ぜんぶ秦恒平文学の話

食べて飲んで 2019年

* 独り 早起きし、戴いていた「獺祭」特製の酒と簡素な私のための煮染めで新年を迎え、そのまま、たまたまの時代劇映画を見て過ごした。

* つまらぬ作であった。武士になど生まれなくて、どんなによかったろう、わたしは「人」として生涯を終えられそうなのを、心安らかに喜んでいる。人が人 に仕える人生など、バカげている。刀など突っ立てて「男」がりながら、むだで無意義な殺生のまま命果てて成り立つ「士」道など、バカげている。わたしが赤 穂義士の討ち入りを受けいれるのも、主君の仇討ちというより、「無道の公儀」への決死の叛意をこそ是とみるからである。

* やれやれ新春早々から、不粋になった、が、戴いていたお酒は、美味かった。
2019 1/1 206

* 藤澤の永田澄雄さん  洋酒に種 18年の「シーバス・リーガル」「オールド・パア」をお年玉に下さる。有難う存じます。
2019 1/1 206

* 建日子来る。
雑煮 一椀半しか食えず。
初詣に出ず、仕事。小説に とほうもないアヤがついてきて ま、いいか。

* 元日など要らない。大晦日から、いきなり正月二日になればいい。
2019 1/1 206

* 終日 むしろ仕事に勤しみ、時に和久傳の「紅」を口に含み、そして…酒正月。要冷蔵で抱きかかえていた名だたる「獺祭」四合を夕方には独り呑みほし、さらに純米大吟醸の「金婚」「松竹梅」と、総じて七、八合ほども独り戴いた。
もう今日は寝入りたい気分、明けたなら、どこかへ独りで旅に出たい気分。
元朝朝一番の、なんだかややこしい名の時代劇映画がすっかり、わたしの気分を壊した。
建日子が来てくれたのに、なにひとことも親身のいい対話も出来ないまま。可哀想なことをしているが、わたしの気分は、途方もなくわるい。
明日には、どうか平常に戻りたいが。

* 小説、長編の第二部の部分をねちこちと検討して夜更かし。

* 夕食後、やや持ち直し、建日子と、更に酒を飲んで、いろいろ話した。      2019 1/1 206

* 永田澄雄さんからの「オールドパア」を「いとおしむ」ように、というか、まことにチビチビと頂戴している。
2019 1/5 206

* 隣り家を、力仕事で片づけてきた。十七日の「湖の本」143の受けいれ、大丈夫。これで三日間の余裕が出来た。「越乃寒梅」無垢の純米大吟醸酒を戴いている。美味い。
2019 1/13 206

* 歯科から帰る。留守番の「マ・ア」大いに喜ぶ。「中華料理」でマオタイをたっぷり二杯。いま広い東京でもわたしのた めにマオタイ酒を常備してくれている店は、無い。幸いに妻はこの店が好きで、歯科の帰りというと此処へ寄り、妻は甘いめの酢豚を、わたしはマオタイを。 すっかり親しい店になっている。だいたいわたしは、食べ物やサンとはすぐ仲良くなる。ものを美味く楽しく食するには一等の心がけである。

* 保谷まで電車で寝入る。妻に揺り起こされた。わたし一人なら飯能辺まで乗り過ごしていたかも。
ご近所さんと、タクシー相乗りで帰宅。
2019 1/15 206

* わたしも酒器は、各地のをいろいろ愛用しているが、伊賀、信楽は抜けていた。
このごろは酒そのものが大手を振って先を歩き、気に入りの湯飲みでぐいぐい楽しんでいる。越前、萩、また志野の湯飲みや瀬戸物も清水焼も。
2019 2/2 207

* 午、ガマンしきれず、トッテオキ「獺祭」の一升瓶の栓を抜いた。数日日本酒を断っていた、ま、美味いこと。しんぼうが無いなあ。
2019 2/3 207

* 節分、わが家では夕過ぎて恒例の「福は内、鬼は外、福は内」の豆撒きを、年男でもある私が、入浴のあと、夕食の前に例年通り、一階、二階の全部の戸口や窓で、執り行った。
歳の数に一つ多く豆を食するのも定まりだが、これも例年、歳の端数に一つ足すだけに遠慮している、つまり八十三歳のわたしは、豆四粒を口にした。また香ばしく焼いた目刺しを食するのも恒例、美味い「獺祭」といい煎茶で、珍しく夕食の足しに、四、五尾も食べた。
2019 2/3 207

* いよいよ、ほんとうの難関にさしかかった。どうなるか分からないが、遣ってやろゃないかと気張る。気張るしかないから気張る。何をどう、どのように書 けばいいかの見晴らしはついている。難儀は、ただただ視力の不備不足。そのためにはよく睡って早起きし、視野の明るい間に書き継いで行く
べし。今日はかなり集注でき、十一時になった。もう、中止。獺祭をすこし味わって、寝る。
2019 2/4 207

* 京の「華」さん、いい抹茶たくさんに添えて京のお菓子を数種も送って下さる。摂りすぎない限り、小粒に創られた糖分は仕事の間にもじつに有り難い。ありがとう。

* 近江大津の澤さん、珍しい選り抜きの近江のお酒二種に、見たこともないとても珍しい、美味しい酒肴を二種も添えて送って戴いた。大事に蔵していた名酒「獺祭」の大吟醸二升も飲み干したところで、喜んでいます。感謝。
ま、飲み過ぎないようにように気にかけながら頂戴します。
2019 2/7 207

* 吉備の有元さん、いい酒にこそ絶好の雲丹の二瓶もを送って下さった。有難う存じます。

* 春巻はいけなかったが、新鮮なたらの芽や玉葱、椎茸の揚げたのが、下ろし大根出汁で、久々に美味しく食べられた。嬉しくなった。米の飯は、よっぽど柔らかに炊いてもらわないと、口なかに針が立つように障って食べられない。厄介な「口」になったものです。
青汁などと気味の悪いもの言いはイヤで、わたしは抹茶を点て、また点てるヒマの無いときはただ熱湯に溶くだけで呑んでいる。棒茶も、煎茶も、番茶も、む かしから「茶喰らい」と親に笑われたほど好きでよく飲む、大量に飲んでいる。今日、「華」さんから「笑くぼ」など小粒の和三盆菓子を三種も戴いて、これは 仕事中の疲れに最適の元気づけになるのが有り難い。古門前の「おっ師匠はん」がおくってくれた「おちょま」という小粒の甘味もよかった。果物は、冬場は もっぱら蜜柑。堅いものは歯に堪える。普通の野菜ジュースと人参ジュースとを半々に混ぜて、都合一度に二缶呑んでもいる。
つまりは飲み物が腹にらく、だから熱源にお酒を愛する。洋酒も好き。
ただ、固いモノは歯の根に響いて痛み、咀嚼できない。
ま、体重はこれだと、低め維持で落ち着いている。血糖値もひどくは上がらない。
2019 2/8 207

* 指先の凍えて痛い寒気のなか、妻と、近くのセイムスへ「マ・ア」たちの砂や餌や、わたしたちの食べ物の補給に出向いた。ものの五分とかからない近さで、助かる。
帰って、昼食したが、進まない。仕方ない。

* 京都の羽生さん、俵屋吉富のわたしのことに好きな「柚餅」のはんなり赤いのや、雲竜、白雲竜などのほかにも、いろいろ京和菓子の粋を選んで送って下さった。持ほくほく。
2019 2/9 207

* 戴いた純良の雲丹で、戴いた「獺祭」二升の最後を醑んだ。鱈と、佳い白豆腐と水菜の鍋が口に優しく。飯は、喰わず。それでも、がっくり疲労している。明日、建日子の芝居、行けるかどうか。妻ひとりで、行ったことのない小さな劇場へ行けるか、心配だが。
2019 2/9 207

* 独り早起きし、マリア・ピノシュのピアノを聴きながら棒茶を沸かし、食パンの半枚をバターとジヤムとで食した。雪というほどは無い、が、二階へ来て、暖房 の下にいても脚は冷え冷え。ヘリコプターらしき飛行音がゆるゆると遠のいて行く。機械の煮えを待ち、『法然上人集』の長い解題を読んでいた。
2019 2/10 207

* 久しぶりに、池袋西武地下のカウンター「寿司政」を、妻と楽しんで帰ってきた。妻もわたしも手足の攣縮に困惑した。脚力も体力も失せつつあるなあと、 いかんなあと、思う。疲れた。わたしは昔から土地勘のあるほうで、馴染みの街なかで戸惑うことはないが、妻の感覚のチグハグなのには、いささか震撼を覚え た。

* 疲れに、吃驚している。つい寝入ってしまう。九時にもならないが。今日はもうこのまま休んで、明日は明日に気力を備えようと。
2019 2/10 207

* 食がほそくなり食べられないと嘆くご老人らの声も、テレビで情けないほど同感し嘆く思いにめげた。いまも一碗の味噌雑煮の餅二つが過剰で、二階へ上 がった今も腹具合が穏やかでない。食べない方がラクと、ツイ思えてしまうのが日常感覚では、理づめには不健康と嘆くしかない、しかしいろいろとたくさんは 食べたくない、食べられない。創ってくれる妻が気の毒で申し訳ない。

* 食前にきまりのインシュリンを注射しながら、夕食をほとんど、キャベツの煮たのをすこしだけしか食べなかった。全身がけだるいまま仕事していたが、着 の身着のまま横になりに下へ降り、それでも『蘭学事始』「山上宗二記」など面白く読み「選集」の校正もしているうちに疲れて寝入った、が、ふと違和感に目 が覚めた。左掌に覚えの震え、先日も襲われた同じ震えが来ていた。すぐ血糖値を測りにキッチンへ。案の定よほど、正常値の半分以下の低血糖値。すぐ甘味を 口にして震えはおさめた。
低血糖のことは、内分泌の診察時かならず医師に審問される。七年前の最初の手術、その後につづいた二度目の入院以降、ずいぶん久しく低血糖症状はなかっ たのに、この近か間に二度は宜しくない。ま、家でだと、気づきさえすれば白砂糖で回復できるが、一度、妻と聖路加からの帰り、松屋まで歩いているうち血の 気が引き、低血糖と気づかず喫茶店に入って休息したが目が舞い倚子から転げ落ちたりした。やっと低血糖と気づいて袋の砂糖を何本ももらいやっと回復した事 がある。
低血糖はコワイですよ、ショックが起きると命を落としかねないと聴いてきた。用心しないと。インシュリンを注射しながらろくに食べなかったのはまずかった。
2019 2/11 207

* はるか昔、四国からちいさなボクを連れて東京へ転職してきた、創刊以来の愛読者胡子文子さん、みごとに成熟した新鮮そのものの土佐文旦を五キロも送ってきて下さった。胸焼けがきついので、新鮮な柑橘類は嬉しい。ありがとう存じます。
2019 2/18 207

* 昨日、しはらくぶりに、切れていた純米吟醸の酒をセイムスへ仕入れに出た。仕事も前へ進んだのでヤケな酒でなく、しみじみと。が、半日で四合瓶をスイと空けて仕舞うたのは、自粛を要する。
2019 2/19 207

