった。わたしも妻もこの母にならうなら、もう十五年は頑張らねばならぬ。
2017 10/21 191
* 十月二十二日 日 総選挙
* 起床8:00 血圧146-69(62) 血糖値91 体重66.3kg
2017 10/22 191
* 妻の容態の好転を心より願っている。雨も烈しいが、今日も病室(個室)で出来る仕事をしてくる。病院の目の前の小学校で投票もしてくる。午後に一度夕食のためなどに帰宅し、また病室へ戻る。七時には面会時限が切れる。
* とろとろと寝入りがちに下腹の膨満感を不快がっている。熱は引いているようす。金曜夕刻に救急車で病院入りして土曜日曜、ほとんど点滴以外に処置がない。
正午にわたしは向かいの学校で投票を済ませてきた。強い雨風で、投票所は閑散、これがどういう結果で現れるか。楽観はとても出来ないが。
二時前にいったん家へ帰ってきた。行きも帰りも強い雨風。濡れっぱなしで自転車で走る。幸い数分で往き帰りがきく。自転車事故にだけ要心し、厚着して濡れるのにはガマン。ただ颱風が来る明日はどうだか。
病室での校正の仕事は捗り、気にしていて大仕事二つの大方が纏まってきた。
今夕前にまた病室へものなど届け七時まで。
* 洗濯物が絞れてあるが、「干す」という手順に不慣れで、放ってあるが。故紙回収に故紙を出すという用もある。家事というのは、オオゴトに類していると 独りになるとよく分かるのだ、が。うまく出来ない。建日子がまともに普通の家庭を持っていてくれたら、せめて「気分」だけでも頼れるのだが。
* わたしは点滴でしのぐわけに行かない、なにかをマトモに喰わねばいけない、それがナカナカ。
今は買い置きの食パン一枚を鞄に、白砂糖を詰め物に容れてももち、また茹でてあった枝豆を小さなタッパウェアに容れてもち、ビスケットやキャラメルを少し掴んではポケットに突っ込んでいる。雨中、自転車の往来なので、酒は抑えている。天気だけでも早く回復して欲しい、妻の容態はいまぶん何にもわたしには分からない。
* 三時過ぎ、大雨の中を自転車で走り出し、ちかくの車道を越え出ようとして、なにかに引っかかり車道へ左向きに横転した。幸い車は来ず、左肘関節下と左 膝関節真上を強打したが、骨折には及んでいないと判断して、そのまま病院へ。かなり血まみれにはなって痛くはあったが骨折党の大事はないと判断した。腰の 左深くにも軽微ながら痛みがあるが大事には至っていないと思う。なにしろ土砂降りのずぶ濡れ、その冷えの方がみに堪えた。
* 妻は腹部の痛みを払拭しえていず、ベッドでの身動きもままならない容態で、あす朝にはエコーで検査するという。当然為さるべき検査は金曜の内にされて いたようで、医師達は前回入院時よりやや楽観気味らしく、しかし当人は前回入院時より間断無い軽いとはいえ苦痛を訴えている。
腹部膨満などは、わたしは腸閉塞で体験しているので、それをわたしは気に掛けているが、腸捻転が起きていてはとても軽い痛みでは済まない。
検査で無事が見通せるのを願っている。が、あすは伊勢湾颱風クラスの颱風が関東を襲うとか。昼過ぎには通過するだろうが、さ、明朝の病院行きは様子を見るしかないだろう。
それよりも左半身の転倒打撲の痛みが今夜中には強まりかねないと覚悟している。ま、元大関若島津のようにならなくて、ひとまずは、無事。
* 六時半、土砂降りの中をずぶ濡れで帰宅。いくら濡れようとも、自転車なら数分、歩けば二十分は掛かってしまい、よろよろと杖と荷物で歩くのは辛い。自 転車は、転倒さえしなければ、ラクなものだ。しかし転倒体験は、この四半世紀に十度は有る。怪我はいつも膝と肘になり、腰へ及ぶ。今日は幸い車に襲われな くて無事でよかった。
2017 10/22 191
* 転倒して傷つけた左肘、左膝の痛み、きつくはなっていないがシッカリ痛む。ひだり腰の鈍い深い痛み、このまま軽快してくれるといいが。
2017 10/22 191
* 明日の無事を祈って、今夜は、目の利くだけ仕事もし本もよんでぐっかり寝入りたい。
特に窓や戸を敲く風や雨もいまは聞こえない。近藤さんに今日戴いたお酒で、鼻歌でも歌いながらもうすこし階下で校正ゲラを手直しするか、まだ十時だ。
2017 10/22 191
* 通り雨のように騒然と雨を聴いた。すぐ過ぎていった。
* もう機械からは離れよう。階下で、睡くなったら床に就く。それまでは仕事。
2017 10/22 191
* 起床9:00 血圧146-69(62) 血糖値91 体重66.3kg
* 九時半、雨なく強風のなかを病院へ走る。十時前、エコー検査。
検査ばかりしているが、執拗な腹痛と便秘は改善されず、ベッドの上で気儘な身動きもならず、軽熱あり、気力を欠いている。
鏡花の「風流線」を音読してやる間は聴いている。妻も鏡花が好き。
建日子が昼頃来てくれたので、病状等を伝え。医師が来たらしかとした改善を要望せよと言い置いて、いったん帰宅。建日子持参のパンを食べ、(朝も似たよ うなパンを病院売店で買って食べ、)洗濯物の処置や、故紙や、瓶缶や、生ごみや紙屑の処理などに右往左往してたいして片づかぬまま二階へ来た。
2017 10/23 191
* 長引く懸念在り。しっかりしないといけない。 昨日転倒の、肘・膝は順当の痛み。ひだり胸の腋かたへ別種の痛みがつよめに自覚される。肋骨に罅ぐらいは入ったかも知れないが、全身行動に障りはないので自然治癒に任せる。
とにかく、妻が弱気なのでわたしがシャンとしていてやらねば。他にほんとうに頼れる誰もいないと覚悟を決めるしかない。
* 午後も病院へ。やすみなく痛みを訴え続けていて、どうしていいか分からないのを、励まし慰め手を貸しては姿勢をかえ、時に叱り時に話題を拾って気を変えさせるように。
* 医師は、痛みがある間は手術は出来ないので、少し時間かけて痛みを和らげ回復させ、その状態で診察を追加しながら、手術の是非を考えると。あまり明快でなく、困惑気味だが、痛いという苦痛はともかくも和らげたいもの。
病室で、妻の相手もしながら、選集二十三巻の「責了」用意を続けて。七時七分前まで病室に。折角急いで帰ったのに、「大忠臣蔵」は見当たらず。
* 瓶缶ボトルを明日は出し、故紙回収や生協などその次の日は幾つも用がある。洗濯物がちっとも干せない。家の中がも索漠としてきた。乗り切って行くしかない。
2017 10/23 191
* 漆藝作家望月重延さんからも手紙を貰っているが、今日はそのまま頂いておく。
階下に用事が溜まっている。
老朽核家族のつらさは予期できていた、覚悟の上。妻と一緒に堪えているのだから、いっそ幸せといえる。
* 故紙回収のための荷造りをしてへとへとに疲れた。わたしの校正ゲラの類が猛然と嵩高くかつ紙のこととて石のように重たい。一纏めにしようと四苦八苦し て結んだモノのあまりの重さに惘れている。これを明後日朝に路上に出すのはタイヘンだ。他に新聞や雑誌の類を荷造りして草臥れた。
*妻の一番気にしている洗濯物干しに手が出ず、ヘキエキしたまま。ま、あすがある。洗濯物が腐ると妻はいうが。
* 左肘の傷は乾いてきた。左膝小僧の傷はまだやや粘っている。左胸腋の痛みは目視はしていない。痛みはあるが軽微で、力仕事にも障りにはなっていない。「自然治癒などバーバリズム」と叱られているが、気をつけます。
* 鏡花の「風流線」に引きこまれて行きそう。
2017 10/23 191
* 起床7:30 血圧146-69(62) 血糖値91 体重66.3kg
* 妻の電話で起きた。一夜眠られず、しかし痛みはひいているので「退院したい」と。
これは錯覚と思った。しかし、ひとつには医療の適確への不信感にちかいものは動いて無理なく、わたしもその点は懸念しながら容態を観ていた。九時には病 室に入り、昼の小一時間帰宅していろんな用意をし、「選集第二十三巻」も責了で送った。四時すぎまでいたが、病状は一進一退という寄り進みがちに八度台の 熱、80未満の血圧、吐き気、寒気と重なってくると、とっかえ引き換えの点滴などが適切なのかどうかも疑わしくて、すこしく苦情もわたしは述べてきた。
もう一度、行くが、七時以降の就寝がどうなるか案じられる。転院と謂うことも本気で考えねばならないかも。わたしに起動力が無く、車の使える息子は仕事 で手がまわらず、運転の出来るべつの家族が切に欲しい。聖路加というと、保谷からはよほど遠い。自動車より地下鉄の方が速いが、体力を殆ど喪ったている妻 が堪えられるか。むろん、ハイヤーという手はあるが。
* 明日の午前は予約の故紙出しその他生活条件上の用が重なっている。
* お見舞いのお手紙なども戴いているが、またすぐ病院へ自転車で走る。腰痛背痛などでとうてい二十五分が歩けないので、危険は承知で自転車を使う。
* 事態 急変して 妻は集中治療室へうつされ、主治医の解説を聴く限り、予断を許さない危険な状態になっている。面会も一日に限られた時間内で厳重な禁断の上で十分間程度しか許されない。
* 入院以来の体調等を妻は、記録していた。わたしの観測では、たんに胆石の痛みからの入院以後の消化器外科の主として点滴に頼った処置にもの足りないも のを感じていた。ひとつには妻は心臓に弱味を持っているので循環器内科との緊密な連携が望ましいと思い、妻も切望していたが、二十日に緊急入院して二十四 日の今日まで、ただただ容態悪化をみつめてきた。あげく消化器外科の主治医は患者を循環器内科で引き取ってくれと。そこで、諸検査を追加しつつ、循環器内 科の主治医は集中治療室へ移して、以後は消化器外科と協力といった体制に入れ替わった。胆石で痛い間は手術は避けた方が良い。となれば消化器内科的な治療 がなさるべきに、消化器内科の専門医がいるのかいないのか分からない。
そんな、事情で、手に汗握って心配しつつ、妻の無事快癒を切に切に祈るしかない。
* 建日子と妻の妹には、事情を知らせた。 建日子は朝日子に電話したというが、全く応答が無い
という。
2017 10/24 191
* 台所のとっちらかりを少しでも片づけて。
☆ 鴉に
あまりのことに震えています。
一番つらいのは迪子さま、そしてあなたご自身。
今はお家にいらっしゃるのでしょうか? 病院で少しでも近くに、と願いたいのに面会制限は厳しい、悔しいです。
病状好転され回復されますよう、鴉もお身体大事にして、気持ちしっかりなさってください。
祈っています。 尾張の鳶
* ありがとう。ほおっと胸に灯が入るようです。
* 十時過ぎた。今夜は、出来るだけの仕事をし続けて、疲れ寝したい。明日朝は一番に大変な重さの故紙を回収に出し、ヤクルトを受け取り、生協の買い物を受け取らねばならない。昼前には建日子が来るといっているが。病院へは行っても十分しか会えないと。やれやれ。
* 妻の無事退院までは酒を断つ。残っているいろんな酒類をみな物置へ入れた。
2017 10/24 191
* 起床7:00 血圧97-48(112) 血糖値84 体重65.2kg
* 真っ先に初体験の、大量の故紙だし集積から荷造り、搬出の全工程をやり抜いた。腰骨が激痛のまま砕け折れるかと思った。済ませて、よかった。
2017 10/25 191
* 昨夜は深い気落ちと不安とに落ちこまぬよう、せっせと仕事し、夜更けまで鏡花を読み源氏物語「東屋」巻も読み終えた。薫は浮舟を手に入れ、宇治へ隠そ うとするが、これが新たな葛藤の悲劇を呼ぶ。「浮舟」「蜻蛉」「手習」そして「夢の浮橋」へ、最期の一冊になる。ゆっくり楽しんで読む読み方をしている。
* いま、六時。一呼吸入れたまま、食欲よりも躰を横にして寝入りたい。
「こんな時だからこそ、まずあなたが倒れてはいけない、クリアな頭で的確な判断をなされなければならないと思います」などというアッタリマエなことは、云われるまでなく、それでしか乗り切れないと覚悟し、身も心もフルに動かせている。仕事の手も抜いていない。「洗濯ものが、黴びれば捨てればよろしい。二人で出来ていたことを、ひとりでしょうと、決して思わないで」といった血の通った激励に「人」のぬくみを嬉しく感じる。
妻の帰る日まで酒は呑まないと決めた。喰う楽しみはいま極めて淡い。結局は、仕事して読んでよく寝るだけ、か。次の月曜にはまたわたしの方の病院へ通う。もう集中治療室を出てられると有り難いが。
2017 10/25 191
* 俳優座から一月公演の招待が来ている。しばらくぶり、妻も一緒に行きたいと思う。神山寛 川口敦子 小笠原良知 児玉泰次 そして美苗まではお馴染み サンである。「いつもいつも君を憶ふ」というタイトルは旧仮名です。ぜひ妻と行きたいが、高麗屋の毎々の配慮と、俳優座とはちがうので、招待席は丁度中ほ ど。いまの視力で届くかとは心配。「湖の本」を送っている美苗に声をかけてみるか、そんなことが出来ると嬉しいが。
* いまぶんは、妻の転院は考えにくい、が、そんなさいの移動手段についていろんな便宜をことこまかに教えてきて下さる方もあり、たたただ感謝。。
2017 10/25 191
* 起床7:00 血圧97-48(112) 血糖値99 体重65.9kg
2017 10/26 191
* わたしの朝の体調があまり宜しくない。夜中一度起きようとして起ちそこねて頭から向こう先へつっ転んだ、幸い頭に痛みも損傷も無かったが右肘 外をなにか堅いものでの打ち傷が出来て痛むがたいした怪我ではない。この転びは手足四つの四つんばいから起とうとして、頭の重さで前へ突っ込んでつんのめ る、そのときアタマを強く打つと失神する。国技館で桟敷から起とうとして前頭部から激しく落ちて診療所ーへ連れて行かれたことがある。夜中の転倒もそれに 近かった。
朝の血仏、高い。からだシャンとしていないが、極力起ち居を億劫がらず立ち働こうとしている。
* なんとか自身を鼓舞してこの「おひとり様」仮住まいからの早期回復に努めたい。妻にも頑張って病を克服して欲しい。
* バルセロナの「京」からもメールで見舞いの言葉が来ている。
* からだフラツクが、堪えて、とにかく起ち居を面倒がらずムダになっても立ち働いている。
2017 10/26 191
* 昨日から、じつは見失って、必死で探し回ってイヤな気分だった眼鏡、無くては困るメガネの一つを、かろうじて、やっと、途方もないところで足先に触れて見つけた嬉しさ。深く深くこの発見を喜んでいる。十時半。
階下での仕事にかかる。いただいたご馳走、酒を飲まないのは淋しいが、佃煮と和三盆、焙じ茶、懐かしい京都が匂う。
2017 10/26 191
* 起床6:45 血圧146-69(62) 血糖値93 体重66.3kg
* このところ朝起きのバイタル数字は、少し日々に混同しているかも。概して朝一の血圧が高い。しかし昼間に計ると尋常な数値が普通。
☆ ラ・ロシュフコー「箴言」に聴く。
一度も身を危険にさらしたことがなければ、自分の勇気を保証することは出来ない。
* 夜中両脚に軽度の攣縮。ごまかしごまかし寝入る。目は早く覚めた。ときにリーゼの厄介になる。希望を持つことが大事、また家中のありとあるもの、観音 様、秦の親たちの位牌、ネコやノコや黒いマゴたち、獅子の太郎次郎小次郎にも白鳳・日馬富士にも、靖子の写真にも、ただひたすら迪子を護ってと祈ってい る。家中を用をつくっては歩きまわっている。
朝食は徑五六センチのホットケーキ一枚。ヤクルトと、など。気も、手も回らない。
* とに書くもまず今日の妻の快方へ動いての無事を願う。呼吸困難は見るもつらい、意識の清明をせめてと願う。医師達。看護師達の力量と親切な配慮を心から願う。
* おやの郷里の教会からの先生の迪子へのたよりによっても、妻迪子の日ごろ最大の願は、「ご主人様のお仕事 願どおり運ばれます」ことで、「体調はじ め」ご加護のあるように祈念しますとある。妻の本意・本心がひたすらわたしの仕事「選集」「湖の本」にありつづけていたことが証言されている。ありがとう よ。よくよく、わかっているよ、ありがとう。
2017 10/27 191
* 四時半、緊急手術が始まった。迪子のガンバリを祈る。医師の渾身の力量を祈る。
* 難しい手術でしたが、ひとまず成功しました。
琉っちゃん(妻の妹)、はるばる遠方まで。
無事に帰宅されたかと案じておりました。有り難いお心づくしのあれもこれも、ただ有り難く嬉しく深く感謝申し上げます。
手 術は七時半過ぎて、ほぼ目的を果たしたそうで、壊死していた胆嚢が切除されていました。多くの周辺異常を抱え込んだままの手術でしたから、予後も相当難し く、何より呼吸力の快復へ細心の配慮と処置が必要、現在は「人工呼吸」の状態で、要心に要心して呼吸力回復へ向かわねばならないとのことでした。
手術段階をなんとか乗り越えたのは、しんからホッとしました、が、ドッと疲れています。建日子が終始付き添ってくれて帰宅まで付き合ってくれたのは心強いことでした、
とりいそぎ心からの感謝とお報せで、今夜は失礼します。ありがとう、琉っちゃん。
さらにさらにこの先の平安と無事をどうか祈ってやって下さい。
手術室に入る前も、術後の集中治療室でも、二度三度も、あのむごい状態の迪子が「琉っちゃんが来てるよ」の声に「しかと反応」してくれたのは嬉しくて、泪が溢れました。ありがとう、どんなに迪子の力になったか知れません。
おやすみなさい。 恒平
* 一度急用有って手術前に帰宅しまた病院へ走り出すまぎわ、練馬から持田晴美さん(妻の高校の友達)がお見舞いにいいろいろとご馳走などと持参し来て下 さったのに、もう何の猶予もならない緊急手術だったので、家の前からご挨拶もそうそうにお引き取り頂いたのはまことに申しわけ有りませんでした。
* 京都の澤田文子さん(妻の大学の学友)から、お便りといろんなご馳走に与っていた。
* 今日の郵便もたくさん。今夜は、もう休ませて貰う。とにかくも妻の平安・平穏を願いつつ、一週間ぶりに熟睡させてもらいたい。一夜の、予後平和を願う。
* 講談社役員の高島高義さん、同じく天野敬子さん、神戸の名誉教授信太周さん(二度目)、三島賞作家の久間十義さん、金沢の作家金田小夜子さん、思想家 清沢冽太さん、さらには明治学院大、上智大、立命館大、神戸松蔭女子学院大等々からも、ご挨拶があった。幸いに「湖の本」には有り難い読者からの払い込み に添えたいろんなお声が聞ける。
* 凸版印刷からは、「選集第二十三巻」を十一月二十七日に納品できるがと、事情を聞いてきてくれている。手伝えなくても、家で、そばに妻がいてくれると嬉しい。
東天紅がもう正月のお節料理を云うてきている。
2017 10/27 191
* 起床7:45 血圧133-67(90) 血糖値98 体重65.9kg
* 京都の秦方従妹、練馬の妻方従兄から見舞いのメールあり、
* 「みち」様
まだ人工呼吸の厳しい段階がつづきますので、
家内は頑張らねばなりません。わたしも懸命に努めねばなりません。
祈ってやって下さい。 恒平
* 濱靖夫様
有り難う存じます。手術成功とはいえ人工呼吸での迪子のガンバリがどうしても必要になります。どうか、祈ってやって下さい。昨日、妹琉美子が手術前にこえを掛け反応してくれていました。
わたしは家事ということに慣れずに来ましたので、戸惑いつつも懸命に迪子を助けてやるために努めます。
励まして下さり心より感謝します。 秦 恒平
* 持田晴美様
失礼を重ね申し訳なく。
迪子の容態はまだまだ楽観できない人工呼吸成功へのガンバリを要します。
琉っちゃんの声に、くるしい呼吸の中でしかと反応し手術室へ入りました。
手術は成功しましたが、呼吸回復へ、これからが長丁場のガンバリになります。
呼吸(いき)を揃えて頑張ります。どうか祈ってやって下さい。秦 恒平
いろいろ頂戴し、恐れ入ります、感謝します。取り急ぎまして。
* よく寝たと思うが、起き抜けの心身、こころもとなく揺れていて、落ち着こうと気を張っている。自転車で転倒の左肘はほぼ佳くなったが、左膝小僧の痛み はしつこい、ロキソニン絆創膏を貼っている。行動には支障ない。左腰はなんとなくときに痛みが出る。自転車等の行動には支障無い。
独り暮らしに慣れていないので、心身寒い。結局は仕事へもどるしかないのだが、出続ける家事上の無用物をどう分けて、何曜日には何をどこへ出すのか分かっていない。聞いたのだが控えがみつからず、ご近所で聞こうと思う。
2017 10/28 191
* 起床7:15 血圧120-67(80)夕刻 血糖値101 体重65.3kg
2017 10/29 191
* 午前中は、もう「選集第二十五巻」の編輯に取り組んでいた。創作と編輯との、校正もふくめ、気を入れねば済まない仕事は山のようにある。いま、それはわたしのために幸いと云うしかない。
酒を断ったので、熱量配分を考えた「食事を」と、それが、まるで気が走らない。戴いた間食系の甘味や果物を食べ、ときどき生卵を二個コップに割り、醤油すこしかけて呑んでいる。
四国から麺類を戴いているのを調理すれば、さぞ美味い蕎麦が食べられるのだろうが、今の視力では細字での説明が容易に読み取れない。胸ポケットにいつもちいさいレンズを持つようにしている。
2017 10/29 191
* 聴くにあまる、雨。
* 不燃ごみを明朝、出さねばならないと。やっと一袋のこしらえが出来たが、合格して持っていってくれるのか、どうか。洗濯物など、なんとかしまうべきへ仕舞ったが。妻の物は妻の部屋へ容れ物をきめて一纏めにしておいた。なにもかも無用に触られたくはないだろうし。
* へとへと。
* 昨日今日、その前も、有り難い戴き物の、{早く食べよ}と注意書きの甘味菓子類ばかり喰ってきた。
冷蔵庫のどこかに絹漉しの豆腐など買ってあると聴いていたが。
果物も、柿など柔らかく弛んできている。
もう十日近く、もともとこここ数年苦手な白い飯を、食っていない。戴いている和久伝の佃煮で、明日か明後日か、飯を焚いてみよう。酒類は一滴も呑んでいない、
* ひっきりなしにモノを見失っては探しあぐねている。バカかお前と嗤いたくなる。
結局、自分の仕事だけがスムーズに時間を消化する。
☆ 聖路加病院には行くべきだと思います。
今は父さんも(カーサンの=)携帯を持っていますし、保谷厚生病院には明日は僕も行きますし、緊急時の連絡先として僕の携帯も入っているので、万が一の時に全然連絡が取れないということはないでしょう。
買い物(官製葉書・現金書留の封筒)、了解しました。食パンも買って行きます。 建日子
* 緊急時や万が一の時にどんな「連絡」も役立たないし、孫悟空のように飛んで駆けつけることも出来ない。そういうことは起きないだろうと待望し信じようとしているが、このバカげて廣い大都市で、この際の「緊急」や「万一」は、やはり避けたい。
* 七時半。(そうキイを打つのに四回も同じ失敗。)機械で仕事する。
* 三時間、見えない眼を使いながら、「選集」一巻の三分の二ほども編輯に没頭していた。雨も風も聞かなかった。妻にも「仕事しているわたし」が一等自然であるだろうし。
* お見舞いを戴いていた。感謝、感謝。 昨日も今日も、病院へ出かける直前に、京都から、ロスから、事情の知れない池宮さん、大益さんの電話を受けたが、先日の宇治の佐々木先生の御電話同様に慌ただしく失礼しました。
017 10/29 191
* 明日の診療を受けられない事情を、簡単に手紙にして先生へ速達しておきたい。
* 明日聖路加へ往復する元気・体力が足りないのだ、途方もなく遠く思われる。血圧は夕方で、120-67(80)は、ま、いいと思う。このところ高すぎた。
2017 10/29 191
* 起床6:45 血圧120-67(80)夕刻 血糖値103 体重64.3kg
* ついに手術直後の体重から一キロ余も急に落ちた。
現在の体調を記録しておくと、
① 十月二十日、雨中自転車で車道へ転倒したときの 左膝にジンジン痛と傷口のいたみがある。 ② 同じ時の左肘の傷は乾いて革化し、痛みもごく軽微。 ③ 実は一度も視検していないのだが、左脇腹より上部、左肋骨部へかけて、強くはないが執拗な痛みが継続自覚されている。運動への支障は起きていない が。 ④ なんとなく体部に鈍い重みは、軽度の便秘のせいか。 ⑤ 夜、手洗いに立ったアトが寝付けず、特に用もないのに、早起き傾向になっている。 ⑥ いつも朝が「不安」で「疲労感」が濃い。不燃ゴミをどう、どこへ出すのか、生協の註文はどうするのか。
* 九時 不燃だか可燃だかの回収車が来たと思い、外へ出してなかったので、駆け足で車を追いかけたが、車が違っていた。十一時頃に来ると。これが気になり早く起きていた。やれやれ。
2017 10/30 191
* 目先の仕事にも大きな難関がある。「選集23」が十一月末に出来てくるのに、送り先への宛名印刷がわたしには出来ない、妻の機械は手に負えない。送り 出し用意に、手書きで宛て名することになる。選集は、送り数は多くはないので何とかするが、進行中の「湖の本138」の宛名を全部書くのは手に余るだろ う。いまはそれへアタマが働かないが、何とかして道を見つけておきたい。人工呼吸の妻が、目を覚まし、目と目とでも聞けば応えてくれますように。
* なにかわたしのミスか、折角の不燃ゴミが置いて行かれている。まいった。
* リーゼを服して、気分を持ち堪えているが、捜し物、探し物がたくさんあって、何一つ見つからない。妻の私物領域はそっとしておきたいし、さて、この狭 いうちで、家計用の通帳やカードがみつからず、その番号も知れなくては、切り抜けに困る。所帯をもって運営するのは、うかつなことだが、かくも難しい。
今日も三時には家族面会ができるが、少しでも晴れやかに落ち着いた妻の顔が見たい。
* 四時三十五分 いま建日子たちはゴッツイ自動車で帰っていった。
* わたし、しんから、ぐったり・ほっこり疲れているが、人工呼吸の妻は、言葉こそ聴き取れないなりにしっかり黒瞳をみひらいて我々ひとりひとりを認識 し、話しかけるのにのにも触れるのにも、時折り、分かったという肯定の低い声を漏らし、漏らそうとしていた。視線はびっくりするほどしっかり合い、万感胸 に迫ってわたしは嬉しかった。
諸デ-タは、いまぶん快方の向きにあり落ち着いていると。それでも、まだ先々に問題が全回避できているとも確言しにくく要心していると、循環の主治医玉置医師の言。
妹が云っていたように、迪子は、妻は此処から頑張りぬくと思う。信じたい。我々の見舞いを真実喜んでいるという真っ黒い大きな瞳をしていた。顔をはっきりひとりひとりに向けるようにし、喜んでいると感じ取れたのは最高だった。
* わたしは「面会」許可の一時間いっぱい四時までそばにいてやりたかったが、「疲れさせる」と建日子に注意され、三時四十分には集中治療室を退室してきた。昨日も安堵したが昨日に勝って、妻に、迪子に「再会」できたという喜びに大きく励まされてきた。
* 建日子らは、台所や冷蔵庫の中を整理し、わたしの食べそうにないものは持って帰った。棄てるゴミの類も幾つにも包んで持って帰ってくれた。これは助かる。
白い飯を焚いて行ってもらえばよかった。和久伝の佃煮で温かい白いご飯をほんとうに久しぶりに食べたい。
2017 10/30 191
* いま、電話が鳴って、出遅れているうち切れた。なにごとと、血が凍えそう。建日子の方へは無かったと云うから、胸を撫でている。電話の音は、昔から、嫌い。
* 睡い。
今日入室許可を待つ待合へ、二時間近く早くに行き校正していたが、建日子らが着いたあと、堪えられずうたた寝していた。
* 此処で私事を麗々しく公開しているのはない。「闇に言い置く私語の刻」を生かして気持ちの安定や解放や沈静を計っているだけのこと。
2017 10/30 191
* 妻の住んで大きい黒い瞳にしっかり見られてきた喜びに励まされ、熟睡したい。明日は、瓶・缶を出し、ヤクルトの配達に支払いをし、黒猫ヤマトの一気に倍増した送料を支払う、午前中に。郵便局から暁会へ送金する。そして三時にはまた妻に会いに行く。
2017 10/30 191
* 起床7:30 血圧120-67(80)夕刻 血糖値113 体重64.8kg
2017 10/31 191
* 心を弛めてはならないと思っている。
瓶・缶は出した。ヤクルト、生協が来るはず、洗濯屋に預け物が有るらしく受け取りに行く。黒猫ヤマトが送料の集金に来る。郵便局に暁会への送金に行く。あれこれの送金や支払いの仕方よく分からず、戸惑うが。ま、やります。
三時には面会に行く。どうか晴れやかに安定していてくれますよう。
とにかく、煩をいとわず、たとえ一メートル往復の用事でも即座に立ち働いて脚を使うようにしている。いまは面倒がっていられない。生ゴミでもなにでも手に掴んで処分している。
ティシュペーパーが払底してしまったようで、甚だ不便。セイムスで売っているだろうか。どこかに蔵われてあるとも思うのだが、探し出せない。
四時以降は、仕事かる。
どうしても食事は、二の次三の次の、有る物の立ち食いのようなことになる。口に合わないと食べたい気が全然しないのが困る。夜の寝ぎわに菓子など、蜜柑など食うと、朝の血糖値が高い。久しぶりに、けさ、正常値を上へ跨いだ。