* 午後、歯科へ。帰途、江古田でマオタイを、たっぷり。美味し。帰宅して、睡し。
2019 2/19 207

* 第三部を叮嚀に読み進んだ、最期の最後の大事に想う少なくももう一場面を創り出さねばならない、その仕事の直前箇所まで書き込み書き直し読み直してき た。かけるかしらんともう歳ご案じてきた箇所は乗り切った、と思う。もう少しだ、重いけれどもそこを担いで通り越したい。
眼も眼だが、ものを食べるとすさまじいのどが破裂音をあげて在りもしない空気を吐き出したがる。ときにいくらか食べた物も戻ってきそうになる。これに困惑、これに迷惑する。滅入る。
それでも今夜は、柔らかに柔らかに炊いた妻の握り飯を二つも食べられた。卵のスープも一碗吸った、あとで、えづいたが。越乃寒梅もすこし頂いた。そしてすぐまた機械へ来た。わたし一人が懐かしくて、他の人にはほとんど意味も無さそうな他界へわたしはいそいそと駆け込む。
2019 2/23 207

* 揚げかき餅二片、ワインとチーズ二片、小粒の和三盆二粒。独り早起きしての朝食。「マ・ア」も起きてこない。冷え冷え。
2019 2/24 207

* 米の飯が針のように口に突き刺さっていた。正常の水加減だと云われてもとても米の飯が食えなかった。で、水加減を25%も増したという飯で握り飯にしても らうと、米が柔らかに刺激的でなく、もともと米の飯の好きなわたしが、昨日今日海苔で巻いた握り飯を美味しく食べている。昨日は二つ、今晩は三つも食べ た、ただし、他はもう何も口に入らない。しかし、米の飯が旨いと口に入ってくれるのは久々に嬉しい。鮨屋の鮨飯もわたしには口に障るのです。妻が気の毒。
2019 2/24 207

* 握り飯が食べられるようになり、テキメンに体重が増えている。
朝一、回収の瓶や缶を外へ出す。わが家の酒の瓶の多いことに恐縮する。昨日、医師に、ま、二合ぐらいにと云われてきた。このところ、多いときは五合も減っていた。美味い酒は美味いので。ありがたい。
2019 2/26 207

* 東村山の写真家近藤聰さん、地酒一升と、「東村山」自讃宣伝の菓子一折とを下さる。
2019 3/3 208

* 江古田の歯科へ。帰りに、銀行から幸四郎へ歌舞伎座の券の支払いをすませ、はじめての魚の店「魚功」へ入ったのが成功、珍しく「魚」をしっかり二人で食べた。いい店だった。ネコ・ノコ・黒いマゴのために鉢植えの花を買って帰ってきた。
2019 3/5 208

* 歌舞伎座、孝太郎と鴈治郎の「女鳴神」 幸四郎の一人舞台「傀儡師」は、二つとも、つい、うとうとした。大切りの「ども又」をさすがに白鸚が、そして女房 の猿之助がもらい泣きさせるみごとな舞台を充実の演技と感動で実現してくれて、感激した。あまり好きでない演目であったのに、大高麗屋と巧者の澤潟屋とが 実力の共演かつ競演でしっかり盛り上げてくれたのには、感謝を覚えた。

* 帰りの寄り道も西武地下の「寿司政」で好きなだけを握らせ、菊正宗一本を明けてきた。
2019 3/7 208

* 「やまと櫻」がうまいこともあり、飲んでは寝入っている。八時半にもならないが、睡い。

* 十一時半に 就寝前の服薬・注射などして。小説の仕上げへも、肉薄している。

* 村上開新堂の山本さん、クッキーのぎっしり詰め合わせ、下さる。

* 江藤利雄男さん「選集 詞華集 ありがとうございました。皆様で召し上がって下さい」と舶来の焼き菓子を下さる。

* 鎌倉の橋本静一・美代子夫妻、銀座千疋屋のミカンゼリーを下さる。

* ご近所の立川さん、新潟煎餅を大きな筺で下さる。
2019 3/7 208

* 仙台の遠藤恵子さん、名産の蒲鉾を多彩に下さる。ぴたり酒肴の彩。感謝
2019 3/9 208

* 京都の都心 四条河原町東北の永楽屋は、京都で暮らしていても眉を張る名菓・名菜の店、そこで選りすぐりの品を揃え、あきとしさん、お送り下さった。 「選集29」の歌集『少年』 詞華集『愛の歌 日本の抒情』が頂戴した御馳走、今夕、建日子が久しぶりに寄って呉れるという、「セイムス」で山田錦の清酒 を買ってきた、せめて酒肴を楽しんで欲しい、有り難いこと。
恐縮です。 花さそふ風のほのかににほふまで春はきにけり桃のはやしに  恒平 2019 3/9 208

* 新作の長編 昨夜11:45 一通りの原稿整理が出来た、けれど、まだ手放せない。今日も、さらに集注したいが、十三日は病院の診察日。
そして十四日は、「結婚満六十年」 歌舞伎座を二人で楽しむだけ。
六十年めは、「ダイヤモンド婚」と謂うそうだ。

妻をえて六十年生きてダイヤといふ
宝石になんぞ触つたこと無く      恒 平

とっておき、時代ものの「オールド パー(=老いボケ)」で祝うか、呵々。
2019 3/12 208

* 馬渡憲三郎さん、熟れてきた土佐文旦をたくさん下さった。
2019 3/12 208

* 体重、胃全摘後七年の最低値にちかくなった。あまり、食べていない。白粥一膳に味をつけ、もずくのスープを一碗、二碗ほど。時にたらの芽の揚 げたのを美味いと感じる。間食も減っている。酒も無ければ呑まない。以前のわたしは時として食べたいために生きているのかと我ながら失笑したが、今は、美 味しく食べられる何かないかと思いあぐねるほど。妻はさぞ困っていよう。
2019 3/21 208

* 妻と築地を歩いて、木村屋本店で自慢のサンドイッチを買い、近くの「宮川本廛」で絶品の鰻蒲焼きと、いかにも鰻屋らしいうまい酒を楽しんで、一路、車中寝たまま帰ってきた。「マ・ア」大喜び。やはり疲れていて、二時間ばかり床に就いて寝入った。
2019 3/22 208

* 隅田川の花見もかねて、つまと聖路加病院へ。わたしは一時半から三十分ほど「心エコー」の検査を受けた。心電図とも併せての診察診断などは十七日に、内分泌科で。
晴れ晴れと好天。寒いというほどでなく、櫻はどこも、よく咲いて七、八分か、病院の別館から河原へ出て大 橋を佃島へ渡り、佃煮や塩昆布など買い、河岸の桜並木を嘆称のあと、ふと見つけた「シェ・モア」という店で、遅い午食のピザに、ビールと佳い赤ワイン二種 を。そして気分良く、コーヒー。教わった道を月島へ戻り、有楽町線でスーンと帰ってきた。ま、ひどくは疲れずに済んだいい花見でした。
2019 4/3 209

* 妻、八十三歳に追いつく。めでたい。五月六月の不安定気候をつつがなく乗り越えて欲しい。お祝いの赤飯が歯痛で食しきれなかった。わたしの食のほそいこと、無きに同じい。
2019 4/5 209

* いわば栄養失調ということか、ガックリと困憊し、起ち振舞うのも億劫で。成ろうなら寝入りたいが、そうもならない。妻の誕生日で、ほんの近くへ「買い 物」に出ないかと誘われたが謝って勘弁して貰った。一緒に録画最新の「NCIS」を愉快に大笑いしつつ絶妙の脚本・演出・演技に満足したが、さて晩飯に寿 司を取って喰うのも重苦しく、やめた。困ったモノだ。
2019 4/5 209

* 機械の前にいると、霞んだ視力でいろいろに仕事している、気も入れて。階下へ休みに降りるとぐったりしてしまう、疲れきっているのだろう。どこがどう わるいという自覚はほとんど無い、ときおり胸に手を置かれているような気がする程度。食欲が薄く、信じられないほど食べる量が少ない。これが宜しくないに 決まっている。今晩も煮た葱を10切れほど、煮た百合根を10ほど、そして厚揚げ豆腐の煮たのを二きれほど、それだけで飯へは手が出ない。酒は、日に、 二、三合入っているかも。
大きめに見て、栄養失調の気味はあるのかも。
2019 4/16 209

* 駅まで歩いて、10:55保谷発に乗り新富町まで。血液・尿などの生理検査は正午過ぎには終えていたが、内分泌科の新担当の女医診察室へ入ったのは、もう三時に手が届きそうだった。校正して待っている眼が霞んでしまっていた。
生理検査には何の異常もなくキレイであったが、先日の「心エコー」「心電図」一昨日の半日に及んだ「シンチ検査」とやらの診断・診察は循環器科の主治医 がするはずと。それは今月25日のまたの通院日のはなし。検査先行、診察治療は後れるということ。糖尿のための処方箋二枚をもらって院外薬局へ。此処でも 小一時間は待たされ、「お大事に」と送り出されたときはもう、四時。
朝食はごく少なかったので、昼ぬきの四時ではかなり消耗していて、それなのに、ゆらゆらとあてどなく歩いて、へとへとで三笠会館にたどり着いた。空腹だが食欲無く、何年ぶりかの焼きそばで瓶出しの老酒をのみ、やはり校正もしていた。
五時過ぎて外へ出たが疲労困憊、手指は攣ってねじれ、脚もあぶなかったが、こらえて丸ノ内線までやっと歩いた。席をゆずってもらい、池袋まで瞑目。池袋での西武覧への乗り換えまでがまことに辛かったが、幸い準急で座れたのは大助かり。
なんとか、倒れも転びもせず、へとへとのままタクシーで家に帰り着いた。
2019 4/17 209

* 埼玉の茶人吉田宗由さん、抹茶の新茶三缶に添えて新しい茶筅と和三盆を送って下さる。有り難し。
2019 4/19 209

 

* ありがとう。正直のところ ほっとしています。
帰路、めずらしく奮発して「北京飯店」の「北京ダック」や佳い紹興酒など、すこし贅沢し、いい酔い心地でよろよろと帰宅しました。水分が涸れたのでしょう、電車の中で手足が攣ったのをなんとか堪えました、校正しながら。水分は出歩くとき必ず多めに持つようにしています。
お疲れなどは、癒えていますか。十連休は、例の海外であろうかと想っていました。お大事になさいますよう。
2019 4/26 209

 

* ダブルで二杯も啜ったろうか、実に午後のほとんどを寝入っていた。自分にそれを許すほどの安楽感、ま、いいではないか。

* 極端に目と共に歯ぢからも失せていて、食べにくい。軟らかいの固いのとが微妙に混じっていると、おじやや粥ほど軟らかい食べ物もかすかな固い混ざりもののために歯が痛み、食べられない。つくってくれる妻に申し訳ない。
2019 4/27 209

* 小雨の中 江古田の歯科へ。みちみち、躑躅の大むらさきが盛んに色映えていた。
ぐらつく歯を、抜け抜けと、二代目の若い女先生にせめ立てられたが、黙して受けず。歯よりも、あたまのしっかりしている間に仕事をしたい。
思えば、この歯科医院にもう五十数年も通いつづけている。わたしとそう年齢の差の無かった前の神戸先生が亡くなって、さ、もう十三年にもなろうか。
帰路、練馬駅で寿司を。寿司は寿司のママだったが、店は別店に替わってしまっていて、落ち着かず。江古田ではフレンチと蕎麦のいい店がつぶれてしまい。気に入った食べ物店がこの数十年にいったいどれほど姿を無くしたか、無常の思いにかられるほど。