* ダスキン交換の所在知れず、今回受け取れず。 「湖の本137」の送料、支払った。待てど暮らせど来ないヤクルトと生協にいらいらしていたが、今日は 約束の水曜日でなく、火曜日だった。洗濯屋へ箸って出来ていた洗濯物は受け取ってきた。喉が乾くので、水分は絶やさぬようにしている。
郵便局へ走って来なければ。また階下からの忘れ物。受話器と妻のケイタイだけは持っているが。届いてた郵便物とりに行く。また無くしたと慌ててた腕時計は、ちゃんと左腕に。
2017 10/31 191
* もっぱら蛋白質の栄養源は、鶏卵二個。ガラスコップに割って、出汁醤油をちびッと零し、かき混ぜて、 立ち飲みしている。ほかは、まったく気まぐれにあれこれつまみ食いで済ませ、ただただお茶で水分を絶やさぬようにしている。「酒は一滴も呑んでないよ」と いうと、妻はにこっとした。酔っての転倒がこわいのだ。「美味い酒を飲ませて呉れよ、無事に家に帰って」と頼んできた。
わたしがアル中でないのは確かで、その気になれば幾ら断っても平気なのである。
2017 10/31 191
* 心優しいメールに気がすこし晴れました。ありがとう。気を付けて行ってらっしゃい。
わたしは、妻入院の二十日より以前から忘れ果てていた「入浴」を、ふっと思い出しました。
* 今晩は、冷蔵庫にあった、好きな絹漉し豆腐の一丁を、残っていた出汁醤油での清汁に簡単に煮立てて食した。堀部安兵衛・渡哲也と清水一学。天知茂の「大忠臣蔵」一時間を楽しむことが出来た。
油断なく。そう、油断なく毎日を過ごす気は、同じ。しかし、電話はまぢかに置いて、入浴の用意をしてみるか。老醜が老臭を加えるばかりでも、ナンだし。
* 久しぶりに湯につかり、「浮舟」巻を読み、「音頭口説」の仇討ちものを(読んで)聴いたり、いわゆる物語絵巻物における「女繪」鑑賞や理解の微妙なむずかしさをサイデンストッカーから指摘されたり、西東京市の広報を勉強したりした。
もう十一時近いので、湯上がりのまま風邪を引かぬよう機械仕事は今夜はもうやめて、階下ですこし寛いでから就寝前の読書、鏡花の大作「風流線」を読み進めながら寝入ろう。
それにしても鏡花が読めた、読んだ、楽しんできた読者の少ないのに、今更に改めて感じ入る。鏡花には確実に五百人の愛読者がいると、自然主義作家達が羨 望し妬んだというハナシを昔昔にわたしは知っていて、ああ、それで良いではないかと思ったりしたのはハテ、どうだったのだろう。
* 明日は水曜、午前中にいくらか用事が重なる。寝坊はできない。
* ベッドに幾重にも管で拘束されている妻に、せめて安眠が得られますように。
2017 10/31 191
* 起床7:00 血圧120-67(80)不可計測 血糖値104 体重64.3kg
2017 11/1 192
* 昨夜は床で本も読めなくて寝入ったが、夜中二度三度も手洗いに立った。
* 建日子が食パンをたくさん差し入れてくれたが、いまのわたしの一食には、せいぜい一枚で多いほど。半枚でも足らせてしまう。
もう、しかし減り続ける体重は、この辺で支えねばいけなかろう。
今は、左膝の傷が痛む。立ち歩くと腰が刺すように痛む。腰かけての仕事には支障なし。
* 林檎の皮を剥いてみようと試みた。手先が、というより掌ぜんぶが痺れていてとても巧くはむけないが頑張って、ともあれ林檎を食べた。そこまではよかっ たが、顔を上げたとき開けたままだった抽斗のカドで右額の脇を衝かれた。先日も似たようなことで開けた戸棚の戸へアタマを衝きあげ痛い目に遭った。怪我 は、家の中でするもののようだ。躰のアチコチが打撃されて痛むが、幸い肋骨片は入浴の徳か、忘れかけている。始終痛く響くのは左の膝小僧の擦りむき瑕。有 り難いことに行動には支障がない。
* 京都の山口源兵衛さんから宅急便で京の大きな富有柿をイチダースも、練馬の、妻の従弟夫妻からも浅草今半の肉料理でお見舞いの宅急便をいま、玄関で童 子に受領、とりいそぎメールで率爾の礼を送った。頂き物には妻がいつも礼のハガキを書いていた。わたしはいま手書きのハガキすら書きづらく、失敬な走り書 きで御免をいうている。
* ヤクルトは受け取った。来週は火曜日に届くそうだ。生協への註文はわたしが注文用紙を一週前のに間違えて書き、通らなかったが、 もう一度午後来てくれるという。今から急いで書き直さねば。
* 眼を凝らして原稿も一章分読んだ。昔の「湖の本」の組みで12頁一章は、読みごたえがする。
* 疲れ切っている。身動きに感じる。怪我しないように、ようにと気を付けながら、動き回っているが。ゴミ処理がこんなに多様に多用でたいへんとは。分別に惑い容れる袋に惑う。こわいのは、なにかのハズミで腹をこわすこと。
飯を炊かないので、主食が食パンだけ。
パンケーキ風の甘い菓子は、主食にはむかない。
間食しているヒマもない。
水分は、とにかくお茶を呑んで、牛乳も、ヤサイジュースもある。水分は、水でも足りる。
果物は柿とリンゴと、蜜柑もすこしがあって、皮むきさえ億劫にしなければ足る。
* 仕事は、投げ出さないが、眼が痛いほど。
* 一時半。
二時半には病院へ行く。幸いに妻の顔をみてかすかにも目と言葉で対話出来るときが、わたしには休息だ、一時間足らずで部屋から出されてしまうが。
妻も好まないと思うので、病院へのお見舞いはご遠慮します、応対に気を遣わせ疲れさせるので。
* 妻は軽度のリハビリを始めていた。
声はまだシッカリ出せないが、記憶や判断は、ほぼ適確。しかし元気が出たというより、リハビリで疲れてかウトウトしがちなりに、ふっと心づいてはモノを 云おうとした。わたしから話しかけることは正確に聴き取れていたと思う。怪我をせず、しっかり食べてと。卵二個ではいけない、日に六個食べよとも。「面 会」は、わたしを指さし、「だけ」で良いと。ときどき自分からわたしの手を取ってきた。昨日は手さきにグラブを付けていたが、今日は外してあり、素手で握 りあえた。
「シッカリ、生きなきゃね」と、自分で自分に言い聞かせるように呟いたのが今日の喜びであった。この今の段階から、きっと強く頑張れるのが妻だと思うし、妹も最初にそれを云ってわたしを力づけてくれていた。
四時きっちりに、ルールで、退室。
とにもかくにもこれ以上自転車で怪我してはならぬと、それを要心して見舞いに走り、また走って家へ帰ってきた。とてもこの「往復」を徒歩で通す体力も気 も失せていて、ひたすら要心して自転車に頼っている。少年の昔からの自転車好きが、かえって事故に繋がらぬようにと願っている。じつは颯爽というほども軽 々と走っているのであるが。
* 妹が呉れたカステラ一切れと、ヤクルト、R1とでひとまず夕飯とし、あとは、気が向けば頂き物をなんとかして食べよう、と。「和久伝」のご馳走に、大 好きな和三盆が入っていて、疲れを癒して貰っている。焙じ茶も美味しく飲みたい。お茶は機械的に日常の鳩麦茶で済ましてきたが、いいお茶はたっぷり有るの で、手間を惜しまねば好きなお茶が堪能できる。ただただ披露して簡単に済ませようとしてしまう。
* このようなことは、大方は、病院へも家へも容易に来れない建日子への状況報告のつもりでいる。
杉田玄白というあの解体新書の大学者は、具合のわるいおのが老境を、すさまじいまで愚痴に書き、自身の容態を書き記し続けて気をやっていた。
* カタヅケや食事に気を取られていると不如意感に悩まされてだんだん不安定になってくる。で、他は忘れて機械での仕事に打ちこみだしたが、眼がギトギトと軋むほどに痛んで、それが辛かった。
* 少し階下へ行って、ボンヤリしてこよう。
2017 11/1 192
* 起床7:00 血圧120-67(80)不可計測 血糖値116 体重64.6kg
* 血糖値がもう久しぶりのこと正常値をはみ出て高め推移しているのが気になる。また手首巻き血圧計がいいかげんなのか、何度計測しても途中で機械の方でやめてしまう。電池は交換してまだそうは間がないのだが。
2017 11/2 192
* こころよくベッドで目ざめたろうか、長い暗い静かな夜の寝苦しさは、覚えがある。落ち着いて、がんばって欲しい。妻のために佳い今日でありますよう。
* 五日に国立能楽堂で友枝昭世の「松風」に招いて貰っていた、が、体力的にも千駄ヶ谷までは辛く、能一番といえども気力で見所は舞台と立ち向かわねばならない。失礼があってはならず、今朝早くに速達で招待券を送り返して、詫びた。
* わたしの皮膚は全身脆弱になっているか、ハダカで確かめると引っかかれ傷が手足に十箇所できかない。着たモノの上からなにかにこすれても、膚に傷と痛みがついている。やれやれ。
* 機械で原稿を読み返しながら、この朝(十時前)からトロトロと寝入っていた。無いことである。少し休んでおかないと、午後の自転車が危ない。
2017 11/2 192
* 気が付いてみるとわたしは晩飯を摂ってないのだ。しばらく階下でひと休みし、明日の見舞いまでの段取りをしてから、心身が働けば一仕事したい。とかと、とても睡い。睡眠不足はなにかにつけて危険信号。気を付けたい。
* 沢口靖子の声は聴きながら、明日の家事段取りや病院へ持参すべきものの用意をし、ついでドクターX大門未知子を楽しみながら、カステラ一切れと柿を二 つ、冷えたお茶をたくさん呑み、「たねや」の葛湯についていた和三盆をすこし嘗めて夜食にした。まだ十時過ぎだが、これから眼をつかって細かな機械仕事を する生気が無い。いっそからだを横にし、あかるい電灯で「浮舟」と鏡花と月報「絵巻」を読めるだけ読んで寝入りたい。
2017 11/2 192
* 起床7:00 血圧136-67(72) 血糖値112 体重64.0kg
2017 11/3 192
* 血糖値高めで 体重、胃全摘以降最低。
妻も「痩せている」と案じ、昨日「萩」さんがメールで注意してくれていた、「食事はバランスよく、量も召し上がりませんと、便秘いたします し、それは腸閉塞をまねくおそれがあります。体力も弱ります。奥さまと交代でご入院などという事態になりませんよう」は、有り難い,的確な「ご意見」と読んだ。
食が少なければむしろ安心ぐらいに思っていたが、「便秘」と「腸閉塞をまねくおそれ」の帯動しかねないことにも気づき掛けていて、現に数日排便はすくな く、今朝は食(カステラ一切れ、柿一つ、ヤクルト、煎茶・番茶、多くの服薬)後に、以前の腸閉時と同じ「噎せ戻し」が二、三度続いた。昨日、一度排便した が感触よりも少なめなのを不審にも感じていた。
* 妻の快方を幸いに安堵しつつ家事にも慣れてきて、気のはずまぬ「食事」以外はキッチンも片づいてきた。
2017 11/3 192
*「萩」さんに戴いた白ご飯パックの数多いに一驚、そして本当に久しぶりに温かい白いご飯、そして京都の「百」さんから戴いてた「穴子」や「鯛味噌」で、 煎茶を淹れてお茶漬けも出来た。一とパックの半分で満腹。有り難う。分かりよく飯を温める手引きをして貰っていて安心できた。電子レンジの指示文字が暗く て黒くて読みづらく、アテズッポウをやったが。
* 家事の要領をすこしずつ呑み込んできた。昨日までは病状がらみの動揺に思い屈していた。まだ油断も安心もならぬと自分に警めているが。
* 三時から七時まで四時間、ベッドサイドで「湖の本138」校正のかたわら、背をさすったり、上体を起こして遣ったり、かすれた小声でのわずかな対話や また筆談。そばにいてやるというだけの支援だが、妻は安心し嬉しそうに頼っている。むろんわたしの疲労を心配している。ま、おかげでというか、幸いに状態 は看護師の目にも予期以上に力有る快方へと見えているらしい。有り難い。
緊急入院してすぐ土日、いままた三連休。幸い退院と決まるには来週いっぱいを超過して長びくだろう、妻にいらだちが来ないといい、が、問題はわたしだ。 午後七時に病院を退出して真っ暗道を自転車で帰る途中、また家に帰りついての持ちきれぬほど重い濃い疲労は、ソラ恐ろしいまで危険になってきた。
いま、わたしがコケて取り返しつかぬ怪我をしたら。想像もつかない。
気力の問題ではない、生理的な体力の摩耗がなにより危ない。こう書いている間にも寝入りそうだが、みな投げ出して寝てしまえる事態ではない。食べようにも、疲れ切って手も出ないでただお茶ばかり呑んで脱水を恐れている。
* 明日のために、早く寝てやすむしか手がない。けれど頼まれごとなど最小限度の用意だけしておかねば。ぼやあっと疲れで瞼が塞いでくるが、負けるが勝ちとは行かない。
* 食パンをジャムで食べようとしたが、出しっぱなしにしたためかジャム瓶のなかに黴ではないかと見える徴候。ジャムが黴びるものかも知らずに生きてきたらしい。白い薄い食パン一枚、カステラ一切れ、と蜜柑蜂蜜だけの晩飯になった。生卵だけでも呑んでおこうか。
* 明日の、妻の希望、それぞれに用意した。卵を二個割って味付けて呑んだ。すこし力になったろうか。
2017 11/3 192
* 十時半になった、もう少し仕事をと思う、が…もう目が見えない。
2017 11/3 192
* 起床7:00 血圧120-65(81) 血糖値99 体重63.8kg
2017 11/4 192
* 変にゴチャゴチャした夢で目が覚めた。フライパンにバターを敷き食パンをのせ糖分をぶっかけて焼いてみた。成功したとは云えず一枚だけをむりに呑み込んだ。ヤクルト二本、R1一本も飲み、粉の和三盆糖を嘗めた。何と謂っても煎茶が旨かった。
* 体重は妻の入院以来二キロ減った。六十三キロ台へ落ちこんだが、むしろ健康体重に近づいたのだと考えておく。ただ体力まで沈下しては困るが。
* 午前の仕事を正午まで。昼食は、「ぼうろ」と称した佐賀鍋島の和風パンクッキーのようなのを二枚、やや堅めの「ごまぼうろ」一枚。やはり卵二個を味醤油をポチリ落として呑んでおく。ほとんど立食というより、単に立ち食いの行儀ワルさだが。
* 「選集23」送り出しは独りで遣ることになる。宛名印刷の仕方が分かれば何でもないのだが。妻の退院を待ってはいられないので、とにもかくにも関連作業に手をツケ始めた。
* 一時四十分、もうよほど目が参っているので機械仕事はやめ、一時間ほど階下で休んでから妻に会いに行く。三時から七時のベッドサイドは容易でない、 が、今回はそばにいて治って帰ろうという意志の力に応援してやりたい。見ようでは「さいのろ」の極であるがそれが二人の生きてきた仕方であった。わたし も、ガンバッテやりたい。
* 病院から帰って食事したりものを洗ったり整理したりの間にもう九時過ぎた。病院へ往きは掛けていた、度のない柔らかなブルーライト除れの眼鏡を、院内の何処かで失い、三時から正七時まで、ついにその帰り際までも、帰ってからもう一度荷を総点検しても、出てこなかった。
機械仕事には、眼のためにも必需品、困った。
* 妻は快方へよほどしっかり踏み出していて、身動きにも力が出て来た。食事も、時間掛けて、しかし美味しそうに半分余も食べられ褒められていた。体力の 回復などまだ踏むべき階段はいろいろ有るらしいが、三連休のこと、ゆるりとしかコトは捗っていない。しかし、書字は可能で頼まれごとやこっちからの質問に はペーパーに出来る。人工呼吸だったのでまだ喉のかすれで発声はか細い。
快復快方へ頑張ってくれて、嬉しい。
* わたしも昨日の異様な疲労の深さに懲り、今日は病院へ出るまでにも、ベッドサイドでも、せいぜチカラを付けるように心用意した。行きも帰りも異様な強 風だったが慎重に自転車を使った。ご飯もレンジで温め、濱夫妻に戴いた「今半」の牛肉料理も湯煎で温めて、シッカリ食べた。お茶も呑んだ。家から運びの食 べ物も少しずつなら食べて良い、ただし口腔内や喉にザラつくものはいけない、しっとりと柔らかなものならとも赦されていた。
ともあけベッドサイドでは正四時間ブッ続けに「校正」してくるので眼は痛いほど疲れきっている。それでも、もう少し今からも原稿読みを続けてキリまで進めておきたい。
* 順不同、山科の詩人あきとしじゅんさん、下鴨の澤田文子さん、聖教新聞社の原山祐一記者、横浜の小泉浩一郎さん、吹田の歌人阪森郁代さん、二松学舎大、府中の平田布美夫妻、武庫川女子大、中央美術協会の後藤明子さんらから来信あり。
* 十一時が過ぎた。きつい時間だった、目をすこしは光から和らげていた眼鏡を紛失して帰ってきたのはきつかった。もう機械は閉める。
2017 11/4 192
* 起床7:40 血圧117-72(81) 血糖値96 体重63.6kg
2017 11/5 192
* 朝からせわしなく動いて、なかなか手の掛かる一仕事もともかく一目標まで仕遂げた。時間がゆるせば先へ進めたいが、今は。
* ハと気づけば機械の前で腰かけたまま寝入ってしいた。今ではむしめ望ましい休養の仕方。
それでも二時二十分、今朝から、気の入った仕事を推し進め得た気がする。
* 七時五十分。正七時に病院を出て、家に帰って、パック半分残していた白いご飯を温め、梅の海苔茶漬けで、半分立ち食いのような行儀ワルサのまま流しな どを片づけ、明朝回収の生ゴミを出す用意もした。なんだか分からないが小さいカップのヨーグルト様のものょ口にした。お茶は淹れて何杯も喫んだ。
冷蔵庫から出しッ放しでいた三種のジャムをみな黴びさせ、生ゴミとして処分。
好きで、美味い透明な「蜜柑蜂蜜」は黴びなくてよかった。
* 戴いた1ダ-スの白いご飯パック「熊本城」は扱いやすく飯も旨く、とてもとても助かる。1パックで二食出来る。頼もしい。その点、食パンは簡単なよう で美味く食べるには手間も掛かり、一食一枚で多すぎて残りがちになるのが残念。量が食べられなくなっているのにビックリする。
2017 11/5 192
* 十一時半。「湖の本138」を要再校で明日送り返せるよう初校ゲラに念を入れていた。気を励ますべく、観てはいられなかったが、ホワイトハウスを舞台 とする政治陰謀とテロリズムの喧しい映画を付けっぱなしにしていたが、邪魔にはならず。一仕事の一段落はしっかりつけた。今度の此の「湖の本138」の編 成もわたし自身は気に入っている。
*もう余は措いて、やすまねば。眼が痛んでいる。 みなさん、そして迪子も、心静かにおやすみなさいと、八十二歳になろうという爺さんがご挨拶します。
2017 11/5 192
* 起床7:30 血圧117-72(81)測定できず 血糖値98 体重63.9kg
2017 11/6 192
* 正午過ぎた。鶏卵二個をポッチリの味醤油を垂らして呑んだ。生協の卵は新鮮感と味に膨らみを感じる。他に何を食べるか、今日は知恵も欲も沸かなくて困る。
朝からブッ続けの機械・眼仕事で疲れた。
こんなときに昼寝をと妹は教えてくれている。トランプ来日の乱れ波に煽られ、日本中が落ち着かない。
* 「湖の本138」初校済みを宅急便に託した。前巻の支払い請求書が来ている。郵便局でどう支払うのか、自分でしたことがない、来れも覚えねば。
「選集25」の編成にメドが立ってきた。
* なぜか、今日はフラフラと頼りない。酒を飲めば気は晴れやすいが、ゼッタイに呑めない、呑まない。一時半。そろそろ階下で、遺漏のない今日の見舞い態勢に入る。シャンとしないと今日は危ない。目疲れで、睡い。
京都の秦家はあれで、父と母と叔母との三人家族で、よくモメながらもそれなりに支え合っていたし、場合に依れば東京から妻が手伝いや病院の付き添いにま で出向いた。あれで胸を弱くしたのだから、わたしは妻におおきな借りをつくっている、妻は貸しなどと決して云わないが。お寺とお墓の面倒などもみな嫁とし て妻が仕切っていた。
* 親指の腹が昔よく云ったアカギレ、ヒビワレのようになり、ものに触れると痛くて何をするにも持つにも障りになった。剃刀の刃で斬られ与三の頬ッペタの ようになっているのを、病院から帰ってきて、幸いいい具合のバンドエイドを見つけて助かった。無ければどうなるかと不安なほど痛んでいた。親指の腹はんに かにつけモノに触れるとよく分かった。
2017 11/6 192
* 妻の躰にたくさんブラさがっていた管が、今日で全部抜去され、一時間ほどの安静のアトから今週のリハビリが始まった。どれほどで幸いに退院の許可と指 示がおりるのか、まだ容態の快方を「待つ」ということ。妻は、一方で快方の元気をえながら、他方で病院疲れも抱えている。此処は、慎重に慎重に不慮の事故 や怪我なく「退院日を待つ」ということ、それは毎日四時間を付き添ってベッドサイドで仕事したり読んだりに自転車で通い詰めているわたしにも同じこと。
* 今日は「絵巻全集」の月報を六七部束にして持って行ったが、四時間のうちにたった一部しか読めなかったが、六七人の筆者がそれぞれの問題を短い原稿に 濃縮して繰りだし、例によって五来重の論攷の面白さは格別であった。七時二、三分前に小冊子をやっと読み上げた。むろん、その間には妻の起ち居を助けた り、双方の質疑応答があったり、背をさすったり、希望や頼まれごとを聴いたりと、いろいろ有るのだが、それにしても一冊の月報がたいした読み甲斐で、空也 聖に始まる鉦叩きや鉢叩きらの由来や変貌や藝なども面白く教えられた、たくさん。
ベッドサイドから仕事が確実に捗る、読める、そして妻とも話せて励ませるという、それで疲れも深まるけれどわたしは病院通いを「当然」としている。「安心」が、両方にとって大事だからだ。
* 七時過ぎ、家に独り帰っても、ちょっと「食事する」という気分に快復しにくく、口に入りやすいものを兎に角口にする。お茶だけはたくさん呑む。今夜 は、細長いソーセージの六本入った袋を熱湯で温めてから、妻に教わってきたようにフライパンでカリカリカリっとまで灼いて、それだけを四本喰った。他に何 をするのも面倒で、食欲もなく、こんな時でも宇治の茶を淹れて飲むのだけは出来る。「茶食らい」とよく親にも云われた。
とにかく、電話一本かけるのも億劫、買い物に出るなどとうていそんなに気にならぬ。家にあって手に合うモノにただ手を出している。そして、仕事。テレビもあまりにつまらなく、見る気無し。
* 九時半になる。明日持って行く頼まれモノを妻の部屋で今から探す。そのあと、もう少し今日の仕事を進めておく。
* 指定の容れ物の中に指定の衣類、繰り返し調べて二つの一つしか見つからず。
* 選集二十五巻 ほぼ固まってきた。十一時。そろそろやすむ。
2017 11/6 192
* 起床8:00 血圧117-72(81)測定できず 血糖値112 体重63.9kg
2017 11/7 192
* 右親指の腹のたくさんな微細な切り傷のワケが分かった。
わたしの手のひらも指先も、抗癌剤以降の故障で今もジンジンと軽く痺れていて、そのために出来なくなった、極度にし難くなった作業がある。積み畳まれた 紙、ゲラでも新聞でも帳面や本でも上の一枚だけをメクルのに苦労してしまう。その際に「紙で」指の腹を切ってきたのだ、まさしくそういう切り傷だ。わけが 分かった。
* 朝の作業や仕事一段落して十一時半。『選集25』入稿可能まで運んだ。
*昼食。炊事場の洗い物。あれやこれや。食べても疲れ、食べなくては疲れ。
2017 11/7 192
* さ、病院へ走る。
* 八時過ぎ。病院から帰って、汗(今日は温かだった)のまま、佐賀のぼうろ菓子二つと凍った鶏ガラスープを温めて卵一つ割り入れて、そそくさとした食 事。八時まで「大忠臣蔵」の後半が見られた。同志社の先輩で亡くなるまで文通もあった坂妻三兄弟の長男田村の高田郡兵衛が懐かしかった。三船の内蔵助と千 坂兵部の丹波哲郎とが釣り合って快い。
* 妻は、病室へ向かうと、廊下でのリハビリ中、歩行訓練をしていた。声は擦れたままでよく出ないが、起ち居もしっかりとしてきた。六時の食事も三分の二もよく食べていた。ナースから退院後のケアについて、施設と相談して決めよと示唆があった。
予想を超えわたしの訳した『枕草子』を面白がっていて、わが意を得た。枕草子はほんとうに面白い古典なのであるが、日本中で、インテリジェントな大人で もかつて「春は、あけぼの」をかすった程度にしか読んでいない。清少納言描く王朝男女の日常も心情もじつは身近にありありと面白いのであるが。妻は今一 つ、学研のこの「日本の古典」の各巻担当者の豪華さにも一驚していたのが可笑しかった。
玉置主治医も来てくれて、あす、もう一度血液やレントゲン検査で状態を確かめたいと。慎重に慎重に、もうこの上は怪我も事故もなく元気に我が家に帰還して欲しい。
* 声がまだまだ擦れていて、普通会話もしんどそう、わたしなら耳を近づけて聞けるが、そうもならない対話はまだ疲れると。さもあろう。
緊急の救急車入院から手術まで、その後の集中治療室も、妻はよほど痛烈に「死」と闘い続けたらしい、繰り返し「生きて帰ったのね、あたし」と述懐を重ねる。やす香や黒いマゴたちが必死で救けてくれたほどの気持ちだったらしい。体験を噛みしめて長命して欲しい。
* いろいろ手助けや対話のかたわら、わたしは届いたばかりの「選集24」再校ゲラに読み耽っていた。古典の底知れない面白さをしみじみ楽しみながら自身の書いた話し言葉を聴いていた。二時半から七時、あっという間だった。慎重に慎重に自転車を走らせ帰ってきた。
* 明日は、生協がモノを届けてくる。ヤクルトは今朝届いた。ヤクルトとR1は病室へ運んで飲ませている。微糖の「午後の紅茶」が欲しいと云うので病院内で二本買ってきた。
*「選集24」郵送用にハンコ捺しを始めた。「NCIS」を観ながら予定の半分余を捺した。あとは、送り出しの挨拶を書いてプリントしなくてはならぬ。それも簡単に済む。
あます要件は宛名印刷だが、きっと妻が帰ってきて印刷だけはしてくれる。信じる。
*「湖の本」138の跋「私語の刻」を書かねば。さほど急ぐ必要はないのだが。むしろ小説の進行仕上げを。
* 湯に漬かりたかったが、もう十一時。眼も痛んでいる。やすもう。
2017 11/7 192
* 起床8:30 血圧117-72(81)測定できず 血糖値102 体重63.7kg
2017 11/8 192
* 生協は、わたしとは全く別世界と思ってきたのが、今朝初めてわたしの注文品が届いた。モノが頭に入ってないので、「4」と書いたのだろう野菜ジュース缶の少なくも1ダースは入ってそうなのが四函も積まれて喫驚、ま、腐るまい、物置に仕舞っておくか。
冷凍庫にモノが入らなくなった。無念無想で冷凍冷蔵ごちゃ混ぜにともあれ仕舞い込んだが、どうする気と自身に問いたい。
* また新しいご好意の品々、一箱に入って到来。感謝。
* 寒いのか温かいのかもよく分からない。
* 妻はわたしの運んだ古白紙の束に、たくさん、①暮らしの上の示唆 ②医療上の進展や医師らの言葉 そして、③十月二十日救急車をお向かいの富岡さんへお願いして緊急入院して以来の、記憶や感想、腰折れふうの述懐など を沢山鉛筆書きして毎日わたしに手渡している。
どんな病状での過去の検査入院や手技手術入院より遙かにとび超えて深刻な思いに落ち、堪え、頑張ってきたのが読み取れる。
わたしも、ありとあらゆるモノにひっきりなしに祈ってきた。これも二人しての「大仕事」であったと、いま、しみじみ思う。まだまだ。油断していない。
* 選集24送り出しのためのハンコ捺しを全部終えた。次は、送りの挨拶むをプリントして、カット。そこで、宛名書きを除き用意の作業は、OK。昼食は、朝の残り飯をお茶づけ海苔とお茶とでかきこみ、ヤクルトやR1で、済ます。眼が重い。
朝は小雨であったが。濡れていい恰好で病院へ。初校の出来ている再校ゲラは、油断はならないが、ベッドサイドで十分ノーリツは上がる。目の疲れだけが剣呑だが。
* 建日子に官製葉書を50枚買ってきてと頼んだら、家にある分をもってきてくれたらしいのを、安心して礼状など送り出したら、「10円不足」とみな戻されてきた。こっちもモノ知らずなのが悪いけれども。やれやれ。
2017 11/8 192
* 「退院」となって、それからの家庭生活は、或いはもう、少なくもかなりの期間は、以前のようには二人の協働とは行くまい、わたしが、歩行や通院や買い物もふくめ妻の労作業の大方を手助けして支えねば済まなくなるだろう、わたしにはそれが出来る。
日々頼れる若い力づけが事実上見込めないかぎり、生活の重点をそのように切り換えて行かねば済むまい、それでも幸い「お二人さん」暮らしが出来るのであれば、「お一人さま」暮らしより遙かに有り難い。
この師走十日には、婚約して六十年という日が来る。われわれ夫婦の人生、まさしく三学期を迎える気概で、こころと力を協せることになる。ハテ、どんな卒 業式を迎えるのかは分からない。北朝鮮から爆弾が飛んでくるという可能性も十分ある。日本軍はかつて欧米に「圧力」をかけ続けられ、真珠湾へと爆発した。 北朝鮮の政治も軍事も、あまりに往年の日本帝国陸軍に似ている。しかも今度は真珠湾どころではゼッタイ済まないだろう。「悪意の算術」にだけは長けた米国 が護ってくれるなど、おそらく一場のお笑いに終わる。わたしはそう観ている。
2017 11/8 192
☆ レンズは
使い物になっていますか?