* 神戸の岡田昌也さんに、「新茶」二缶を頂戴した。村上開新堂のクッキーが美味しい。
2019 5/1 210

* 朝は、セイムスで買った鈴カステラを三つほどと紅茶で済ませた。昼は、やはりセイムスで仕入れた「正麺」とやら中華蕎麦を、落とした卵一つを掬い呑 み、麺はほとんど噛めなかった。クッキーの柔らかい小さいのを十ほど間食した。晩は、ふつうの豆腐を冷や奴にして半丁ほど、若布と麩と蕨と竹輪の柔らかに 煮たのを小鉢の半分ほど食べた。酒は無かった。午後、機械の前で気づかぬままほとんど昏睡していた。階下の床へ移動したが、宅急便が届いて。

* 静岡の鳥井きよみさん、今年も新茶を早速に贈ってきて下さった。
2019 5/3 210

* 吉備の人から超特級の名酒「獺祭」を頂戴した。ほっぺたが垂れて落ちそう。奥様の介護もなさってますのに。恐縮です、有難う御座います、嬉しいです。
2019 5/15 210

* 新宿御苑前で地下鉄を降りるなど、何十年ぶりだろう。白鸚夫人とも感謝の声を掛け合ってから劇 場を出たときは、よほどわたしは疲れていたが、二本目の杖のように付き合ってくれた妻をやはり日比谷の北京飯店へ連れて行き、先日満足した料理や北京ダッ クその他を御馳走し、久々にふたりで五階のクラブでほっこりひと休みしてきた。「北京」では紹興酒を、クラブでは18年物シーバスリーガルの残り少なく なってた瓶をカラにしてきた。
銀座から、なんだかよく分からない、近年走り始めた座席指定の急行西武線に乗って帰ってきた。
2019 5/16 210

* 選集31巻になる『オイノ・セクスアリス 或る寓話 ・ 黒谷』の三校が出揃い、現状、直しの無いきれいな校正刷り三通が、夕方四時半ごろ、手もとに 出来た。念のためもう一度通読してから、オロシ(責了・昔風には下版)たい。出来不出来は作者としては口を緘じておくが、ま、本当の意味でマル十年かけ仕 上がったわけで。「忽ち(=かつ悠然)一樽の酒と與(とも)に」と、戴いた「獺祭」を独り賞味し、そのまま八時半までぐっすり寝入っていた。
2019 5/23 210

* 河野能子さん、京の名菓の中でも、ひときわ味わい美しくかるくて甘い、大好きなせんべいを送ってきて下さった。ありがとう存じます。
2019 5/28 210

* 倉田さん、「なだ万」のチリメンジャコをたっぷり送って下さる。酒によし飯によし。感謝感謝。

* 井口哲郎さん、鶴来の「萬歳楽」を送ってくださる。ありがとうございます。
2019 6/2 211

* 齢の歯、また二つ落ちた。老耄 見る影もない。いいのだ。五体に、観て欲しい見せたいなにが無くても、命は意志として働いている。しょせん無心とは縁 がない。おもひ という火の消えるまでは生きて行く。今日は歯医者の日。「付けやい歯」を入れる入れると医師は躍起に言うやろな。やれやれ。

* 水曜は江古田駅近辺で目当ての店は休店。で、気楽な馴染みのスタンドバーVIVOで、ウオツカを二杯、妻は赤ワインとコーヒー、キールロワイヤルは二人で分けた。
2019 6/5 211

* 神戸の岡田昌也さん、京。北山の純米とびきりの原酒「六友」を送って下さる。嬉しく。京都の桐山恵美子さん、大きなまん丸な賀茂茄子や唐辛子など妻が 大喜びの京野菜を送って下さる。ありがとう存じます。 神戸の信太周先生、稲庭饂飩をはるばる一箱送って下さる。いつもいつも有難う御座います。
今日は、日曜日。手紙は来ない。
2019 6/9 211

* 熊本菊池郡の武田昌憲さん、西瓜かと見まがう特大の甘いメロンを二つも送ってきて下さった。びっくり、そして嬉しく感謝。
和歌山・御坊の井領祥夫さん、ご支援を下さり有難う存じます。
2019 6/12 211

* 村上開新堂主人山本さん、お手紙とクッキーびっしりの缶を送って下さる。感謝。
湘南の橋本静一・美代子ご夫妻、銀座千疋屋の涼菓、ずっしりと送り届けて下さる。感謝。
2019 6/13 211

* 京、古門前の「おっ師匠はん」からの電話を、しばし楽しんだ。縄手「舟和」の茶漬け鰻を送ってくれる気らしい。酒の肴にも絶好。いまのうちに、ありがとうと。
2019 6/14 211

* 四国の大成繁さん、美味しい讃岐うどんのセットをたくさん送ってきて下さる。感謝。
2019 6/15 211

* 新座市の詩人田中真由美さん、いつもの重厚な甘味「にいくら(新座)」を下さる。一つを四つに切った一片で十二分に美味しい菓子。感謝。

* なぜか喉もとが灼けるよう。そして、ともすると寝入っている。もう夕方、六時過ぎている。夕食、茶碗蒸しを二椀。それと高野豆腐と干瓢とを少しだけしか食べられなかった。
録画してあった「刑事フォイル」の、優秀なりに暗澹たる戦後英国の国際事情や犯罪に気が滅入った。と言って「寅さん」のようでばっかりも戴けない。
2019 6/16 211

* 小滝英史さん、銘柄のお酒二種下さる。感謝。
2019 6/18 211

* その山形の芦野又三さんから、もう何十年来、桜桃忌の耀くような「桜桃」がたくさん贈られてきた。有難う存じます。

* 桜桃での祝杯には、吉備の人に頂戴したとっておきの名酒「獺祭」二升の一升瓶を明けた。じつにうまい。
わたしが『獺祭』を称えるのは、何といっても、「純米」山田錦の「磨き」が「三割九分」という、とほうもない超精米であること、むろん醸造用アルコール での「味付け」を全くしない「大吟醸」であること。むかし、子供心にも大人が、特級酒、一級、二級酒という云い方をしていたのを聞き覚えてきたが、『獺 祭』は「超特急の吟醸」なのである。むろんほかにも多くこのような純米大吟醸酒がある。日本酒は、醸造用アルコールという混ぜモノをしない限り、世界に誇 れる超級の清酒であり精酒である。
記念の桜桃忌に獺祭で山形の桜桃が戴けたとは、最高! です。
この勢いで新作の長編を突貫したい。
2019 6/19 211

* 盛大に拍手を送っておいて、日比谷へまわり、おきまりの賽ころステーキと蝸牛などを食してきた。18年もののシーバスリーガルが美味くて、ダブルで幾 つか呑んだが、けろりと酔いもしなかった。帰宅は十一時になり、玄関で「アコ」「マコ」待ちわびていた。生きた命が家に在る嬉しさと頼もしさを感じる。
2019 6/19 211

* 仙台の遠藤恵子さん、眼のさめる見事な大玉の桜桃二箱を美しく詰め合わせ、送って下さった。桜桃は、美しくて甘い桜桃は、この時季、とりわけ身に沁み嬉しい。ありがとう。
2019 6/22 211

* 藤森佐貴子さんお心入れのあでやかに多彩な「吹き寄せ」干菓子の缶も好きなお茶にまことに快く美味しい。亡き島津先生の『源氏物語放談』には、日ごろお世話になりつづけです。
2019 6/22 211

* 桜桃忌を祝って歌舞伎座で妻が買ってくれた「和三盆」で旨い新茶を戴こう、わたしはお茶で眠れなくなるということは昔から、ない。
2019 6/22 211

* 深澤晴美さん ありがたい美酒を二種 送って下さる。感謝。
2019 6/24 211

* 遠藤恵子さんからの桜桃、至福、耀くように美味しくいただいた。
2019 6/25 211

* 台風は直には感じないで過ぎたが、暑いなあ。それでも戴いた「大和櫻」を階下へ降りるつと、文字どおりに猪口 猪口とやっている。
2019 6/28 211

* おそい朝食に 「卯時酒」ならぬ京の「五建ういろう」特製「小豆みなづき」を戴いて七月を迎えた。
すこし足し加えたい用を思いついたので、今日も落ち着いていられない。

* 一気に用を足した。

* ペンの堀武昭さん、ホテルオークラの涼菓を、箱根のテルさん、両 屋是清の和菓子を、京の橋染織家橋田有子さん吟味の塩昆布を送って下さる。ありがとう存じます。
塩昆布で美味しく、午、お酒が味わえた。良い塩昆布は実に美味い。
2019 7/1 212

* 中・高同窓の京の横井千恵子さんから、京の漬け物をいろいろに送ってもらった。
横井さんとは近所で無二の仲良しだった、内田豊子さんは亡くなっている。西村肇君も、三好閏三君も田中勉君も、亡くなった。大学の重森ゲーテも早くに。
死なれてしまった人たちのことが、しげしげと思い出される。
今日出来てきた本の長編小説も、割り切って謂えば、「死なれて 死なせて」というわたしの本の主旨を物語化したとすらいえようか。
今度の本の口絵には 表にも裏にも色の写真をしっかり入れた。「湖の本 第一部」で、老人のエッチな噺と先を予測し尻込みされた読者が、これら口絵写真を見たら、あれれれ、どんな噺かと驚かれるだろう。
2019 7/2 212

* 最後にとっておきの名酒「獺祭」を一升瓶のママ、唐津のグイ呑みについて、今宵は心底落ち着いた。あれやこれやを難しく踏み越え踏み越えして、今日明日を送りつ迎えつするしかない。うまい酒には、恍惚、励まされる。飲み過ぎだけはかなり厳格に気を付けてる氣ですが。
2019 7/4 212

* 昨日 ペン理事の同僚だった長田渚佐さん、最新で広告されている缶ビールをたくさん下さった。昨今は 妻もピールはやや好むようになり、有り難いことです。
今朝は、元朝日の、「湖の本」生みの親とも感謝している伊藤壮さんから「越乃寒梅」二升、上越市の光明寺さんからも「越乃寒梅」一升 頂戴。 感謝し、白楽天に聴く。
日入多不食 日入りて多く食らはず
有時唯命觴 時有りて唯だ觴(酒杯)を命ず
何以送閑夜    何を以て閑夜を送らん
一曲秋霓裳    一曲 秋の霓裳

* 小松市の八代啓子さん 金沢の名菓、美味しさで聞こえた涼しやかな「葛切り」を送って下さる。好きなお茶が美味しくなる。有難う存じます。
2019 7/5 212

☆ 藤原龍一郎さん、過分のご支援戴く。篠崎功さん、本間久雄さん有り難いご支援戴く。

☆ 小中陽太郎さん、杉本利男さん、ご挨拶を戴く。東大大学院、三田文学、山梨県立文学館、受領の来信。
2019 7/5 212

* しばらくぶりに外出して、マオタイも身に沁みて ほっこりしてしまったよう。十時になる。
2019 7/5 212

* 久間十義さんから京の粕漬けを、中野完二さんから銘酒「やまと櫻」を、森野公之さんには吉富の雲竜と銘茶を、八坂中の昔の万年先生からは小倉山煎餅の大函を頂戴した。ありがとう存じます。
2019 7/9 212

* 沖縄の名嘉みゆきさん、香川の星合美弥子さん、さいたま市の出田興生さん、三鷹市の唐澤篤男さん、選集31に過分のご支援を下さる。深く熱く感謝。
東村山市の近藤聰さん、カステラに加えて銘酒「東村山」一升送って下さる。感謝。
京・山科の馬場俊明さん、口に合いそうな品を高島屋から送りますというお手紙に添えて、竹久夢二の絵葉書、小磯良平の「D嬢の像」(1962)を下さる。いかにもいかにもいかにも小磯良平の繪浸く示威把握と表現で、これは妻の手からわたしが巻き上げてきた。
2019 7/10 212

* 元・岩波「世界」で『最上徳内 北の時代』を書かせてもらった高本邦彦さんから夕張メロンの超大二顆を戴いた。夏には冷えたメロンがすてきに美味しい。感謝感謝。
2019 7/11 212

☆ 秦 恒平選集三十巻ありがとうございました。
読ませていただき、これからお手紙を、と思っておりましたら三一巻 拝受いたしました。
まずは、三十巻のお礼を申しあげます。
藝術についての論考に あらためて 沢山のことを教えていただきました。
「おくのほそみち」を読んでおりました折、
芭蕉の感動している歌が 実は西行のものでないという解説に なんだか興ざめしてしまった記憶が 私の中にありました。
今回 先生の
「芭蕉の思ったような西行の漂泊であったとは限らない、…芭蕉の『言葉』に生きた西行の像は 虚像のままに或る歴史を積極的に実現した精神そのもの……」
に、 そうなのだと嬉しくなりました。
藝術が 時代の流れと共に変容してゆく様子を目のあたりにしています。

「黒田清輝の繪に古びが見えるのに較べ、淺井忠の方が日本の四季と交流した抒情故に、絵画としての真価を顕わしている」
という御指摘に京都で学ぶことのできた喜びをかみしめています。「知性の深い参加に負うてきた美術」の意味について 淺井忠の試みた意匠の数々が語っているような気がします  子規が写生の裏側に隠した「こころだくみ(=趣向)」が見えてくるような…
東京で小説に取り組んでいた一葉と、京都で繪を描いていた松園が同時代人だったとは驚きです。一葉は昔の人、松園さんは今日につながる上村家のお人…… 太宰治や井上靖「猟銃」「通夜の客」のヒロインつながりなから、手のある人、手に技を持つ女の凛とした強さが私の憧れでした。
「画は漢字であれ、かなであれ、線の藝術を成してきてそれへの尊敬や崇拝がおのずから。画中の線精神を振起してきたという歴史がある」
を読ませていただき、かつて(大学へ=)教えにこられていたコレクターのハリー・パッカードさんが 日本画家の下絵がすごい、あの線を手に入れたい、売ってくれないと歎いていたことを想いだしました。
石川九楊さんが、「西洋の音楽が日本の書である」と語るとき、アルファベットは音で、漢字は身ぶりと思えてきます。
四月からイタリア語を習いはじめました。
勘三郎さんのいなくなった歌舞伎はなんとも淋しく 賑やかなイタリアオペラにずいぶん慰められました。
「白石とシドッチとは深い敬意をわかちあい… 初の克明な西洋事情と地理的情報とを記録したこの『奇会』に恵まれねば、蘭学も洋学も、また開国も よほど遅れたであろう、シドッチ神父へのわれわれの感謝はこれまで薄きに失しているように思われてならない」
先生の小説に書かれた大好きなシドッチさんに近づけるような気がして 遅々として進まない語学学習を楽しんでおります。書くことより 読んで学ぶことの方が面白いです。
「文様記」について考えていたときは、持統天皇が憑依して人格が変わるようでした、怖いです。
三一巻をゆっくり読ませていただける夏休みまで、もう一息頑張ろうと思います。
天候不順な折でございます
くれぐれもお身体大切におすごし下さいますように   京   羽生清  美大教授 意匠研究家

* 俵屋吉富の京の名菓いろいろを送って下さった。いつもながら懇切なご愛読に、深く感謝。

* 村上開新堂社主山本さんからは、季節の美味しい洋生菓子を頂戴。感謝。
2019 7/12 212

* まるで出歩かないので、いつのまにか財布がカラ同然。明日から土、日。ちょっと出歩く気になったが、電動自転車で久々に走ってみるか。何か食べたい か。食べたい何も無い。南座わき松葉屋の鰊蕎麦がふっと恋しい。食べる気も食べたい物もないので、今度の長編ではたくさん「爺さん」に食べ歩かせた。京で の昔はわたしは余分なお金はまるで持てなくて、妻とのデートもひたすら「歩き」とせいぜいラーメンだった。小説では、わたしの行ったこともない佳い店で、 「爺さん」よく食べに食べていた。懐郷の思いが能く利いた。
東京では、むかしは寿司の「きよ田」がわたしたち最高の佳い贅沢だった。辻邦生がはじめ連れて行ってくれた。大きなパーティ会場から、小学館の会長に誘 われ二人で出向いたことも、御茶ノ水大入学祝いに朝日子に御馳走してやったことあった。井上靖、山本健吉等々で静かに賑わう超特級の寿司店であったが、店 主が病気で亡くなってしまった。わたしが沢口靖子が贔屓と知るやたちまちに会社に掛け合って畳半畳大の写真や献辞入り署名の額写真などを幾つももせしめて くれたのが、今この部屋にも、「靖子ロード」と称している二階廊下にも、デーンと懸かっている。
この「きよ田」代替わりの店が同じ場所で開いているとちらと耳にしている。「きよ田」初代は伝説的にしられた名人で、わたしたちが仲良しだったのは、二代目。
美味いいい寿司が食べたくなった。
「きよ田」のほかではやはり小学館会長に連れて貰った銀座の「すし幸」、気楽にとまり木でというなら たまたまとびこんだ東京駅構内で、沼津から店を出していた店でよく喰いよく飲んだ。懐かしい。まだその店、あるかなあ。懐かしい、が、さて食欲が湧かないのが情けない。
2019 7/12 212

* 京・古門前の大益(林)貞子、口寂しく糖分の欲しいときに恰好の、鍵善良房・和三盆、小粒の「おちょま」や、老舗の水羊羹を送ってきてくれた。
敗戦後の小学校で同学年。秦の叔母宗陽が、ひそかにわたしの嫁にと先の親へ声を掛けていたとは、近年になって当人から聞いた。ありそうなことだったと、 驚きながら聞いた。事実は舞踊仲間で同性の先輩と「結婚」した。幸せそうと聞いていた。いまは独りになり、いまでも舞踊の弟子を指導していると。元気がな によりです。佳い京菓子、心入れ、ありがとう。
2019 7/13 212

* 昨日おそく、 京・山科の馬場俊明さんから、すばらしいワイン「LEROY」を頂戴した。『清水坂(仮題)』への励み、脱稿成ったなら、高々と乾杯させていただこう、有難う御座いました。

* 神戸の岡田昌也さん、大好きな美しい大きな桃をたくさん下さった。夏むきには、果実の潤いが言いしれず嬉しい。ありがとう御座います。
2019 7/14 212

* 夕食に、桃、すこぶる美味。

* 七時 ショパンを聴いている。腰が痛む。

* また桃を戴いて。十時前。横になりたい。
2019 7/14 212

 

* 元・筑摩書房の、いまも親しくしている編集者の日比幸一さん、美しく大きな桃をずしっと送って来て下さった。感謝。
2019 7/18 212

 

* 古門前の大益「お師匠はん」の送ってくれる京祇園の小粒の砂糖菓子「おちょま」は、まえは「おちょぼ」と謂った。
「おちょぼ」という語は、祇園町に接して育ったわたしには、御茶屋に働く少女らへいささかわるくちめく投げことばだったし、それゆえ改名したのだろうか、
「おちょまとは何ぞや。長松の愛称なり。長松とは誰ぞや。乞ふ、文楽の寺子屋の涎くりを想ひ出し給へ」と、店主売り出しの挨拶が付いている。あの大柄で洟 垂れの涎繰りにしては、小粒で愛らしい白無垢和三盆の頭には、美しい紅一点が点じてあって、「おちょぼ」の俤をしっかり伝えている。
そしてこれが、小粒なりにまことに美味い。甘い。ほっと疲れたときに何とも謂えず口に含むのが嬉しい。
菓子の木筺には、白紙の 上へ「そ」の一字 下に「大益」と苗字 墨で自筆の札が載っていて、むろん、「そ」は 粗品の、あるいは素志の意と読める。 ああ、京都やと 懐かしい。
2019 7/20 212

* 福田恆存先生の奥様から沢山な夏菓子を頂戴した。わたくしからお見舞いもしませんのに、恐れ入ります。「湖の本」に、福田先生もあの永井龍男先生も大勢の 継続読者をご紹介いただいた。わたくしの厚かましいような孤軍奮闘を面白くも御覧いただいたのかと想い、お懐かしい。福田先生にお目に掛かったのは先生演 出の「ハムレット」を三百人劇場へ夫婦で観にいったたったの一度だが、ご挨拶すると「ああ、想ってたようなお人だ」と仰有った。奥様には、いまも「湖の 本」をご購読頂いている。我ながらビックリし感謝申し上げている。
2019 7/21 212

* 建日子が岐阜の土産に持参のしぼりたての酒に美味く酔った。建日子が心ゆく仕事で満ちたり、元気でいて欲しいと願うばかり。
朝日子が和装の最近らしい写真を機械の中で建日子が見つけたらしく、母と息子で驚嘆していた。わたしは見ていない。
2019 7/21 212

* 建日子が岐阜の土産に持参のしぼりたての酒に美味く酔った。建日子が心ゆく仕事で満ちたり、元気でいて欲しいと願うばかり。
朝日子が和装の最近らしい写真を機械の中で建日子が見つけたらしく、母と息子で驚嘆していた。わたしは見ていない。
2019 7/21 212

* 土佐の出の女性読者、東京へ転勤して、以来何十年、連れてのぼった一人のボクちゃんが、今は父親に成っているという。時の流れの強かさよ。
この人、土佐の産、猛烈と謂いたい美味さのお酒に添え、珍しい食べ物や飲み物をいろいろ送って下さった。ほくほくと頂戴している。
戦中戦後を極く貧しく育ったわたしは、免れようないいやしんぼうで、口に入るものを頂くと恥ずかしいほど嬉しい。感謝 という他の言葉がない。
十歳の疎開先山国で敗戦、十五歳で祇園石段下の新制中学を生徒会長で卆えた。二度とイヤという思いと、いっそあの時代へもう一度とも思う。それほど、今の日本の政治は危なくて、嫌い。安倍政権は嫌い。危ない危ない。若い人たちよ、眼をしかと開いてくれ。
2019 7/28 212