母さんのお見舞いですが、次は土曜日の遅めになりそうです。新宿で仕事なので、それが終わり次第行きます。
何かかってきてほしいものあったら言ってください。 建日子
* レンズ、
役に立っています。ありがとう。引っ掛けがシッカリしてて、有り難い。
ケガ無く 事故に遭わずに 元気に心ゆく仕事をして下さい。
建日子の顔を見るのがカーサンには何よりの元気づけです。しかし、ムリはしないでいいよ。
カーサン ほんとによく頑張ったなあ と わたしも医師達も舌を巻いています。危ない瀬戸際を文字どおり懸命に我々の方へ帰ってきてくれたと、感謝しています。
食い物は冷蔵庫にいっぱいあるらしいが、みな、わたしの手に合わない。食欲が湧かないのです。ムリヤリ半端に喰って、お茶ばかり飲んでいます。蜜柑など、手間いらずで有り難い。柿やリンゴやバナナは不要です。
ま、気を遣いすぎないで。 元気が何より。 父
* あすは生ゴミを出す日。紙屑も一緒にと。なにもかもみな手づかみで片づけている。もう十一時をまわった。機械から離れる。
2017 11/8 192
* 起床8:40 血圧117-72(81)測定できず 血糖値107 体重63.7kg
2017 11/9 192
* 朝いちばんに自転車で郵便局へ、トッパンへの級の届け資料を速達のために。
そして「生ゴミ」を包んで戸外へ出した。朝飯も食べた。
2017 11/9 192
* 退院可能と成ってきて妻は興奮で夜眠れず、疲れたまま、試験的に帰宅して家の内を点検してきたいなどと言いだし、きっぱり止めた。いまここで無用の怪 我をしたり違和を感じたなら、またしても先へ帰宅が延びる。帰宅したうえでも、スグに家事が出来るなど思うのは考え違い、当分はわたしがブレーキと杖の二 役を務めねばならないと思っている。よほど帰れるのが嬉しかったのだろう、分かる。
* 本当なら今夜は、高麗屋三世代、幸四郎、染五郎、金太郎の名乗り最後の舞台を、いい席でみせて貰うはずだった。
☆ 今日も
一日お忙しく過ごされたことと思います。
本当にお疲れ様でした。
これからも色々大変かも知れませんが、ふたりで居ることで色々相談できるのは心強いと思います。
明日は、短い時間で失礼するつもりです。
迪っちゃんも、恒平さんもお疲れのないようにと思っています。
(画家の)麻田浩氏とお知り合いだったとは! でもご病気で残念でしたね。
パジャマをひとつだけ持参するのをお許し下さいね。家に帰られたら着て頂きたく思います。
確かに絵を見るのは、疲れますね。もし疲れて帰りたくなったら帰らせてもらうかも知れません。
でもお会い出来るよう楽しみにしています! 琉 妻の妹
* 疲れてはいるが、尻を追われる急ぎ「仕事」は片づけたので、一息ついている。で、「大忠臣蔵」の録画も観た、大門未知子も楽しんだ。ボンヤリとでも、なんとか食べてもいる。妻の帰り支度の頼まれモノもほぼ見つけた。
* 今夜はただボーっとしたままで、寝入ろうと思う。
あと三日、金、土、日と病院へ通勤し、月曜に、妻退院。事故無くしっかり実現したい、ひたすらそれを願っている。
2017 11/9 192
* 起床9:20 血圧117-72(81)測定できず 血糖値107測定できず 体重63.3kg
2017 11/10 192
*「京都」の声が聞こえてくる。ほんとうに、そろそろ京都へも帰れるかしれない、少なくもこの三週間、わたしは杖を手にしていない。歩行はしっかりし、自 転車にも二十日の日の病院へ駆けつけのとき転倒したけれど、以降は危なげなく乗り繋いできた。「尾張の鳶」に頂いた収納力のある安定した背負い鞄がどんな に役立っているか、御蔭でわたしは両手を開放できていつでも使える。病院へモノを運ぶにも実に有効に助けられている。
* あれこれしているうちに、正午になる。朝食をしっかり摂った(太巻き寿司を解凍し、煎茶で。ヤクルトも二本飲んだ。小魚の干物も少し)。レンジというものにかつて手も触れたことなく無視に近かったが、便利と分かった。アテズッポウで動かしているのだが。
2017 11/10 192
* 藤澤から妹が見舞ってくれると聞いていたので、わたしも、二時前には病室へ。三時半ごろ妹が来てくれて妻は感動。妹にも遠路疲れが出ないように帰って欲しいと、四時の病院送迎バスで保谷駅まで戻ってもらった。姉妹、いいもんだなあと観ていた。
妻は、退院前とてどうしても興奮気味、動揺しないでこれからの永い日々、月々、年々への最初の一歩が今度の退院なのだと思って欲しい。
結局、七時までベッドサイドで校正を続けた。そんな家族付き添いは例がないかも知れないが、一緒にいるという療養なのだと思って力を合わせている。妻は頑張るタチでも、気の弱い寂しがりでもあるのをわたしは知っている。似ているのだろう。
* 妻は、妹にホトホト告げていた、怖かった、と。数日はもう無我夢中で頑張っていたと。肩を痛めそうなほど、妻はベッドで、いろいろ書きためている。小説になるなとさんにんで笑い合った。わたしは言った、題は「生還」フリガナは「よみがえり」だねと。妻は真顔で頷いた。
* 帰りの自転車、珍しく暗い細道で何度も自動車に出会い、慎重にかわしかわし帰ってきた。家では、「大忠臣蔵」が途中。矢頭右衛門七らを襲う浪士達の窮状に気が重かった。
2017 11/10 192
* 起床8:20 血圧137-69(76) 血糖値110 体重63.8kg
2017 11/11 192
* 八時半、病院から帰り雑駁に豆腐汁をつくって飲み、片づけてから、二階へ。機械の前へ来て、今日病院で失くしてきたと落胆を極めていた掛け重ね遮光眼 鏡が、機械のそばに在ると気づき、嬉しさに大声が出た。無いと困るのだが、病院へ掛けて行ってたはずなのに帰りがけ見当たらないので、しんからガッカリし て帰ってきたのだった。
斯く、わたしの日々が正常な舵取りを謬り掛けていると思うと、もう、明日一日の妻の入院生活で限度だとしみじみ感じた。明後日の午前には退院予定になっ ている。もう一日、もう一日で、是非とも妻を家に帰して欲しい。わちたしに自己や怪我が起きてはまったく共倒れになってしまう。
* ああしかし、眼鏡が無事に在ってよかった。萎えそうに落胆していたのだ。
* 建日子が四時半頃まで、小一時間、見舞いに来た。頼んでおいた来年の干支飾りと生八つ橋とを持参。
妻の六人病室、三人に減っていて静かで温かだった。妻はときどき寝入っていた。声帯はまだまだ快復せず対話しにくいが、挙措は元気を取り戻しつつある。わたしは選集再校ゲラを黙々と読み続けていた。
* 病院へ、まだ明るい往きも、真っ暗な帰りも、自転車はちょっと気をゆるせば大きな怪我に繋がり、それでは何もかもオジャンという以上のおお事になる。 幸い、五分の距離。しかし広い大道路の踏切を二度は渡らねばならない。シッカリ気を付け、走って走って、もう三週間を過ぎた。疲れた。
* 今夜を含めてもう二た晩。もう二日。怪我も事故もなく無事退院へ漕ぎ着けたい。月曜、建日子が車で母を家へ連れて帰ってくれる。わたしは明日も明後日ももう二往復自転車での往来に徹するつもり。
* テレビの前でうたた寝していた。十時半。もう寝る。
2017 11/11 192
* 起床7:20 血圧145-80(68) 血糖値100 体重63.9kg
2017 11/12 192
* 明け方の夢で、わたしは、人に、自身の人生来し方を縷々総括するように懸命に、泣くほどに、話しかけ続けていた。与えられた「機会」であったのだと思う。
そんな前後に、なぜか海に漬かり、浅い海底はところどころで細い熱湯を噴き上げていた。わたしは游いでいた。
ふしぎな夢だった。浮かび上がるように目ざめた。七時二十分だった。
* 細切れ肉200㌘の三分の二ほどを、フライパンにオリーヴ油を敷き、砂糖たっぷりと白い味醤油でフラスパンを灼いてから肉を入れ、焼くように煮た。肉 が固くかたまらないうちに卵を溶いて、食した。満腹。ヤサイジュースとキャロットジュースとを半々に混ぜ、カップ二杯にして飲んだ。新茶も。
2017 11/12 192
* 妻は集中治療室から一般病室へ「生還」以後の日々に、半ばは必要からもたくさんな「メモ」を書いてきた。わたしに家の中のあれこれを教えたり、持って きて欲しい物の頼みであったりしたが、その余に妻なりの状況観察や自省や記憶の確認等々が(断片的とはいえ)あり、さらに加えて短歌にまで成らない短歌的 な表現、俳句にもならない俳句的な表現をも多々試みていたのは顕著な特徴で、妻なりの「生還」へのガンバリだったろう。
一方わたしの方はこの三週間の余、歌の一つも成さなかった。自転車で通い、妻のそばで少なくも三時から七時限界まで付き添い、黙々と「選集」や「湖の 本」の校正に打ちこんでいた。わたしのそんな「生活」を妻にただ感じさせていたかった。生きまた活きる大切さを無言に伝え続けていたかった。
* 先月二十日以来、三週間の余、欠かさず見舞い続けたのも、今日が最後、明日は、二三の検査データをとって置いて「退院」と決まっている。よく頑張って「生還」してくれた。
感じ入るのは、病院食を妻は実にしっかり食べる。努めて食べる。
わたしは病院食を食わなくてよく叱られた。妻の方は食事が出始めて以来、いつも褒められるほど進んで食べていた。快復を願う一心も手伝っていた。
明日は建日子が車で迎えとって家へ連れて帰ってくれる。わたしは明日も自転車で先に病院へ。怪我があってはならない。そして、当分は、二人住まい、「ブレーキと杖」の役を間違いなく務めるつもり。
* 十時半。もう眼が見えない。やすむ。
2017 11/12 192
* 起床6:40 血圧150-73(71) 血糖値108 体重64.0kg
2017 11/13 192
* さ、無事に妻の退院手続きを運びに、病院へ出かける。九時をまわった。慎重に、心健やかな妻の無事帰還を果たそう。
* 午まえ、つつがなく妻、建日子運転車で、退院・帰宅・生還。よかった。ほんとうに、よかった。感謝。深く深く、感謝。
建日子の戻っていったあと、午後、三時間ほども、二人とも睡眠。
そして五時半、大相撲の二日目、白鵬の強い相撲を観る。日馬富士の、先場所のような奮起も期待する。
* 禁酒を解いて、写真家近藤聡さんに送って頂いてた近江の剛い酒「七本槍」を、しみじみと。感謝。
今日、もと朝日新聞の伊藤壮さんからは、すばらしく旨い好きな最中を頂戴した。これまた、しみじみ嘆賞。感謝。
* 慎重な日々を、二人倶に過ごさねばならぬ。
* 三週間の余、親切を尽くしてお見舞い下さいました何方にも、心より御礼申し上げます。
2017 11/13 192
* 起床7:00 血圧106-52(79) 血糖値98 体重63.8kg
2017 11/14 192
* 穏やかな朝食を夫婦で。ありがたし。
2017 11/14 192
* 午後二時間、二人とも昼寝した。体力気力の戻りを実感する。不行き届きの家事、仕事などいろいろ有るにしても出来ることを一つ一つ片づけて行く。
そして、創作に力を入れたい。
妻は好きな大相撲を嬉しそうに楽しんでいる。
日馬富士の不祥事を二人して歎いている。なんとか穏当におさまって欲しい。阿馬の昔からいい相撲取りだった。白鵬と並べて甲乙無く、応援し続けてきた。
2017 11/14 192
* 起床7:40 血圧106-52(79) 血糖値98 体重64.7kg
2017 11/15 192
* 入浴し、いままさに美しくも可憐な「浮舟」が死を覚悟のところへ読み進んだ。可哀想に。
* 禁酒を解いて、日本酒も洋酒もビールもワインもみなしみじみ美味い。嬉しい。
2017 11/15 192
* 宛名の全部を手書きし、わたし一人で「新選集」を送り出さねばと半ば覚悟していたが、幸いに妻は殆どの宛名印刷を仕遂げてくれ、郵袋に貼り込み初めて半ばを超えた。大助かりである。
十時、みう疲れている、やすもう。
明日に希望を持って寝に就ける幸せを噛みしめる。しっかり立ち直りたい。
2017 11/15 192
* 起床7:40 血圧131-60(74) 血糖値85 体重64.0kg
2017 11/16 192
* 睡魔がしのび来る。機械の前でアタマが落ちている。ただただ無事に過ごしたい。
* 午後、思わず寝入っていた。お酒の美味さも手伝っていようが、幸いに徐々に日常生活へ戻るべく 用心しながら、安堵の時を噛みしめている。
2017 11/16 192
* 起床8:00 血圧131-60(74) 血糖値78 体重65.3kg
2017 11/17 192
☆ 奥様のご退院 (谷内正遠の木版画「笑顔で花をささげ来る天女」絵葉書に)
おめでとうございます
その後もどうぞご養生のことお祈りしています。
ホームページの読者の皆さん、ほっとしていらっしゃることと思います
お二方 お大事に お大事に 濃美市 井口哲郎 (前・石川近代文学館館長)
* 有り難う存じます。今朝は、余儀ない要件もあり、手をつないで郵便局まで諸支払いに往復しました。お天気も宜しく、幸いにゆっくりゆっくり歩いて用を果たしました。「生きて帰った、帰れた」という喜びを家内は心底実感しているようです。
皆々サンの御健勝を願わずにおれません。
* わたしの方が、芯で草臥れている感じ、郵便局から帰って、そのまま、一時半まで寝入っていた。幸い「選集第二十三巻」の出来てくるまでもう九日の余裕がある。差し迫って追われている仕事も今はなく、せいぜい休養して備えたい。滞っている聖路加への通院も急に復さねば。
☆ 奥様のご退院、
ほんとうによろしゅうございました。
ご自宅での御二方のご様子、穏やかな日常が戻りつつあるお姿を拝読し、ほっとしております。
先日、メールを頂戴しておりましたのに…ご返信が遅くなってしまい、すみません。
風邪をこじらせ、落ち着かない日々を送っています。
また、日を改めてご連絡させていただきます。
先生もお風邪など召されませぬよう、どうぞ気をつけてお過ごし下さいませ。 京・鷹峰 百 拝
* 昨日の「ドクターX」を、三度も繰り返し観た。何としても手術を受けて生還してきた身には、このドラマの核心部は身にもつまされ打ちこんで観てしまう。 こういうドクターにこそ出会いたく、こういうドクターとは容易に出会えない。徹底したツクリバナシとは承知しながら、底知れぬ病者の憧れや願が伝わってく る。