 

* 昨日もらった胡子文子さんの土佐のお酒、あまりうまくて、例になく五合瓶を半日で空けてしまった。日々の白楽天の、酒好きに見習っている感じ。
2019 7/29 212

* 吉備の人、有元毅さん、見事に美しいマスカットと桃とを送ってきて下さった。真っ先に、とびきりの眼福を喜ぶ。ありがとう存じます。お寂しい日々でしょうかと、いつも、心より穏和な毎日を遙かに願っております。
2019 7/30 212

* 朝 いちばんに、豊中の松村さんより、めづらかな、丹波西山 純米大吟醸稀有の「小鼓」一瓶を贈られ、欣喜、にっこり。感謝感謝。
もう同志社美学での友人は、妻と同期の松村美沙さんただ一人になってしまった。(女優の原知佐子は、一年余で日活ニューフェイスで翔び去った。)
元気でいて欲しいと 切に願う。
だれもだれも、もう わたしより先に逝ってはならない。
2019 8/1 213

* 岩手・八幡平の歌人伊藤幸子さん、「鷲の尾」という珍しいお酒一升を下さる。さっそく戴く。
2019 8/5 213

* 愛知の久米さんから、立派な葡萄のいろいろを戴いた。歯の利かないわたしにも葡萄は有り難い果物です。感謝感謝。
所沢の藤森佐貴子さんからはお洒落な焼き菓子を戴いた。歯に優しく、わたくしの有り難い「主食」になってもらえる。有難う存じます。
2019 8/7 213

* 美味そうに食べますねと、小説のなかでのハナシだが、「秘色」「みごもりの湖」などの昔からよく羨ましがられた。こんどの『オイノ・セクスアリス 或 る寓話』でも、贅沢にとは思わないけれど、実に多彩に美味い店で美味い食事を楽しみ続けた。京都だから出来たし書けたし楽しめた。京恋しさ懐かしさをそれ でよほど慰めていた。わたしは、ひもじく育ったので、食べたい人のまま大人になり老人にもなったが、掌をひっくり返したように癌で胃全摘の以降は、もう七 年半になるのに、地を払ったように食べられなくなった。食べてはいけないなど云われていないが、食欲が文字どおりに払底してしまった。ただ思い出は生きて いる。うれしいほどフンダンに生きている。京都時代に美食など出来なかったが、勤めをもち、また作家生活に入っての帰京の機会はまさに食べる機会であった なあと思い出す。

* 六十年も暮らしているのに、東京はあまりに貧相にしか知らない、もう二十年、寿司の「きよ田」が無くなってからは、あまりに平凡に帝国ホテルで、その クラブで、しか贅沢はしていない。佳い店を識らないのである。昔の編集者は、ただただ飲ませる店へ連れてくれたが、編集者の趣味は概して味気なかった。 「きよ田」は抜群に好かった。
2019 8/9 213

* 篠崎仁さん、梨をたくさん下さる。歯をいたわり、ジュースにして美味しく頂ける。有難う存じます。
2019 8/14 213

* 八月三部制の一部だけに。

中村七之助「御殿」の政岡は美しくはあったし大きく伸び上がり行く可能性はありあり見えたものの、声、科白、所作、情感、やっと五十点としか漬けられない 硬さであった。それでも「ままたき」をふくめ大歌舞伎であり可憐な子役の働きに目をみはる嶮しい舞台であり、観劇の満足感は購えた。幸四郎の八汐、怖いほ ど憎さげに、出色、こういう幸四郎も観られたかと藝のつかみぶりを喜んだが、仁木弾正は、いまだし。
玉三郎の政岡を二三度、藤十郎のも観ている。玉三郎によほど教わったと随所で見わけたが、教わっているうちはお手のものには成り得ない。玉三郎に並び、かつ七之助らしく超えてゆくまでわたしの身が保つか。いいやくしゃなのだが、まだ大人に成れていない。

* 二つめの所作事は、座頭格の幸四郎がはんなりと。若いきれいどころもワンサか出たが、ま、それだけのこと。

* 三笠会館の中華料理が今日はほとんど口に合わず食べ残して、紹興酒だけ。台風の風にも雨にもさいわい遭わず。
2019 8/15 213

* 朝 早々に中野完二さん、名酒「やまと櫻」を下さる。
2019 8/17 213

* 尾張の鳶、「松葉」の鰊蕎麦を送ってきて下さる。せびったか催促したかのようで申し訳ないが、鰊の妙味を味わいたい。感謝感謝。美味しいモノを頂くと 理屈抜きに嬉しがるというのは、これはもうあの「戦時」「戦後」少年の餓えていやしい尻尾の残りなのである。お金はその気があれば何とか稼げるにしても、 美味い物はかくべつということ。朝日子や建日子らには分かるまい。

☆ Re: Re: めったにない佳い(=大文字等の)写真でした、感謝。
京都からの写真、喜んでいただけて幸いでした。
発送が済んで一息、「清水坂」の難所に集中される頃でしょうか。
八月も下旬に入り、確実に少しづつですが暑さが和らいできました。大気が不安定とか、昨夜はかなり強い雨で、今も部屋は薄暗い。
昨日珍しく街に出て友人と何時間も話し、帰途に松葉の鰊蕎麦をクール便で送りました。お店で食べるものとどれ程違いがあるかは分かりませんが、どうぞ食してみてください。
神戸の詩の集まりに一年ぶりくらいで参加しました。あまりのご無沙汰でしたが。先の京都アニメの事件に対して世界から20億円ほど寄付が集まり、多くの人が献花に訪れ、アニメの影響力の大きさを再確認しましたが、
同時に詩の影響力のあまりの微小を痛感しています。
それは詩に限らず文学一般にまで言えることでもありますが、言葉の持つ力を弱めてはいけない、言葉の美しさを喪ってはいけないと強く思います。
身辺、多くの事があり、対処しきれないとつい悲観的に感じますが、何とか過ごしています。元気に過ごしています。
器械の不調、いくらかでも回復しますように。やはり根本的に状況を改善しなければならないのでしょうか。
くれぐれもお身体大切に、大切に。
夏の終わりは殊に留意されますように。   尾張の鳶

* ありがとう。
2019 8/23 213

* 東村山の写真家、近藤聰さん、地元の地酒一升と食事になるたっぷりのカステラとを朝一番に頂戴した。有難う存じます。
2019 8/25 213

* 「松葉」の鰊蕎麦も、最高級というカステラも。銘酒も、有り難く戴いています。京都にいた子供のむかし「鰊」などに口趣味は全くなかったのに、東京で 数十年暮らすうちに「松葉の鰊蕎麦」がめっちゃ好きに成っていた。寿司の「和加奈」がわたしのためにと、酢出前を注文するのに添え、ときどき鯛の「兜煮」 を奢ってくれる。有り難いことです。
2019 8/25 213

* 正午前には、病院へ出かける。幾分でもいい外出でありますように。

* 散々の街歩きだった。何を食したいとも食するともなく、歯が痛んで、ビールを少し呑んだだけで食べ物は只払いだけで帰ってきた。どこかへ落ち着いて原稿をユックリ読み返すことも出来ないまま、五時に帰宅。不愉快の極のまま帰ってきた。生きた心地もしないとは、これか。
2019 8/26 213

* 石川・能美の井口哲郎先生 金澤名菓「落雁」の老舗「諸江屋」から、弱い歯にも優しい「なま落雁」を送って来てくださった。甘味は、浮き沈みのはげしいわた しの心労をおいしく宥め励ましてくれる。有難う存じます。甲子園の優勝旗に惜しくも届かなかったお見舞いを申し上げるべきが先だったのに。
有難う存じます。
2019 8/27 213

* 神奈川・二宮の高城由美子さんからお心入れのお手紙に添って、大きな、香りよく素晴らしい梨をたくさん頂戴した。有難う存じます。
2019 8/28 213

* 朝いちばんに、さいたま市の吉田宗由(茶人)さん、ブルーベリーのジャム三瓶を下さる。視力への労りと想われて有り難く。
2019 8/29 213

* 井口さんお心入れで頂戴した、金澤の、「方丈」と銘した落雁を上煎茶で口にしつつ、暑さ負けの不行儀なわが恰好、申しわけないと苦笑している。この暑さ、九月いっぱいも続くのかなあ。
2019 8/29 213

 

* 神奈川・川崎の近藤和枝さんから、りっぱな梨をたくさん頂戴した。感謝。この近藤さんは、「秦 恒平・湖(うみ)の本」の本、創刊一等最初の「継続契約読者」であった。あの感謝、忘れない。
2019 9/1 214

* 七時台の通勤電車の満員は昔のママで、新富町までの一時間強、ドアの隅に押し込まれ貼り付いていた。
諸検査を済ませてから結果の出るまで一時間余を「アラビアンナイト」ほ読みながら待って診察を受けた。
諸臓器等の検査結果は宜しく、触診聴診も受けて問題なく、腰の痛みはあるが背骨はしっかりしていると。また半年後に受診と。
腫瘍内科まで副院長の林田先生がわざわざ尋ねて見え、ハグして仲よく久闊を叙した。
投薬などなにも無く、十一時前。
さてどうするかと築地の街中で茫然と立ちん坊のあげく、麹町の中華「登龍」へと思いつ新富町駅へ入ってきた地下鉄が、直通の「保谷」行き。麹町で降りそ びれ、しかし流石に空腹で、池袋西武地下の美味くない寿司を少し摘んで、正一合の「菊正」を。妻の夕飯用にと「聘珍樓」の折り詰めを買って帰った。
真夏のカンカン照りという暑さ、タクシーへ逃げ込んで帰宅。友人 原知佐子(女優)のハガキが来ていた。
2019 9/6 214

* 妻は中華料理を温めて夕食にし、わたしは少し酒を飲んだ。
2019 9/6 214

* 仙台の遠藤恵子さん、名品の色蒲鉾を二重ね、送って下さる。学長職は退かれても大学の先生としても活動されていよう。今少し近くで親しく出会えれば、昔々の医学書院同僚のよしみで、いまいまの女性学のことなど具体的におそわり啓発して貰えるだろうに。
さきの長編でわたしは若い女性を書き損ねたろうか。あるいは老い男の性と生の表現を間違えてたろうか。
2019 9/7 214

* 村上開新堂の社主より、「頬のとろける」が誇張でない美味しい季節の「杏菓子」を、たくさん頂戴した。珈琲にも紅茶にも佳いワインにも、ぴたり合う。感謝感謝。

☆ ごぶさたしております。
先生の御選集に加え「湖の本」145・146を頂戴しながら御礼も申し上げず過ぎましたこと お詫び申し上げます
七月-九月一杯は生菓子をお休みいたしますので、私の朝一番の菓子の仕事もお休みです。その間は杏のお菓子になります こうした ゆとりのある季節です が「暇があるから」という思いに却って力んでしまい「あれもこれもしたい」と気が急くのです。 こうした愚かさを書き連ねて 先生のお目を煩わし恐縮です
今月一杯の杏のお菓子をもう一度お送りしたいと思いましたら つい筆が滑りました。
台風の残していった猛暑 どうぞ
御身ご大切にお過ごし下さい       道
2019 9/11 214

* 食、あい変わらず進まず。今日は酒もいまひとつ味わい薄く。
食後、火野正平自転車の「こころ旅」の風景をしみじみ快く楽しむ。いい番組だ。
大きな駅構内に置いたピアノを、好き勝手にいろんな人が手慣れた曲を弾いてゆく「写真」も、楽しめる。
2019 9/11 214

* 昼下がり、市の小さいバスで保谷駅へ出、銀行から「ラ・マンチャの男」への支払い送金し、またすでに大きく欠損の出ている「湖の本」入出金郵便通帳へ当面の補充分を用意した。
地下鉄で銀座松屋へ、弱り気味老夫婦の鰻での昼食をホンの少し。わたしは蒲焼きでお酒少々。
2019 9/12 214

* 九時に引けて、即、クルマで久しぶりに日比谷の「クラブ」へ落ち着いた。みな、歓迎してくれた。
例によってサイコロ・テーキと蝸牛、コーヒーとアイスクリーム。
わたしは少し残してあったブランデーの瓶をあけ、口を切った18年のシーバス・リーガルでも少し楽しんだ。
妻は出かけの時よりむしろやや元気、わたしは疲労でややユラついていたので、帰りは日比谷から家まで車を使った。
悪食で体調を損じていた黒いマコも、お兄ちゃんのアコとの留守番のうちに元気回復していて、これは何よりの安堵だったが、さすがに妻は長途の車が堪えて疲労、みな、なにもしないで床についた。
ま、だんだんこういう外出も、身に堪えて控えめになって行くだろう。
2019 9/12 214

* 夕食はすすまなかった。ワインとR1とをまぜて呑み、鎌倉の橋本美代子さんに頂戴した絶好の葡萄ピオーネを妻に皮をむいて貰い五つ粒美味しく食べた。大方の食物は、糸蒟蒻や煮椎茸でさえ歯が痛んで噛めないのである。
水曜は生協の配達日で、日本酒の届くのを、日本の内ほぼ一本飲み干した。
2019 9/18 214

* 歌舞伎座の売店で妻の買ってくれた「和三盆」の一函を、仕事の間い間いに楽しんでいたのがのこり少なくなってきた。純良の砂糖は他に替えがたく甘(うま)い。和尚が隠し小僧がぬすむ気持ち可笑しくわかる。
2019 9/18 214

* 少しやすんでいたが、ふとまくら元の「大和物語の人物」の「右近」を読みだしたら面白くて読み終えた。
そのまま夕食へ、出汁味の良く利いた汁に卵二個を溶いた一杯だけで済ます。
2019 9/19 214

* 金澤の金田小夜子さん、例年の、それはみごとに美しい「ルビー・ロマン」一房を送って下さった。もう怪我は良くなられたろうか。予後をお大事に願う。
2019 9/20 214

* 冷えると、朝から思っていたが。五時過ぎて、暑い。
食は細く、汁しか呑めない。
入浴。目を洗い洗い、「千夜一夜物語」を二夜三夜分、 『アンナ・カレーニナ』 出産後のアンナの部屋へブロンスキイがとびこんで来るところを読んで気分を換えた。
2019 9/20 214

* 二時間余睡る。眠りを誘うのに、ホメロス「イリアス」を第三編の前まで、「アンナ・カレーニナ」のレーヴィン、キチイのめでたい嬉しい結婚式までを、読んで。
大相撲、乱戦を楽しむ気はなく。
疲れと歯の痛みとで食べられる物もなく、やはり出汁を利かして溶いたた卵汁に味付けした麩を浮かして。歯医者へ行きたいが、その前に長編、可能なかぎり結びかその直前まで運びたいの、だが集中できない。
いまは、誰の作と知れない、むかしむかし人に貰ったのだろう、テープのピアノ曲を聴いている。昨晩の圓生「三十石」は楽しかった。「妾馬」を聴こうかな、たまたま他に芝居話の「淀五郎」「猫忠」などが手近にあるが、笑いたい。
2019 9/21 214

* 群馬・玉村の都澤ちづ子さん、名産の葡萄をどっさり送ってきて下さった。ありがとう存じます。
2019 9/22 214

* 結局、晩も卵二個を溶いた出汁スープだけしか口に入らなかった。明朝の体重、一段と下がってしまいそう。
2019 9/23 214

* 久しぶり 本当に久しぶりに「食事」でき、酒も飲め、食後の二時間を熟睡できた。ともあれ、やれやれ。これで、眼がよく見えてくれればと願うのだが。
2019 9/25 214

* 朝食は、大粒の葡萄を六つ七つ、それだけ。煎茶を二煎。また二階へ。九時前。今朝は袖無しでは肌寒い。両の掌は、もう久しく、胃全摘以降、抗癌剤以 降、びりびり音がしそうに痺れつづけている。メール、来ない。メール、書かない。フルート曲を鳴らしたまま推敲しつづけている。
この新しい長編、名作でも秀作でもないが、何がこれを私に書かせるのだろう。何かしら喪ったもののあるのを取り返そうとしているのか、死ぬより先に。
2019 9/26 214

* 結局、眠らなかった。夕食には錦糸卵で蕎麦を半人前の半分ほど食し、入浴して「アンナ・カレーニナ」のレーヴィン新妻のキチイが、病み衰えた夫の兄の 病牀をまこと賢く優しく見舞いたすけるのに感嘆した。作者のここで命や病や死生にかかわって述べている高次の「批評」が胸によく届いた。ますますキチイが 好きになった。
ホメロスの神々も介入の戦闘は、殺伐。ソクラテスは「国家」の弁論でホメロスを高くは見ていない。なにしろ克明を極めている。そこへ行くとシャーラザッドの物語りは洒落ていて面白い。
2019 9/26 214

* 歯科のあと、江古田の「中華家族」で久しぶりにマオタイを。しかしもう手に入らないという。そうだろうと思う。時計・眼鏡のナガノで用を足し、七時過ぎには帰宅。
2019 9/27 214

* 箱入りのようなあまり美味くない純米一升酒をセイムスで買ってきたのが、瓶と違い中の減りぐあい見えず、一日で、五合見当飲んでしまっているらしい。一日、二、三合におさえねば。
2019 10/15 215

 

* 吉備の人、超特級「雄町」の純米大吟醸酒を下さる。なんたる口福。御礼申します。有難う存じます。

* 京の羽生清さん、京の和菓子をたっぷり添えて、お手紙を下さる。篤く感謝。
2019 10/16 215

* 朝。ほとんど食べていず、診察が終わり、院外薬局で処方薬等々を手に入れた時は三時半。食をもとめて銀座をうろついたが、時間も時間でまともな店は休 んでいて、鳩居堂へ寄ったり万葉洞へ寄ったり、眼鏡の紐を買い替えたりしながら、西武で食べ物を買って帰ったものの、不味いもので話しにならず、要するに 酒だけを飲んで、機械の前へ来たという次第。こんなことでは体力・体重は失せて行く一方。
2019 10/23 215

☆ 秦 恒平様
たいへんな雨でございましたが お障りなくいらっしゃいますことを念じております。
異常気象が今後常態になっていくのかもしれないと思いますと おそろしゅうございます。
御身 くれぐれも御大切に   村上開新堂  山本道子

* 食の進まぬ私には、一枚一枚の特別なクッキーが美味しい栄養源になってくれます。有難う存じます。日々お元気に、ますます佳いお菓子を創ってくださいますように。
2019 10/27 215

* 「清水坂」を上げたあと一世に色んな仕事に手を付けたので、ズシーンと腹に一発拳固を食ったようにしんどい。なんとか、脂濃い食べ物も口に入れてい る。いまいちばん食べやすいのは、いい出汁でこっくり似た「麩」です。いっとう食べて歯にも腹にも抵抗なく、味よう口に合う。こどものよう。
2019 10/28 215

☆ 西条の干柿
ほんの少しだけ、お口にあえば 幸いに存じます。
選集も いよいよ千秋楽近く、 何卒
お体 ご大切に、よき日をお迎えになられますよう、 念じ上げております。
十月三十一日                神戸   岡田昌也

* 文字通り、頬の落ちそうにとろーうっと甘くて美味しい手づくりの干し柿を今年も送って下さった。
妻と、さっそく一つずつ戴き いいお茶とともにしみじみ賞味、身のふるえそうに佳い秋の味わいを、しみじみと。有難う御座いました。
2019 11/1 216

* 好きな店、佳い店、むろん飲食の店のことだが、移り変わりははげしく、こっちの身動きもママならない。根岸の柳町に日本めく洋食の「香美屋」があっ て、わざわざよく通ったが、もう、鶯谷駅からあそこまで歩くのはしんどいことだろう。鶯谷駅の改札外にあった蕎麦の「公望荘」は博物館などへの恰好の足場 だったのに、なくなっている。よく蕎麦で酒を飲んだ、上野公園との往きや帰りに。
浅草でのすき焼きももう何年も行かない、行けない。浅草はどうしても雑沓を歩かねばならない、人に突き当たったり当たられたりは剣呑で、距離もあり遠慮している。
浅草や上野で妻と何度も寄席に入っている。妙に侘びしく、けれど気の晴れる場所であだったが。
2019 11/7 216

* 昼すぎ、「マ・ア」のための買い物に行ったついでにウイスキーも買ってきた。さしたる量とも思わなかったが、ぐっすり寝入ってしまい、大相撲が中入りになっていた。
皇室のバレード様の行事もあったらしいが、それにはあまり関心がなかったものの、なにもかもおいて午后を寝入っていたとはビックリ。体調を損じていないか。
2019 11/10 216

* 「湖の本」148の初校を80頁ほど励んだ。晩飯を食わず、スコッチ「バレンチン」を生のママ呑んでいる。も少し美味いのを買うべきだったと思いつつ、もうボトルの、四分の三も呑んでいる。愉快酒とは云えぬ。不快酒。ま、愉快なことなど、もう、そうは有るものでない。
2019 11/12 216

* 三時過ぎ、独りで江古田の奥までの歯医者通い、出かける時既に疲れていて、四時半約束の時間ぴったりに着いた時は、ぐったり。医者は来るのかと案じてか、家へ電話していた。やれやれ。
年内に、下の入れ歯を大幅に造り替えるのだとか。やれやれ。
帰りのバスが遅く、待つまにさらにぐったり。空腹ではあったが食欲なく、それでも、どこでどう食べて帰ろうかと思いつつ、「ビボ」の前を通ったら顔なじみの店内から声が掛かって、通り過ぎるのもと、カウンターで例のウオツカをダブルで一杯。
立ち寄っていい食べ店が三軒ほど有りながら、魔が差したように行き当たりバッタリに慣れないラーメン屋に入ってしまい、ビールの中ナマも頼み、案の定、麺もビールも半分と消化できず、疲労困憊のママ、よろよろと江古田駅へ。幸い保谷行き各停が来てくれ、坐って行けた。
疲れを躱すにはわたしの場合、持っているゲラを読んで校正すること、その間は他事を忘れられる。七時には家につき、「剣客商売」 あまり面白くなく。やがて九時。大門未知子の失敗しない手術に励まされたい。
2019 11/14 216