わたしは医学書院に十五年半も努めて大勢のドクターやナースと付き合ってきたし、おおく関係の学術書を企画製作しまた看護学の現場にも取材してきた。医 学看護学の人の命とかかわって底知れぬ世界であるのを承知しているだけに、ドラマ「ドクターX」の惹きつけてやまぬ意味を本気で思うのである。
2017 11/17 192
* 起床8:00 血圧155-75(66) 血糖値87 体重65.3kg
2017 11/18 192
* 機械の前でとかく居眠りしてしまっている。いまのうち一気に休息が必要なのらしい。ウカと目を閉じるとそのまま寝入ってしまう。ややこしいゆめばかり見る。
* 八時。一時間半も仕事をしていたか、気が付くと、また居眠りしていた。階下へおりてすこし休もう。幸い今はその気なら休みやすい時にあたっている。明後日の歯科も延期してある。
2017 11/18 192
* 起床7:30 血圧147-70(61) 血糖値87 体重65.4kg
2017 11/19 192
* 元・朝日新聞社、「湖の本」刊行の恩人、伊藤壮さん、お見舞いの電話を下さる。妻は電話口で声が出ず、わたしも痩せて入れ歯が浮いてうまく話せぬままで、失礼した。お見舞い、有り難いこと。
* 大学同送の澤田文子さんもつまへ電話が来たが、話せなくて失礼した。
☆ 奥様のご退院
おめでとうございます。
先生のお嬉しそうなお姿が、目に浮かびます。本当に、よう 頑張られました !
ご退院後、何かと家事なども気になることが多いでしょうが、奥様、どうぞボツボツと、ご無理ないようになさいますように! お食事作りの「手抜き」の出来 そうな品を、送らせていただきます。それぞれ、我家でも試食いたしました。召しあがってくださいませ。
「ふぐのみりん干し」は、私の郷里の産物でございます。サッとあぶって召し上がってくださいませ。お酒のお肴にも、お茶受けにもなろうかと存じます。
日々寒さも増してきました。どうぞご自愛くださいませ。 かしこ 十一月十八日 佐藤宏子
秦 恒平先生
迪子奥様
追伸
適当な大きさの箱がございませんので、大きなダンボールになって、詰め物代わりにティシューなど入っております失礼を、おゆるしくださいませ。
返信のおハガキなど ご無用になさってくださいませ。
* 胸の芯にほっと温かな灯のともるような嬉しさでお心遣いの恰好の品々をたくさん頂戴した。妻には心強い有り難い品々で、二人してほろっとした。有り難う存じます。
* 芯の疲れが残っていて頸筋など凝っている。おいおいに、おいおいにと、ムリはしないでいる。睡い。妻は大相撲を喜んでいる。
* 今日もひとつ訃を聴いた。寂しいことだ。
2017 11/19 192
* 起床8:00 血圧147-68(60) 血糖値83 体重66.4kg
2017 11/20 192
* 延期延期になっていた聖路加感染症内科の診察日が、十一月月末ちかくの午後遅くに決まった。この日は、午前の遅くにもう一科の診察も決まっていて、間 に、二時間ほど明くが。ながく気がかりだったりで、日時が決まってホッとした。但し聖路加の診察を受けに行っている間の妻の緊急入院が、今日から丁度一と 月前だった。今度の診察日、ぜひ、また留守の内にあの悪夢を繰り返さず済ませたい。幸い、妻の様子は安定している。 2017 11/20 192
* 起床7:45 血圧138-75(58) 血糖値91 体重64.9kg
2017 11/21 192
* 退院後初の妻の診察に付き合って病院へ歩いて往復、おかげで歩けた。帰りには、セイムスへ寄って買い物も出来た。
2017 11/21 192
* おいおいに、二人とも歯科通いが欠かせなくなってきている。
来週からは容赦なく忙しくなってくる、が、まだ妻は身動きも食事も、なにもかも要慎の埒をはみ出るわけに行かない。
わたしの手足と頭とをしっかり働かせねば。
このところわたし、杖をまったく手にしていない。杖に片手を預けていては手が足りなく、やって行けない。さいわい杖なしで不自由していない。
2017 11/21 192
* 起床7:00 血圧145-79(65) 血糖値99 体重65.7kg
2017 11/22 192
* 早朝から妻を手伝い故紙をたくさん出した。出し終えてすぐに回収車が来た。間に合って良かった。
疲れたか、妻はキッチンで、わたしは機械の前で寝入っていた。妻は寝室へ行かせた。わたしは仕事。玄関でピンポンが鳴ると2階から返事してわたしが駆け下りる、階段の要心は怠らず。
* 能美市の井口哲郎さん、栄養食にと地産の美味い山の芋を送って下さった。すり下ろし、卵を溶いて、わたくし幼来の好物、ありがとう存じます。
* 吉備の人、名酒「獺祭」に相次いで、妻宛て、岡山の名菓「ピオーネ・マスカット」を頂戴した。恐れ入ります、ありがとう存じます。
2017 11/22 192
* 大事に取り置いてあった古新聞の特集から、ついに「浅野内匠家来口上」どおりの討入四十七士の姓名を、とうとう機械へ写し入れはじめた。せめて諱は省 いても全員の氏名を諳記したかった。二十人ぐらいはすらすら云えたが、わずか四十七人が覚えられてないのは残念に多年悔しがっていた。書き写していると、 一人として今まで知らなかった姓名など無い。親類の名よりよう識っている。親類のような気がする。
* 九時。もう機械で目は使えない。あとは階下で、あれこれと。
2017 11/22 192
* 起床8:10 血圧140-66(79) 血糖値87 体重65.9kg
2017 11/23 192
* ポストへ自転車で遠くはないが、深み行く晩秋の冷気は身に沁み、まだ、わたし自身の疲れも、残っているなあと自覚する。ゆっくりゆっくり力を取り戻したい、二人とも。
2017 11/23 192
* 妻のケイタイに入っていたという写真が十枚近く送られてきたのを、みな保存した。2012.1.7七草の朝のわたしの写真が珍しかった。胃癌確実と診 断された二日後で、当時の体重は86.6キロ覚えている。図体がデカい。同じ場所で同じポーズでテレビを観ている一、二年後のわたしは、確実に術直後から 20キロ余も体重を落としていたのがハッキリ分かる。いまも、ほぼ術後体重か、やや低めに推移。何としても表情は老いたなと思うが、あの頃は黒いマーゴが 元気で、いつもいつもわたしたちを励ましてくれていた、のに。術後四年半の初秋に逝ってしまった。
* 毎朝晩、かならず、庭にいるネコ、ノコ、黒いマーゴに声を掛ける。必ず言う、「今日も(明日も)トーサンもカーサンも家にいるよ」と。留守にするときは、「お留守番を頼むよ」と。
わたしは幼い日から「もらひ子」で育っていると知っていたが、それでも、秦の父の帰りが遅かったり、叔母の帰りが遅かったりすると、いつも待ちわび、早 く帰ってきて欲しかった。家に父と母とが揃っていてくれると心強くて安心だった。五年生、六年生頃までそうだった。で、ネコやノコや黒いマゴ達もそうに違 いないと、今も、思うのである。
2017 11/23 192
* 起床8:10 血圧147-64(75) 血糖値85 体重65.8kg
2017 11/24 192
* 「選集」第二十三巻の納品日が週明け月曜に迫って、いつものようにわたしの一等ビリビリする時機にある。なんとか、おっとりと恙なく送り出したい。次 の巻も、もうやがて責了に出来るが、その発送は正月にまわしたい。正月、二月、三月、忙しくなりそうだ。いまは、いっそからだをいたわり気味に、何とかや すみやすみ歩みたい。その為にも、睡くなれば寝入って休みたい。
* 美しいものを見たい、出会いたい。久しぶりに戒光寺の仏様に逢い、思い和んだ。 2017 11/24 192
* 起床7:50 血圧145-68(66) 血糖値84 体重65.8kg
2017 11/25 192
* 選集の仕事が、編輯が「京都」へ動いているので、京の便りはひとしお身に沁みる。京そだちだから成った仕事、京育ちでなければ成らなかったろう仕事を、莫大にと云えるほど積んできた。
ただ、思うのである、わたしの京都には、二年にも満たなかったが京都府下の深い山村疎開暮らしも含まれていて、この体験には感謝を禁じ得ない。俳優のひ の野正平が自転車で日本列島をはせ廻っているあの「故郷」感覚をわたしは、一方で京都市街での暮らしと同列にあの丹波の山奥にも篤くまた熱く抱いている。 京都や東京だけが日本ではないという国土愛を大事に大事にしている。処女作の「或る折臂翁」も文壇処女作「清経入水」も丹波というわたしの「京都」に根を 生やしたのだった。時折り、ひの正平にてがみを書きたくなる。
* 十時。階下での「読む」仕事へ移動する。明後日の今自分は、新しい選集の送り出し荷造りで草臥れているだろう、急ぐ必要は無いのだからゆっくり進めたいが。
2017 11/25 192
* 起床7:50 血圧152-81(48) 血糖値86 体重65.8kg
2017 11/26 192
* さ、明日に備えて、もう機械から離れ、やすもう。
2017 11/26 192
* 起床7:30 血圧146-66(65) 血糖値83 体重65.0kg
2017 11/27 192
* 起床7:40 血圧142-69(70) 血糖値83 体重65.0kg
2017 11/28 192
* 起床8:10 血圧131-62(63) 血糖値86 体重65.0kg
☆ 白楽天に聴く 「不睡」
焔短く寒缸盡き 缸は燈皿
聲長く曉漏遅し 曉漏は水時計
年衰へては自づと睡る無く
是れ三尸を守るためならず 庚申の風を謂うている
年衰え、夜半に仕方なく目ざめて本を読んでいたりする、わたしも。ムリにも醒めずムリにも睡ろうとしない。枕べには、読み物は置かない、やはり源氏や枕が恰好と。
2017 11/29 192
* 妻と、郵便局そしてセイムスへ散歩かたがた用足しに出かけてきた。だいぶ、妻もしかと歩けるようになってきた。
明日は、わたくし、先月二十日いらいの病院通い(二科)になる。処方されていたお薬など、払底している。雨降りで寒いとか。ま、それぐらいは辛抱できる。事故発生だけは御免蒙りたい。
2017 11/29 192
* 建日子が階下へ帰ってきている、ようだ。
* 建日子もいっしょに、やす香が生まれた当時のアルバム二冊を大いに楽しみ、七時からは一緒に「大忠臣蔵」を観てくれて、母親のようやく無事に生還復帰 の実感を喜びながら、八時過ぎには次の仕事の吉祥寺方面へ出向いていった。次回、第二十四巻の口絵には、『古典愛読』を中公新書に書き下ろしていた当時に 父と息子と二人して旅した中禅寺湖畔での写真が入るのを見せたり、短いが和やかな親子三人の時が楽しめた。有り難かった。
* さ、明日は、先月二十日いらい久々のわたしの病院通いである。
2017 11/29 192
* 起床6:30 血圧143-79(71) 血糖値95 体重65.2kg
2017 11/30 192
* 久々の思いで聖路加病院も午前の新保先生と午後の古川先生、二科の診察を受けて何の故障もなかった。ただ長時間にわたったので、午後の感染症内科の外来では居眠りしていた。
帰りの電車は、幸い親切なひとに席を譲って貰え、保谷まで寛げたのがなによりだった。朝八時半に出て、帰宅は五時。一日仕事でした。
2017 11/30 192
* 久しぶりに杖を頼んでの街歩きだった。今にも降りそうな雨にも降られずに済んだ。三時間ものあき時間も、いい昼食が楽しめてよかった。
2017 11/30 192
* 起床9:15 血圧134-58(58) 血糖値94 体重64.9kg
2017 12/1 193
* いまさき、九時半、烈しい胸の苦痛に襲われ、急いで妻のニトログリセリンを貰った。四分で改善。そのあとに大きな排便があった。この二、三週間、ときおり胸に軽微な圧を感じることあり気にしていたが、先ほどの、急激な痛みには驚かされた。
* 手術してもらった外科の先生にお礼がしたいというので、妻に付き合い、地元病院へ往復した。もう一度お腹が痛んだが、和らいで済んだ。歩いていて腰も痛んだが。
* わたしの体調、どうも万全と読み切れない。引っかかる、とすれば心臓かと。
* 外科執刀医師へお礼に出向いた妻に付き添い、病院へ徒歩往復。疲れたか、帰って、機械の前で寝入っていた。
2017 12/2 193
* 夕食後、崩れるように八時まで寝てしまった。むかしなら、何故か「牛になる」と行儀悪いことに謂われたか。機械へきたが、眼もよく見えず、進まないので、もうヤメて今夜は早寝としよう。交替で今度はわたしが入院なんて事ではシャレにもならない。
2017 12/2 193
* 起床8:40 血圧143-65(57) 血糖値93 体重65.2kg
2017 12/3 193
* 起床8:50 血圧136-79(72) 血糖値88 体重65.7kg
2017 12/4 193
* 今夕は久々に歯科へ通う。
2017 12/4 193
* 起床7:50 血圧136-79(72) 血糖値83 体重65.8kg
2017 12/5 193
* 妻の、退院後二度めの循環器内科診察に付き合う。夕暮れが早く、帰路は暗いので。またしても、は、ゼッタイに困るから。三時間。待合で、かなり校正の仕事が出来た。十五分余で歩いて通える病院は有り難い。
2017 12/5 193
* 起床7:45 血圧134-71(66) 血糖値97 体重66.2kg
2017 12/6 193
* 起床7:00 血圧134-71(66) 血糖値96 体重66.1kg
☆ 白楽天に聴く 「感有り」
往時は追思する勿れ 追思すれば悲愴多し
来事は相迎ふる勿れ 相迎ふれば已に惆悵
兀然として坐するに如かず 塌然として臥すに如かず
食来れば即ち口を開き 睡来れば即ち眼を合す
二事最も身に關す
安寝餐飯を加へ 忘懐行止に任せ
命を委して脩短に随ひ
更に若し興来るあれば
狂歌酒一盞
* 眼科の診察には失望落胆するばかり。視野の清明は目ざめて小一時間もなく、以降は水の底を歩いているにひとしく、夜になればもう機械の字は九分がた推察して読むだけ。なによりも視野がすっきりと清んで見えない。