* 石川・能美市の井口さん、素晴らしい、ごっつい、すり下ろして卵と溶いてなど食べる山芋を何キロもの大きさで送って下さった。食の進まない私に、これは噛むという歯の負担もなく、ご親切の賜物です。有難う存じます。さっそく戴きます。
こどもの頃、自然薯と呼んで母がすり下ろしていたのは細みの薩摩芋大であった気がする。井口さんに戴くのは一つ一つが黒い岩塊のように重く、大きな存在感。そして美味い。感謝。
2019 11/16 216

* どんなツラで過ごしているか、先日妻との歯医者帰りに江古田の肴の店へとび込んだ時の、比較的疲弊していない感じのを晒してみる。
食べないで、ただ酒を呑んだ。二合徳利を二度あけたかも。部屋ごと酔ったように写真があかい。
2019 11/16 216

* 朝の十時半頃に鰊蕎麦を一碗食して、その後は歌舞伎座会場前に珈琲とちっちゃいサンドイッチを三切れほど食べて、劇場でカップ酒一杯だけ。さすがに空 腹のまま、いつものクラブでの食事を楽しみに日比谷まで車に乗ったが、いぞホテルの前で妻は空腹でなく「食べない」と云い、ガッカリしてそのまま廻れ右で 銀座から地下鉄、西武で、飲まず食わずの空腹のママ帰ってきた。
歌舞伎座も大切りでつぶされ、期待の食事と酒も「食べ無いハナシ」になり、落胆と空腹、つまらぬ成り行きで終えた一日。帰った家でも、食べたいようなナニも無いまま、もう十一時半。
2019 11/18 216

* 下関の大庭緑さん 最上級のウニを二瓶、ういろうを大箱にたくさん、送って下さる。明日には生協毎週の日本酒がくるだろう。好きな美味い「うに」が楽しみ。
2019 11/19 216

* 赤間の「うに」でお酒がのめて、昼すぎ、気分良く一寝入りした。モーツアルトのフルート曲が終始こころよく。
2019 11/20 216

☆ 雲丹といふ赤間の浦のめでたきをかしこし酒に戴いてをる
2019 11/21 216

* 思いのほかの雨降りだった。
わたしは、活気が失せ、何もしていない。音楽も聴いていない。
高栄養・高蛋白をわたし自身が受け付けていないのだから、妻には気の毒。下関の美味い雲丹で、生協のお酒は身に沁みているけれど。
2019 11/22 216

* 朝一番から三時まで フル回転で発送作業をつづけ、歯医者へ。どういう次第やら実に簡単に今日はここまでと解放されたのが四時すこし過ぎ。帰っても食 い物はなし、どの見せも五時開店で、閉口。街へも出る気なく、保谷へ帰っても何もないので、江古田駅の界隈を仕方なくブラブラしていて、小さなタコ焼きの 店で、生まれて初めてタコ焼きなるモノをビールで。六つの二つをのこして、ようやく五時になったので、気に入り「魚功」のカウンターで、生牡蛎を八つ、一 合の酒で豪勢なほど多彩な刺身盛り合わせ、満腹し満足した。初めて家へ携帯電話した。ちっちゃい文字が見にくくて困る。
いまの西武線江古田駅は電車の便がよくなく、混んだ各駅停車であちこちで通過待ちしたり追い越されたり、ま、七時過ぎには帰宅し、すぐ発送作業を二時間余、継続。機械の前が冷え冷え。まだ明日一日では送り切れまい。温かく、寝入りたい。
2019 11/26 216

☆ 鴉に
鴉が、家の外で鳴いています。カーカーとは限らず、以前指摘されていたように、アーアーとも鳴いています。動物の鳴き声は人の耳には曖昧、いかようにも聞き取れる不思議なものです。

(鴉という字の音読みは、「あ」です。 鴉)

かなり温かく、美しい青空が続いた十一月が過ぎようとしています。早々と過ぎていきます。
トルコから帰って一カ月以上になるのに、いったい自分は何をしていたのだろうと思うほど。
半ばに再び関西に行き、奈良で友人に会い、彼女のリクエストで浄瑠璃寺、岩船寺を廻り、翌日大阪の仏像展と最終日の正倉院展へ。大阪市立博物館には山口 コレクション、田万コレクションなど中国仏像のコレクションがあり、戦前日本が大陸に勢威を伸ばした頃に蒐められたものでしょう。詳しい経緯は知りませ ん。が、圧倒されます。以前、写真撮影禁止の常設展示の静かな会場で、デッサンさせてもらったことがあります。デッサンといっても実物とは大いに異なりま すが、何年ぶりかの実物との再会に 一瞬 絶句するほどでした。まあそれはそれ、よりほっそり描けた姿はわたしの願望の顕れ・・でしょう。
信仰心薄いけれど、寺社や教会などに強く惹かれていく、情動にも似た思いは何だろうと常に思います。
27日
昨日のHPでは、「生まれて初めてタコ焼きなるものをビールで・・」とあり、食べている様子を想像して思わず微笑み、京都と大阪の食文化の違いを改めて 意識しました。(大阪では 90パ―セント以上の家庭にタコ焼き器と リプトンのプリン容器のガラスコップがあるそうです。)
その後で生牡蠣や刺身を楽しまれたご様子、良かった、いつも食べる楽しみが得られないと述べられていますから。
今日今頃は発送作業に精出していらっしゃる頃かと。時々休憩して無理されませんように。
トルコの旅で訪れたヒッタイトの遺跡を描いています。小さな画面ですがなかなか進みません。大小サイズ合わせて4枚ほど描きたい、その他の場所も描きたいものがあります。
用事ができて、ここでストップです。最近 鳶はあまりメールを書いていませんが 寛恕あれ。
インフルエンザの流行が早いと伝えられています、くれぐれもお身体大切に。  尾張の鳶

* 大阪の「タコ焼き」のはなしにはビックリした。わたしは、東京でも名高い「もんじゃ焼き」なるもの (一度東工大生らのそれに遭遇)には、ただオソレをなす。「お好み焼き」には一度二度出会ったが、ヘキエキした。昨夕の、ふらっと入った小店の「タコ焼 き」は、六つ出たのの四つ呑み込むのがやっとだった。何が「蛸」で何が「焼き」か、ゆるゆるの練り物を揚げたようで、ビールがなかったら「ごめんなさい」 と逃げ出したろう。とはいえ、入ってきた学生君は上智大の人で、今日、フランシスコ法皇の「おはなし」を聴いてきましたというのには、羨ましい想いをし た。そのかれは、「たこ焼き」を実に美味そうに食うので、これにも参った。店を替え、生牡蛎を八つと、多彩に美味い刺身の盛り合わせを喜んだのは、その直 後。久々に満腹したのだった。
2019 11/27 216

* 肩の荷は、ともあれ、おろしたが食は進まない、せっかくの妻の用意にもすこし箸を付ける程度で終えてしまう。空腹ということが無く、腹が、食べよと望まない。
2019 11/28 216

 

☆ 大東文化大日本文学会からも、受領そて今後とも刊行の際には引き続き送ってきて欲しい旨の来信有り、感謝。
妻の従弟 濱靖夫さんからも。

* 恩師、故・橋田二朗先生のお嬢さんから、京都の軽妙にさまざまな野菜を頂戴した。また中学高校の同窓、懐かしい横井千恵子さんからも京都の漬け物いろいろをタップリと頂戴した。
有難う存じます。
凸版印刷から、例年の、大きな繪で美しいカレンダーが届いた。感謝。
ご近所の大山さん、枝なりに蜜柑のたくさんついた二枝を戴く。一枝を、幸便に、玄関の飾りに板壁に掛けた。見映えしている。
2019 12/3 217

* 江古田「魚功」で、妻とたっぷり晩食が出来、帰宅。大門未知子「ドクターX」を観る。
2019 12/5 217

* 京・山科の馬場俊明さん、京老舗「永楽屋」の御馳走や名菓を下さる。感謝申します。
2019 12/7 217

 

「* 東村山の清酒「東村山」を写真家近藤聰さん、埼玉の銘菓「にいくら(新座)」を詩人田中真由美さん、京・祇園の愛らしい甘味「おちょま」を京・知恩院下の大益貞子さん、下さる。有り難く。
2019 12/8 217

☆ 石川・能美の井口哲郎さん、お正月のめでたい大福茶と名産の棒茶とを送って下さった。有難う存じます。
元・岩波書店「世界」の高本邦彦さん立派なお蜜柑を一箱送って下さった。有難う存じます。
弥栄中学時代の万年元雄先生、小倉山の名を冠した優しい吹き寄せのかき餅を大きな一缶送って下さる。お元気でしょうか。ありがとう存じます。
2019 12/9 217

* 今日は、私たちの求婚が成って、満62年の記念日。
国立劇場で、高麗屋父子らの歌舞伎芝居を楽しむ。白鸚の「近江源氏先陣館 盛綱陣屋」 幸四郎の「蝙蝠の安さん」。高麗屋お心入れの二列目角席、演技と真向かえる絶好席で十二分に心底楽しめた。感想は、明日に。幸四郎夫人とも夫婦それぞれに快く歓談、先月の幸四郎・染五郎父子上々出来の「連獅子」のことなど。午食は食道で、多彩な和食、たべきれなかった。

* 三宅坂から皇居に沿うて、日比谷公園越えにホテルに入り、クラブで安息。お祝いにと、シャンパン、美味いワインを振る舞われ、感謝。エスカルゴや、すこぶる美味のサーモンなどでスコッチを楽しむ。
日比谷から、タクシーで帰宅。「マ・ア」は大喜び。

* まる一日の外出でやはり疲れる。歯も傷む。ゆっくりやすみたい。実を云うと、昨夜中、右鼻から濃くてかなりの鼻血が出ておどろいた。
2019 12/10 217

* 昨日の国立劇場は、開幕、父白鸚(九代松本幸四郎)の「近江源氏先陣館 盛綱陣屋」で、しどころの多い見映えの作劇に可憐・聡明の子役高綱一子小太郎 の「先代萩」に匹敵の子方芝居があり、松本幸一郎君 みごとでした。いつも抜群の熊谷や松王丸をみせる白鸚にひしと嵌った盛綱は実に物静かに毅い知情意の 表現で耀いた。弥十郎の和田兵衛は、なにとしても左団次が懐かしい。楽善の北条時政も衰えが気の毒だった。盛綱、小太郎に匹敵して、出のところでオーっと 息を呑ませたのは盛綱母、小太郎祖母の微妙。ことに出のところで盛綱の願いを聴くところの文字通り微妙なのを美しく演じて観せた。注進の幸四郎が冴え冴え と若い武士の器量をみせ、猿弥の息吹藤太もまさにお手の物の嵌り役を楽しませた。魁春の高綱妻・小次郎母も、高麗蔵の盛綱妻も、ま、尋常。十分楽しめた、 一つには第二列、花道寄り中央角席は、文字通りの「芝居場」ぜっこえの観客席で、盛綱と息づかいも目配りもまるでこっちも共演しているほどの。観劇の醍醐 味を存分に御馳走になった。感謝します。