困りますといえば、疲労ですねと。疲労を和らげるお薬はと問えば、ま、ありますけどねと。そして緑内障の点眼薬「たぶろす」が一ヶ月後の再診までに十五 本。「たぶろす」点眼は日に一回、左右に一滴ずつ。点眼の瞬間だけ、視野が明るくなるが、五秒ともたない。視力は、1.2と。視力があっても、視野は暗く 滲んだまま。 どうにか、ならないの。「兀然として坐するに如かず 塌然として臥すに如かず」のみか。「狂歌酒一盞」か。
* 病院のアト、松屋裏で、京風の懐石で一盞また一盞してきた。帰路は「保谷行き」を幸い、「塌然」寝入っていた。
2017 12/7 193
* 今月は、もう、二十七日のわたしの病院通いのほか、ぜひという義務がない、ゆったりと仕事したい。もう、わたしは先生でない、「師走」を免除されているわけです。
2017 12/7 193
* 起床8:30 血圧134-71(66) 血糖値88 体重65.7kg
2017 12/8 193
* 起床8:35 血圧夕食時111-63(84) 血糖値96 体重64.4kg
2017 12/9 193
* 起床8:15 血圧夕食時111-63(84) 血糖値106 体重64.7kg
2017 12/10 193
* どこへも出掛けず、静かに家で、書いて読んで呑んで食べて、居眠りなどしている。これが佳いんだ。
明日は、妻の歯医者通いに付き合う。そのサキかアトかに何処かでささやかに食事をと思っているが。
久しくクラブへも行けていない。例年もらってきた「来年の手帖」も欲しいので、ぜひ行かねば。
* きびしい寒さへむかうので決心はしづらいが本当のところわれわれは夫婦とも足腰のためにも健康に出歩く生活にも努めねばいけないのだと思う。いまも、 必要あって前世紀末の我々日々の暮らしを日録で部分的に読み返しているが、たとえば美術展のためにだけで、夫婦して横浜へも名古屋へも京都へも気軽に出歩 いていた。ふと思い立って水戸や袋田へ、仙台、松島へ、足利へなど、小さな旅も何度もしていた。もうモノは沢山持てないが軽装で動ける季節になれば、せめ て街へも出歩いた方がいいなと思う。
2017 12/10 193
* いちどその気になってしまうと、手放せない本が目の前に立ち現れる。島尾さんの遺著「琉球文学論」も島津忠夫さんの遺著「老のくりごと 八十以後国文 学談儀」も、手にしてしまうと教えられる多さに負け、つい読み耽ってしまう。老いて草臥れたこのからだにまだ好奇心をかりたてる吸収力が残っているのに、 途方にくれさえする。生きる力はまだまだ「書く」ために大事に温存しなくては、あまり「読む」ために浪費は謹まねばと思うが、読むと書くとは表裏していて 切り離せない。「読み書きソロバン」と謂うたものだが幸いソロバンは気に掛けなくて済むのは有り難い。
* 長編『ユニオ・ミスティカ ある寓話』の第一部と終幕部とに関連の新しい物語を加えたくなっている。出来不出来は分からないが、此の作がなにかしら 「かなめ石」に成って行きそう、根負けしないで書き抜きたい。『清水坂(仮題)』もめり込んでくる肩の荷になっているが、根負けしてはならぬ。
* 九時半。もう機械の字がよく見えない。今夜はもう休んだ方が良い、どうも体調、違和の重苦しさをはらんでいる。疲れであろう。
2017 12/10 193
* 起床8:30 血圧(計れず) 血糖値97 体重64.3kg
2017 12/11 193
* 妻の歯医者通いに付き添って行った。帰りに池袋ででも、いい夕食をと楽しみにしていたが、妻、へんに風邪ぎみのため諦めて帰宅。有り合わせの肴や漬物で酒を飲んで、辛抱。
どうも、ついていない。
2017 12/11 193
* 九時半。機械仕事は視力の限度へ。困る。目の疲労は心神の疲労へ直行してくる。健康なんだという自覚がとかく砂のように崩れてくる。
2017 12/11 193
* 起床8:30 血圧(計れず) 血糖値97 体重64.3kg
2017 12/12 193
* 心身とも、何となく草臥れ、ヘバっている。腹への食べ物の収まりがうまくないのか、食べると気も身も重苦しく不快になる。困る。「 蕎麦湯呑みけふの昼餉はつつがなし夕餉はなにが喉とほるらむ」という戯れ歌は胃全摘そして三月退院の年の十一月の作、さらに四年余の今年正月末には、
尿が出て便出て食へて目が見えて読み書きできて睡れればよし 疲れたくなし」と詠い、同日、「余念なく眠ってをばよいものをなぜ起きてくる 死にたく ないのか」とも自問している。体調としては、しかし、いのよりマシだったのかも知れない、いまは心身とも堪え性が薄れている。めざましい嬉しさや楽しみに 欠けているのかも、例年だと十一月の顔見世、師走の観劇、この十数年欠かしていなかった。
* いま一つには、一念発起で読みはじめての手始め、同時代女作家、竹西寛子、高橋たか子、富岡多恵子、津島佑子さんらの各小説の憂鬱さに閉口したのだと も思う。とはいえ、竹西さんの、広島被爆体験を作の地盤に鎮めた「儀式」にはつよく心動かされ、行文の確かさ美しさにも敬服した。
だが高橋さんの「白夜」 富岡さんの「壺中軒異聞」の 文学表現の異様さ、ガサガサと乱雑な日本語、しかもそれなりに小説世界が蠢いて生きている奇妙さ は、わたしの神経を戦がせることで度外れていた。小説のおもしろさが有るというなら、この二作には竹西さんの「儀式」よりも在るのだ、が、それ自体が堪ら ない気味悪さを誘うのだ。なにか狂ったり、度外れたりしている。
これから読む津島さんの作に何が現れるかは分からない。
が、よくよく往時を顧みて、此のわたしは、あの樋口一葉以降どんな日本の女作家の作を知ってきたろう。野上弥生子、宮本百合子、円地文子、林芙美子、岡 本かの子、佐多稲子、その辺で止まっていたのかも。以降は、読んで感心した出会いが無く、つまり見捨ててきたとでもいうしかない。一方上記の諸氏には「文 学」の面白さと感銘をそれぞれの持ち味と文章とで有り難く得ていた。違和感はなにも無かった。いやいやこまかに顧みれば、もっと何人もの忘れられたような 女作家の優秀作にも何度か出会っていて、「ペン電子文藝館」の招待席へ取り込んでいた。
まして竹西さんの著書はたくさんいただき、「みごもりの湖」では推挽の対談を付き合って頂いたし、歌集「少年」に有り難い一文も寄せて頂いた。朝日ホー ルで源氏物語を話題に舞台の上で対談もしている。つまり竹西寛子さんの文学世界の多くへは、じつは古典世界を介してわたしからも多く廣く重なっていた。認 めあえてきた。
* 高橋さん的、富岡さん的な世界を否定したり否認したりは決してしない。が、ああ、こういうのも在るなだと合点は行く。今は、そこでほぼ棒立ちで、二作めを読むか。分からない。
むしろ今の感想では、ずうっと同時に読んできた泉鏡花の長編「風流線」また「芍薬の歌」も、はっきりいえば駄作だということが言いきれる。
もう一つ、「源氏物語」は、途方もない世界史有数の「名作」だと、断乎またまた言い切れること。文章も、表現も、構想も、作の品格も、そして小説・物語 としての大きな豊かな面白さも。外国語については言えないので言わないが、日本の文学で、古典・近代・現代を通じて源氏物語に匹敵する只一作も無いと、悔 しさも嬉しさも半々、言うておく。
* 選集第二十六巻の構図が立った。久しぶりに亡き実兄恒彦の書簡を懐かしく読んだ。いま、だれよりもなどとは限定しないまでも、生きていて欲しかったと堪らない一人は此の兄北沢恒彦だ。
さてさて「湖の本139巻」の編輯にも掛からねば。すこし楽しみたい、ま、急ぐまい、
なにより心神のためにも。
食べ物を美味しく食べられるよう努めたい。先日「ボンシャン」で註文した前菜の大きな「生牡蛎」三つが忘れがたい、が、ああいうのは毎日は無いかも。師 走は忘年会で賑わう店だ、日比谷のクラブへ行きたいが、夜の場所だから、あまり寒い晩はヘキエキ。「なだ万」で誕生日を祝ったことが二度有る。忘れられな いのが「鉢巻おかだ」の鮟鱇鍋、美味かったなあ。癌になる以前だったが。
2017 12/12 193
* 起床9:30 血圧(計れず) 血糖値97 体重64.0kg
2017 12/13 193
* 起床7:30 血圧(計れず) 血糖値108 体重63.8kg
2017 12/14 193
* 毎日、お花やお菓子やお茶やお酒や食べ物を頂戴し、ほこほこと温かい気持ちで感謝し申し上げています。正直に喜んでいます。
2017 12/14 193
* 午後三時過ぎて、今朝から、なんだかだと機械に向かい仕事を続けてきたと気づいた。
この二、三日、体重が低線へ沈みがち、今朝の63キロ台など、六十年余も昔の数字と思われる。60キロまでは好いと思っている。蛋白質や脂質にどうして も欠けている、妻が気づかってくれてもなかなか口が受け取らない。いま、粥にすると食べるが、炊きたてでも茶漬けでも、ご飯が食べにくい。飲用に傾いて、 柔らかい食事をつい求めがちなのは、胃袋という食物の滞留機能をぜんぶ欠いていて、無理喰いするとどうしても腸で溜まって苦しくなるのだ。何が嬉しいと 謂って、腸内ガスがどんどん出てくれると、生き返ったように心地良くなれる。困ったモノです。胃腸並び立って必要、大事にして下さい。
2017 12/14 193
* 起床8:45 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値100 体重64.4kg
2017 12/15 193
* 起床8:15 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値100 体重64.4kg
2017 12/16 193
* 起床9:20 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値106 体重65.0kg
2017 12/17 193
* わたしたちは夫婦して睡魔に見舞われているよう。からだに熱が籠もっているのか。
* 気がつくと また機械前の倚子で頭を垂れ寝入っていた。寝て、確実にいいのは視野がクリアに戻っている事。
よくよく思えばいまわたしに差し迫った何もなく、風邪気をいたわっておれば、差し迫った用は無い。誕生日まえに散髪したいのが唯一、それとて大ゴトではない。
食べ物は、偏ってはいるがむしろ過剰にとれている。体重は安定している。せいぜい寝て休んでいれば今は好いと思う。気がかりは「日本丸」の危なさ、これは、安倍晋三のような、トランプで国運を占っているような見当違いとその子分らに舵をとらせているかぎり、どうにもならない。
トランプの城の崩れ落ちること、ないのか。
*妻の風邪けは一進一退、わたしの体調は宜しからず、ぞわぞわとしたかすかな寒気に集中力を奪われている。
思い切って、寝入ってしまおうとおもう。
* それでもやはり仕事していた。幸いに、いまむやみに追い立てられる仕事は何も無い、なら今こそ仕掛かりの創作を打ちこんで追いかけることだと思う。も う熟して枝から落ちそうな果実は、「ユニオ・ミスティカ ある寓話」が一番、これを収穫できれば、攻城で大手門を抜いた気分に成れそう、どう発表するかな どは二の次で良い。
アレもしたい、コレも、ソレもとわたしは今何かに追われるように浮わ気になっている。それで気疲れもしている。凡の凡人の証拠のようにうろうろと、あげく疲れている。
* 十時半を過ぎている、結局。
また、階下で「壺中庵異聞」など読んで、寝ます。今夜は、亡くなった人たちと黙って話しているような按配だった。亡くなった人たち、わたしからして、死 なれた人、死なせたような人は、現世にも作の中にもずいぶん大勢いたんだと呆れる心地で、ぼーんやりしていたらしい。そんな誰も、こっちへ來いとは言いも 誘いもしない、が、手が届きそうにすぐ傍にいる感じがする。妻が先の入院中、だれかれとなしに懸命に救いを求めていた。願いを聞いて貰えたと感じている。
2017 12/17 193
* 起床9:20 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値110 体重65.4kg
2017 12/18 193
* 我が家も揃って風邪ひき風邪ぎみ、ついつい横になってからだを温めている。尾張の鳶には、洋の東西と古今と無くこの数十年にどれほど「本」を恵まれた か知れない。世界中をトビ回ってきた鳶だ、ときどきおっそろしい難しい西欧の小説ももらって音を上げるが、出逢えてよかった嬉しいと感謝したいろんな本 が、指折り数えられない。ありがとう。
とにかくも、風邪をなおしましょう。
男孫が二人かァ。羨ましい。
2017 12/18 193
* 起床9:20 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値100 体重65.7kg
2017 12/19 193
* 起床9:00 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値103 体重65.5kg
2017 12/20 193
* 九時過ぎて散髪に駆け込んだが、三時に来てくれと。
2017 12/20 193
* 散髪できて、気分よろしく明日誕生日が迎えられる。
2017 12/20 193
* 今日はこの二三日にくらべ眼の不安定がきつい。九時十五分過ぎ、機械は断念して階下へ移転する。
2017 12/20 193
* 十二月二十一日 木 八十二歳誕生日
* 起床8:00 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値97 体重66.0kg
* やそふたつ積んで壽(よはひ)を手に享けつ
日光(ひかげ)しづかな朝の狭庭に
* 九九と覚え上なき数の八一に
一つ上越す冬至生まれぞ 恒平
* 長寿を祝う故国近江の名酒「金亀」を盃に、妻が心づくしの赤飯と吸い物で、ささやかに朝食。
2017 12/21 193
* 妻の風邪気味緩和せず、街へ出るのを諦め、下関の雲丹や、生協の蟹や、「和加菜」出前の刺身で、家で酒を呑む。吉備の人、お酒を新たに一升下さる。なにもかも、戴くばかり。ありがたし。
☆ 秦さんのお誕生日
迪っちゃん
* 今日の視力・視野のデラメ加減は酷すぎる。どう光を加減しても、目の前がうす暗い。
2017 12/21 193
体調は如何ですか? お元気?