* 二階の食堂ですこし贅沢に昼食して。

* 次はあのチャブリンの名作「街の灯」を下敷きに脚色の、実に久々の再演「蝙蝠の安さん」を幸四郎がたいした戯態のたしかさで、不思議に胸へ来るいい喜 劇歌舞伎を創ってくれた。その意欲と意気込み通りの出来に、素直に讃辞を夫人に言い置いて来れた。一つには二列下手中より角席という席が嬉しかった。
十代幸四郎、襲名して颯爽と真摯に舞い踊り演じて、美しいいい役者でり。子の市川染五郎があの成長ぶりだもの、当然か。

* 十二分楽しんで、なんと、タクシーの拾えぬまま帝国ホテルまで日比谷公園を通り抜けて歩いたのには、夫婦して吃驚。
クラブで、満六十二年昔のプロポーズを、シャンペンと本場の赤ワインで祝ってもらい乾杯、食事もして、タクシーで帰宅。
ま、不足を言えば、肝心の新調下の入れ歯がハズしたら入らず、以前のを代用して済ませたことと、歯茎が痛く、ロキソニンを遣って凌ぐしかなかったこと、です。
2019 12/11 217

* 京都の「シグナレス」同人の森野公之さん、「俵屋吉富」軽妙の干菓子と銘酒「奥丹波」を下さる。懐かしい美味いお菓子、懐かしい美味いお酒です。
2019 12/11 217

* 10:15までに来るようにとの厳命と聞き、はやくに出たが早すぎるかと、江古田から40分の道を歩いて10時に歯科医院へ入った。また下前歯一本を 抜かれ、麻酔され、そのお蔭で新造の下前入れ歯がおさまった。昼前に解放された。いささかアタマに来て、江古田へ戻ると「中華家族」の酢豚で強烈なマオタ イとフェンチューをダブルで一杯ずつやり、帰ってきた。家でも日本酒を些か。
腰かけたまま寝入っていた。
2019 12/13 217

* 神戸の岡田昌也さん、みごとな山の芋を下さる。有難う存じます。
ペン委員会で同僚だった牧南恭子さん、虎屋の名菓を下さる。感謝。
2019 12/13 217

* 今治波方の木村年孝さん、愛媛特産のおおきな美味い蜜柑をどっさり送ってきて下さる。感謝。

* 東横短大の教室へ漫談に通った昔から、もう五十年近くも仲良しの吉原知子さん、広島県北のすまいから、地産の銘酒と想われる美味しそうな紅白ワインを 送って下さる。懐かしくも嬉しくも。愛らしい賢い学生だったが、今は地域を基盤に各種の活動にも励んでいると。最も早くから永く佳いおつきあいの読者の一 人。ありがとう。
2019 12/14 217

☆ 北越光明寺の黄色瑞華さん、とてもめずらかな杓付き「甕覗」の名酒を甕なり送って下さる。甕と杓と酒と。更級日記冒頭の説話がなつかしく思い出される。嬉しく頂戴する。感謝。

☆ 京・北日吉の華さん、私二十一日八十四歳の誕生日を、京・佐々木とびきりの名酒「京生粋」一升で祝って下さる。ありがとう 感謝。いい誕生日にしなくちゃ。食より呑むほうがはるかに多いかなあ。

☆ 四国・丸亀の大成繁さん、美味しい白い讃岐うどんを下さる。なんと佳い舌触り・のどごし。美味かった。感謝。
2019 12/17 217

* もう新春の歌舞伎座 夜の部絶好の座席券が届いた。約束の歯医者への途中で、支払いも済ませた。
帰りの江古田VIVOでロゼワインを二杯のみ、保谷駅のスーパーで買い物して帰ってきた。
2019 12/18 217

 

☆ 先日はありがとうございました
さて、片付ごとをしてましたら ごらんの酒杯がでてきました。二代八十吉の亥文です この正月に、年に一度酒を一ト口 飲むのですが、その時出して仕舞忘れたもののようです そこで 秦さんのエトが亥であることを思い出し、もらっていただこうと思った次第です ところが、 箱がどうしても見付かりません 焼物の箱なしでは価値はないとは知りつつ 使う分には箱不要と自分にいい聞かせて 送らせていただきました 御無礼は承知 の上です お腹立ちのないことを念じています。
おわびの気持は、同封の初代八十吉の杯でお許しいただけたらと思います これとて八十吉特異の吉田屋風ではありませんが 私の好きな絵柄で手もとに置い てあったものです ご存知の下戸ですから愛用したわけでなく 眺めていただけですから 死蔵といえるかも知れません もし使っていただけると 杯も生き延 びると思います
ただ 好きの押売りにならねばよいがという懸念もありますが  奥様への(諸返礼用に有り難い=)繪ハガキは受入れていただけたようなので 調子に乗っての押し付けをお許しください。
十二月とも思えない一日でした お腹立ちのないことを願いながらーー
押しつまった感じはまだのようです
どうぞ来年も お二人によい年であるようにとあわせて願っています
石川・能美市    井口哲郎 (前・県立石川文学館館長 前。県立小松高校校長先生)

* もう早速の待ったなし、お心づくし二代八十吉「亥」の繪盃、初代八十吉の名杯で、しみじみと、井口さん御夫妻ご家族のご健勝を祝し願いつつ、過ぎゆく 私の亥年にも家内の来る子年にも思いを馳せ、私誕生日目前、ご祝儀の「京生粋」を三献、いえ五、六献もを嬉しく味わいました。肴には、戴いたばかりのいい胡露柿を、美味しく。
幸せ者です。

* 老いまさる心の萎へはふたりして励ましつ夕焼けの山を降りゆく  恒平
2019 12/19 217

* 韓流連続の「心医 ホ・ジュン」も 「剣客商売」も 「ドクターX 大門未知子」終回も、それぞれ楽しんだ。「NDIS」は明日に。廣島県北の、むかしの東横短大生が送ってくれた地産ワインを、「大門未知子」を観ながら美味しく戴いた。
2019 12/19 217

☆ 小滝英史さん、新潟の名酒三種を送って下さった。感謝。

☆ 有元毅さん、上々の越乃寒梅 を送って下さる。恐れ入ります。お達者にお過ごしでしょうか。お近くならお目に掛かってもお話し出来ましょうに。どうぞ、メールででも、お気持ちのママにご遠慮なくお声掛けて下さいますよう。お大事に。お大事に。
2019 12/20 217

* 京の「華」さんに祝って貰った名酒「京生粋」で妻と乾杯し、昼の「赤御飯」を祝い、食後には鎌倉の橋本さん御夫妻からのチョコレートをいただいて、美味しさに感嘆、感謝。コーヒーも美味く。

* 晩には、建日子が、夕食を一緒にしに来てくれる。有元さんに戴いた「越乃寒梅」、光明寺さんに頂戴の珍しい「甕覗」の杓酒を、こころよく楽しませて頂く。愛らしい「マ・ア」もたちも食膳のまわりを賑わわせてくれるでしょう。
2019 12/21 217

☆ H.Pを観て
ホッとしています。
「子」の杯も探しましたが 見当りませんでした。
(八十吉)初代にかわいがられた母は いくつか作品を貰っていたようです。しかし戦中戦後の食糧難の時に お米に代ってしまったとか。母は のちにその ことを初代に話してわびたところ、初代は「うらのもんが間に合うてよかったがいや(私の作品が役立ってよかったね)」といってくれたそうです。
市川に住む九二才の姉が、佐伯泰英にはまり、読み余った文庫を処分がてら? ダンボールに詰めて送ってきました。少年時代平凡社大衆文学全集に夢中になっていた私のことを思い出したからというので。
姉は、夫を亡くした後、減った気分を剣豪小説がふっ切らせてくれたということでした。
読まないのなら処分して、ということでしたが、久々に(初見です)読んでみようと思っています。
来年は 「(秦 恒平)選集」完結か。
年女の奥様ともども よいお年を。お大事に
石川・能美  井口哲郎 (前・石川文学館長・ 県立小松高校校長先生)

* 簡要にして雅な お葉書 楽しみました。感謝。猪(亥)の盃で 暮れのお酒も楽しんでいます。ほどよい酒量でおさまるのも徳としています。
佐伯泰英という作者の名を、少年の昔の記憶にさぐってみて見当たりませんが。わたくしも「見えない飛行機」とか、古本屋立ち読みの佐々木邦ユーモア小説 など思い出します。剣豪というと吉川英治の「宮本武蔵」しか記憶にありません。武蔵は、本よりも徳川夢声の読み語りをラジオで聴いた気がします。
両手指先が、寒さと関わりなくびりびり痺れます。他は、目の他は、元気にしています。人と対話を楽しむ機がなく、仕事していても音楽を流しています。
奥様と御ともどもお大切に、おこころよくお正月お迎え下さい。
2019 12/24 217

* 駅の 西友まで買い物にゆき クリスマス・イヴとはちがうが、たっぷり刺身など買ってきてくれ、夕飯を、蛤汁と、酒とビールとで心地良くすませた。世界中が穏やかな年の瀬であってと願う。
2019 12/24 217

 

* 天野敬子さん ビックリの、甘い美味い吊し柿をたくさん下さる。妻は歓声、私も引き込まれて一つ、堪能。ありがとう存じます。

* 能の梅若万三郎さん、雅に見映えの佳い洋菓子を下さる。
京・神宮道の星野画廊さんから、軽妙な京味横溢、永年馴染み惹かれてきた煎餅のひと缶 戴く。
感謝感謝。

* 時代も嶮しい時代で貧しく飢えて育ったからか、人間の根もいやしいのだけれど、賑やかに頂戴物があると小学生中学生のように嬉しがる。笑われ窘められているのだが。人さまと顔合わせて賑わうという日々でなく、心寂しくいるのかも。
2019 12/24 217

☆ 秦先生へ
メリークリスマス!!  真冬の寒さになって来ました  どうぞお身体ご自愛下さい。
よいお年をお迎え下さい!   望月太左衛より

☆ 浅草の名物「せんべい」に綺麗なまるい器の和三盆、それに太左衛さんらしい趣向の愛らしいクリスマスツリーは、ボタンを捺すと音楽につれライトがきららかに点滅する。  ありがとう。

☆ 京・有栖川の桐山恵美子さん、正月用の大栗甘煮の瓶 丹波の大黒豆煮の瓶などたっぷり送って下さる。有り難し。妻が、ひとしおに。

☆ 調布・深大寺の中野完二さん、北の名酒「やまと櫻」を下さる。感謝。
2019 12/25 217

* 妻とふたり、年越し蕎麦を祝う。緊迫の名品、トム・クルーズ、ジャック・ニコルスン、デビ・ムーアの軍事裁判劇「ア ヒュウ グッドメン」に、もう数 度は観ているのに息を呑んで惹きつけられた。優れた「作品」の魅力、たんに作でなく「作品」に惹きつけられるのは「幸福」の一つである。
建日子が先夜もたらし呉れた酒の美味さにも魅されている。瓶の減りに目を見張る。 2019 12/31 217

* 入浴、無精髭をあたる。妻の心入れの蟹で建日子の呉れた岐阜の美味い酒を。自筆年譜を、建日子誕生から太宰賞授賞式の日まで克明に読みこみ、校正。
往時、渺茫の思いのまま、まだこれからとも思う。
2019 12/31 217

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