実は秦さんのお誕生日に 少しだけですがお菓子を送ろうと思っていたのに、
気がついたら明日! 本当にご免なさい。明日お送りしますね。
ただ年末なので すぐ着くかどうかはちょっと分かりませんが…。
でも お二人共が、とにかくおうちで 82歳のお誕生日を迎えることが出来て良かったですね。
本当に本当に おめでとうございます!
秦さんによろしくお伝えくださいね。
どうか無理しないで、いつまでもお元気でいて下さい!! 琉 妻の妹
* ありがとう。あなたの励ましがなかったら、迪子が集中治療室入りしたとき、よう持ち堪えられなかったかと思うのです。ありがとう。アメリカの友人からたまたま電話があったあの頃、わたしは電話口で泣いたと、あとで聞きました。たしかに泣いたと覚えています。
あなたも、ご家族も、どうぞどうぞお大事にと心より願います。
誕生日を祝って下さり、ありがとう。お菓子を下さる。ありがとう。 恒平
* 明日は、正午過ぎの妻の歯医者通いに付き添う。転ばれてはならない、もっともわたしも転ぶわけに行かない。どつちがよろよろだか分からないが、わたしはまだ軽快に自転車には乗れる、坂道でも。しかし歩くのは上手ではない。天気であって欲しい。
* これで今日は眼に悩みながらかなり仕事には励めたのです。十時半。もう、休みます。 2017 12/21 193
* 起床8:00 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値103 体重66.4kg
2017 12/22 193
* とても欠かせる歯医者通いでなく、好天を幸いに出かけた。 久しぶりに「中華家族」で昼食、といっても、歯が問題の夫婦とも満足に食べられず。わたしはマオタイ、ダブルで二杯。この強い美味い中国酒をクイクイと二杯呑める人は少ない。
2017 12/22 193
* じつは昨夜は殆ど眠ったという実感無く、夢かも知れないが現の夢の連続のようで疲れ切った。真夜中には仕方なく源氏本を二種類読み、泉鏡花を読み、富岡多恵子を読んだ。それぞれに打ちこんで読んでいた。
「手習」で浮舟の境涯に儚い寂しみを覚え、「葵」では夕霧を遺して逝った葵の寂しさに打たれながら、いつしかに若紫との新枕に転じて行人生無常を感じつつ、孰れにも小説の品質と妙味とを満喫し得ていた。
鏡花の「芍薬の歌」は頽廃の深川世界を唄うように活写して行く筆の綾にしかと驚かされ浮かされながら、こういう日本ご一同「創始」し得た人の天才を驚嘆した。
富岡多恵子の長編では。まことに独特な「人間」把握と表現の「迷い無き無縫」の堅実さを実感できた。
真夜中の読書は、心身に重いけれども、かえがたい満足もあった。しかし、とても疲れたとは云うしかない。
2017 12/22 193
* 明日は、元気があれば、池袋まで、例年の如く雑煮のための京の白味噌を買いに出かけたいが。
なんとなくもう九時半。リーゼを服して、寝入れるといいが。
2017 12/22 193
* 起床8:00 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値91 体重66.3kg
2017 12/23 193
* ちょっとした、しかし気がかりで必要な用事を、郵送、また電送。
天気良く、出かけてもと思ったが、休日ではクラブも閉めていよう、自転車を走らせるには夕日が眩しすぎた。そして何と無く腹部不穏。リーゼを服して夜前はよく睡れたがまだ睡いのかも。
2017 12/23 193
* 起床9:00 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値102 体重66.5kg
☆ 白楽天に聴く 「眼花を病む」
頭風 目眩 衰老に乗じ
秖(た)だ増加する有り 豈に瘳(い)ゆる有らんや
<春秋左氏傳に云ふ 加ふる有りて瘳ゆる無し、と>
花 眼中に発するも猶ほ怪しむに足り 花 霞み目
柳 肘上に生ずるは亦た須く休すべし 柳 瘤
大窠の羅綺は看て纔かに弁じ 大柄で綺麗な模様は見わけられても
小字の文書は見て便ち愁ふ
必ず若し黒白を分かつ能はざれば
却て應に悔無く復た尤め無からむ
いささかヤケクソだが、いまのわたしの頼りない霞み眼に、そのまま。ああ。
* 「湖の本138」を一部念校残して、責了返送。昼過ぎ、機械の前でうたた寝。寒。睡れるのは有り難い。クリスマス・イヴとか。
* 機器作動のためのマニュアルが、字が小さくて読めない。「小字の文書は見て便ち愁ふ」である、参る。別機械へ移転したくても、慣れない機械は、とてもまともに使えない。メールが使えて一太郎のワープロ機能が使えれば、そして過去に保存保管の文書・写真が機に応じて援用できれば済むのだが。
今は、ふつうの読書の方が、機械での読み書きより遙かにラクになっている。
* クリスマスとか。義妹の呉れたケーキでワインを呑みに降りよう階下へ。おやすみ、にする。
2017 12/24 193
* 起床8:00 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値96 体重66.8kg
2017 12/25 193
* 年越えの借財なく、穏やかに新年を待つのみ、とはいえ、まだ雑煮の白味噌が買えていない。
* 出かけて、クラブで夕食をと思っていたが、気が揃わず、やめて寝床で「能の平家物語」を読み、富岡多恵子の『壺中庵異聞』を面白く読み進み、夕食後は テレビで、テレサ・ライトの映画を観た。そういえば昼間にはジョン・ウエインの「捜索者」を後半観て、これは納得も行き面白かった。
しかし、終日、心身不調だった。アタマが回転しない。
* 下手をすると美味い雑煮用の味噌も調わない、が、せめて、これだけは。この正月は、その余の飾ったお節料理の類は一切予約の心用意も出来なかった。妻のお煮〆だけで十分だ。無事であればばよろしい。
* 元・講談社の天野敬子さんに、風情豊かに野趣に富んだ縄に鈴生りの干し柿をたくさん戴いた。すこぶる美味しくて、美味さに驚かされた。有り難う存じます。
* 京都府から、文化賞受賞者の明けて二月一日のパーティ招待状が来たが、寒さ真っ盛りの季節で、遠慮の他はない。
2-17 12/25 193
* 起床9:00 血圧111-58(88) 晩計測 血糖値95 体重66.5kg
2017 12/26 193
* 撫でた程度だが小説を少し動かした。
入浴し、大石と遙泉院南部坂の別れを見届けておいて、明日の、今年最期の聖路加受診に備えている。済めば、風邪を引き添えぬうちに休みたい。
* 天野恵子さんに戴いた西条柿の干柿が、「おどろきの自然の甘さ」なのに驚いている。篠崎仁さんに戴いた「梨」のワインの風味にも驚いている。
2017 12/26 193
* 起床7:00 血圧計測できず 血糖値89 体重66.0kg
2017 12/27 193
* 聖路加内分泌の診断結果、総じて問題なしと。しかも、なお人間ドックの受診を奨められた。
2011年歳末にやはり内分泌科受診の際、わたしから人間ドック紹介を希望し、年明けて正月五日のドック検診で二期胃癌を確診されたのだった。
今日のドクターは、肝臓、腎臓等に全く問題ないと言い切り、胸のレントゲンなどを撮ってみてはとさりげなかった。わたしも、胸部の検査は受けていいようにここ一年ほど予期していたので、心配はしていない、が、適当な時期にドック入りしてみようと思う。
* 街での食事、案じながら入って、結果よろしからず。よくないと経験した店には二度と入らぬ方が良い。ただ脂濃い重苦しいのはイヤで、仕方なくデパート の高いところで和食を試みたが失敗、ま、酒の肴の程度で。疲れ果て、両脚とも下肢が凝固気味に痛んで歩きにくくなったが、もう池袋西武は諦めて手近な銀座 三越の地下三階で京の白雑煮味噌を買い、気まぐれに木村屋の小さいパンを六つ買い。危な危な脚を引き摺って銀座一丁目から幸い西武乗り入れの電車に乗れ た。校正で気をまぎらわせながら保谷まで。寒いが天気はよろしく 永く立ちん坊の末にタクシーで帰宅、もう五時近かった。家へは、お飾りや鏡餅などがもう 来ていた。
2017 12/27 193
* 起床10:00 血圧126-57(93) 血糖値97 体重66.2kg
2017 12/28 193
* 起床8:45 血圧計測できず 血糖値86 体重66.5kg
2017 12/29 193
* もう暁け近くからの夢に隣家のおじいさん(実在しない)が台所へ入ってきて、黙々と碁を囲みだしたが、酒を所望され、あいにく無くてわたしも妻も困惑した。
またの夢では台所が倍ほどの小ホールになっていて、いきなり何人もが訪ねてきたのが、中学の昔の友人らで、田中勉も西村明男も團彦太郎もいた、團の如き は入って来るなり「ブランデー無いの」とわたしたちを困らせた。洋酒も日本酒も麦酒も、酒の類いはなにも家に無かった、買物籠を手にして、近隣に酒屋も無 いのに妻は買ってきましょうかと囁いた。日本語の話せる外人まで二人、陽気に入ってきた。なんとも致しよう無く閉口しながら、理不尽に悶えながら目ざめ た。ナンタルコト。
* ほぼ一日、相当難儀なアスクレピオスないしソクラテス(プラトン)流の「健康」ないし「医療」論を検討していた。ヤレヤレ。です。
* 「珠」さんに今日戴いた「鴨鍋」で蕎麦を美味しく夕食に。越乃寒梅みともども、とても美味かった。感謝、感謝。
2017 12/29 193
* 建日子が風邪気味と。一緒に三箇日の雑煮を祝うのは断念せざるをえない、二人とも微かにもかぜ気味でいる、誰も彼も、わるい風邪へこじらせてはならない。建日子は正月に芝居の演出と公演を控えていると聞いている。お互いに大事をとりたい。
建日子、大事にしなさい、雑煮の味は変わらない、十五日の小豆粥の頃に味噌雑煮も食べに来なさい。
2017 12/29 193
* 起床10:15 血圧計測できず 血糖値92 体重66.5kg
2017 12/30 193
* 家の中、何処も彼処も散らばっているが、片づけるなどに心身を労せず、今在るままに静かに無事に歳を跨いで越えたい。
2017 12/30 193
* 起床9:00 血圧計測できず 血糖値94 体重67.5kg
2017 12/31 193
* 体感宜しきを得ず、見にくい目のまま懸命に難しい道をくぐるように小説を書き進め書き直し、呻いていた。それはそれで、最も賢い「時間との馴染みかた」なのだ。
2017 12/31 193
* 特別大晦日のようにも過ごしていない。八時過ぎたし、ま、やすもうかと、思いつつ「選集第二十七巻」に宛てても良い「編輯」手始めを順調に終えた。機械の中に往時の全仕事が幸い整備保管できていることの有り難さを思う。
来年も、なんとか無事に仕事を続けたい。
* 九時半。さ、階下へ。美味い酒をすこし飲んで、やすみたい。源氏物語の、版を異にした二册、泉鏡花選集の「芍薬の歌」、筑摩版現代文学大系、四女性作 家らの最後の巻、音頭大系、その他の資料類を枕元に積んで読み継いでいる。三十二巻の「絵巻全集」の全月報は大満足して読み終えた。
機械の側でも、白楽天や陶淵明の詩集を愛読中だが、明日の元日からは、またバグワンを読み返して行きたく思っている。
* ではでは。新年には是非新作の小説に自身納得したい。
* だれもだれも健康ですように。
舌少し曲り目出度し老の春 虚子
倦む日なきわが酒に年立ちかへる 占魚
ゆつくりでいいと云ふまに除夜の鐘 恒平
2017 12/31 193